地球族日記

ものかきサーファー浅倉彩の日記

航海日誌3

2013年03月14日 | お仕事日記
前回、特別な才能の結果ではなくても誰もにその人にしかできないことがあって、それが仕事ってものなんじゃないか、という話を書いた。

あるものを読んでいて、ズバリこのことをテーマにした概念に出会ったので紹介したい。

それは、ソーシャルファーム あるいは グリーンケア と呼ばれる概念だ。

それって何?っていう質問に
超ざっくり答えるなら、
「森とか農場とか自然の中では誰もが平等でハッピー!そのことを思い出そうよ!」
っていう考え方です。

この考え方を現実に落としこむために、実践→社会全体にもたらす効果の研究→政策&収益化 というプロセスがふまれた結果、
ヨーロッパには「グリーンケアファーム」なる農場が3000カ所ぐらい(これまた超ざっくり)存在している。オフィスの中とかビジネス街の中よりも、自然の中のほうが仕事の多様性が高く、誰もにとって自分を生かせる仕事が見つけやすいんだって。 ジョブダイバーシティとかって言ってみたりして。生物多様性が高い場所は仕事の多様性が高いってなんだかおもしろい。

グリーンケアについてのいろんな文献を読んでいて、こんな言葉の連なりが目に留まった。

   グリーンケアファームでは、
   誰もが、できることは限られているけれど、限られたできることをやっている。
   それらを通じて意味を見出せる人生をおくることが
   重要である。それがクオリティオブライフの向上である、と。



これは、主にさまざまな理由で社会の中に居場所を見つけにくい人や心身に妨げを抱えている人がグリーンケアファームでは居場所が見つけられてイキイキできるよ~、ということを言っている。つまり、福祉的な見方をした文章だ。
だけど、この文章を福祉的視点ではなくてキャリア的視点で見ても、とてもうなづける内容だと思った。

さまざまな理由で社会の中に居場所を見つけにくい人や心身に妨げを抱えている人という言い方は、日本でグリーンケアファーミングを親子2代・3カ所で拓いている共働学舎さんのコンセプトステートメントから引用させていただいた。
グリーンケアやソーシャルファームの考えによって救われ得る人を総括する言葉として、これ以上のものにはまだ出会えていないから。

知的障がい者、身体障害者、引きこもり、精神疾患の患者、刑務所の囚人、薬物依存の方 あたりまでは、良くも悪くもカテゴライズとラベリングが済んでいる感じがするけど、極度に要領の悪い人、外見とか性格にすごいトラウマやコンプレックスを抱えている人、じっとしてられない人、組織にどうしても馴染めない人、とかとか。障がい者とか病人とか犯罪者ではくくれない、「困難を抱えた人」ってたくさんいると思う。実際、詳しくないけどアスペルガーとか発達障害とかコミュニケーション障がいとか、むかしは「ちょっとへんな人」ですまされていた人たちの症状に、今では名前がついたりしている。それに、私自身、本当にどうしても朝起きられなくて、鉛になった身体を引きずって地獄の底からはいずり出るようにして一日を始めるときとか、弱り切ってるときは、完全に社会生活困難者です。

わたしたちは、障がい者と健常者にきっぱりわかれているんじゃなくて、
さまざまなものさしの上の、グラデーションのどこかの、とっても曖昧な立ち位置にいるんだと思う。

そういうひとりひとりを、障がい者 だったり、ダメな人 だったり、負け組 にカテゴライズしてダンボールに入れて(比喩的な意味で)ラベルを貼って排除してしまうか、そうじゃなくて共存したり彼らから学ぶことにするかは、社会全体の態度や意識や姿勢が決めるんだと思う。

で、共存して彼らから学ぶことにしたとたんに、冒頭の、「誰もが、できることは限られているけれど、限られたできることをやっている。それらを通じて意味を見出せる人生をおくることが重要である。それがクオリティオブライフの向上である」みたいな、「あれ、それっていっけん特に困難を抱えてないかに見える人にもあてはまるじゃん。一緒じゃん」ってことに気づかされるわけです。

と。なんだか熱くなってしまうこのテーマ。

書くという仕事をしているおかげで、こんなテーマに出会えたのは、役得だなあと、思うわけです。


私は、「私は書く仕事がしたいんだ」と思い込んでいただけで、
漠然と「書きたい」というのだけがあって、何が書きたいのかはわかっていませんでした。
だけど、書くことでどうしたいのかは、わかっていた。
「私はここにいる!」ということをもっと見せつけたかったんですね。今でもやっぱりそれはあります。(笑)
でも、今は少し、何が書きたいかがわかってきました。
視線が自分だけじゃなくて自分を取り巻く社会にも向いてきたおかげです。

