冷たい風のような火

メモ書きですが、それにしても何で公開の場で書くんでしょうね。

20km以上の山道を歩いて一泊二日で三峯神社に参拝する

2014-09-23 20:49:06 | 旅行
埼玉県の秩父にある三峯神社、日本武尊の東国遠征の頃にまでさかのぼる歴史を持つという由緒ある神社で、山奥なのでなかなか行けないながらも人気のパワースポットです。
なお、三峯とは神社の奥宮のある妙法ヶ岳、東京・埼玉・山梨の3つの都県が山頂で交わる百名山の雲取山、そして雲取山への三峯登山口からのルート上にある白岩山の3つです。
三峯神社の本宮はもちろん、3つの山のすべてを踏破してこその参拝と考え、敬老の日の連休の土日にテント担いで20km以上の長い参道を歩いてきました。
まあ、要するに奥多摩から雲取山に登山して三峯ルートで下山して神社にも参拝したということですね。

快晴とはいかなかったものの、まあまあの晴れに恵まれた三連休の初日の土曜日、予想通り多くの人が奥多摩に来ていました。
雲取山登山口としてメジャーな鴨沢へ向かう人も多く、8時35分頃初の鴨沢方面行のバスは臨時増発が出ていたようです。
それでも、私の狙いとしてはこの日の奥多摩は南北アルプスや八ヶ岳よりは混雑しないだろうというものでした。
天候不順で7、8月の週末のほとんどが雨だったため、登山を趣味にしている人たちはやっと訪れた晴れの週末に高山に向かうと思われたからです。
こんな時に奥多摩に来るのはマイナーセグメントなはず。一方、9月に入って気温の低下が著しいので、標高2,000メートルに満たない山域が多いこの辺りでも結構涼しくなっているはず。登山しやすい環境だとう読みました。まあ、結果的には半分くらい当たってました。

で、鴨沢に9時過ぎに到着。登山前のトイレを済まそうとする人で渋滞です。


今回の雲取山登山は、テント泊装備を担いでの本格登山としては今年初めてのものです。7月後半に甲斐駒ヶ岳と仙丈ケ岳に登った時もテント泊でしたが、あの時は典型的なラクチンテント泊、つまりベースキャンプ方式だったので、北沢峠のテント場までバス停から15分くらいしか装備を担いでいません。14kgくらいの装備で標高差1,500メートルを登るのは今回が初めてなのです。
そして、これは次週のお彼岸の週末に予定している鹿島槍ヶ岳へのテント泊登山への予行演習でもあります。扇沢から鹿島槍のピストンコースは柏原新道という安全な道を通るので、北アルプスの高峰といっても滑落などの危険はないのですが、途中に爺ヶ岳を挟むのでアップダウンが激しく、累積標高差が2,000メートルを超えます。そこにテント泊装備で行く前に、雲取山で体を慣らしておきたかったのです。

さて、鴨沢からの登山コースは雲取山では最もメジャーなもので、危険個所なく基本的にはダラダラと長い坂がコースタイムで5時間以上続く樹林帯のコースです。
序盤は意外なほど体が軽く感じましたが、これは既に早朝ではなかったからかもしれません。
標高500メートルちょっとのところから登り始めるので気温も20度くらいと高く、樹林帯は風も通らないので直ぐに汗だくですが。
しかし、思ったよりも多くの花が咲いていてこれはうれしい誤算でした。

クサボタン。


ツリフネソウ。


シラヤマギクですかね。キクは似たのが多くて。


ヤマジノホトトギス。このホトトギスの類はホントに面白い形ですな。エイリアン。


ゲンノショウコでしょうか。個体数は少なかったですが、とても綺麗です。


これはGoogle先生にお聞きしても特定できなかった花。この手の形の花は特定しにくい傾向があります。


雲取山は東京都最高峰(2,017メートル)なだけでなく、日本百名山の一つでもあるのでブランド力があります。そのためか、登山道はかなり整備されていて歩きやすい印象でした。


