いせ九条の会

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人間同士や自然界と人間の調和と共存の思想 神話・宗教/山崎孝

2006-02-05 | ご投稿
欧州各紙がイスラム教の預言者ムハンマドの戯画を掲載 したことをめぐり、中東で抗議の声が高まっています。イスラム教における神は超越的な唯一絶対の存在。多神教的偶像崇拝を厳しく戒めており、預言者の肖像画もタブーとなっています。しかもデンマーク紙の漫画はターバンを爆弾に模しており、「本 来、平和の宗教であるイスラム教への冒涜であり絶対に許せない」(カイロ大学生)との強い怒 りを呼んでいます。

各国指導者も、「十億を超えるイスラム教徒への侮辱」(カルザイ・アフガニスタン大統領)「イスラム教徒の感情を傷つけ冒涜するもの」(アブドラ・ヨルダン国王)「イスラム教徒はこのような卑 劣な行為に断固対抗しなければならない」(アハマディネジャド・イラン大統領)などと反発。エジプトのムバラク大統領は「過激主義とテロに口実を与えるもの」と警告しました。

事態を重視した国連のアナン事務総長は二日、「報道の自由はつねに、宗教的心情と教義を尊重するやり方で行使されなければならない」と表明。異文化間の相互理解のための平和的対話の重要性を強調しました。(「しんぶん赤旗」電子版より抜粋)

私は現在「神話が私たちに語ること」という本 を読んでいます。著者はカレン・アームストロングという女性で1999年イスラム教徒公共問題協議会メディア・アワードを受賞している方です。本 の中に次のような文章があります。

われわれには、民族や国やイデオロギーを同じくする仲間とだけでなく、あらゆる同胞と一体感を持てるよう助けてくれる神話が必要である。思いやりは、実利的で合理的なわれわれの世界では、生産性や効率の点で見合わないとみなされがちだが、そんな思いやりの重要さに気づくよう助けてくれる神話が、われわれには必要だ。さらに、霊的な心がまえが持てるよう、当面の義務や必要にとらわれない広い視野が持てるよう、唯我論的な自己本 位の姿勢に疑問を投げかけるような時空を超越した価値観を持てるよう、助けてくれる神話が必要だ。また、地球を「資源」として利用するだけではなく、もう一度神聖なものとして尊べるよう助けてくれる神話が必要だ。このことは非常に重要である。というのは、人間の並はずれた技術的才能に遅れずについてこられる何らかの精神的な革命がなければ、地球は救えないからだ。(以上)

古事記には神話が記され、伊勢市には神話に出で来る神を祭る神社があります。

伊耶那岐神が川に入り、左の目 を洗うと天照大神、右の目 を洗うと月読命、鼻を洗うと須 佐之男命が生まれた。天照大神は高天原を、月読命は夜の世界を、須 佐之男命は海の世界をそれぞれ治めることになったとあります。なかなかの想像力を発揮して書かれています。しかし、神話は天皇の神格化をはかる思想に用いられてしまいました。

「民族や国やイデオロギーを同じくする仲間とだけでなく、あらゆる同胞と一体感を持てるよう助けてくれる神話が必要である」ということから外れてしまいます。

カレン・アームストロングさんの考えは、人間同士や自然界と人間の調和と共存の思想だと思います。

カレン・アームストロングさんが書いた文章と関連性を持つ、私の書いた文章をお読みください。今年の初めに書いて「論座」2006年3月号に掲載 して貰いました。

自然への畏敬に回帰するとき

「論座」2月号の「私の参拝」の中で堀田力氏の「きわめて限られた能力と生命から与えられていない人間が、己を超越して視覚にとらえられない存在に畏敬の念を抱き、帰依して信仰するのは、自然な感情であろう」という言葉が、私の祈りの心に一番近い。

 私は毎年、太平洋から出る初日を拝んでいる。海から一条の光の帯を砂浜まで照射して、太陽が海面から上がり空と海を染める光景はとても美しく敬虔な気持ちにさせる。

 染色家の吉岡幸雄氏は、人類が最初に畏敬し獲得した色は赤色だと言う。生命の営みの根源が太陽にあると人は理解する。世界には古代エジプト、古代インカなどに太陽信仰があり、王権と結びついていた。天照大神もその一つである。

 伊勢神宮 は冬至の日に大鳥居の中央から朝日がのぼ る。五十鈴川の清流が世俗の世界を遮断し、宇治橋を渡り神域に入ると巨木が生い茂る。私は皇祖神の天照大神というより、太陽神という想念で拝む。風の神も祭られ深い森の気から、古人が想った自然界に霊性があるという考えが解る気持ちになる。

 人間は科学を進歩させ自然界の一員ということを忘れ始めたが、現代科学は化石燃料を大量に燃やす人間の営みが二酸化炭素を発生させ自然を破壊していること、森林が二酸化炭素を吸収して破壊を和らげていることを解明した。古人たちが太陽や森を畏敬した心への回帰が求められている。