地球族日記

ものかきサーファー浅倉彩の日記

学連imcoセイラーの春夏秋冬-春編その2-

2008年05月07日 | 梅月荘の思い出
私の場合を白状すると、入部の動機は至って不純なものだった。

理由その1 イッコ上の男の先輩4人がカッコいい。
理由その2 練習場である鎌倉材木座ビーチがうちから近い。

前者は置いといて(笑)
それまで、諸事情により退寮になったせいで
神奈川の南のへりから東京の西の外れまで
片道2時間かけて高校に通っていた。
だから、
「地元にベースができる」というのはとっても魅力的なことだったのだ。

このときは知る由もなかったことだけど、
私は、自分をウィンドの世界に引きずり込んだ
(私が勝手に引きずり込まれたんだけどね)
"カッコいい先輩"のうちの一人と大恋愛をすることになる。
人生何があるかわからないのだね。じつに。

勧誘されたわけでもなく、
奈々絵の「海系のいい感じのサークルあるよ。ウィンドサーフィンだって」
という言葉に乗っかって自らブースに吸い寄せられた私。

今登場した、「奈々絵」というのは高校の仲良しグループ友達。
同じように寮生として入学して
同じように退寮になって、
家が同じ方向ということもあって飽きるほど一緒にいて、
もう飽きたと思ったら、大学も同じになってしまったクサレ縁だ。

いざという時の自己主張と押しの強さが持ち味なので
やや敵を作りやすいけど、
一対一では相手の空気に敏感な賢い女子。

結局一緒に入部して、サークルまで一緒なの?とまわりに呆れられた。

でも、私がレースにハマって行く一方で
彼女には、「順位がつく限りは1番になりたい!」という類いの競争本能は
備わっていなかったらしい。

2年の終わりには正規練には来なくなり、
サークルを辞めて大学も中退した。

それはさておき。

トントン拍子に試乗会まで行き、
あまりにも全く、ウィンドサーフィンらしいことができなかった
記念すべき4月の日曜日、私の海狂い人生が始まったのだ。

初めて道具に触り、波打ち際でボードに乗る。
海面に倒れているセイルを、ブームから垂れ下がっているロープ
(アップホールラインという)を使って引っ張りあげる。
うまく上がって、マストがボードに対して垂直に立ったら
ロープからブームに手を移し、垂直状態をキープする。
この状態のとき、自分の立ち位置は、
ボードとリグ(セイル+マスト+ブームがセットされたセイル部分の総称)をつなぐジョイントの両側にあり、真上から見るとセイルはボードに対して垂直に開いている。
次の段階で、開いているセイルを、ボードのほうに引き寄せると、セイルが
風を推進力に変えて、ボードが走り出す。
そのためには、セイルを落とさないように支えながら、
自分をしかるべき位置に移動させ、体重を使ってセイルの角度をコントロールしなければならない。

以上のことを、風にセイルをなぶられ、足場であるボードを波に揺らされながら
こなすのだ。

セイルは重いし、何もできないし、
雨でも降っていれば4月の海はまだまだ冷たい。

そんなわけで、せっかく可能性に満ち溢れた貴重な土曜日に
電車を乗り継いで鎌倉くんだりまで出かけ、
試乗会に参加しても、ここでほとんどが脱落する。

私はというと、ボードから落ちたりこけたりして
よろよろしたりしている間に、
「これに乗れるようになりたい」「なんかアツそう」
という感情が相模湾上空から下りてきた。

単純に、「道具を携えて海に出る」という行為が、
たとえ使いこなせなくても、
自分にとって最高に楽しいということを
察知したのかもしれない。

冒頭で書いた通り不純な動機も多分にあったけど、
これから始まる大学生活に、完璧にワクワクできる未来が見えた。

新歓の流れとしては、GW中に艇庫セブンシーズで行う1泊2日の新歓合宿までに
入部するかどうかを判断する決まり。
私は4月の半ばにはもう心を決めていて、
あとは、30万円をどうやって親にねだるかだけが問題だった。

実際のところ、その年、つまり1998年度は
二男目当てのトントン拍子シスターズが
大量にいたし、そのうち5人は30万円の道具を買って入部した。
男子も2人。
7人のヒヨコたちは、それぞればらばらなテンションで、
お互いに興味を持つよりも、ウィンドの技術を上達させるよりも、
先輩たちと早く仲良くなりたい気持ちが
先行していたような気がする。

サークルとしての、結束の固さを感じたし、きちんと目指す目標がある適度な緊張感があった。
そして体育会系ド根性ではなく、センスとおしゃれ感のある
キラキラした先輩たちが、私たちヒヨコを迎えてくれたのだ。