まあ、これは初日の鴨沢コースの話で、翌日の下山に使った三峯ルートは奥秩父らしいワイルドさが残っていましたが。
黙々と登り、2時間以上が経過してそろそろシャリバテ状態になってきて休みたいと思っていると、ちょうど七ツ石小屋に到着しました。素泊まりと10張弱のテント場があります。豊富な水が汲み放題なのがありがたいです。


七ツ石小屋からの眺め。雲が出てきてしまって、眺望はいまいち。


ここでアルファ米とレトルトカレーという軽量化重視の昼食を取り、40分くらい休憩して12時過ぎに登山再開です。七ツ石山山頂付近は急登だと聞いているので、あえてピークハントはせずに巻き道を行きます。
ここからの尾根道は山火事への防火の意味もあって木が切られており、ク雲がなければ眺望がいいと思われる道です。鹿の食害にも負けないマルバダケブキの花畑のはずですが、流石に花は終わっていました。


そして有名なダンシングツリーが出現。カラマツでしょうか。


尾根道にはカラマツが多かったので、黄葉のシーズンは綺麗でしょうね。


途中、ヘリポートや奥多摩小屋を通過します。テントを張っている人が多くいました。いい加減単調な登りに飽きてきたところに、山頂前の小ピークである小雲取山への登りが意外ときつくて体力を失っていく。振り返ると結構歩いた感じですね。


アキノキンリソウ。高山だと珍しくないですが、この日はこれしか見ませんでした。きれいな花は単調な尾根道における現実逃避。


最後の30分くらいの登りを我慢すればやっと山頂が見えてきます。直下に避難小屋があるので、それが見えてきたら最終盤です。このころには日帰りの人が小さいザックで悠々と下りてくるのと多くすれ違い、テント泊装備で汗だくの自分が修行者に思えました。まあ、鹿島槍に向けた修行なので仕方ない。


そしてやっと登頂。と思ったら、本当のピークは避難小屋のからやや右方面に行った方にあります。そちらに向かう前にこれまで来た道を振り返る。雲がかかっていますが、ゆるやかな尾根道と緑の木々は独特の趣です。


山頂には、東京、埼玉、山梨それぞれの標識があって競っています。都民としては東京の標識で記念撮影。東京都最高峰の標高2,017を制覇。新緑の頃から何度か計画しては流れていた雲取山登山でしたが、やっと登ことができました。


曇っていて眺望は限られたのがやや残念。


山頂は12、3℃だったのではないでしょうか。風が吹くと寒いので、あまり長く滞在せずにテントを張る予定の雲取山荘に向かいます。三峯方面に150メートルくらい下ったところにあります。
で、この山荘に向かう山頂直下の道はかなり急。テント泊装備で体が安定しないと、下りはちょっと気を付けなければなりません。
そして、山頂を通過して直ぐに気が付くのは、東京の鴨沢ルートとは全然違う道の雰囲気。苔生した深い森で、樹林帯の香りも濃くなります。
雲取山は奥多摩の最高峰ですが、同時に金峰山や甲武信ヶ岳など奥秩父山塊の主脈の最東端にあたり、貴重な深い森として保護されている秩父多摩甲斐国立公園の一角です。


2時半ごろに雲取山荘に到着。立派で有名な山小屋です。この日はほぼ満室だったようで、家族連れや団体などで賑わっていました。


早速受付で登録してテントを設営。


テント場は小屋から至近で、50張設営可能とのことでしたが、実際には30くらいしか張れないように見えました。こちらもしばらくすると一杯になってしまい、遅く到着された方々は場所の確保に苦しんでいました。


テント場の周辺は林ですが、山梨方面に沈む夕日を拝むことができました。


ぼっち登山でテントだと時間を持て余すので、明日下山予定の秩父方面の情報を整理しました。「あの花」は「るるぶ」でも公式に使われています。


翌朝。ご来光はよく見えました。これはテント場から。


テント場からも見えたのですが、山荘のデッキからの方が見晴らしがいいので移動して鑑賞。


テントの撤収には時間がかかるものですが、この日は何故かテキパキしていて6時前には出発できる状態に。ところが、トイレを済まそうとしたところ20分もの渋滞に巻き込まれる。雲取山荘のトイレは山荘宿泊者もテント泊の人も屋外のものを使うので、山荘がいっぱいの時は注意ですな。
張れていたら山頂に戻って眺望を楽しむのもありだと思っていましたが、早朝は山荘から山頂にかけてガスがかかっていたので諦め、すなおに下山します。