書く、伝える、記事をつくる、メディアをつくるというのは、何かと何かの関係性を変える「関係性の再構築作業」なんです。
広い世界の中に無数に転がっている情報に目鼻をつけることで、読者とその情報の関係性を変える。
第一段階は、まずは「知らなかった」を「知っている」にすることです。

ところで、「変える」とか「社会変革」とか「イノベーション」というと、何か新しいことが始まるワクワク観、とか、それをつくれる
クリエイティビティのかっこよさとそれに対する憧憬 というイメージが先にたちがちではないでしょうか。

でも、誰もが生きているだけで誰かに影響を及ぼしていて、つまり、社会を変えている、ということに最近思い至りました。

私たちは世界を変えることができない のではなく
私たちは世界を「変えない」ことができない、のです。


何か影響を与えたい、社会の中に自分の立ち位置や居場所を得て安心したい、という人は多いと思います。
その深層心理が、社会変革とかイノベーションへの注目となって現れているのではないかと思います。
でも、みんな、すでに変革をしている。それをより意識的に、めざす方向をとらえながら、行動を変えて行くことが
社会変革なのだと思います。

では、何をどう変えたいんですか?という話になります。

私の場合であれば、書くことで何と何の関係性を変えたい、つまり再構築したいんですか?と。
それが、「何を書きたいのか?」という自問の本質です。

今は、
グラスルーツ・個人と政治や行政の関係性を変えたい。
人と宗教の関係性を変えたい。
人と自然の関係性を変えたい。

変えるというのはもちろん、ハッピーな方向にもっていきたい。
と思っています。


ここからまた話の方向が少し変わりますが、

「ハッピーな方向にもっていきたい。」という感覚が、何事においてもとっても大事じゃないかな、と思います。

たまに、いろんな活動がコンプレックスの裏返しになっちゃってる人がいます。

また、逆に、(エコとかグリーンとかを含む)社会変革の匂いがするカツドウ全般に偏見を持っていて、
ああいうのにめくじら立ててるやつって、なんかきらい。みたいに、
ひとくくりにしちゃってる人も多い気がします。

前に、「彩はエコとかやってて、そのうち女性解放!とかって叫んでるこわいフェミニストみたいになっちゃうの?」って
質問されたことがあります。あとは、「左なの?」とか。笑
いろんな意味で間違ってて、解像度が低過ぎて、どこから対話を始めればいいのか
(つまりツッコミを入れればいいのか)わからなかった。
多分、彼や彼女の頭の中では、環境保護!とか、女性の権利!とか中央集権反対!とかが、
全部いっしょくたに「なんか叫んでる人」フォルダにごちゃまぜになってるんでしょう。
で、そのフォルダには、
「なんらかの理由で自分の現状に満足できていない鬱憤を社会の現状に文句を言うことではらそうとしている」みたいな
サブタイトルがついている気がします。

でもって、カツドウな人の中には、実際にそういうふうになっちゃってる人もいるのが事実。と。

でも、そうじゃない人もいる。

まあ、これはだいぶ前の話で、最近は、変わってきたなと感じることも多いです。
社会の現状に問題意識を持たざるを得ない状況が、さまざまな局面でさらに濃厚になっているからでしょうか。

私の知る限り、ですが。

とりあえずイキがいい。なんかよくわかんないけど前進の勢いを感じるヤツの矛先が、
金とオレと仲間オンリーから、社会 みたいなことに向いてきている気がします。
東京生まれヒップホップ育ち系のやつ、高校時代ストニュー読んでた感じの、
私立大卒の、そこそこおぼっちゃまなヤツのね。

身辺に、「社会起業家とかって言ってるやつ、嫌いなんすよ。なんかきれいごと言っちゃってて。
おれは上場して金がほしいから起業したんです。」とハッキリ言ってた人がいます。
(ま、私は彼のことが大好きなんですけどね。
いつだって、やりたいことに真剣に向き合ってとにかくやってるから。
だからここまでハッキリ言えるんです。)
その人が最近、「で、結局何したいの?」みたいなことを話してたときに、
「社会をよくする方向にもってけるようなことしたいなと思ってて」って言ったんです。

笑。

だから、ようするに、言葉の器はなんでもいいんですよね。
順番は人それぞれなんですよね。
でもこの時点で彼は、「起業」ということに関しては税金のこととか手続きのこと、
従業員とか事業パートナーとの関係性とか、
ひととおりの、起業してない人がしたことのない苦労を経験して、
スキルを身につけてるわけで、それは価値だと思うんです。
志だけでは、動かせないものがたくさんありますから。
その上で、そのスキルを使って今度は「社会をよくする方向に」ってなったんだから、
よかったな。って。
男は40歳ぐらいまでは、本当に、わかんないですね。とも思いました。

つづく


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