冷たい風のような火

メモ書きですが、それにしても何で公開の場で書くんでしょうね。

テント場各駅停車の薬師岳~立山縦走 1

2017-08-15 23:22:25 | 旅行
8月4日に折立の登山口から入山し、7日に立山室堂に至る縦走をしました。東京に帰るバスの予約が8日になってしまったので、合計4泊の旅です。昨年の南アルプス縦走と同じです、が、それに比べると一日の行動時間は短めで、比較的余裕のある旅です。
今回の縦走のポイントは:
1) 3泊以上でそれなりに長く山を楽しむことができる山域である
2) 一日に8時間以上、場合によっては10時間とかいう行動時間は避けられるため、天気さえ良ければ余裕を持って山歩きを楽しめる
3) 時期的にお花が綺麗である
4) (折立から薬師岳を除いて)行ったことのない山域に挑戦する
ということですが、ルート上にある五色ヶ原に特に行ってみたかったというのもあります。2015年の夏に針ノ木岳から黒部湖越しに眺めた五色ヶ原の湿原がパラダイス感に溢れている感じだったので、行ってみたいと思っていました。それに、チングルマの大群落があるらしいのですが、普通は夏山最盛期までに多くが花から穂に変わってしまいます。が、今年は残雪が多かった影響で8月に入ってもチングルマの花が本番状態ということで、雲上のパラダイスの完璧な姿を楽しむことができると思ったからです。五色ヶ原側から針ノ木岳を見るのも楽しみ。
なお、テント場各駅停車というのは、このルート上にあるテント場にすべて泊まることを意味します。具体的には、薬師峠、スゴ乗越、五色ヶ原、立山室堂(雷鳥沢)です。頑張れば、初日にスゴ乗越まで、あるいは二日目に薬師峠から五色ヶ原まで行くこともできたでしょう。が、それでは夜明け前のヘッデンタイムにお花を無視して進むことにもなるし、楽しくなさそうなのです。まあ、楽しむのが第一です。早く歩く、遠くまで行くことを重視していません。

で、山行のまとめ的な写真を数枚先に上げておきましょう。
















さて、8月3日の深夜、毎日アルペン号に乗って折立を目指します。新幹線が開通したとは言っても、東京からは遠い富山県。お値段も12,000円という。。。まあ、新幹線使ったりすると、それだけじゃなくて路線バスの料金も発生するから結局夜行で時間を有効に使う意味でもこのバスを利用しがちです。白馬岳方面に行くバスは大型で快適そうでしたが、折立行きのバスは25人乗りくらいの中型でした。これも、まあしょうがない。


有峰林道は通行規制があるので、折立の登山口に着くのは6:40くらいです。既に多くの登山者がいました。ツアー参加の方々が多いようです。また、関西方面からの来ていると思われる人が多いのもの特徴。薬師岳を含む立山連峰は、関西からの方がアクセスがいいと思われます。逆に、鹿島槍ヶ岳などの後立山連峰は東京寄り。


さて、登山開始から暫くは樹林帯の急登です。4泊分の食料を含む17.5㎏ほどのテント泊装備を背負っていますから、序盤から汗が吹き出す苦行を強いられます。この時点では目立った花も少ないし。アカモノは既に花が終わっていて、その名の由来となる赤い実を付けていました。


折立からの道に多いのは、このミヤマママコナ。紫の比較的地味な花です。


樹林帯は急坂なので、ベンチの設置なども特になく休憩ポイントは少ないです。そんな中、登山ブログなどによく出てくるアラレちゃんのチェックポイントは、比較的道幅も広くなっていて平らなのでザックを下すこともできます。


樹林帯は90分弱で抜けます。北アルプスの豪雪地帯らしい森林限界の低さ&高層湿原の存在が薬師岳の特徴ですね。ありがたい。ここからは高い木がほとんどなくなり、左手に薬師岳を見ながらの道になります。その前に小休止。水分補給しないと。


昨年の南ア縦走は一日の行動時間が長く、そのためかザックやシューズなどへの感謝の念も強まり、ザックなどをを対象に写真を撮りまくっていました。しかし、今回は5~6時間の行動時間の日ばかりなのでそういう感じにはならず。その意味では貴重なザック写真だ。それはともかく、高曇りっぽいですが薬師岳方面は今のところよく見えます。


高層湿原と言えば、昨年は尾瀬に2度足を運びました。もちろん、この登山道脇の湿原は尾瀬ヶ原のような規模ではありませんが、遠くに有峰湖が見えたりしてそれはそれで楽しい。


お花は尾瀬に似ていて、贔屓のキンコウカやタテヤマリンドウが多かったです。キンコウカは嬉しい。




タテヤマリンドウは、その名の通りこの後立山までの縦走路でずっと出てくるのですが、薬師岳の特徴としては白花のタテヤマリンドウが非常に多いことですね。半分くらいは白花じゃないかな。縦走して越中沢岳とかに入ると、もう白花は出てこないんですけど。その他にも、引き続きミヤマママコナとかイワイチョウが多く出てきます。イワイチョウは終盤だったのかな。個体数が多かったので全体的には目立っていました。チングルマは、標高の低いこの辺りでは既に穂になっていました。






道は非常によく整備されているのですが、こういう石って意外と足の置き場的に疲れる。


あと、登山者が多いせいだと思うのですが、登山道の中央を通らないで脇をどんどん侵食してしまう人がいるのは問題だと思います。確かに中央部がえぐれていたりして歩きにくいところもあるのだけれど、それを理由に脇に広がると結果として登山道が広がり、自然が侵食されるので。既に登山道が広がっているように見えるところも多いのですが、元々の登山道と思われる中央部分を皆が歩くようにした方がいいとは思います。まあ、限界あるけどね。大勢が入山する百名山とかだと。

天気は基本的に晴れなのですが、夏雲が徐々に上がってきているのが気になる。


黙々と歩みを進めますが、やはりお花は気になる。特に、キンコウカの大群落があったので、これには足を止めざるを得ません。








そしてワタスゲも登場。今年はタイミングを外していて、ポワポワメルヘンのワタスゲは縁がないと思っていただけに、ここでの思わぬ出会いは嬉しい。




それにしても、森林限界抜けてからが意外と長い。まあ、5時間のコースタイムというのは盛り過ぎですけどね。3時間半から4時間で着くんじゃないかな。太郎平まで。


お花は、アキノキリンソウやニッコウキスゲも出てきます。タテヤマリンドウも、ブルーの鮮やかなものがまとまって出てくるようになりました。タテヤマリンドウは小さめの群落を作りがちなので、家族が固まっているような感じで可愛いと思います。










これから先の道がずっと見えているというのも、なかなか目的地に着かない時は厳しいものがある。


お花的には、オトギリソウやヨツバシオガマ、タカネニガナなど種類が増えてきます。




そうは言っても頑張っていると何時かは到着するのが登山のいいところ。太郎平に到着。2年ぶりです。早速CCレモンを購入しました。暑かったから。


雲は出ていますが、雲の平や水晶岳方面はそれなりに見渡せます。


薬師岳方面は絶望的かな。まあ、この日の予定はもうテントを張るだけ。余裕を見て薬師岳とは反対の北ノ股岳方面のお花畑を見に行くつもりですが、薬師岳を登って本格的な縦走を始めるのは翌日からの予定。今回は無理はしないのです。


テント場は、太郎平から20分くらい歩いた薬師峠というところにあります。


このテント場の強みは何といっても水場でしょう。豊富な水量。そして美味しい水です。ちなみに、併設されているトイレもテント場としてはかなり綺麗です。


さて、テントを設営したら12時少し前に北ノ股岳に出発です。


隣のテントは若いソロ男性だったのですが、この方は翌日から黒部五郎岳方面に縦走とのことで、この日は薬師岳に向かわれました。テント場から向かう方向は逆ですが、それぞれお天気はどうでしょうか。
太郎平の山小屋の周囲はお花畑で、多くの種類の花が混在していて見事です。








ちょっと歩くと、太郎山という小ピークに着きます。この辺りもお花は多く、楽しいです。と、ウサギギクがまとまって咲いている所に高山蝶がやって来ました。ミヤマモンキチョウのようです。珍しいと聞いていた種類なので、焦って写真を撮ります。




あー、全然ピントが合っていない。そして蝶はひらひらと優雅に飛び去ってしまいました。うーん、残念。まあ、肉眼ではしっかり見た。

お花は、相変わらずタテヤマリンドウ、タカネニガナ、エゾシオガマなどが数多く咲いています。






ちょっと下ってから北ノ股岳に登り返します。左手を見ると水晶岳、ワリモ岳、鷲羽岳の大きな稜線が、雲の平の向こうに見えます。雲の平の右側の盛り上がりは祖母岳かな。


まあ、かなり雲が出ているので絵的にはちょっと残念ですが、ハイキング中はそれなりに景色を楽しんでいます。湿原があるのでお花も次々に出てくるし。
チングルマ君。この標高だと花が残っているものも結構あります。


ポワポワのワタスゲも。


イワイチョウは多かったです。これまではあまり見たことがなかったのですが、十分取り返した。完全に咲き切ったものより、咲き始めの方が上品な感じだとは思います。あと、これまでは花の落ちた後のイワイチョウの葉をよく見ていました。おそらく、イワイチョウと同じ場所にハクサンコザクラも咲くところが多いのだと思います。そして、ハクサンコザクラの花が咲く時には大きめのイワイチョウの葉が目立つ(花は落ちている)という状態が多く、そのためイワイチョウの葉とハクサンコザクラの葉を誤解しがちでした。今回イワイチョウをよく観察できたのでこの2つを見間違うことはないでしょう。まあ、実際には全然違う葉の形なのだが。




北ノ股岳への道は中央部がかなりえぐれてしまっていて歩きにくく、さらにお花や風景を楽しみながらのゆっくりお散歩なのでコースタイムと比較するとだいぶ時間を取っています。2時までは歩いて、その後戻れば太郎平小屋に3時には着けるだろうと思っていました。で、急な坂を登り切ってそろそろ山頂かと思ったら、何とその向こうに本体が。2年前に来た時の記憶は薄れていて、すっかり騙されました。まあ、あと15~20分くらいの道のりに見えましたが、ガスがかかったり切れたりという感じだし、展望は今いる小ピークからのものとそれほど変わらないでしょう。ということで、2時少し前にお散歩終了。小ピークからの景色を楽しみます。


とは言っても、主だった黒部の山々はことごとく山頂付近が雲の中。唯一雲から出ている赤牛岳にズームです。いつ見てもでっかい山ですね。


私のイメージでは、黒部の主はこの赤牛岳です。双璧で水晶岳。赤と黒で色も対照的。薬師岳はカールのイメージが女性的なビッグマザーで、鷲羽岳は端正な正統派のやや冷たいキャラ。それに対して黒部五郎岳は特徴的な風貌を持つ好青年のイメージ。
さて、太郎平方面に戻ります。こちらも夏雲がどんどん上がっている。こりゃ、夕方前に一雨あるかも。




と、ここで人生初ムシトリスミレ。尾瀬でも早池峰でも谷川岳でも見逃していましたが、ここで登場とは。そして、蝶のように動かないはずなのになぜかこの写真もピントがずれているという。。。


戻る途中、水晶岳の上の雲が切れました。岩岩しくて男性的、それでいてシャープな山ですね。今まで、後立山連峰の各山頂や穂高岳などからその姿を何度も見ていますが、登頂する機会に恵まれていません。ある種憧れの山です。




太郎平に戻ると、積乱雲のような雲も出てきていました。


で、テントに戻ってまったり。隣の青年も戻ってきましたが、やはり薬師岳山頂はガスガスまっ白だったようです。お互い翌日以降の好天に期待です。
夕食は、定番のレトルトカレー&ミニトマト+中華卵スープでそれなりに美味しく栄養を補給です。


心配したとおり、6時頃からパラパラと雨が降ってきました。それ程ひどい降り方ではなかったので、耳栓をして早めに就寝です。翌日は日の出が4:40くらいということで、山に囲まれたこのエリアが十分明るくなるのは5時前後かな。それくらいに出発のつもりで3時半頃に起きる予定です。縦走レポートは次回以降に。



ウルップソウを求めて白馬岳 & 下山は蓮華温泉 その2

2017-08-11 10:50:28 | 旅行
さて、遅めのお昼に頂上宿舎の食堂でカツカレーを食べたら、まだしていなかったテントの登録などを済ませ、夕食まではマッタリ過ごします。とは言うものの、テント場は満杯。満杯なのに続々と人が入ってきて、信じられない間隔でテントを設営。いやー、白馬岳、人気の山だとは知っていましたが、これほどまでとは。この写真は私のテントから顔を出したらみられる場面で全体を写してはいませんが、それでも何となく混雑ぶりが分かるのでは。


まあ、適当に文庫本を読んだり近くのお花を見て楽しんだりして過ごし、6時過ぎに持ってきたゆで卵とソーセージをフリーズドライの雑炊に入れて夕食です。本当はパスタの予定でしたが、カツカレーのおかげで結構お腹がいっぱいなので軽めにしました。パスタは翌日に。


で、7時頃が日没なので6時30分くらいに丸山にて夕日鑑賞へ。長野県側から上がってきた夏雲もいい具合に降下しつつ残っていて、いい雰囲気。






そして、杓子岳と白馬鑓ヶ岳が相変わらず格好良い。




旭岳は独特の存在感ですね。




その奥に見える雪倉岳方面。高山植物の宝庫らしいので、一度は歩いてみたい。


白馬岳は尖がっていて厳しい感じかな。長野県側と富山県側の切れ落ち方が全然違うのが特徴ですね。


剣岳や毛勝山方面。雲海の上に出ていて絵になる。






遠くには、後立山の南端部にある針ノ木岳や、その向こうに槍ヶ岳や水晶岳も見えます。写真だとうっすらしか写っていないけど。






旭岳の肩の辺りに夕日が沈みました。




満員御礼のテント場でしたが、夜中はそれほど騒音は気になりませんでした。私の山道具の中で絶対に忘れてはいけない一品である、JALの耳栓のおかげかもしれませんが。
で、翌朝4時半過ぎ。今度はご来光を求めて同じ丸山に登ります。朝の方が空気が澄んでいて、長野県側から上越地方の頚城山塊も、富山県側の剣岳方面もハッキリ見えます。






旭岳の後ろに雪倉岳など。


白馬岳。


なかなか朝日があがりません。皆焦れながら待っています。しょうがないので遠くの風景を眺めたり。


どうやら東側は厚く雲海が垂れ込めているせいで綺麗なご来光は拝めないようです。既に日の出の時刻を回ったのに、周囲は明るくなるけれど日はでない。白馬岳の向こう側、頚城山塊の上の方から、5時前になってようやく太陽が見えてきました。


これが精いっぱい。


朝焼けはしませんでしたが、空気が澄んでいたので稜線は綺麗だった。




朝日は残念でしたが、気を取り直してテントを撤収。いよいよ白馬岳本体に登頂すべく出発です。で、6時10分くらいに白馬山荘にやって来ました。日本最大の山小屋で、ケーキも食べられる下界とあまり変わらない設備を誇るようです。


まだ歩き始めたばかりで朝早いので、エネルギー補給や休憩のニーズはありませんでした。そのため、この巨大山小屋のレストランはスルーです。ここから山頂へは15分ちょっとの距離。時々お花を愛でながらゆっくり目に歩き、ついに白馬岳2,932メートルに登頂。山頂には多くの人がいました。


お天気はまだ持っていましたが、富山県側から雲がどんどん迫っていて、しばらくすると雨になりそうな雰囲気。昨日頂上宿舎の方に聞いた感じだと、雨はお昼頃からという予報だったようですが、もしかすると少し早めに降りだすかも。そんな中、山頂からの景色はしっかり楽しみます。旭岳方面。