三峯ルートは、山頂と登山口の単純な標高差は1,000メートルくらいなので鴨沢ルートよりだいぶ楽に聞こえますが、実は途中に200メートル以上のアップダウンを含む幾つかの小ピークを越えていくので、かなり厳しいコースです。実際には累積標高差は1,500メートルくらいになるでしょう。
しかも、奥秩父らしい森深い道。テント泊装備を背負っているとかなり膝に負担がかかります。やはり今回は修行の山行。
それでも、朝のひんやりした空気の中で原生林に日が射すと美しい。






花も多いです。一番多かったのはこのシロヨメナ。


トリカブトもかなり咲いていました。


レイジンソウも。


シラヒゲソウ。かなり特徴的な花ですね。


この手の集合花、いつもシシウドだと思ってしまうのですが、今回は何でしょう。特定しにくい花です。


途中、白岩山(標高1,921メートル)まで200メートル以上登り返すのでかなり厳しいです。しかも、山頂には標識がなく(台風による被害の跡地であることの標識があったが)、そこが山頂とは気づかずに進んでいました。
その後も前白岩(1,776メートル)、名前のきれいな霧藻ヶ峰(1,523メートル)などのピークの前は100メートルくらい登り返すので辛いです。雲取山荘が1,8000メートル代の位置にあったことを考えると、3時間くらい歩いても実質的には300メートルくらいしか下っていないという精神的に苦しい道です。

この道で気になったのは、コケ。奥秩父は北八ヶ岳と並んでコケの名所と聞いていたのですが、確かによく見るといろんなコケが生えています。水滴が光ったりして結構きれいです。










それはいいのですが、一点困ったことが。
途中でハチの巣に注意するようにという段ボールに書かれた注意書きがあるのですが、その周辺の登山道にはそれらしきものはありませんでした。
ところが、そこから10分以上下ったと思われるところで、いきなりクロスズメバチの大群に襲われました。
かなり急な下山道に当たるところで、土の道を下るか岩の道か分かれるところなのですが、土の道の下に巣があったようです。
速攻で逃げたので何とか事なきを得たと思った瞬間、なんとくるぶしの下の辺りに痛みが。登山靴の中に紛れ込んだのが一匹いたのです。
登山中は動植物をはじめとして自然にできるだけダメージを与えないように、木の根も可能な限り避けて歩く私ですが、流石にこの時は迷わず潰しました。
翌日少し腫れただけで、痛みよりも痒みが残るだけだったのは、クロスズメバチの毒がスズメバチの仲間の中では弱い方だったからでしょう。不幸中の幸い。
それにしても、注意書きはちゃんとした場所に出してくれないと逆に危険ですな。

閑話休題、雲取山は鴨沢ルートと三峯ルートで本当に感じが違います。一日目は曇っていて二日目は晴れていたせいかもしれませんが、森深い三峯ルートは気持ちがよかったですね。








そして、4時間ほどの時間を要してついに三峯神社方面に下山してきたところ、鳥居が出現して分かれ道が。鳥居には奥宮と書いてあり、どうやら三峯神社の奥宮に続く道のようです。


いい加減疲れてきているところに、標識では距離にして1.4kmの道。地図で確認したところコースタイム40分、急斜面で鎖場もある模様。
まあ、それでもどうやら山の神様を祀っているということで今後の登山の安全祈願にもなるし、奥宮があるのは三峯の一角である妙法ヶ岳(1,329メートル)なので、雲取山、白岩山と合わせて三峯制覇になるので、鳥居のところにザックをデポして行ってみました。

結果。満足感という意味では正解。しかし、道が意外なほど険しかったので疲労感は著しく増大。どうやら、妙法ヶ岳だけでも登山のターゲットになるようで、多くの登山者と出会いました。
最初の鳥居を超えて200メートルはなだらかな登りですが、その後はかなり急な道を500メートルくらい行きます。スニーカーで来ていた人たちは大体ここでばてていました。
そして、第二の鳥居に着きます。


