ときどき、拙いブログに登場するばあちゃんの、お気に入りの団扇。このほかに、6枚美人画の図柄があるが、これだけは手に持つ。「おれだぁ」って。聞くと「40ぐれぇがなぁ、若がぁったなぁ」って。団扇を上から下へ、下から上えと眺めて、目を細め、おちょぼ口をあけて、笑う。このような浴衣姿の自分を思いだしているのは、二十歳前後の、昭和10年頃かも。昭和16年に戦争がはじまり、戦中、終戦、戦後は、世の中が荒れて、食べるものを手に入れる苦労をして、浴衣を着る余裕はなかったと思う。話し相手をしていて聞くと、田んぼや、土手で遊んだ「西のともちゃん、下のかっちゃん」とか、幼いころの友達のことのようだ。ばあちゃんには、兄ふたりと姉ふたりがいた。「誰ぁれもいねぐなっちゃったぁ、さびしもんだぞぉ」って。半年前の三月頃、食べなくなってしまい、だめかなぁって思った時があった。しかし、今は、「なんか、甘ぁくって、うめぇものもらえんのがぁなぁ」って云う。「死ぬぅだぁ」っていう話しは、またの機会にのせます。