杓子岳、白馬鑓ヶ岳の向こうには、後立山連峰の盟主である鹿島槍ヶ岳の双耳峰が雲の上に出ています。絵になりますね。




大雪渓方面を見下ろす。


今日歩く小蓮華山方面。あの山頂からの白馬三山の眺望が素晴らしいらしい。




雪倉岳方面は既に雲のかかり方が不穏な感じでした。


さて、山頂で十分楽しんだら先に進みます。で、白馬岳のお花畑は実は山頂を越えたこっち側の方が凄かったです。タイミング的な問題なのかもしれませんが、ウルップソウもまだまだ生きのいいものが多いし、嬉しかったのは大好きなツクモグサもかなり残っていたことです。早朝であまりお天気もよくないので花は開かずに閉じていましたが、それでもモコモコ、フサフサでとても可愛いです。








ウルップソウとツクモグサが一緒という贅沢。


形のいいウルップソウがいっぱいです。






ハクサンイチゲももちろんたくさんあります。


イワベンケイの咲き始めのものも。お花が綺麗で全然先に進めない。お空の雲は厚くなってきた感じだから、本来は急いで動くべきなんだけど。。。


ミヤマシオガマやミヤマオダマキなど色が鮮やかで目立つものも。背景が完全にガスってきています。まったく、冷静に歩みを進めるべきでしょう。そうせずにお花と遊んでいたのですけどね。むしろ、天気が悪くなればライチョウさんも出てきてくれるかと思ったりして。




そして、馬ノ背と呼ばれるところだと思うのですが、ちょっと切り立った部分を通過していた時に雨がパラパラと降ってきました。最初は大したことなかったので、天気予報的にも弱い通り雨だと思ってザックカバーだけつけて(レインウェアの上はもともと気温的に羽織っていた)行こうとしました。が、直ぐに本降りになってしまい、レインウェアの下もはくことになるし、焦って滑って尻もちつくし、もう散々。お花の写真も流石に少なくなります。が、キスミレはキバナノコマノツメとタカネスミレを見分けたと本人が勝手に確信したので、たくさん写真に収めました。








長野・新潟・富山の三国境も通ったはずですが、標識すら見落としました。と思っていたら、今写真を見直すと分岐の標識が三国境ですね。当日は雨に打たれてサッサとカメラをしまっていたので気付かずでした。この辺りはコマクサの群生地らしいですが、時期的にもほとんど咲いていなかったと思います。雨でこっちも探す余裕なかったけど。




クロユリを一輪だけ発見。


人気の山なだけに白馬岳には登山者がいっぱいなんですね。そして、必ずしもよく山に来ていないと思われる人も多くて、あえて登山道の細くなったところでカッパを取りだしたり立ち止まったりしているから渋滞ができてしまったり。人気の山はどうしてもこういう事態になりがちですが、雨の日だと結構ツライですね。
その後、晴れていればほとんど気にならないレベルの多少のアップダウンを経て、小蓮華山の山頂に到着。


白馬三山の絶好の展望台と聞いていたのですが、まさしく真っ白で何も見えず。雨に打たれて悲壮感。そのため、山頂にとどまることなく、白馬大池を目指して下山を開始します。
すると直ぐに、アオノツガザクラの大群落に遭遇。強くなっている雨でカメラのレンズが濡れていますが、後続に追いつかれて自分が渋滞の原因にならないように素早く写真を撮る。






イワカガミやチングルマも咲いていますが、立ち止まってゆっくり鑑賞する余裕がなくてとても残念。




一瞬、3分くらいですかね。ガスが切れて雨も上がったのですが、ゆっくりと景色を見定める余裕もない。これは雪倉岳方面かな。


そしてこれは栂池方面か。


やっと白馬大池が見えてきた。この後雨脚が強烈に強まりました。


ミヤマダイコンソウは結構咲いていて、微かな癒しを提供。


ハクサンチドリは数は少ないですけどね。綺麗ですからね。


白馬大池の周囲にはまだ残雪が。


ハクサンコザクラで有名なのは聞いていましたが、登山道脇のものを見るのが精いっぱい。


大池の山小屋でトイレ休憩&可能なら軽食も取りたいと思っていたのだけど、外のトイレの近くにザックを置くスペースなどなくて、ザックカバーはしているものの小川のようになっている地面にザックを置く気にもなれなかったので我慢。あと2時間くらいで蓮華温泉に下れるはずだし。もちろん軽食もなし。ガラス戸越しにちょっと中を見たけどウルトラ満員で、皆ずぶ濡れだからそこに交じりたくなかった。
やっぱりお天気は大事です。ガス、雨と両方にやられるとどうしようもないですね。ガスだけでも景色がなくなるので厳しいですけど、まだ花は見られます。そこに強めの雨が加わると、気分的にもただただ進みたい、目的地に着きたいというだけで、全然楽しくないのです。

蓮華温泉への道は樹林帯で、ぬかるんでいて滑りやすかったのでゆっくり進みました。というか、実際には20名くらいの団体の直後に張り付いてしまい、向こうも気を使ってくれたので少しずつ抜いていくことはできたのですが、狭い道ですれ違いも困難な上にぬかるんでいるということで無理はしませんでした。
お花は、ゴゼンタチバナなど樹林帯らしいものが結構咲いていました。






途中、雪倉岳が大きく見えるポイントがあったらしいのですが、どこだったんだろう。一応、展望の開けるところでは写真を撮ってみました。




途中、いくつか嫌らしい感じのハシゴが出てきたのと、左手が崖になっているにも関わらず残雪がバッチリというトラバース道を行くところが難所でしたが、1時間くらいで団体さんの全員を無事にかわすことができ、そこからは駆けるようにスピード下山、を始めた瞬間に高山植物が多く現れました。天狗の庭というポイントのようです。


ミヤマムラサキは先週の北岳以来、目にするのは2度目です。タカネバラは昨年の至仏山以来でこれも2度目。いずれも比較的珍しい花のはず。








他にもシラネアオイ(7月中旬なのに)とかツボスミレとか出てきたのですが、カメラのピントを合わせるのが上手くいかずにろくな写真がありません。実際問題、雨のせいでカメラもレンズ部分含めてかなり濡れてしまっていて、壊れないように拭くのが大変だったり。
そんな中、前週に北岳に行っていたためか体が山に慣れている感じだったので、体調は悪くなくて下山のスピードはかなり速かったです。ところが、調子に乗ると危ないもので、木の枝に頭を軽くぶつけたと思ったらそれが帽子に引っかかってしまい、引き倒されるようにして大きく転倒。幸いケガもなく特に問題もなかったのですが、単独行なので常に注意しないと。

いよいよ標高が下がって、開けたところから見える風景もだいぶ里山っぽくなってきました。まあ、それでもかなり山奥感あるけど。


オオバミゾホウズキとマイヅルソウがたくさん咲いていました。




タニウツギが出てくると下山終了が近いイメージ。


と、ここでコース上にピンクのテープが道を遮るように張ってありました。実は、その先の登山道が崩落しているために迂回路へと誘導するものだったらしいのですが、説明文などが見当たらなかった(見落とした?)のでピンクテープの意味が分からず、それを無視して進んでしまいました。結果、このような崩落路に至る。


蓮華温泉から白馬大池方面に登山してきてすれ違った人たちには、かなりの高齢者や小さい子供のいる家族連れなどもいたため、皆こんな道を無事に登ってきたのか疑問に思いましたが、通過してきたピンクテープのことはすっかり忘れており、雑草を必死につかみながらなんとかこの崩落路を通過。その直後に迂回路と交わる地点があり、迂回路から降りてこられた他の登山者に指摘されて自分のミスを認識しました。万一崩落路から滑落していたら、誰にも気付かれることなくそのまま死んでいたかも。遭難というのはこういうちょっとしたミスで起こるのでしょうね。勉強になりましたが、気をつけないと。

蓮華温泉への最後の道には、ギンリョウソウやアザミ、カラマツソウも登場しました。






温泉特有の硫黄の臭いはしなかったものの、この辺りの沢は温泉を含むものもあるはず。


そして、ついに蓮華温泉へ下山完了です。一軒だけしか建っていない山奥の秘湯。夏季はバスが通っていますが、冬季は自力で歩いて来るしかなく、バックカントリースキーヤーにとってはある意味秘境の楽園のようなところだとか。


キャンプ場は15分弱歩いた先にあります。テント場というよりキャンプ場なので、完全に整地されていてトイレや水場、調理場などもあるパターン。この時は雨が一時的に上がっていて、テントを張るのに雨でたいへんという不幸は回避されました。


これは雨の完全にあがった後の夕方のの写真ですが、海の日3連休なのにガラガラでした。まあ、雨だったし。


さて、テントを設営したら早速露天風呂に向かいます。まあ、雨がまた降り出していて、時々強くなったり弱くなったりしていたので、あまりコンディションはよくないですけど。でもここまで来たら露天風呂入らないと。これはキャンプ場への道から見た蓮華温泉。山奥の一軒宿である。


ちなみに、蓮華温泉は露天風呂だけ利用する場合には何度入っても500円。内湯は入らなかったのですが、800円です。
露天風呂は4つ。上2つがお勧めなのかな。一番上は薬師の湯。女性がいる時は女性用になるため、男性が入るにはタイミング的に運がないといけません。下山してきた道を遡り、露天風呂方面へ。


最初に出てくる黄金の湯は男性2人が使っていたし、どうせなら標高のたかいところのお湯につかりながら景色も眺めたいので、ここはパス。蓮華温泉の宿から20分くらい歩くと、このような荒涼とした感じで硫黄臭が強くなってきます。


すると、仙気の湯という比較的大きな露天風呂が現れます。ここにも3人の男性がいました。その上の薬師の湯ですが、ラッキーなことに女性はいない様子。女性が来たら譲らないといけないですけど、雨だし誰も来ない可能性が高いと思ってそっちに行きました。完全貸切状態でした。雨だけどラッキーと言えばラッキーです。


天気がよければ雪倉岳とか朝日岳が見えるのでしょう。


これはちょっと左側に視線をずらした図。緑濃い山が、下山してきた白馬大池につながっている山です。


全体的に緑色っぽい。酸性硫黄塩泉ということですが、それがどう関係しているのか不明です。


仙気の湯を見下ろせます。


温度はそれほど高くないですが、ずっと入っているとのぼせるので上半身を外に出したりしながら、1時間以上温泉で遊んでいました。遊びすぎですが、どうせなら満喫しないと。テントで本読んでもしょうがないし。
夜は多少風がありましたが、樹林帯だし問題もなく、翌日はそれなりに晴れた朝を迎えました。日の出前ですがある程度明るくなってきたので、早速朝風呂を浴びに行きます。今回は仙気の湯。


眺望もある程度ありましたが、山座同定は難しい。




また1時間くらい遊んでいたら、関西から毎年いらしているという80代の男性がいらっしゃいました。毎年白馬岳に登り、蓮華温泉を楽しまれるそうです。素晴らしいですね。それほど危険な山ではないと思いますから、健康を維持して楽しまれるにはとてもよい対象だと思います。蓮華温泉の歴史などだけではなく、関西の経済のことにお詳しく、いろいろと興味深いお話を聞くことができました。

名残惜しいですが、ウルップソウと秘湯をターゲットとした白馬岳の旅も終わりです。8:15に糸魚川に向けて出るバスに乗ります。これは、帰る前に宿の向こうに見える山を見た図。あれが雪倉岳でしょうかね。


ライチョウさんには2日目以降は会えませんでした。


夏季限定のバスですが、車窓からは雨飾山がバッチリ見えたり、姫川沿いの絶景が楽しめたりしてなかなか見どころが多かったです。


そして2時間ほどで糸魚川駅に到着。北陸新幹線の駅なので新しい感じ。


駅の標示。妙高はねうまラインは、火打山・妙高山に登るときに使うことになるはず。


日本海が見えました。山から海への旅になりましたね。


白馬岳は、大雪渓、高山植物、ライチョウ、稜線の景色など、多くの技を持つ名山だと思います。そして、蓮華温泉も秘湯感があって楽しい。今回は2日目のお天気が雨だったがことちょっと残念でしたが、それより何より、まだまだこの山域ではやり残したことがたくさんです。お花という観点からは白馬岳から朝日岳までの道を歩かないといけませんし、温泉という観点からは白馬鑓温泉というもう一つの秘湯も残っています。小蓮華山からのシーンも見逃したし、清水岳のミヤマハナシノブと清水尾根から祖母谷温泉への道などもあり、興味が尽きない山域です。危険な道を踏破することに達成感を求めていないので、不帰の嶮を行くことはないと思いますが、むしろいつか積雪期に来てみたい気はします。自分だけでは絶対無理なので、山岳会とかに入らないといけないでしょうけど。
この夏は、この連休の後はお天気が不安定で、特に北アルプス方面ではまとまった縦走プランを実行しにくいまま8月に入ってしまいました。夏山シーズン本番ですが、あとはどこに行けるでしょうか。

ウルップソウを求めて白馬岳 & 下山は蓮華温泉 その1

2017-07-30 17:14:33 | 旅行
7月15日からの海の日3連休は、白馬岳に行ってきました。ターゲットはウルップソウです。
白馬岳は山歩きを始めた頃からの憧れの山の1つで、魅力は何といっても高山植物。特にツクモグサとウルップソウに惹かれていたのですが、ツクモグサは昨年八ヶ岳で堪能しました。
ウルップソウの時期は梅雨の時期になるので、これまではなかなかお天気的にタイミングが合わずに山行に踏み切れなかったのと、どうせなら雪倉岳、朝日岳方面のお花畑にも縦走したいという欲張りなプランを立てがちだったために後回しになっていました。
今年は雪溶けが遅くて雪倉・朝日方面には行きにくいようでしたし、それなら白馬岳1本に絞って下山後に秘湯と言われる蓮華温泉でまったりするのも悪くない、というプランです。

時期が時期なので天気予報も毎日変わり、それは高層天気図を含めて予想天気図も毎日変わることを意味します。大気の状態が不安定で、連休の天気はよく分からんというのが率直なところでした。しかし、高層天気図ではどう見ても標高3,000メートルくらいのところでは空気が比較的乾燥しているように見えました。少なくとも土曜日は。あるいは、日曜の午前中までは。これは、標高1,500メートル程度の高層天気図との大きな違いでした。そのため、雲は出るけど稜線は雲の上、と判断して夜行バスのチケットを取りました。

さて、土曜の早朝4:30頃に猿倉に到着。いよいよ白馬岳に臨みます。100円払ってトイレを済ませ、軽くおにぎりを食べて5時頃に出発。


最初の50分くらいは林道&傾斜のほとんどない登山道歩きです。早速大きな山が前方に現れました。


これが白馬岳なのかどうか、わかりません。沢越しに見る姿は、方向的に小蓮華山のようにも思われます。日曜に白馬岳から縦走するルートにある山で、その山頂は白馬三山が綺麗に見える展望台です。いずれにしても山頂付近の岩岩しい感じが南アとは違う。


沢沿いの道の定番であるタニウツギやカラマツソウが多く咲いています。




オオバミゾホオズキ。中部地方以北の日本海側中心に咲くようです。北アではメジャーなのかも。初めて見ました。


何かの白いお花の群生。葉の形的にはいつもの見分けのつかないニリンソウ・サンリンソウなどの仲間に見えますが、こんな風に下向きでお花を閉じがちなのは初めて見ました。早朝はこのようになるのでしょうか。


