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委託取引の歴史的考察?

2008年07月09日 | アパレル放談
「委託取引の歴史的考察」という学究的なタイトルにしました。
それほど大仰な内容ではないので、気楽に読んでください。

百貨店の委託販売制度がどのように変遷し、現在の異常な取引形態が業界に定着しそんれが現在の「矛盾の一つ」となってきたかを振り返ることも重要と考えます。
Blogでその変遷を詳しく正確に記述することは限界がありますが、その概略を記憶を辿って投稿します。(前々からアパレル史の体系だった研究をしてみたいと思っていました。ライフワークとして、少しづつ取り組んで、別の場所(機会)で発表してみようと考えています。)

戦前の百貨店の婦人売り場は、「呉服と生地の切売り、お仕立て、雑貨」中心の時代でした。
戦後の洋風化に伴い、戦前のオートクチュールのデザイナー(先生)によるクチュールとそのプレタポルテブランドが誕生した。

その後、君島一郎、中村乃武男、西田武男、森英恵、芦田淳のデザイナープレタポルテの売場が壁面ショップが構成され、平場売場に、セーター、ブラウス、メリヤス、スカート、ドレス、スーツ、コートなどの単品商品が、生地売場と併設されていた。

その当時も取引形態は委託取引であったが、買取委託的な内容(シーズン末の残品を次シーズン商品に入れ替え)で現在の委託とは異なっていた。
FA制度は無く、一部に販売促進的な意味の派遣制度は部分的に有ったようです。

婦人服の平場を構成していたメーカー(当時はアパレルという業界用語は無かった)は、花咲(スーツ・倒)、ツバメコート(コート・倒・再)、東京プリーツ(スカート・倒)、東京ブラウス(ブラウス・民生)、サガミ(ブラウス・民生)
等の所謂百貨店ヒラバメーカーが誕生した。
その後、樫山、レナウン、三陽商会、東京スタイル、イトキン等が単品平場からトータルブランドのコーナーショップ売場を構成した。
初期の単品平場メイカーの多くは姿を消したが、樫山、三陽商会、東京スタイル等のアパレルは、百貨店のMD政策を巧みに利用し、積極的な委託(店頭管理しシーズン中の商品入れ替え)+ショップ什器負担+FA制度+販促費負担(キャリーバック、カタログ、DM)+顧客管理など百貨店に代わってアパレル側がMD、販売、顧客管理、ショップデザイン、販促・イベントなど全てを百貨店に代わって代行した。
百貨店の営業体質を利用し、次々に自社商品のブランディングに成功した。

消費の拡大の波に乗り百貨店アパレルが大きく業績を伸ばし、売上げ1000億円、営業利益10%越えのアパレルが続出した。

その業績を生み出す要因は、委託条件からインショップ条件への積極的な変更であった。
’80年代に全盛を風靡したDCブランドが、その好調の強みを生かし、委託条件より歩率の良い総委託=消化売上計上(インショップ)取引を百貨店に強行に導入させた。
DCブームが去った後に、ワールド、サンエーインターナショナルなどの専門店アパレルが百貨店への進出へとつながり、現在の百貨店売場が構築された。
百貨店側にとっては、総委託による店頭在庫高の抑制や人件費抑制、経費削減につながり、バイヤーの質的低下に悩む百貨店にとっては好都合な取引形態となった。
婦人服の高粗利は百貨店にとって魅力のあるもので、各百貨店が挙って、3フロアー、4フロアーの増床競争に入った。

アパレル側にとっても、歩率のアップや店頭管理、FA管理が自社で行なえ、積極的で自由?な企画、生産と販売が可能になった。
百貨店の増床競争は、アパレル側の他ブランド化にとって都合の良いものであった。
まさに両者の利害が一致したと言える。

その仕組みは、百貨店の坪効率が100万/坪以上、FA効率300万/人以上の目論見で成り立つものでした。(注)当時の概算で各社の環境により異なる
その後、百貨店の坪効率は下降し続け、当時の60%台まで下落し、その後の売上減少の歯止め策として行なった、営業時間延長、定休日無しの営業政策は、アパレル側にとって、FAのシフト制により、人件費増加の原因となった。

坪効率の低下とFA効率低下が百貨店アパレルの業績に影響しだした言える。
アパレル側の対策としての政策が、「上代の引き上げ、海外生産によるコストダウン、アウトソーシングによる経費削減等があげられる。
その結果、品質と価格、同質化等による、百貨店からの顧客離れを産む結果になった。
これから日本のアパレル(ファッション)業界は、この「矛盾」に取り組まなければならないことになる。

次回は専門店の取引の実態について投稿します。

(注)品質とは縫製や素材等の物性的な質ではなく、ファッション性=ファッション品質を意味します。顧客離れはこの低下が要因と思われる(セレクトショップが海外のファクトリーブランドやマイナーブランドに重点を置いたことでも理解できる。空洞化してしまった今では、このファッション品質のアップは大変だと危惧する。


後記1

この記事を書こうとしていたら、今朝の繊研新聞の一面トップに「夏のクリアランスセール、好スタート」、「一転、上昇基調」「客数。売上ともに伸び」の見出しが躍っていました。
投稿を取り止めようかと迷いましたが、一人の自説(偏見)として投稿しました。
2、3年後にこの記事のアーカイブをクリックしてみようと思い生ます。

後記2
百貨店との取引を経験されている方はごぞ存知と思いますが、「委託取引」の伝票は存在しません。
以前は存在したのですが、大資本の百貨店による独禁法に抵触する可能性があるために、百貨店の統一伝票は「買取伝票」に切り替えられました。
当時、ややこしい取引契約書の中に、「返品を容認する項目」があったと記憶しています。これこそ矛盾の一つでしょう。









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