この辺りは北の方の眺望が効きます。


ギザギザ山頂で有名な百名山、両神山が見えました。


さらに進むと3つ目の鳥居があります。


この前後から道は相当険しくなり、スニーカーでは滑落の危険が高くなります。鎖場も出現するし。私は今回はフル装備なので問題なかったですが。
で、疲れた体に鞭打って40分、コースタイム通りに山頂到着です。奥宮は建物はなく、祠があるだけでしたがお参りします。


なぜかお犬様がいっぱいいる奥宮だった。私は猫の方が好きなのでちょっと違和感。


山頂からは南側の眺望が効くのですが、どれが今下ってきた雲取山かよく分からず。


何だかんだで往復1時間以上かけてお参りした訳ですが、せっかく三峯ルートを取るなら行って損のないところだと思います。
そして、分岐地点に戻ってザックを回収して下山を再開。約15分でようやく下山完了です。
標識に従って三峯神社方面に向かいます。途中、お土産屋の店先で売っているイワナの塩焼きと芋田楽に惹かれましたが、ここはまず神社が優先(理由は直ぐ後に)。

三峯神社の鳥居は三ツ鳥居という珍しいものです。確かに3つの鳥居でできている。白くて格好いいですね。


三峯神社には観光目的で来たのですが、もう一つ実質的な目的がありました。それは日帰り温泉施設。興雲閣という神社併設の宿泊施設内にあるのです。入浴料は600円。
とにかく汗だくだし疲労感あったし、テント装備担いで下山してきて足も痛いので、早くお風呂に入りたかったです。そこで、神社の見学は後回しにしてまずは日帰り温泉に向かいます。
しかし、これが遠い。由緒ある神社なので結構敷地が広く、興雲閣はその奥まったところに建っているので。テント泊装備の大型ザックを担いでストックを使って歩行する様は、参道を行く観光客の多くから奇異なものとして見られていたように感じます(哀)。
興雲閣は宿泊施設ながら、神社の関係者(巫女さんの男性版)が受付をしており、汚れた登山者も差別せず歓迎してくれます。八ヶ岳の某登山口の宿泊温泉施設は、ホームページでは主人のおやじも登山が趣味だとか書いているくせに登山者に極めてぶしつけな態度を取るのが気に入らないですが、ここは真逆でよかったです。
温泉施設は屋内のみで小さいですが、塩味の濃いナトリウム系のお湯は気持ちよく、かなり満足度が高かったです。奥多摩方面に下山して芋洗い状態の温泉施設に行くよりいいんじゃないですかね。

で、湯上り後にちゃんと参拝した。
拝殿は大きく、極彩色で迫力あります。


細かい装飾が施されています。






ご神木は触るとご利益があるようです。


一番奥から入り口に向かって戻る形で参道を通っているので、拝殿前の鳥居を通過して階段を下ります。


白い石灯籠が趣あり。


山門まで戻ってきました。


西武線の秩父駅に向かう次のバスまで1時間もあったので、門前の土産物屋で芋田楽を食べたりして時間を潰しました。バスの到着する駐車場付近からは、この日下ってきた雲取山から白岩山のルートが眺められました。写真左手に写っている木の右奥の山が雲取山、左側手前が白岩山です。


帰りのバスからは、秩父の山として有名な武甲山も見えました。


遅い昼食になりましたが、西武秩父駅構内の仲見世通りで秩父名物のわらじカツ丼を食べました。味噌豚丼の店は3時に閉まってしまうということで、こっちになりました。通常カツ2枚のところを3枚にしてもらいました。


腹いっぱいになった後は地酒や鮎の甘露煮、漬物などのお土産を買って帰りました。


地元とも言える山の登山記録だった割には長いエントリになりました。なぜだろう。
まあ、山行としては、流石にこの翌週の鹿島槍ヶ岳へのテント泊の方が充実度高いです。
しかし、奥多摩らしくもあり奥秩父らしくもある雲取山は樹林帯の魅力にあふれていたし、麓の三峯神社のパワースポットぶりもなかなか。
流石は百名山の一角でした。

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