白馬尻小屋の直前はサンカヨウの大群落。こんなにいっぱい集まっているのは初めて見ました。流石は白馬。花の宝庫としての実力はこの時点で既に全開か。


サンカヨウは大きな葉っぱがいっぱいで、その中心にふわっとした白いお花が集まって咲くのがとても可愛い。雨にぬれると花びらが透明になるのも神秘的。


で、早速白馬尻小屋に到着です。多くのブログやヤマレコレポートで目にするものを一応撮っておく。


前週の北岳ではプチ脱水症状になったので、ここでちょっと給水してから大雪渓に向かいます。大雪渓手前はキヌガサソウの大群落。針ノ木雪渓にもこのお花の群落があったと記憶していますが、後立山の雪渓名物なのでしょうか。大きなお花ですが、際立つ白さと凛とした張りが格好いい。






雪渓脇でチェインスパイクを装着しながらちょっと見ると、周囲の木々は雪の重みで曲がっています。こんなになっても成長していく木々の逞しさよ。




さあ、いよいよ真夏の雪山に挑みます。2015年の針ノ木雪渓以来の2度目。日本三大雪渓の二つ目。


雪渓歩きは、風が来て冷気が巻き上げられて体に当たると涼しいです。が、そうでなければ太陽と雪の照り返しで暑いです。お花がどんどん出てくるわけではないので、そういう意味では風景の変化はあまりありません。でも、白い雪渓と緑の夏山、青い空のコントラストは素敵です。


振り返ると、後続の方々もどんどん雪渓に取りついている。


クレバスもあります。近寄らないように。私は今回はチェインスパイクを使いました。2年前の針ノ木雪渓の時は12本爪アイゼンでした。当時に比べると雪山歩きの技術も自分なりに進歩し、キックステップで慎重に行くべきところやサクサク進んでいいところなどの判断もできるようになっているので、軽い装備にしました。結果、問題はありませんでした。


落石は多く、ルート上にも大きなものがかなりの数見られます。が、このような大きな石が実際に近くを転がるシーンには当たりませんでした。ラッキーだったのかもしれませんが、もう少し上部まで歩くと、落石の典型的なメカニズムが想像できる地点があります。そこで考えたのは、ちゃんとルート上を歩いていれば恐らく危険は少ないということ。


斜度はあまりきつくないです。針ノ木雪渓を登った時、他の登山者の方が白馬大雪渓の方が斜度が緩いとおっしゃっていましたが、その通りだと思います。


正面左奥に結構格好いい岩が見えてきました。


その上に月が出ていて綺麗。


振り返る。結構登ってきた。前ばかり見てしまいがちですが、雪渓登りは振り返るといい景色だと思います。男性単独行で、お天気が問題なければ90分もあれば大雪渓は登り切れると思います。


雪渓のかなり上の方に来ると、写真のように山側から石が崩れてきているのに気づきます。ルートが大雪渓の中央左寄りだったので左手の山側を見ていましたが、恐らく右側にも同じようなものがあると思います。要するに、落石はこのようなもろい岩の部分から発生し、少し斜めに走りだして雪渓を落下していくのだと思います。実際に、ガラガラと音を立ててどんどん石が落ちていました。が、ルートからは外れたところばかりでした。よほど変な感じで落ち始めないと、ルートには来ないのでしょう。逆に、来るものは特徴的なはずだから気を付けていれば気づくものと思われます。


もう少しで大雪渓も終わりです。


このクレバスはルート上にあって、最後の難所って感じ。まあ、小さいので簡単に飛び越えられます。


大雪渓を登り切りました。チェインスパイクを外し、給水&行動食の補給です。ここからは葱平というお花畑を目指して行きますが、このルートで最も斜度のキツイ登りが待っています。
早速ミヤマキンポウゲ。


の群落。


ミヤマオダマキも。


お花を撮りながら、休み休み行きます。結構な急登。シロウマオウギでしょうかね。イワオウギかも。同定は難しいようです。


コンロンソウかな。このお花はいつもピントが合わないで苦労する。


テガタチドリ。初めて見ました。下から上に咲いていくお花。今回のターゲットのウルップソウと同じですね。


ミヤマタンポポかシロウマタンポポか。見分けるには花を横から見る必要があるようで、これでは分からず。まあ、町のタンポポより大きくて力強い。


急登続いてつらい。葱平のお花畑は、時期的にまだまだ序盤だったのだと思います。実力発揮は梅雨明けぐらいなんですかね。


で、小雪渓と呼ばれる地点に来ました。ヤマレコレポートなどを読むと、多くの方はアイゼンを装着せずに進んでいるようですが、私は単独行だしチェインスパイクだと装着も簡単なので、念のために装着して進みました。


滑落したら結構下まで行くでしょう。


雲が上がってきて、格好いい。


杓子岳の天狗菱と呼ばれる岩が姿を現しました。白馬岳、登山中の見どころ多いですね。流石です。スター性の高い山だ。


さて、小雪渓を終えて再び登りです。階段状に整備されているところが多く、テント泊装備で登るのはいい加減疲れてきます。お花としては、黄色と白が目立ちますね。ヤマガラシも参戦。


ちょっとしたお花畑。


そんな中にワインレットのベニバナイチゴ。これも針ノ木岳でも見ました。


標高が上がってくるとハクサンイチゲの群落が目立つようになるのは日本アルプス一般の特徴。


杓子岳。格好いい。この後、杓子岳は今回の山行中のお気に入りのモチーフになります。




さて、いよいよ白馬岳頂上宿舎が見えてきました。頂上宿舎という名前ですが、頂上へは30分弱の距離を残しており、日本最大の山小屋である白馬山荘の方が山頂に近いです。


宿舎近くは百花繚乱。オヤマノエンドウ、ミヤマオダマキ、ミヤマシオガマ、ハクサンイチゲ、シナノキンバイなどなど。




で、あっさりと今回のターゲットであるウルップソウも出現です。もう終盤かと思っていましたが、意外と形のいいものが数多く残っています。これは嬉しい。






宿舎からテント場へ向かうところにある岩の周りとか、テント場周辺とか、完全にお花畑です。ウルップソウもたくさん。














ここまで5時間半のコースタイムですが、4時間半くらいで着きました。テントの受け付けは1時からということでしたが、先に張ってもよいということなのでテントを設営したら杓子岳に登ることにしました。この時点ではガラガラのテント場。


稜線に向けて登ると、分岐です。右に行くと白馬山荘を経て白馬岳。左に行くと杓子岳、白馬鑓ヶ岳。でも、分岐で一番目立つのはこの旭岳。白馬岳からさらに北に縦走した先にある朝日岳と紛らわしいです、こっちの方が標高が高いのですが、山頂までの登山道はありません。


旭岳を巻くように続く道があって、それは清水岳という山に続いています。北岳を除き、私の大好きなミヤマハナシノブが咲く唯一の山です。その清水岳から伸びる清水尾根は秘湯の祖母谷温泉に続いており、いつか歩きたいと思っています。が、コースタイムも長いし標高差も大きく、玄人向けです。

さて、稜線に上がって直ぐにテント場方面を見ると、まだガラガラなのが分かります。




お花を観賞しながら、ゆっくりペースのお散歩開始です。まだまだ一日は長い。10時半頃ですからね。杓子岳までは1時間ほどの道なのですが、90分から100分かけて花見散歩しました。








まずは、テント場から歩いて直ぐの丸山に登ります。ここは展望台として便利なところで、白馬岳や杓子岳、白馬鑓ヶ岳、そして黒部川の対岸である立山連峰や、水晶岳などの黒部の山々、果ては針ノ木岳の向こうに槍ヶ岳も見渡せます。






丸山を越えていくと、ウルップソウがたくさんあるゾーンに突入です。が、このゾーンは開花が早かったのか、既に最盛期を過ぎたものが多かったです。ウルップソウは下から咲くので、花の上部が開花していると最下部は枯れているものが多いです。個人的には、最上部がまだ咲いていないくらいのものが一番見栄えがいいと思います。






剣岳方面をバックに撮ろうとするが、なかなか難しい。


もちろんウルップソウ以外のお花もたくさん。イワカガミは、この山域のものは色が濃いように思う。


オヤマノエンドウは、北岳に比べると色は淡めだけど上品に思われる。


いろんなお花が一緒に咲いていて、まさに天空のパラダイス状態。


ミヤマクワガタだ。初めて見た。小さいお花なんだけど、とても複雑な色と形。




ミヤマゼンコかね。この手のセリ科の花は似たようなのが多くて、同定が実質的に不可能と言える。


丸山から杓子岳に向かう途中、ライチョウさんの親子に遭遇です。5羽ほどの子供を連れていました。私はライチョウさんは大好きなので、写真を撮るよりも話しかけたりしてみますが、当然通じるわけもなくどんどん逃げて行ってしまいます。それでも可愛いですけど。








ライチョウさんが行ってしまったので、お散歩再開。形のいいウルップソウや、背景のよさげなシーンを狙います。が、なかなか難しい。










まったく、あまりにゆっくりペースで、丸山と杓子岳の間の最低鞍部にすらまだたどり着いていません。イメージとしては、150メートル下って200メートル登り返す感じなので、楽な訳ではありません。北アルプスですし。今日はアタックザックに必要最小限のものだけを入れて歩いているので余裕ですが、テント泊装備縦走だとキツイんだろうなあ。
それにしても、杓子岳、白馬鑓ヶ岳は絵になる。白馬岳本体より格好いいのではなかろうか。






ハクサンチドリの群生を発見するも、ズームがうまくいかずに写真は残念な感じに。




コマクサもありました。これもピントが合いにくい。ガスがかかり始めて背景が白いからですかね。


杓子岳の山頂に登る道と巻き道の分岐に来ました。ここからは、これまでよりガレた急な坂になるので、落石も含めて注意が必要。




お花はイワウメやキバナシャクナゲなどがありましたが、このガレた道では種類は多くなかったです。


で、山頂です。白馬三山の中では、人生的に杓子岳に最初に登頂することになったというのは何となく意外である。


ガスがかかっているように見えますが、長野県側から夏雲が上がってきているだけで、全体的には十分晴れているイメージです。白馬岳方面。


白馬岳拡大。


流石に豪雪地帯の2,900メートル級。山頂は荒々しい感じ。


一応自撮り。


白馬鑓ヶ岳。どの辺が鑓なのかよく分かりません。丸いイメージの山ですね。


富山県側を眺める。残雪が多くて格好いい感じ。


稜線を旭岳方面。こちらも結構格好いい。


山頂で遊んでいたら白馬岳が長野県側からの雲にアタックされていた図。右側の標高低めのピークが小蓮華山でしょう。




12時を回ってお腹も空いてきたので頂上宿舎に戻ります。宿舎の食堂は、なんと5時まで軽食を出してくれます。とても親切ですね。宿泊客の夕食準備もたいへんだろうに。カツカレー1,200円に興味があったので、戻って食べることにしました。

帰り道もお花見は続きます。ピストンだから行きでも見ているはずのお花なんですけどね。ミヤマキンバイとかミヤマダイコンソウは、どこにでもあるのでありがたみがないかもしれませんが、やっぱり可愛いし黄色は華やかです。






これまではあまり撮ったことのない縦長で撮ってみると、背景が結構よいことがある。


斜めにもしてみる。


このハクサンイチゲは異常に綺麗に写っていると思う。














シコタンソウも見つけた。


テント場まで戻ってきました。まだ1時20分くらいです。それでもだいぶ増えていますね。この後、テントとテントの間を通るのが困難なくらいにビッチリ埋まります。白馬岳は最高に楽しい山ですが、人が多いのが難点。自分もその中の一人なので勝手なことは言えないですけどね。でも、人が増えるとどうしてもマナーの悪い集団とかが出てくるのが嫌ですね。


そして、狙っていたカツカレー。山小屋ご飯は久しぶり。かなりのボリュームで大満足。


これなら、夕食は予定より軽く済ませられそう。この時期は一年で一番日が長い時ですが、それでも山の夕食は6時過ぎと早いので、カツカレー食べてからあまり時間が経っていないですからね。

さて、長くなっているのでいったんここでアップします。夕日の景色と翌日以降のレポートは次回に回します。

キタダケソウを求めて今年も北岳に登る

2017-07-26 22:14:15 | 旅行
7月の8日と9日の土・日に今年も北岳に行きました。本当はその前の週末に行きたかったのですが、金曜の夜には1週間の仕事疲れてダウンしており、とても週末に南アに行く気になれず。ただし、今年はどうしても7月前半に北岳に行きたかったのです。
それは、キタダケソウが咲いているから。例年であれば6月末までに見頃が終わってしまうキタダケソウ。世界で北岳にしか咲かない高山植物で、薄くて上品な白い花びらが特徴。南アは交通規制もあり、一般登山者が利用できるバスが運行されるのが6月25日くらいからなので、山開き前にはキタダケソウの時期が終わってしまうことも多いのです。昨年は7月の最初の週末に行きましたが、残念ながらキタダケソウさんには会えず。一輪だけ終わりかけのものを見つけるのが精一杯でした。
ところが、今年は雪が多かったのと6月の気温が比較的低かったのが幸いし、7月になってもキタダケソウが残っています。ヤマレコレポートなどで情報を確認し、このタイミングを逃すと次に見られるのは数年後かもしれないので絶対に行くことにしました。天気予報は今一つだったのですが、強い風雨で危険な状態でなければ行く覚悟でした。昨年は2度北岳に登っており、山頂からの絶景や稜線美は既に十分楽しみました。キタダケソウさんを見ることができれば、多少の雨風は我慢です。

7時に新宿を出発のスーパーあずさで甲府に向かい、甲府からは山梨交通のバスで広河原を目指します。シーズン序盤ということで、甲府のバス乗り場はそれほど多くの登山者は集まっていませんでした。それでも2台出たけど。


いつも思いますが、このバスは夜叉神峠と広河原しか実質的には止まらないので、2台以上出すなら広河原に行く人と夜叉神に行く人を分けて乗せればいいのに。広河原の方が多いでしょうから、少なくとも1台は夜叉神を通過して走れるようになるから効率的なのに。それはともかく、電車で1時間半、バスで2時間。接続の時間も含めて合計4時間かけて11時に広河原着。いつもながら登山口に着くまでに疲れるパターンです。

広河原の登山センターに着いたら、トイレと簡単な栄養補給をして直ぐ出発です。今回は北岳山頂直下にある肩の小屋のテント場にテントを張る予定。コースタイム5~6時間の道で1,500メートルほど登るので、11時台に出発は遅めです。5時間で登っても4時過ぎですからね。
登山口から北岳方面を眺めると、山頂は雲の中でした。それでも、全体的には晴れて悪くないお天気です。


いつもの吊り橋を通って野呂川を渡ります。野呂川は流れの早い清流で、南アの男性的なイメージに合っていて好きな川です。


そして、最初の2時間ちょっとは樹林帯の急登です。時々階段もどきのハシゴも登場し、テント泊装備ではなかなか厳しい道です。お天気がよかったせいか気温も高く感じました。汗が噴き出し、後から考えるとちょっとした脱水症状に陥ったようです。相変わらず北岳の登りは厳しい。
途中、鳳凰三山方面の視界が開けるところがありますが、こちらも山頂は雲の中でした。


最初の樹林帯はお花も少ないので写真もあまり撮らず、とにかく標高を稼ぐことに専念。結果、1時15分くらいに白根御池小屋に到着です。


昨年は稜線の風が強烈だったので、肩の小屋ではなくて樹林帯に守られている御池小屋にテントを張りました。この小屋を利用される方はあまり多くないのかな。でも、スタッフはとても親切で明るいので、私は好きな山小屋です。そして、南アルプスの天然水の水場です。水の美味しさは折り紙付き。
15分程度休憩し、1時半ごろに出発です。ここからは草スベリの急登。まあ、これまでも急登だから同じですね。


ちょっと進んだところから振り返ると鳳凰三山。


足元にはニリンソウやキバナノコマノツメが多く咲いていました。


でも、本当はこのミヤマハナシノブがいっぱいいると嬉しい。個人的トップ5に入る贔屓の花です。稜線に咲く花以外ではトップかも。今年は開花が遅れているのか、形のいいものはこの株しか見ませんでした。