学連imcoセイラーの春夏秋冬-春編その1-

2008年05月07日 | 梅月荘の思い出
学連imcoセイラーの1年は、新歓で始まる。

「新入生を入れる」=「仲間を増やす」というワクワクなイベントだけど、

我らがソフィアウィンドサーフィンフリートへの入部条件は、
いきなり30万円のウィンド道具一式を買うことと、
毎週日曜日に必ず鎌倉に来て練習をすること。

とにかくいろんなこと楽しみたい!素敵な人と知り合いたい!
イケてる大学生になりたい!的な浮かれ具合の
フレッシュマンは、かなりの確率でドン引きする。

(最近は就活サークルみたいなのが人気らしい。
一体何をするの?大学一年生から就職のために貴重な時間を費やすなんて、
絶句もののバカさ加減だと思うのは私だけ?)

一回ハマっちゃえば、日曜日の正規練じゃ足りなくなる。
土曜日はもちろんのこと、平日午前中の授業のあと(!)とかでも、
四谷から鎌倉に駆けつけて自主練に行っちゃうおばかさんになる。

道具代も、30万円で十分ドン引きだけど、
実際にはたやすく折れるバテン(セイルのかたちを支えるあばら骨的な棒)が1本3000円もするわ、
セイルが破れた日には万単位でお金が出て行く
超カネ食いスポーツだったりもする。

でもそんなことはおくびにも出さず、
まず新宿での飲み会、そして鎌倉での試乗会に連れ込むことが、
新入生獲得の第一ラウンド、
メンスト(上智大学北門から伸びるメインストリート)においての目標なのだ。

ところで新歓は、学校側の決めごとで3日しかない。
ありとあらゆるサークルや部活が会議室机を並べ、
そこで待ち構えるお留守番以外のメンバーは
遠征スカウトに出かける。

年に一度きりのチャンス。
勧誘する側される側が入り乱れる、竹下通りばりの人ごみから、
未来の海女、海男を発掘するのだ。

ちなみに、1学年に6人いれば多い方という
スモールイズビューティフルなサークルだったので、
1回新歓を外すと部の存続に怪しい雲行きとなり、
2回連続で外せばかなり危機的状況になる。

だから、結構必死。

とはいっても、手当り次第に声をかけると、
こっちだって大して魅力感じてないヤツに
「あ。おれ塩がダメなんで」とかいう意味不明な断り文句と
根拠のない上から目線で断られ、イラッと神経をすり減らすだけ。

欲しいかどうかと入りそうかどうかの両方を見極めて一本釣りした方が、
結局はハッピーな結果をもたらす。

一番のポイントは、地に足がついてて何か一つのことに打ち込めるかどうか。
そうじゃないと、どうせ入らない。

釣れやすい漁場は、めったにいないけど、元ヨット部。
またはなにがしかの部活経験者、そして帰国子女・外人。

余談だが、ウィンドサーフィンは日本よりも海外で知名度と浸透度が高い上に、
上智は比較文化学部を中心に外人と帰国子女が多めなので、
毎年外国人が一人は、試乗会まで到達する。
そして、同じ艇庫の武蔵大学お祭り人間集団の格好のネタになるのだ。

以上のことをふまえた上で、
服装、顔の座り具合、目つき、体格、派手さ加減とかを見て、
全体で判断して声をかける。

消去法も有効。
ウィンドサーフィンと言いながら
競技自体は「ヨットimcoクラス」なので、サーファーは案外畑違いだ。
それに、すでに海を知っていてサーフィンに情熱を傾けてるタイプは、
根性あるからこそウィンドサーフィンに浮気をしない。

色黒でも、キレイめイケてたい系はイベントサークルへどうぞ。
ファッションが裏原系だと合宿所を見て引きそう。
色白だと日焼けが苦手そう。
地味過ぎるタイプは、あんまり触手が動かない。・・・・・と
学校の構内を歩き回りながら次々と×がつく。

やっとこさいい感じの子を見つけ、
「海好き?」「ウィンドサーフィン興味ある?」
願うような気持ちで呼び止める。
ポジティブだったらそのままブースへ。
楽しげな写真ばっかり集めたアルバムとか、誰かがレースで入賞した盾を見せたり、
応援に来てくれた他大の仲間にしゃべらせて、「他大に友達ができる」アピールをしてみたり。
ノートに名前と連絡先を書いてもらう。
その場で飲み会や試乗会に来ると決めた子の名前の頭には、印がつく。

ひたすら繰り返し、足も喉もヘトヘトになったころに、一日が終わる。