標高を上げていくとシナノキンバイの大きな花も出てきます。夏のアルプスの代表ですね。


この日は暑かったのか、体調が悪かったのか、とにかく汗だくでした。結果、プチ脱水症状に陥って両足のふくらはぎが攣ってしまうという事態に。下山される方とすれ違う時には心配されてしまうほど、見た目にはまいっていたようです。途中で水分不足に気づいて残りの飲料の量を無視して取りあえず大量に水分補給し、同時に塩タブレットを2つほど食べてからは回復しました。行動中でも体調管理というか、客観的に自分の状態を考えるのは大事ですね。

お花のシーズンはもう少し先だったようですが、それでも楽しませてくれるのが北岳の実力。ニリンソウ(相変わらずイチリンソウ、サンリンソウとの見分けはできない)と思われる花の群落とか、イワカガミやミヤマキンポウゲ、ツマトリソウ、そして贔屓のハクサンチドリなどが見られました。木の花としてはミネザクラやナナカマド。サンカヨウも結構標高高いところにもありました。












で、脱水症状にやられつつ、回復しつつ、ヘロヘロになりながら二股分岐のところまで登ってきました。小太郎尾根まではあと少し。そこまで行けば傾斜はだいぶ緩くなるし、稜線のお花も増えるし、仙丈ケ岳とかも見えるはず。自分を励まします。


この辺りはシナノキンバイの群生がいつも見事ですね。癒しというより活力を与えてくれる感じ。


これはシナノキンバイの蕾かなあ。


そしてこれはハクサンイチゲの蕾かなあ。全体的に、お花はこれからが本番という感じでした。昨年は今頃既に百花繚乱でしたが。


尾根に出る手前には雪がだいぶ残っていましたが、滑るような状態ではないので問題なかったです。


そこに鳥さんが佇み、いい声で鳴いていました。ホシガラスではないけど結構大きい鳥。何だろう。


で、やっと小太郎山分岐に。ここまで来れば安心。もう遭難しない。しかし、登る途中で見えていたように、山頂が近づくにつれて雲の中に入ってしまいました。眺望は利きません。


そしてお花畑が始まる。このミヤマキンバイ、見て下さい。黄色と中心部のオレンジの色が見事です。北岳のミヤマキンバイ、一味違う。




ハクサンイチゲもたくさん。元々群落を作りがちな花ですが。


この通りのお花畑が広がります。白、黄色、紫、ピンクなど色とりどり。まあ、背景は全体的にガスっています。






イワウメはかなり咲いていました。比較的早い時期に咲く花ですからね。


イワベンケイはまだまだ咲き始め。


北岳のクモマナズナは株が大きくて美しいです。


ミヤマシオガマのピンクは目立ちます。


この時期目を惹くのはやはりオヤマノエンドウでしょうか。青紫の小さなお花がまとまって咲くので存在感あります。


ハハコヨモギはまだ始まったばかり。もこっとしたお花が可愛い。木曽駒と北岳にしか咲かないはずです。


キバナシャクナゲは、石楠花の中では一番好きな花です。高貴な感じがする。


このように、尾根に出るとお花を探してしまって足の進みがのろくなりますが、いいんです。どうせ残り40分くらいのコースだし、体も疲れているからゆっくりで。
途中で足が攣ったりしたのでコースタイムよりだいぶ遅れるかと思ったのですが、肩の小屋に着いてみれば実際にはコースタイムより巻いていました。4時20分頃到着。


早速テントを張ります。本来のメインテント場はまだまだ雪に覆われていて、小屋近くの空き地に皆さん場所を見つけて分散して張っています。土曜日ということで結構混んでいました。まあ、7月後半以降のハイシーズンになるとこんなもんじゃないと思います。昨年8月に縦走した時には北岳山荘のテント場に張りましたが、その時は満員でした。平日でしたが。
お天気的にはガスなので、ゆっくり休んでストレッチなどをし、食事を作ります。




でも夕暮れまでにはちょっと雲の切れる時もあって、仙丈ケ岳も見えました。自分がテントを張った所は仙丈ケ岳の正面になるので、ガスが取れれば絶景の稜線テント泊になります。


この日は東の空に大きな月が綺麗に出ていました。翌日の好天を願って就寝です。
そして翌朝。今回も神様は味方してくれました。ガスが取れて晴れています。早速、ご来光を山頂で拝むために出発です。その後は山頂を越えていったん八本歯のルートの方に下り、トラバース道に入ってキタダケソウさんを探す予定です。
たくさんの登山者が山頂での朝日を狙って出発です。


朝日は鳳凰三山のド真ん中から上るようです。


オレンジ色の光が照らします。


日が出ると辺りも染まり始めます。ビッグマザーの仙丈ケ岳。


甲斐駒。


甲斐駒と仙丈ケ岳のツーショット。


富士山も比較的大きく見えるのが南アの特徴ですね。雲海があって神秘的。


山頂のお花も朝日を浴びて綺麗。






そして個人的に日本最高稜線と思っている、白峰三山の稜線。間ノ岳はいつ見ても格好いい。




朝日の山頂を楽しんだら、いよいよキタダケソウさんを求めてトラバース道方面に下ります。その途中でもたくさんのお花を見ることができます。ミヤマオダマキやヤマガラシはこっちの斜面でしか見ませんでした。




ツガザクラもあります。


昨年の8月には、シコタンソウやシコタンハコベ、イワギキョウやイブキトラノオなども咲いていましたが、時期がちょっとずれるだけで違うお花が咲いてくれます。とても楽しい。
で、トラバース道の分岐まで下りてきました。


ここから見る間ノ岳方面も格好いい。ちょっと標高が下がったところから眺めているので、見上げる感じになります。




見逃さないように、やや緊張してキタダケソウを探しながらトラバース道を進みます。白いお花は出てきますが、まずはお約束のハクサンイチゲ。


そしてチョウノスケソウ。


これらのお花もそれぞれ綺麗なのですが、やはり今回は明確なターゲットとしてキタダケソウを求めている。偽装キタダケソウのような白いお花たちは少ないほうが本物を見つけやすいという自己中心的な考えも浮かびます。こんな雲上の楽園でも人間は自分勝手なものだ。私だけかもしれないが。
しばらく進むと、ついに発見。キタダケソウ。薄くてひらひらした花びらと平べったく重なったユキワリソウの花びらのような葉が特徴です。






やはり終盤なのか、形のいい個体はあまりありません。が、まだまだトラバース道は序盤。他に出てきてくれることを願って進みます。




すると、道からはやや離れたところですが、結構大きな群生地が見つかりました。コンデジのズーム機能でよい株を探します。










他にも群生している所が幾つか見つかります。










やはり、ハクサンイチゲに比べるとちょっと清楚というか大人しい感じ。地味と言えば地味。でも薄くて透き通るような花弁と黄緑色の雄蕊・雌蕊は本当に上品。樹林帯のミヤマハナシノブと並び、北岳という厳しい男山にあって不釣り合いなほど女性的。






いやー、キタダケソウ。残っていてくれてありがとう。稜線に咲く花としては、ツクモグサと並ぶ贔屓の花ですね。両方ともとても可愛いというか儚い感じというか。実際には風雨が吹き荒れて水も少ない砂礫の稜線に咲くお花なので、とても強い子たちなのです。が、その姿はとても儚い。それが美しさを感じさせる。

さて、キタダケソウの群生地を過ぎました。トラバース道も終盤。後は稜線に出てもう一度北岳に登り返し、肩の小屋のテント場に戻って撤収です。
その前に、ミヤマムラサキやミヤマキンポウゲなども登場。トラバース道はキタダケソウだけでなく花の宝庫でした。緑色のハクサンイチゲにも会えました。昨年もみつけました。










さて、ここからは北岳山頂への帰路です。


途中も時々お花と景色を楽しみます。










再び北岳の山頂です。時刻は7時くらいかな。もう完全に明るい夏山です。富士山方面。


甲斐駒、仙丈ケ岳方面。


大好きな間ノ岳稜線。


大樺沢左股を見下ろしてみました。雪が多いですね。雪渓登りを楽しみたい人は、今年は白馬岳や針ノ木岳じゃなくて北岳でも楽しめますね。


さて、テント場に戻ります。途中でキバナシャクナゲの形の良いものを見つけました。




テント場です。多くのテントは既に撤収されていました。皆さん下山したり、間ノ岳に縦走されたりしているのでしょう。このテント場、やはり張れると絶景でした。贅沢ですなあ。


何となく、一般登山者は間ノ岳への縦走に便利な北岳山荘を選んでしまうような気がしますが(肩の小屋はバットレスを登る玄人向けのイメージ)、私は両方好きですね。白根御池小屋も好きですから、結局何でも好きなのかもしれない。
本格的な下山前に、残ったインスタントコーヒーを飲みに肩の小屋前のベンチに行きました。皆さん、これから下山ですかね。結構混雑していました。一服したら、小屋のスタッフに挨拶して8時半ごろに下山開始です。


これまでは常にガスの中だった小太郎尾根ですが、今日の下山時には晴れていて展望がよい。正面に甲斐駒がドーン。


うーん、男山である。


下山は右股コースを取ります。残念なことに鹿の食害がひどいらしく、数年前からお花はだいぶ減ってしまっているようです。今回は時期的な問題もあって、シナノキンバイとかニリンソウ(でいいのかよく分からんが)などが主体で、タカネグンナイフウロもミヤマハナシノブもほとんど見られませせんでした。本当は時期が合えば見られるのかな。見られるといいなと思います。










左股を登っている登山者は多かったです。


途中、右股でも一か所だけ雪の残っている所を歩きますが、危険はありませんでした。


私はこの辺りで結構疲れてきてペースダウン。写真を頼まれた小屋泊装備の5名のパーティに追いついたり先に行かれたりしつつ、話しながら進みました。途中、アナグマと思われる大きな猫くらいの動物を見ましたが、写真に収めることはできず。
樹林帯のお花はそれでもちらほらと出てきます。ハクサンチドリに会えるとうれしい。


マイヅルソウ。


これはコンロンソウかなあ。


大樺沢の雪渓越しに鳳凰三山。


おっ、ミヤマハナシノブも1つだけ見つけましたよ。やはり圧倒的に上品。以前はハクサンチドリが最高に上品だと思っていましたが、今はミヤマハナシノブ。


近くにはタカネグンナイフウロも。もっと見たかった。


雪渓の崩れている所は、轟々と水が流れていて凄い迫力。写真では伝わりません。


途中で沢に下りられるところがあって、皆さん水を汲んだり顔を洗ったり。私も手ぬぐいを濡らして顔や腕を拭いたり、頭を冷やしたり。南アルプスの天然水。ありがたい。


カラマツソウが多くなると下山完了が近いイメージ。


沢の向こうに北岳が見えます。今回も晴れてくれて、そしてキタダケソウに会わせてくれてありがとうございます。山に感謝。


下山完了は丁度12時くらいで、バスは1時までなかったので野呂川の吊り橋の辺りで川からの風にあたって涼を取りながら北岳を見ていました。
1時のバスに乗って2時間かけて甲府に出たら、駅の近くの銭湯(高砂湯)で汗を流します。山梨交通のバスも、途中の地元の温泉施設とかに寄ればいいと思うのですが、そういう気は利かないものなんですな。やはり独占企業体というのは問題だと思ったり。

この日、甲府は最高気温35度の予報だったようで、むせ返るような暑さでした。銭湯から出て駅まで歩く5~6分で再び汗が吹き出しますが、それはしょうがない。駅ビルに退避して遅い昼食です。いつもの小作とは違うほうとう屋さんに入り、ほうとうと鳥の唐揚げを食べました。
帰りは、タイミングよくホリデー快速ビューやまなしという列車が来て、自由席に座ることができたので新宿まで効率よく帰ることができました。最後まで予定以上に上手くいった旅でした。

北岳は贔屓の山です。南アを縦走して深い森に溶け込んだ後に山頂に立つのがいいですが、そうでなくてもこれだけの絶景とお花畑、適度な厳しさは十分に楽しい。まだ槍ヶ岳も水晶岳も立山も赤石岳も聖岳も登っていないですが、これ以上に贔屓になる山が出てくるのかやや疑問。次は紅葉の時に来たいかも。早川尾根や鳳凰三山から北岳が黄色に色づくのを見るのがいいように思います。

谷川連峰主脈縦走 その3

2017-07-22 10:06:10 | 旅行
思いのほか写真が多くて3つに分けることになってしまいましたが、縦走記事の最後です。
谷川連峰主脈縦走路の最高峰である仙ノ倉山の山頂。おにぎりなどで栄養補給し、十分休憩を取りつつ絶景を楽しみました。あとは平標山への道を残すのみ。そして、平標山山頂直下には、ご褒美となるハクサンイチゲやミヤマキンバイ、ハクサンコザクラのお花畑があることが分かっています。それでは、まず仙ノ倉山山頂から木道を下ります。


この風景だけでも素晴らしい。この時期に大人気のエリアなのは納得である。ただし、なかなか晴れない。今回の山行はとてもラッキーで、神に感謝である。


マツダランプの標識もいつの間にか東芝ランプに変わり、肩の小屋からの距離も10kmに達していました。


続く稜線美。




そしてお花畑へと突入。








実はチングルマもお花畑に存在していた。ハクサンイチゲが大群落を形成しているので、色の同じチングルマは目立たなくてちょっと可哀想。






最後のピーク、平標山に到着。疲れもだいぶ癒された。


このまま下山してもいいのですが、翌日は日曜日なので平標山の家のテント場にテントを張ってゆっくり過ごす予定です。平標山の家への道は、ひたすら階段を下ります。途中は残雪も結構ありました。


ひたすら下るのも結構こたえる。


左手には、仙ノ倉山への稜線が見えます。さらに下っていくと山頂は稜線の影に隠れてしまいますが。


この道にもお花は咲いています。4年前に来た時にはウラジロヨウラクを多く見た記憶があるのですが、今回はイワカガミやミツバオウレンが多かったです。




標高を下げてくると、稜線の先にエビス大黒ノ頭も姿を現しました。


そして、山の家に着いてみると驚いたことにテント場はほぼ満員。ちょっと無理してようやくスペースを見つけることができたので事なきを得ましたが、もう少し到着が遅かったら危なかった。どうやら、平標山と仙ノ倉山だけを登ってゆっくりとキャンプしながら楽しむパーティが多いようです。日帰りが主流だとは思うのですが、確かにお天気がよければまったり楽しい週末の過ごし方でしょう。

夕暮れ前に簡単にパスタとミネストローネの夕食を取りました。隣では大人数のパーティが豪華にいろいろ調理していた。まあ、そういう山旅は求めていないのでいいのですが、ロングルートで3泊以上する時には食事の内容にももう少し気を使った方がいいかもしれません。栄養的に。


位置的に夕日を見るなら平標山の山頂まで登り返さないといけないと思うので、それは諦めて少しだけ登って景色を楽しみました。夕日は平標山の向こうに落ちていくようです。


北西方面の空。夕焼けています。


オレンジ色に染まる苗場山が綺麗。


主脈稜線方面はそれほど染まりませんでした。


山の家に帰る途中に階段から撮った写真。テント場がいっぱいなのが分かる。


夕日を浴びる山の家。


山の家にある鐘と背後に主脈稜線。


テント場はいっぱいでしたが、夜は特に問題もなくゆっくり休むことができました。そして翌朝。見事にガスっている。


流石は谷川連峰。簡単にはよいお天気は続きません。この日は三国峠まで歩く予定ですが、元々稜線の美しさはについては前日までの主脈縦走で十分堪能していましたから、道すがらお花を楽しめばよいということにします。で、少しゆっくりとコーヒーなどを飲んだ後の6時頃に出発。
ベニサラサドウダンやイワナシが登場しますが、このルートのメインはアカモノとムラサキヤシオでした。










ムラサキヤシオはこれまでほとんど見たことがなかったツツジです。日本海側の山に多いようで、関東近辺だともう少し青紫っぽいミツバツツジが主流です。ムラサキヤシオは完全に赤紫。
展望の開けるところから。仙ノ倉山とエビス大黒ノ頭が確認できます。




基本的には樹林帯で、ツマトリソウやツバメオモトが見られます。イワカガミも相変わらず可愛い。






ルートはずっと基本的にこんな感じ。


ウラジロヨウラクも出てきました。まだ咲き始めといった感じ。でも、前に登った時に見た花が出てきてくれると何となく嬉しい。知り合いに再会した気分。






このルートにこの時期多かったのはアカモノです。アカモノロードと言えるようなところが結構あります。可憐で贔屓の花なので嬉しい。






アズマシャクナゲも時々出てきます。


赤の濃いウラジロヨウラク。


ルート上には雪の残っているところも。


この日のルートの中では唯一のピークとなる大源太山が見えてきました。


この標識の直ぐ足元には、マイヅルソウの群落があります。マイヅルソウもルート上に多く咲いていました。






特に疲れていたわけではないのだけれど、やはり前日の縦走が効いているのか結構体が重く、この日の歩みはゆっくりでした。大学生6名程度のパーティに簡単に抜かされつつも、なんとか山頂に到着。幸いなことにガスがちょっと晴れていて、山頂からは昨日の縦走路を見渡すことができました。正面の平標山、仙ノ倉山。


エビス大黒ノ頭、万太郎山と続き、一番奥に谷川岳。


ザックを下して少し休憩して顔を上げると、これらの稜線の景色は再びガスの中に隠れていました。一瞬出てきてくれたのですね。山々と神に感謝です。
さて、大源太山を後にしていよいよ三国峠に向かいます。それにしても、昨日から続く確実にピークをたどって巻き道のないルートなため、アップダウンが結構激しくて消耗します。この日は3時間半程度の気楽なハイキングのつもりだったのに、実は結構な負担でした。特に、途中のピークである三角山に至ってその後全般的には下りながらもアップダウンが結構ある地点があり、そこを歩いている時には「どうせガスなら三国山はピークハントしないでそのまま三国峠に下山すればいいや」、という気になっていました。

それでもムラサキヤシオの廊下とかあると嬉しい。


なかなかアップで撮るのは難しいけど。


シラネアオイもありました。何だかんだ言ってもお花は豊富ですね。


で、結局三国山は登らずに素直に下山です。三国峠への下山路は木道が整備されていて危険はないのですが、疲れからなのか気が抜けたのか、花の写真を撮った後に歩き始めた直後に一回スッ転びました。いかんいかん。。。
このルート、三国山の辺りは7月にはニッコウキスゲの大きなお花畑が出現するそうで、その時期に行ってみたい気がします。まあ、車がないとアクセスはよくないですけどね。
この縦走中の今年の6月のお花は木のものが多く、レンゲツツジやウラジロヨウラク、標高が下がってくるとタニウツギやヤマツツジが多かったです。








そして、昔から交通の要衝として重要だった三国峠に到着です。神社があり、この峠を通った人の名前が掘られた碑もあります。




三国といいますが、実際には新潟県と群馬県、越後国と上野国の2つの国の境です。江戸と越後を結ぶ三国街道にあり、名前は三国山から来ているとか。今は関越自動車道とかあるけれど、当時は馬か自分の脚で江戸から越後まで歩いたのだから立派です。
ここでしばし休憩。後は15分ほどの下山を残すのみ。大学生のパーティは三国山を登ってから追いついてきましたが、山頂はガスガスだったとのこと。行かなくて正解だった。最後の下山ルートは広葉樹の森で、沢の音が聞こえる上信越の森の雰囲気でした。


下山したところにある標示。


さて、最後の下山を終えると現在の三国街道、国道17号線に出ます。ここは大型のトラックやタンクローリーも通っていて恐いのですが、バス停は30分以上歩いた西部クリスタルというリゾートマンションのところまでありません。車の邪魔にならないように歩き、バス停に着いたものの10:10のバスは3分ほど前に出たばかり。次の11:05のバスに乗って11:52に越後湯沢に着きました。
越後湯沢は温泉町ですが、公共交通機関利用の旅行者場合は駅ビルの「ぽんしゅ館」に併設されたお風呂が便利です。何やら少しだけ日本酒を混ぜたお湯というのもミステリアスでよろしい。


と言うか、越後湯沢の駅は完全に新潟特産品テーマパーク状態です。


お土産も、お菓子などの定番ものから漬物やお蕎麦、当然のごとく多くの種類の日本酒(利き酒コーナーあり)、工芸品など一通り揃います。食堂も充実していて、回転鮨、ラーメン、イタリアンなど多彩。私は並ばないで入れた食堂で、写真の豚丼を食べました。下山後は肉が欲しくなるというパターンだったので。


今年の夏の登山旅行は、ずっと興味のあった谷川連峰主脈縦走で幕を開けました。お天気も全体的には恵まれていました。晴れるべき時にしっかり晴れてくれて、山に愛されている感じでした。お花は、この山域の実力から言えばまだまだ咲き始めだったのでしょう。7月に再訪することがあってもいいですね。その分、雪解け直後の6月は稜線美が最高でした。また、谷川岳肩の小屋も平標山の家も、小屋番さんが親切で過ごしやすかったです。
谷川岳は南アの北岳と並ぶ贔屓の山。馬蹄形もいずれはチャレンジすることになるでしょう。後は、冬に白毛門から谷川岳東面の快晴の図を見てみたい。興味の尽きない山域です。

谷川連峰主脈縦走 その2

2017-07-19 21:03:44 | 旅行
主脈縦走をして思ったこと。なぜこんなにも実直にピークを踏むルートなのか。普通は縦走路と言っても小さいピークなどは巻き道があることが多く、稜線のデコボコを完全になぞるものは少ないと思います。しかし、谷川連峰は真面目に稜線を行きます。想像するに、巻き道は豪雪とその雪解けのせいで崩れてしまうのではないかと思います。そのため、結局は完全に稜線をなぞるルートになるのではないかと。まあ、想像ですが、実際に歩くと確実にアップダウンがあるので疲れます。

愚痴はともかく、せっかくのお天気に恵まれた山行。楽しまないのはもったいないです。谷川岳の影が映る主脈の縦走に出発。


まずは、オジカ沢の頭というピークを目指します。200メートルくらいのアップダウンです。既に稜線にはお花が多いですが、種類はこの時期ではまだ限られていました。ハクサンイチゲ、ミヤマキンポウゲ、イワカガミ(ヒメイワカガミという種類でしょうか)、ユキワリソウ、ミツバオーレンなどです。








これはコメバツザクラかな。去年八ヶ岳の横岳稜線で見たのと似ている。


暫く行くと中ゴー尾根への分岐があります。これを下る人は少ないのだと思うけど、下った先の沢の名前が谷川なのである。恐らくは谷川岳の由来。


ヤマレコレポートにもよく出てくるマツダランプの標識。


振り返ると、谷川岳から一ノ倉岳方面への稜線。まだ太陽はその後ろに隠れています。




アズマシャクナゲ登場。まだ元気に歩いています。


オジカ沢の頭の手前は鎖もある岩場で、気を使うかなり危険な感じのところでした。そんな場所があるとは知らず、さらに高齢の4名パーティがいて狭い道で渋滞したこともあり、ストックをしまうこともできずに難儀しましたが、何とか約1時間でピークに到着。ほぼコースタイム通り。テント泊装備だということもあり、それほどペースは上げていません。


これから進む方向には万太郎山が大きく見えます。谷川連峰の稜線らしい、クマザサが多くて岩岩しくなく、メルヘン感ある稜線美を早速堪能。まあ、累積すれば万太郎山までだけでも500メートルくらいのアップダウンがあるんじゃないかと思うので、楽ではなさそうですが。


ちょっと視線を左側に転じると、残雪の多い谷が美しい。


こっちには道がありませんが、南側はこのような感じ。見えているピークは川棚の頭というところでしょうか。バリエーションルートはあるのかな。冬季は気象条件は厳しいだろうけど、スキルのある人なら行けそう。あのピークから主脈を眺めるのも絶景でしょう。


そして、振り返ると太陽が谷川岳の上に上がっていました。雲海が美しい。


空気が澄んでいて、富士山も見えました。


軽くパンを1つ食べて、次の小ピークを目指します。オジカ沢の頭直下には避難小屋があります。主脈には幾つかこのような避難小屋があり、私のように肩の小屋に泊まらない場合はこれらのうちどれかを利用することになります。まあ、トイレがないのが私としては不安で使いたくなかった。


小障子ノ頭、大障子ノ頭と続く道は比較的緩やかなアップダウンが続く美しい稜線です。




ちょっと左右を見ても、やはり美しい。




お花は相変わらずイワカガミなどが主体。


ピークを登ったという感覚はなく、アップダウンの多い稜線をひたすら歩いていたら着いたという感じの小障子ノ頭。


ここから向かって左側、南方の景色。


これから向かう稜線。万太郎山きつそう。


まずは大障子ノ頭を目指しますが、こんな感じの登りです。大したことないと見るか。縦走中だとキツく感じるものですが。


お天気がいいので文句は言えません。ハクサンイチゲも美しいし。


振り返ると谷川岳からはだいぶ歩いてきた感じ。一番左手の双耳峰が谷川岳、その手前、すぐ右に見えるのがオジカ沢の頭。中央奥には尾瀬の燧ケ岳や日光白根山と思われる山々が見えます。


ちょっと南側に目を転じた図。こういった絶景を楽しみ、写真を撮りつつ登り続けます。


そして、やっと大障子ノ頭に到着。若干コースタイムより遅れ気味。まあ、景色的には気持ちよく歩いています。小鳥の声も聞こえて楽しい。しかし、経過時間が示すように決して楽ではない。


このピークからも再び富士山。手前の山々は奥秩父山塊ですかね。


向かう先の万太郎山。だいぶ大きく見えるようになりました。よく見ると、いったん大きく下ってから登り返す道が分かりますね。まったく。


そして、大障子ノ頭を越えると今回最大の難所が出現。肩の小屋の小屋番さんにも教えていただいていたのですが、登山道が崩壊して滑りやすい(谷底まで行ってしまう)ところがあります。黒い岩の右側を巻くような形で迂回路の踏み跡があるはずだから、そこを通るようにということでした。ところが、それが見つからないままに難所の真上に出てしまいました。少し戻っても迂回路は見つからず、大障子ノ頭まで登り返すのも億劫。ということで、雑草をつかみながら岩を滑るようにして難所を通過。これは通過後に振り返って(上を見て)撮った写真です。これだと伝わりにくいですが、この下は崖です。というか、この部分が既に崖ですが。テント泊装備を背負っての通貨はかなり無理があり、本来は時間をかけてでも迂回路を探すべきでしたが、後続の方々もほとんどこの難所を滑り降りているようでした。まあ、事故がなくて何より。


一息ついて、再び歩き始めます。進行方向右側には越後湯沢方面の町が眼下に見えます。


左は相変わらず残雪の多い谷を挟んでの絶景。


正面には万太郎山。登り返しがキツイ。


振り返ると太陽はかなり上がっていました。左手前のピークが大障子ノ頭です。


ここでミヤマキンバイ。


そして、苦労の末にやっと万太郎山に登頂。時間的にはちょっとだけ巻き返していて、出発地点から計算するとコースタイムとほぼ同じくらいでここまで来ています。実際には、万太郎山の山頂はここから3分ほど歩いた先なのですが、ここは土樽方面に下りる道との分岐になっていて少し開けているので、この時点では万太郎山の頂上だと思って写真を撮っていました。これは歩いてきた道。谷川岳が既にかなり小さい。疲労感を裏付ける距離感である。


北側は、谷川連峰の馬蹄形縦走路にある茂倉岳からの尾根が見えます。豪雪地帯で削られるのか、迫力ある尾根ですね。遠くに小さく見えるのは八海山とか越後駒ヶ岳だろうか。


少し拡大。


進行方向にはエビス大黒の頭を経て今回の最高地点である仙ノ倉山。奥には残雪が多い、平べったい形の苗場山。苗場山がかなり大きくなってきました。夜明けにオキノ耳から見た時には凄く小さかったのに。と言うか、ここに来て初めて仙ノ倉山が見えるようになりました。


他の登山者の方が来られて少し混んできたので、本当の山頂に移動。自撮りなどして15分程度休憩。




これから行く道。先行者がまずは万太郎山を下っているのが見えます。先ほど、進行方向として見ていた仙ノ倉山は見えませんね。それはその右奥、だいぶ先にあるのです。


ここからは、いったん400メートルほど下ってから450メートル以上登り返すという、主脈縦走路最大のアップダウンが待っています。既にアップダウンの稜線をテント泊装備を背負って3時間半ほど歩いてきているので、心の萎えるところです。
しかし、このお天気は素晴らしい。景色を楽しみながら歩かない手はない。実際には、この頃には新潟方面(北側)からの風に乗って夏雲がかなり上がってきており、いずれガスに巻かれることは予想できましたが。まあ、それでも稜線歩きを引き続き楽しみます。




シラネアオイが少しだけ残っていてくれました。違うお花が出てくると嬉しいですね。特にこういうちょっと存在感のある大きめの花は。


ハクサンイチゲは多いので、背景の決まる写真を狙って撮る。


万太郎山から下っている最中に、ガスが稜線まで上がってきました。北からの風は冷たく、火照った体には気持ちいいですが、視界を奪われるのは辛い。


稜線からの景色も徐々にガスの中へ。。。9時ぐらいでした。これから2時間程度はガスに支配されました。


そうなると、稜線美を楽しむのではなくてお花を探す旅に早変わり。相変わらず多いのはイワカガミ。


アカモノも登場。好きな花です。


これは特定できず。


ミヤマキンポウゲも結構増えてきました。


ついにハクサンコザクラも登場。この後、平標山ではハクサンイチゲと一緒に群生しているはず。


タテヤマリンドウも。数はあまりなかったと思います。まだ時期的に早かったのかも。


ツガザクラ。


標高1,954メートルの万太郎山から、いったん1,568メートルの最低鞍部まで下り、そこからはエビス大黒ノ頭に登り返しです。すでにかなりヘロヘロ。登りはもちろんですが、下りもぬかるんだ道で滑らないように注意して歩く必要があったりして、体力を削られるのです。そんな中やっと到着しましたが、まだこのピークを越えてからいったん下って、最高地点の仙ノ倉山2,026メートルまでの登り返しが待っています。谷川連峰主脈、日本アルプスの縦走に劣らぬ厳しさです。いや、風景は超絶癒し系の天国稜線&お花&小鳥の声なんですけど。


しかし、エビス大黒ノ頭を過ぎたあたりで風向きが変わり、南側の群馬県方向から強い風が吹き始めました。すると、みるみるうちにガスが晴れていきます。


進行方向。本日のボスキャラ、仙ノ倉山がガスの中から登場。まさに満を持してのボスキャラ登場シーン。かなり手強いのだろう。緩やか稜線に見えるものの、ここから100メートルくらい下ってから250メートルくらい登り返すのだから、既に披露している体にはかなりの試練。


北側の新潟県は雲の下。稜線からは雲海が美しくてありがたい。


振り返るとこれまで来た道。雲がある稜線のシーンは迫力ありますね。


南側の群馬県側は快晴。


そして、仙ノ倉山直下の避難小屋のところまで来ました。途中でバイカオウレンやアズマシャクナゲに癒されつつ、疲労がピークに達して避難小屋前のクマザサの平地に寝転がって5分ほど休憩です。




ここから眺めるボスキャラ。もう少し小さくてもいいんですけどね。まあ、迫力満点。ありがとうございます。


歩いてきた道。見えるのはエビス大黒ノ頭。


その奥には雲の上に万太郎山のピークが見えます。まあ、疲れて当たり前だよ。このルート。


休憩を終え、意を決して仙ノ倉山を登ります。ゆっくりペースで。できるだけ立ち止まらず、とにかく一歩一歩。途中でお花が綺麗だと写真を撮るのを口実に30秒くらい立ち止まります。








南側はクマザサが見事。


まだまだ山頂は遠い~。


振り返ると美しい稜線。この主脈稜線の縦走もファイナルパートが近い。感無量である。


そして、ついにボスキャラの仙ノ倉山登頂です。12時半頃だったでしょうか。まだ平標山を経て平標山の家のテント場まで歩かなくてはいけませんが、この時点で縦走としては既にハイライトを迎えました。達成感。


進行方向の平標山方面。山歩きを始めた2013年の6月に、平標山に登って仙ノ倉山まで高山植物を楽しみました。人が少ない主脈縦走路と違ってこちらは相変わらず人も多く、木道も整備されていて天国感が漂います。


山頂は360度の大展望台です。北東側のシーン。巻機山や越後駒ヶ岳なども見えています。






歩いてきた谷川岳へと通じる道。奥には白毛門や笠ヶ岳など、谷川岳東面を望む山々も。




西側の平標山方面。


クマザサ越しで見る山頂からのシーンは、独特の美しさ。谷川連峰ならではですかね。飯豊山脈とかも似ているのかなあ。行ってみたいなあ。




見上げると夏空でした。まだ6月前半ですけどね。梅雨の晴れ間。


泥だらけになったシューズ。お疲れ様です。前回の甲武信ヶ岳から、この新しいドロミテのシューズに変えています。


さて、休憩しつつ山頂からの絶景を楽しんだら、最後のピークである平標山へと出発です。と、ここでGooの写真枚数制限に引っかかったので、いったんアップです。谷川連峰主脈縦走シリーズはその3に続きます。


谷川連峰主脈縦走 その1

2017-07-02 21:08:36 | 旅行
以前からとても関心のあった谷川連峰主脈縦走。特に高山植物の綺麗な時期に、この豪雪地帯ならではの稜線美&お花畑を楽しみたいと思っていました。谷川連峰は贔屓の山域です。
今年は雪が多く残っているせいもあってアルプスなどでは実質的な登山シーズン入りが遅れているようですが、谷川連峰はそれなりに雪も溶けていて危険度も例年並みのようでした。そこで、6月16日の金曜日に有給休暇を取得し、その週末と合わせて挑戦です。車があれば日帰りも可能のようですが、公共交通機関利用の場合はどうしても入山が遅くなるのと、どうせならゆっくりと贔屓の山の中で過ごしたいという気分でもあったので余裕のある日程にしました。あとは、天気の読みもあります。梅雨に入っていたので2日続けて晴れというのは難しい状況で、自分の判断で土曜日は晴れると踏んでその日に縦走できるようにしました。

さて、今回は急登で有名な西黒尾根を登ります。これまで、谷川岳には積雪期に4回登っていますが、いずれもロープウェイを利用した天神尾根ルートでした。今回は無雪期でもあり、本丸の西黒尾根ルートを取ります。まずは登山センターのところで水の補給。谷川連峰は稜線に水場がほとんど存在しないので、スポーツドリンクと合わせて4リットルほど担ぎ上げることにしました。このため、ザックの重みは17キロを優に超え、昨年の南アルプス縦走4日間(5日目は2時間の下りだけ)と似たような重さになりました。試練ですな。


それでも、前回の甲武信ヶ岳のおかげで多少は体が慣れてきているのか、少なくとも序盤は順調に進みました。早速西黒尾根に入ります。11時少し前でした。


新緑が美しい森です。小鳥の声も聞こえて気持ちがいい。


が、噂通りの急登である。ちなみに、標高差は1,200メートル程度ですから、楽ではないですが無茶苦茶でもありません。


コースタイムは約4時間。17キロ以上の荷物で基本的に登り一本なので、今回はコースタイムプラス30分くらいでいいと思っていました。1日目は登りだけで、谷川岳肩の小屋に素泊まりの予定です。マットとシュラフも持って行くので、寝具も必要ありません。そうすると2,500円で泊まれるので、結構お得です。時間的にも、11時という遅い出発でも無理がありません。
暫くあるいてヤマレコレポートなどでも見かける鉄塔のところに。鉄塔が出てくると写真を撮って1分ほど休憩というのはお決まりのパターン。


登山道は人が多く入っていると見られ、シーズン序盤でも迷うようなところはありませんでした。でも、冬は雪深いエリアなので、倒木とか結構ある。


少し開けたところから天神平のスキー場が見えました。まだまだ長い登りが待っている。ロープウェイならあそこまで一っ跳びですが


おっと、ここでベニサラサドウダン登場。ツツジの仲間ですが、釣鐘上のお花が可愛い。甲武信ヶ岳では紅の濃くないサラサドウダンでしたが、こちらは真っ赤。




途中、登山道がぬかるみ始め、次第に川のように水が流れ始めました。少し登ると、予想通り雪が残っていました。谷川岳らしい感じです。


ここでマイヅルソウの群落登場。メジャーなお花だと思うのですが意外と見ないかも。同じ蛇紋岩の早池峰山にもたくさんありましたが、それ以外では久しぶりのイメージ。




マイヅルソウはこの後も縦走中に特に三国峠方面の樹林帯で多く見かけましたが、花は咲いていないものが多かったです。葉の形が特徴的なので花がなくても分かるのですが、あれだけの数のマイヅルソウが一気に開花したら素晴らしいお花畑でしょう。

だんだん標高が上がってきて、天神平くらいになりました。こうなると、残りは700~800メートルです。同時にガスも上がってきています。この日はお天気がよかったので、夏山的な感じで日中は雲がどんどん上がっていきました。


谷川連峰は豪雪地帯なので森林限界が低く、暫くすると樹林帯を抜けました。まだ木はあるのですが、かなりまばらになりました。樹林帯を抜けると、直ぐにナエバキスミレが登場。


かなりの群生です。迫力満点。スミレは奥多摩でもたくさん見られますが、キスミレはないですね。


これは名前の特定が難しいスミレさん。


と、ここでカタクリも登場です。谷川岳は天神平方面でカタクリが紫の絨毯のように咲くようです。時期的には最終番でしょう。スプリングエフェメラルの女王、残っていてくれてありがとう。形もいいです。


定番のイワカガミ。この後、縦走中も大量に咲いていました。時期的にピッタリだったのでしょう。


鎖が登場です。噂には聞いていましたが、西黒尾根は鎖場も多く、侮れません。アルプスなどだと、鎖があっても実際には使わなくても登れるところが多いのですが、ここはそんな所はほとんどなし。結構険しいです。少なくともテント泊装備だと夜明け前とかには登りたくない。お天気がよかったのが幸いで、これが雨だと蛇紋岩が滑りまくると思われます。


お花は、この辺りからはキジムシロが多かったです。


スミレさんも引き続き登場。


おっ、ユキワリソウだ。初めて見た。雪解け直後に咲くお花なので、なかなか見る機会がありませんでした。小さくて薄くてひらひらしていて可愛いです。


そして登山道は容赦ない鎖場攻撃。17キロ以上の重量がこの辺りから利いてきて、徐々にペースダウンです。まあ自然な現象でしょう。


チェックポイントのラクダの背に出ました。多少のアップダウンが残っていますが、ここまで来ればあと400メートルちょっとです。


雲がかなり上がってきていますが、この先の道の険しさがうかがい知れます。かなり岩岩しい。


でもお花は綺麗です。これはアカモノだと思ったけれど、葉の形が少し違います。どうやら白いイワカガミの蕾のようです。ヒメイワカガミという種類なのかな。とても可憐です。


谷川岳は双耳峰で格好良く、険しい山容も明らかに男山なのですが、蛇紋岩質で貴重な高山植物の宝庫だったりします。その面ではとても優しい女性的な面があります。南アルプスの北岳もそうですね。北岳は蛇紋岩ではないけれど、固有種もあってとてもお花が綺麗です。が、基本は雄大な男山。この2つのお山はとても贔屓です。

ナエバキスミレやキジムシロなどの黄色いお花が優勢でしたが、引き続きユキワリソウや名前の判別の付かないお花もどんどん出てきます。








そして満を持してホソバヒナウスユキソウが登場。谷川岳と至仏山にしか咲かないはずです。昨年は至仏山で見ました。今年は谷川岳で。




ハクサンイチゲも出てきました。仙ノ倉山山方面に大群落がありますが、ここでも可愛い。


チシマゼキショウでしょうか。早池峰で見たものに似ています。谷川岳にも咲くのかな。


ガスがかかっていますが、お花畑はこんな感じ。


振り返ると、結構厳しい道を登ってきたものだ。なお、岩場の厳しい道が続きますが、恐らくは肩の小屋の方か登山指導センターの方が黄色いペンキでかなり丁寧に目印をつけてくれています。ちょっとした道の選択でも的確で、とても助かりました。


天神尾根方面。Google Photoのサービスでパノラマ化したもの。


ショウジョウバカマもまだ残っているものが幾つかありました。


ピンク系続きでイワカガミとイワナシ。




これは何かなあ。


この辺りまで登ってくると雪田も結構あって、寒いくらいの風が吹きつけてきます。


結構ヘロヘロになりながらも、最終チェックポイントのザンゲ岩にたどり着きました。


まだショウジョウバカマやユキワリソウを見ることができます。




そして、最後の難所。肩の小屋へ向かう道は雪で覆われています。




実際には雪質はザクザクの感じなので、滑る心配はあまりありません。それでも注意して歩きますけどね。
そして、4時間20分くらいかかってやっと肩の小屋に到着。小屋番さん一人ですべて切り盛りしていて大変そうでしたが、親切な感じでよかったです。金曜日ですが意外と宿泊者が多かったです。ロープウェイを使った日帰り登山が主体の谷川岳ですが、やはり主脈縦走をする人も結構いる模様。あとは、写真を狙う人たち。


肩の小屋は水場こそないですが、トイレがあるのがありがたい。谷川連峰はトイレも限られるので。なお、小屋での缶ジュースなどの空き缶は基本的に持ち帰りです。
その後、この日は夕暮れまでずっとガスにまかれ、風雨も強くなってきてしまいました。


まあ、予想天気図からこれはある程度覚悟していた展開で、問題は明日の土曜日。天気予報では9時頃から晴れる予定ですが、できればご来光を見たいですから。
ということで、この日は8時半の消灯と共に就寝です。
で、夜中2時過ぎに目が覚めてトイレに行くと、降るような星空。写真隊の人たちは撮影に向かいます。今回もどうやらお天気の神様は味方してくれた模様です。

翌朝は4時20分ごろにご来光ということで、4時ごろに小屋を出てオキノ耳を目指します。どうせなら最高峰から眺めたいので。途中、ミツバオーレンが朝露に濡れて透き通って綺麗でした。


ご来光を待つ間。雲海も出て最高のコンディション。


湯桧曽川越しに対岸の白毛門方面。この山域は格好いいよ。


いよいよ日の出です。




この日縦走する主脈方面も明るくなっていきます。


その奥にはピンクに染まる苗場山。


更にその後ろは後立山連峰でしょうか。


一ノ倉岳方面。


馬蹄形方面。


トマノ耳と主脈。


主脈の色がオレンジに変わっていきます。


最高に格好いいトマノ耳。


朝日を堪能しました。素晴らしい。なかなか晴れない谷川岳でこれだけの朝日を楽しめたのは本当にラッキーでした。肩の小屋、価値が高いですね。昨夜みたいな強い風雨でも安心だし、こんなご来光が見られるし。
さて、トマノ耳に移ってオキノ耳を眺めましょう。






十分堪能し、小屋に戻って出発準備です。名物の道標も、肩の小屋も朝日のなかでは格好いい。




主脈方面。だんだんと色が変化するのがいいですね。


最後に、Google Photoのいつもの自動パノラマ写真。




5時を10分ほど過ぎたころに主脈縦走スタートとなりました。写真が多いので、縦走シーンは次回に回します。


新緑と石楠花の甲武信ヶ岳

2017-06-11 18:05:04 | 旅行
新緑シーズンは、一年で山林が最も美しい時期かもしれません。晴れた日には黄緑色の葉がキラキラと輝いているし、空はこのシーズンらしい気持ちのよい青空。濃すぎない緑と青のコラボレーションは、強すぎない光と好相性。小鳥の声も絶え間なく聞こえているし、晩春~初夏の花、特にこの時期はツツジなど木の花が艶やか。日が長いので日没を気にして焦るようなこともなく、気軽なハイキングが楽しめます。
で、今年も例年どおり5月に奥多摩にハイキングに行っていたのですが、少しだけ遠出しようということで6月4日(日)と5日(月)は有給休暇を利用して奥秩父の百名山の一角である甲武信ヶ岳に登りました。本格的な夏山シーズンを控え、体慣らしのためにテント泊装備を背負っての山行をするという目的もあります。

甲武信ヶ岳は地味系百名山という扱いをされることが多いと思いますが、今回初めて行ってみて確かに地味だと思います。が、このシーズンの甲武信ヶ岳は石楠花で彩られるということをヤマレコなどで情報収集する中で知っていたので、新緑に加えてそれも狙っていました。今回もお天気に恵まれ、かなり充実した山行となりました。

最初に写真を幾つかアップしておくと、まずは毛木平からの千曲川源流コースの新緑。


とがったおにぎりのような甲武信型山頂。


山頂からの早朝の景色。奥秩父の山深いエリアが一望され、何だか畏怖の念を感じつつも深い森に癒されます。


そしてお目当ての石楠花。



公共交通機関利用の場合、甲武信ヶ岳のアクセスはあまりよくありません。山梨県の西沢渓谷からアプローチするにしても、長野県の毛木平からにしても、いずれも電車とバスを乗り継いでお昼少し前から登り始めるということになります。しかし、今は日が長い時期。これを最大限に活用し、テントを張る甲武信小屋のテント場まで5時間程度かかっても日没までは余裕という計画。ということで、朝8時に新宿を出るスーパーあずさで小淵沢に出てからメルヘン感あるローカル線の小海線に乗り継いで信濃川上駅へ。この時点で既に10時40分。そこからは路線バスで梓山のバス停へ。このバス停からはコースタイム90分の一般道をてくてく歩いて毛木平までという感じで、予定では12時40分ごろに登山開始というのんびりした計画です。

で、やって来ました梓山バス停。バスの運行が結構早くて、予定より早めの12時15分にはここについていてました。周囲を高原野菜の畑に囲まれた集落です。




翌日が平日な上に、普通は自家用車で毛木平にアプローチするでしょうから、ここで降りたのは私ともう一人だけでした。この方はバス停近くのコンビニ的な商店に入られ、その後会いませんでした。基本的にここからはほとんどずっと完全ソロでした。
それはともかく、毛木平までの一般道、お天気に恵まれ過ぎて過酷でした。暑い、というか、まぶしい。こんな感じの一本道で、周囲はレタスなどの畑。地元の農家の方が作業しているのを横目にひたすら毛木平を目指しました。


最後の10分くらいは舗装されていない道になって、登山口が近いのが分かります。天気の良い週末だったので、毛木平の駐車場に停めきれなかった車がこの道にたくさん路駐していました。


この段階で既に新緑が楽しめるのですが、八ヶ岳の美濃戸口からアプローチするのと同じで、本格的な登山道に入るまでのアプローチ道はなぜか景色を楽しむ気がしてこないものです。そんなこんなで、やっと毛木平。時刻は12時15分くらいで、予定よりは少し早く着きました。周囲を森に囲まれた綺麗な駐車場で、トイレも完備です。と言うか、この時期の空の青さと緑の美しさのために綺麗な駐車場が演出されていたんでしょう。


さて、準備を済ませて12時半前には千曲川源流コースを目指して入山です。すると、直ぐに新緑の木々の回廊を通ることになり、深呼吸しながら森林浴して進むことになります。素晴らしい。


ちなみに、昨年9月以来のテント泊装備の重量感は凄まじく、この日は家を出てからずっと荷物の重さに苦しめられていました。そのため、比較的優しいコースとされる千曲川源流コースでも体力的には全然楽ではなかったです。新緑と小鳥のさえずり、森の香りと沢の水音&涼感が全面的にサポートしてくれなければ、気温の高いお昼時に重荷を背負っての山行は辛いだけだったでしょう。

まあ、景色がいいから何とかなるんです。カラマツの新緑が素晴らしい。


見上げると夏空である。


そして、千曲川と思われる沢から涼しげな風が時折吹いてきてくれるのが助かる。


お花はそれほど種類はなかったですが、定番のニリンソウ。ニリンソウと言っていますが、イチリンソウ、サンリンソウとの見分けは私には不可能。多くのブログなどでニリンソウとされているのを踏襲します。と、最初は書いていたのですが、どうやらシロバナノヘビイチゴという花のようです。ニリンソウにしては時期的に遅いですからね。


スミレさん。タチツボスミレかな。


黄色のスミレさん。キバナノコマノツメでしょう。


コミヤマカタバミもちらほらと。


いつもはコースタイムをある程度巻いて歩くことができますが、テント泊装備の重みにやられてこの日はほぼコースタイム通りで歩いていました。毛木平から1位間35分ほどで、最初のチェックポイントのナメ滝に到着です。ツルっとした岩の滝はナメ滝と呼ばれることが多いようですね。




この辺りまで来ると、カラマツなどの新緑はまだまだ始まったばかり。新緑のピークは毛木平からナメ滝までの間でした。標高の高いところのダケカンバとかはまだまだこれからも新緑が楽しめるのでしょう。


さて、暫しの休憩の後は千曲川源流を目指します。沢沿いのコースのよいところは、沢を詰め切るまではあまり傾斜が厳しくないこと。それでも徐々に疲労感が出てきますが。景色はだいぶ森深くなり、うっそうと苔の茂る森になってきました。


何度か木橋を渡って沢を横切ります。


苔の中にバイカオウレン。数は多くなかったですが、種類の違う花が出てくると楽しい。


最初のうちは轟々と音を立てて流れていた千曲川の源流も、ここまで来るとかなり細い流れに。


八ヶ岳の赤岳から流れる南沢のように、ちょっと赤みがかった感じの水。この辺りで少しだけ水を汲みました。この水は美味しかったですね。後で甲武信小屋で1リットル50円で買う笛吹川の水よりも美味しかったと思います。


そんなこんなで千曲川源流にたどり着きました。ほぼコースタイムどおり。やはりテント泊装備だとペースが上がらず。


千曲川源流は残念ながら水が出ていませんでした。季節や年によって状況は違うんでしょうね。


少し休憩してからいよいよ甲武信ヶ岳山頂を目指します。地図でも明らかなのは、ここからの道が急登だということ。沢沿いの道はどうしても最後に急登が待ち構えています。植生的にはシラビソが多くなっていました。


約25分の登りを経て稜線に出ます。金峰山や国師ヶ岳を西側に、東側には雁坂峠などを経て最後は雲取山まで続く長大な稜線です。まあ、奥秩父の主脈稜線の場合、その大きさに反して実態はとても地味。樹林帯が多く、深い森の稜線です。これはこれでとても香りもよいし好きなのですが、やはり大人気のエリアにはなり得ないのでしょう。


道はこんな感じ。


ちょっと見上げると雰囲気も違う。


ここからさらに25分程度のコースタイムで甲武信ヶ岳山頂なのですが、最後の登りがキツくて30分以上かかってしまいました。途中、樹幹から展望が少し開けるところがあって、明日の下山路で通る木賊山が見えました。


ちょっと視線をずらすと甲武信ヶ岳山頂も。直下は結構ガレているようだ。


それにしても森深いと言うか、山深いというか。この深さが奥秩父の醍醐味です。


そして、テント泊装備に苦しみつつもやっと登頂。標高2,475メートル。4時半少し前でした。この時期は日が長くて助かる。


山梨県、長野県、埼玉県の3県の県境のはずですが、圧倒的に目立つ埼玉県の山頂標識があるものの、他の2県のものは見当たりませんでした。
山頂からの風景はやはり森深い。金峰山方面。


北側の三宝山。実はこっちの方が少しだけ標高が高く、埼玉県の最高峰です。こっちへ縦走する道は結構険しいらしい。


八ヶ岳方面。ちなみに、南アルプスも少し見えましたが、翌朝の方が綺麗に見えているので後ほどアップ。


結構雲が出ているのと、この週末は気温も低くて肌寒かったので、20分ほどの山頂滞在で甲武信小屋を目指すことにしました。山頂直下にあったイワカガミ。


そして、本日のテント場である甲武信小屋に到着。奥秩父の山小屋は、八ヶ岳やアルプスのようなこ慣れた感じがしなくて独特の風情があります。


早速テントを張って少し休み、フリーズドライのお米にカレーとソーセージ、ゆで卵という簡単夕食を準備します。テント場は30張程度は十分張れる感じでした。土曜日は満員だったと思われますが、流石に日曜は余裕があります。


気温は3~4度程度と結構寒かったです。それでもテラス席では宴会している人たちがいました。中高年は本当に元気だ。


ソロテント泊なのでいつも夜更かしせずに早寝早起きなのですが、この日は特に疲労していたのか7時半頃には寝入ってしまったようです。真夜中頃に一回目が覚めました。防寒着とシュラフのおかげで、あまり寒さは感じませんでした。
そして翌朝。気温はやはり低いですが、大陸からの冷たい高気圧が張り出してくれたおかげでひんやり気持ちいいし、何より天気がよろしい。4時20分少し過ぎにご来光ということで、小屋前には多くの人が。


狙った通り綺麗なご来光。今年の山でのご来光第1弾。今年も何度か見られるといいと思います。


気温は氷点下でした。当然霜も降りていた。


さて、多くの人は下山の準備に入っていましたが。私はここでもう一度甲武信ヶ岳山頂を目指します。甲武信ヶ岳自体も百名山ですが、山頂は大展望台で他の多くの百名山を見ることができるとか。このコンディションなら行って損はないでしょう。テント泊装備なしの空身だとサクサク登れますし。で、木賊山の右奥に富士山。ちょっと雲海もできていて格好いい。




やはりこういうシーンが楽しい。新緑も花もとても大切だけれど、山頂や稜線からの絶景もとても大事。
奥秩父の主脈稜線を西側に見ると、国師ヶ岳や金峰山の山深いエリアが趣あります。




その少し北西には八ヶ岳。


拡大。いつもは茅野側から見ることが多いので、こっちから見ると少し印象違います。


そして、奥秩父主脈の奥には巨大な南アルプスの山々も見えます。迫力が違う。


これは白峰三山だと思う。雪も残っているし。見える角度のせいか、間ノ岳の印象がちょっと違いますが。


金峰山拡大。五丈岩はよく分かります。その横の山は鳳凰三山だろうか。


御嶽山と、


中央アルプス。


北アルプスも何だかんだ言って探してしまう。


ぐるっと一周して富士山と山頂標識。


最後に奥秩父の深い森をもう一度。


ひんやりした空気の中、朝の森の香りと小鳥の声、そして山頂からの景色を十分に楽しむことができました。他に2人くらいしか人がいなかったのも静かでよかった。
さて、十分遊んだらテントをたたみに戻ります。山頂付近の石楠花はまだ蕾でしたが、この日は霜が降りていた。


テントに着いてからはコーヒーを入れてクロワッサンなどのパンで簡単にエネルギー補給してからテントを撤収。テント場を出たのは最後から2番目でした。甲武信ヶ岳は地味系なので次にいつ来るか分かりませんが、落ち着いたよいテント場でした。


さて、下山ですが、まずは木賊山に登り返します。道はシラビソの原生林で気持ちがいいです。針葉樹の香りがよい。


奥秩父らしく苔も多いです。そこにバイカオウレンが咲いていたりする。


木賊山への登りの途中で少し開けたところから甲武信ヶ岳を振り返ることができます。ここからの甲武信ヶ岳が一番格好いいですかね。


ちょっと拡大。おむすび山である。


八ヶ岳と一緒に。これが一番絵になるかな。


木賊山の山頂では他の登山者のグループが休憩していたので、眺望もないからスルーして先を急ぎます。この辺りでは、標高の高いところではまだ残雪がありました。まあ、アイゼンは必要ないレベルです。


途中、開けたところから南側を眺められます。下山目的地である西沢渓谷の先にある広瀬湖でしょう。遠くに富士山も見えます。いい天気で楽しい。


しかし、この下山路、戸渡尾根と徳ちゃん新道ですが、かなりの急坂が続きます。テント泊装備だと足を滑らさないように踏ん張るのが大変でした。序盤はそれなりにいいペースで進んでいたのだけれど、途中から疲労のためか踏ん張るのが結構つらく、そうなるとペースも上がらずに苦戦しました。
まあ、この日はそれでもよくて、それは石楠花の時期だから。このルートは石楠花の回廊になっていて、花を愛でるということで遅いペースでもいいのです。




色の濃いものは華があります。




蕾も綺麗。


ちょっと薄めのピンク色くらいのが結構好みかもしれない。




白っぽいものも上品な感じです。


急坂にやられつつも、花に助けられました。花と言えば、標高が下がってきてからはツツジが多かったです。ミツバツツジかな。




針葉樹の新緑も個人的には好み。


しかし、下山路は険しい。スリップしないように気を使いました。


途中でサラサドウダンも見つけました。ドウダンツツジは奥多摩にもあるはずですが、これまでは発見できないでいたのでちょっと嬉しい。意外なほど背の高い木でした。




だいぶ標高が下がってきた感じ。


少し平らなところ。広葉樹の新緑が綺麗なエリア。標高的にもあと少しで下山完了かと期待が持てます。


カラマツの見事なエリアがありました。カラマツの新緑もいいですね。落葉する針葉樹は珍しいし。




最後にヤマツツジも登場。




そしてトチノキも。栃は巨木に育つので頼れる感じで好きな木です。西沢渓谷にはかなり群生している模様です。


10時半頃、やっと下山です。コースタイムを若干オーバーということで、やはり体力の減退が否めません。テント泊装備に耐えうる体を作り直さないと、本格的な縦走は危険ですね。
下山地点には田部重治の碑があります。


西沢渓谷はハイキングコースとしてよさそうですね。新緑や紅葉のシーズンは人気なのでしょう。流石に月曜なのでそれほど人はいませんでしたが。








その後は11時台のバスに乗って、運転手さんお勧めの「ハヤブサの湯」へ。かけ流しの温泉で600円でした。私としてはもう少し温度が高いほうが好みかもしれないけれど、この辺りでは瑞牆山の後の増冨の湯も湯温が低めだったから土地の文化なのかもしれない。まあ、十分疲れをいやすことはできました。


ここで軽く昼食も取って、その後塩山駅にバスで出て帰りました。


甲武信ヶ岳、確かに山としては地味ですが、新緑と石楠花のシーズンであれば十分楽しめます。奥秩父の山深さ、森深さは健在で、ゆっくりとテントを張って楽しむとよいと思います。奥秩父は行くと好きなのに、どうしてもアルプスなどに比べて計画されにくいエリアですが、近いのだしもっと遊ぶべきですね。






積雪期の唐松岳 - 強風の中ついに素人ヤマノボラー最高の絶景を堪能

2017-04-01 12:12:29 | 旅行
雪山シーズンに行きたいとずっと思いながらもタイミングが合わずにいた唐松岳。夏山シーズンには2016年9月に五竜岳からの縦走で登りましたが、この山はやはり冬に行きたい。なぜなら、一般登山者でも歩きやすい八方尾根を標高差850メートル程度登ればよいという、北アルプスの山とは思えない簡単なルートだから。ゴンドラとリフトを乗り継いで通年営業の八方池山荘に泊まれば、公共交通機関利用の人でもご来光を見ながら雪に覆われた北アルプスの絶景が楽しめる。同じ後立山連峰にある白馬三山や五竜岳はもちろん、山頂からは剣岳・立山、そして薬師岳や水晶岳、針ノ木岳の奥に槍ヶ岳まで見渡せる。ということで、こうした名山に積雪期に登るスキルがない人にとって、名山を積雪期に直接眺めるために登る山なのです。

いつものように予想天気図や高層天気図を天気予報と併用し、八方池山荘の予約と高速バスのチケットを取るタイミングを計ります。この時期の唐松岳は人気の山で、登山者だけでなく山岳写真を狙う人たちやバックカントリースキーヤーでも混雑します。そのため、土曜日は山荘の予約が取れないことも。今回は3月の連休直前の金曜日に有給休暇を取得し、17日の金曜宿泊、18日の土曜に山頂アタックという予定で臨みました。事前の高層天気図予報では晴れ&強風を確信していたものの、金曜になると他の天気予報サイトでは曇り予報に。ちょっと不安でしたが、結果的には事前の予想通りの展開に。まずは山行のまとめ的な写真をいくつか。







金曜日はバスタ新宿を朝一番の7:35に出発する高速バスで白馬八方に向かいます。新宿と白馬八方の往復は8,520円。ソロで車を運転しないとこういう出費が結構かかりますが、実際には車を買って維持費も考えると、この程度の出費は大したことないと思う。
バスの窓からの風景で意外だったのは、信濃大町あたりまではほとんど雪がなかったこと。今年はだいぶ雪が降った印象がありますが、それは私がよく行く谷川岳などの北関東の話ですね。長野県中部というか、北アルプスの南部にあたる常念山脈あたりは結構雪が少なかったようです。

それはともかく、この日は八方池山荘に泊まるだけの予定なので、八方に着いたらバスを降りて昼食取って白馬の町を横切ってゴンドラ・リフトに向かいます。白馬八方では町にも雪がありましたが、時期的に結構暖かくなってきていてどんどん溶けていました。


山荘まではゴンドラとリフト2つを乗り継いで行きます。往復で2,900円。ゲレンデの横を登山してもいいのですが、無駄な苦労をする気もないしスキーヤーの邪魔になるのも嫌なので素直にゴンドラを利用。標高1,930メートルの山荘まで楽に上がります。
白馬八方尾根スキー場はさすがにちゃんと雪がありました。平日なので空いていましたが。


振り返ると、新潟県の頚城山塊の山々が見えます。山頂にちょっと雲がかかっているプリン型の山が妙高山でしょうか。高山植物の宝庫で湿原もある地帯なので、今年の初夏にテント泊で行ってみたいと思っている所です。


まあ、初夏の高山植物シーズンのターゲットはたくさんあって、お天気と仕事の関係でどこに行けるかは今の段階では分かりません。それこそ白馬岳も行きたい。北岳も形のよいキタダケソウを見ていないから再訪しないといけないし。谷川連峰もちゃんと縦走していないから行っておきたいし、東北地方の飯豊山脈とかにも行きたい。

再びそれはともかく、無事に八方池山荘に到着です。チェックインしてモンベルカードを提示。通常は1泊2食付きで9,800円ですが、カードの割引で500円引きになります。なお、翌朝は夜明け前に出発しようと思っていたので、朝食はお弁当に切り替えてもらいました。夜のうちに受け取ることができるため、出発前に腹ごしらえすることが可能です。


この日は無理せず、基本的に山荘でダラダラする予定でしたが、それでもお天気も悪くはないので八方池まで1時間程度のハイキングをしました。が、ガスがかかっていて白馬三山は見えず。適当に体慣らしをして雪の感触を確かめるだけに終わりました。予想通り、雪はかなり硬くなっていてラッセルはほとんど必要なし。時々埋まっても膝下くらいまでなので、翌日は最初からアイゼンで大丈夫そうです。

八方池山荘に戻ると、同室になった30代の男性がいらしたのでいろいろ情報交換しました。山岳会に入られていて私よりもずっと経験がある方だったので、冬のテント泊とか夏の沢登りの話とかを聞くことができて興味深かったです。教えていただいた山岳教室には一度参加してみようかと思いました。私も沢登りでバリエーションルートを行くのは興味があって、それができるようになると高山の稜線風景だけでなく山奥の大きな滝とか深い森の中の絶景に出会うことができるようになると思います。

そして夕食。八方池山荘の夕食はバイキング形式なので、食欲に合わせて結構食べられます。


その後は宿泊者の方々とお話させていただいたのですが、アマチュア写真家の方が大勢いらしていろいろと教えていただきました。写真はたくさん撮りますが、あくまで旅行のスナップ写真や高山植物の写真、あるいは山行で見た景色の記録と思っていました。しかし、本当に写真の好きな人は絵としてどのようなインパクトがあるか、芸術として考えているので、単にきれいな景色の写真だとまったく興味の対象外だということが分かりました。奥が深い世界です。例えば、私の山行の写真では2015年の鬼怒沼の写真などは自分では好きだし4travelのエントリでも好評だったのですが、ある種のルールに反していて芸術点は極めて低いらしいです。難しいもんだ。まあ、面白いお話を聞けて楽しかったです。私と同部屋の方は写真にも興味があるということで、同人会に誘われていました。

そして夜。おきて破りの大吹雪&猛烈な風。山荘が揺れているかと思うほど。今回の山行前には高層天気図を相当丹念に読んで晴れを確信していたのですが、流石に不安になる。さらに、同部屋の方が教えてくれた上空の雲の様子を予想できるサイトによると、翌朝は6時くらいには結構雲が出ているとの予報。ここまで来たらジタバタしても始まらないですけどね。

さて、翌朝は5時に出発です。4時半に出発された方も数名いました。6時少し前が日の出ということで、5時半頃には明るくなるだろうからヘッデンの灯りをつけて歩くのは30分くらいで済ませたいと思ったのです。おにぎりなどのお弁当を食べていざ出発してみると雲はあまり出ていませんが風がもの凄い。高層天気図の分析で予想していたことですが、優に風速15メートルを越え、時には20メートル台だったと思います。積雪期の北アルプスは初めてなので、これまでの経験がなければビビッていたと思います。しかし、八ヶ岳でも谷川岳でもこの程度の風は経験済み。心を強く持って行きます。
徐々に明るくなってきて、八方池の手前から白馬三山を見ると一部に雲がかかっているもののだんだんと晴れていく感じ。




自分の天気図分析が勝利したと確信し、歩みを進めます。下の樺と言われる樹林帯のあたりで日の出となりました。


すると、ピンクに染まる白馬三山。夏に来た時もガスに隠れていましたが、ついに、しかも最高の舞台で絶景を見せてくれました。




左に目を転じると五竜岳。相変わらずゴツくて男性的な山容。






その奥にある後立山連峰の盟主、鹿島槍ヶ岳はこの時点では雲に隠れていました。


ここで4:30に出発した3名の登山者に追いつきましたが、男性2名のパーティは強風に加え体調もよくないということで撤退をされる模様。女性ソロの方が一緒に行こうというので、ここからは二人で登りました。この方、結構頻繁に山に来られているようで、かなりの健脚だし冬の唐松岳も経験ありということで、ルートのアドバイスをいただきながら登りました。写真はその女性登山者です。


前夜が吹雪だったので、トレースは消えてルートがわかりにくいところがありました。それをこの女性に教えていただきましたが、膝上、深いところは腿までラッセルの急斜面を行くことになったので私が先頭で道を作りました。この20~30分くらいの難所は結構やっかいで、一気に体力を使って筋肉疲労が出ましたが、まあこれも雪山の醍醐味です。昨年の硫黄岳の経験がここでも生きていて、このくらいのことではめげずに自信を持って進むことができました。


上の樺と言われるところを過ぎ、難所も切り抜けると風が通り抜けるコルに出ました。相変わらずの強風に煽られますが、白馬三山方面が美しい。雲は完全に取れました。


不帰。ここを冬に行く人はいるのだろうか。




五竜と、相変わらず雲に隠れた鹿島槍。




さらに少しのぼると、丸山というケルンのある場所に出ます。


ここまで来ると目指す唐松岳山頂も視界に入ります。一番左の山です。


さらにこの道を登る。左に五竜岳。正面に唐松岳の稜線に至る丘。


右の谷にはシュカブラが形成されていました。


そして、ついに八方尾根を登り切って稜線に出ました。すると、唐松岳だけでなく、黒部川の向こうの立山連峰の山々も目に飛び込んできます。まさに勝利の瞬間。
目指す唐松岳。


立山と剣岳。


立山の奥に薬師岳、そして黒部の山々。


稜線から見た五竜岳。でかい。


一緒に登っていた女性は、あまりの風の強さとトレースがない状態が不安だったのか、山頂は諦めようと提案されました。しかし、私は強気。あと20分程度の道ですから、切り開く覚悟はできていました。


結局、女性も決断して2人で登頂を目指します。右側は雪庇ができているので避けるのですが、左側も雪が安定しない。風が強いので石や岩が露出している所も多く、アイゼンをひっかけて転ばないように気をつけながらルートを探します。山頂直下は前夜の吹雪で積もった柔らかい雪がアイスバーンの上に乗っていて不安定で、さらにかなりの急斜面でトラバースしながら高度を上げるのも困難。アイスバーンに届くようにピッケルを刺し、アイゼンを蹴り込みながら直登で進みました。90度の壁という訳ではないですけれど、それでも壁に張り付いて登るイメージでしたね。そんな中、ちょっと気を抜いてアイゼンの蹴り込みが弱かったら何と2メートルほど滑落。滑落のスピードがゆっくりだったので、焦らずに体を雪面にくっつけて体重を分散しながらピッケルとアイゼンで体を止めて登りなおします。少し後で見ていた女性は声も出せないほど驚いていて、後ほどTwitterでコメントされていました。驚かせてすみません。本人は実はかなり冷静でした。

そして、山頂手前で両足だけで体を支えられるくらいの足場が作れるようになったらピッケルを抜いて立ち上がり、ついに登頂です。結果的にちょうど8時の登頂で、3時間というかなり速いペースでした。強風で必死だったので、逆にバリバリ登ることができたのかも。

ここからは山頂からの大絶景。まずは振り返ると、太陽の下に登ってきた道が。


北には白馬三山。


南には五竜岳の奥に針ノ木岳、そして水晶岳など黒部の山々。ぐるっと回って薬師岳、立山、剣岳など立山連峰。




Google photoのサービスでパノラマ化された写真です。このような絶景が360度広がっています。


取りあえず山頂標識と自撮りをしておく。




ここからは、唐松岳から見える北アルプスオールスターのポートレイト。まずは五竜岳。




後立山連峰の稜線越しに見える槍ヶ岳。稜線右端のちょっと突き出ているのが針ノ木岳。




水晶岳と赤牛岳。黒部最奥の巨大な山々。


黒部のビッグマザー。カールの大きい薬師岳。


岩と氷の殿堂、剣岳。




その奥に連なる3,000メートル峰、立山。




不帰の嶮越しに白馬岳。




最後にパノラマでピッケルと山頂標識。


十分に堪能して下山します。まだ他の登山者は現れず、我々2人だけでこの絶景を占有できました。まずは風を避けて行動食とお茶を取るために唐松岳頂上山荘に向かいました。


休憩をしつつ、剣岳や五竜岳、もちろん唐松岳の稜線からこの日最後の写真を撮りましたが、山頂からのものと似たようなショットなのでここでは省略。
さて、下山ですが、下山開始して30分くらいすると急に風が止んで気温が上がりました。そんな中、シュカブラや不思議な雪の造形を見ながら下りていきます。


スノーシューかワカンで踏み固められたところが残って、あとは風で雪が飛ばされたんでしょうかね。とても不思議です。




下山中に見ると、ついに鹿島槍ヶ岳も姿を見せてくれました。






ゴンドラが動き始めるとバックカントリーの人や登山者が大量に登り始め、早朝に私たちがつけたトレースをたどって無風の中唐松岳に登って行きました。混雑前に凛とした空気の中で景色を楽しむことができ、前夜泊した甲斐がありました。10時過ぎには八方池山荘に戻り、アイゼンなどの装備を外してゴンドラで下山です。白馬の里から見た白馬三山。


麓の温泉でさっぱりして、昼食を取ってビールを飲み、お土産を買って帰ります。早朝登山の戦闘モードから解放され、すっかりバケーションモード。昼食とビールは、八方の湯の斜向かいにあるLion Cafeでハンバーガー。ラーメンやトンカツではなく、バーガーが食べたい気分だったので。


この後、この時期恒例のお土産である信州ナチュラルビールと信州のウイスキーを買って、3時の高速バスで帰りました。
積雪期の唐松岳、本格的に登山をやっている訳ではない一般ヤマノボラーにとって経験できる、最高の雪山風景ではないでしょうか。何だかんだ言っても北アルプスなので、風も含めて楽ではないし危険もあります。全ての人にお勧めはできません。しかし、他の雪山で経験を積んで技術を磨き、クラックを回避したり耐風姿勢をマスターしたりアイゼン・ピッケルワークを普通にこなせるようになれば、挑戦する価値はあるでしょう。
次は積雪期の3,000メートル峰で乗鞍岳か仙丈ケ岳、そしてアルパイン的な要素が入る八ヶ岳の赤岳が目標です。

厳冬期の青空の下に白き谷川岳東面を求めて

2017-03-06 00:02:01 | 旅行
谷川岳は大好きな山で、4年連続で冬に登っています。とは言っても、岩登りの技術がある訳ではないので安全な天神尾根ルートばかりですが。しかし、谷川岳の本当の厳しい姿はその東面、遭難者数世界一の原因となる一の倉沢の岩場であり、それを湯桧曽川を挟んで対岸の山から眺めるのは正に絶景。しかも、雪の多い今年に青空の下のその景色を見ることができれば、これまでの自分の山歩き史上でも屈指の絶景なのは間違いなし。

そのシーンを見るには、白毛門という山に登る必要があります。しかし、ここは谷川岳本体ほどはメジャーでないので入山者も比較的少なく、何かあったら遭難しやすいです。入山者が少ないということは、厳冬期では新雪ラッセルを強いられる可能性も高く、登山口から山頂までの単純標高差も1,000メートルほどなので谷川岳や日光白根山、あるいはベースキャンプから見た八ヶ岳の赤岳などより厳しい。そして、ルートはかなりの急登で体力も要求されるうえ、ヤマレコレポートなどを見ると結構クレバスができている頻度が高く、上手く回避してルート工作できないとクレバスに転落することもある模様。さらに、樹林帯の尾根を行くから基本的には大丈夫だとは言っても、山頂直下などでは雪崩も気になるところ。ということで、これまでは敢えて挑戦を避けてきました。しかし、今年は雪が多くて谷川岳東面の絶景度も高いでしょうし、自分の体力もかなり充実。雪山にもかなり慣れてきて雪質を感じながら歩き方を工夫したり、クレバスやクラックに注意する技術もついてきている。そこで、予想天気図的に晴れが期待できそうな2月25日の土曜日に挑戦することにしました。

天気予報・天気図的には一日中晴れのはずですが、油断でいないのが谷川山系。とにかく晴れる日が少ないし、天気の変化も激しいので。この日も上越線の水上駅に9時半過ぎに着いた時にはこのように晴れていましたが、


谷川岳ロープウェイ行きのバスに乗って土合橋の登山口のところで降りたところ、このように曇り。さらに、小雪も混じるという状況。またしても天気に泣かされるパターンか。


それでも気を取り直し、登っているうちに晴れてくることを期待して行動開始。公共交通機関利用のため、この時点で10時半。白毛門山頂との往復は6時間から6時間半だとすると、もたもたしてはいられません。一方、遅くスタートすると先行者がトレースを作ってくれているのが雪山のメリット。この日は天気予報が晴れだったので、既に10名程度が入山していたようです。写真は下山後のものですが、このロッジの向かって右側の脇に登山道への入口があります。


少し進むと動物の足跡と何やら埋まったものがあります。ヤマレコなどでおなじみの、馬蹄形縦走コースの表示図でしょうか。完全に雪に埋まっています。今年の雪の量を物語る。


川の感じはなかなか風情があります。


雪で埋まった橋を渡り、いよいよ白毛門へ。ここからは一本道の急登。他のブログで「もう笑うしかない」と形容されていた、とにかく急坂が延々と続く道です。




谷底方面。結構な傾斜だ。


この日は体調がよく、夏道で3時間半くらいのルートを2時間半ほどで駆け上がることができたのですが、それでも急登には息が切れます。そして、事前リサーチ通り雪庇が凄い。トレースをたどるのを基本としつつ、雪庇や雪の状況などを勘案して安全と思われるところを歩くように心がけます。落ちたらシャレではすみません。


上を見ても急登が途切れることなく、雲も晴れない。


下を見てもこの通り。今日はお天気に負ける日なのか。


途中、10名弱の方々とすれ違いました。早朝から入山されていた方々と思われます。情報が欲しかったのでできるだけ話しかけたのですが、どうやら山頂に立ったのはそのうち半分にも満たない模様。クラックが多くて山頂直下のものは大きく、トラバースは可能なもののやはり危険も伴うということで、多くの方が途中で撤退されていました。白毛門、やはり初心者では厳しい相手なのか。

急登続きですがしばらく進んで、樹林帯を抜けて視界の開けたところから谷川岳東面を見ることができました。が、やはり山頂稜線には雲がかかっているし、全体的に小雪のちらつく状態で絵的には今一つ。大迫力の岩壁なんですけどね。


そして、登山開始から2時間ほどで松ノ木沢ノ頭という谷川岳東面のビューポイントに到着。ここから白毛門の山頂まではクラックが多く、それをトラバースしても最後に凍結した急斜面が待っている難コースです。取りあえず山頂方面を眺める。


白毛門の名前の言われになっている、ジジ岩とババ岩。これに雪の積もったシーンが白髪で、2つの岩が門だということらしい。


谷川岳方面はいまだにスッキリしないですが、それなりに青空も見えています。この日は気温が高めで風も穏やかだったので、雲が取れるのを祈ってしばらく待ってもいいかもしれない。


谷川岳から続く蓬峠方面も稜線が雲に覆われている。


まずは山頂を目指すことにして、急な道を一歩一歩進みます。クラックが多くて怖い。


ジジ岩・ババ岩の真横まで上がってきた。


この辺りでルート上に比較的大きなクラック。トラバースした跡がありますが、それもクラックの直ぐそばを通っていて、気温の低かった早朝ならともかく12時を回っているこのタイミングではちょっと怖い。足早に通り過ぎようと思いつつも、魔がさして写真を撮る。


と、足元が崩れてズボッっと雪にはまり、両足が宙に浮いた状態に。幸い両脇が雪の上に出ていたので、必死に這い上がる。体重のかけ方によってはさらにクラックが広がって完全に落下する恐れもあるので、できるだけ体重を分散させるように気をつけつつ必死に脱出。他の登山者が少ないので落ちたら発見されない恐れもあり、かなり焦りましたが、何とか事なきを得て雪の上に出ました。
これに懲りて、クラックを大きくトラバース。新雪ラッセルしつつ、さらに今歩いている所が崩れたら終わりかもしれないと思っていました。それにしても、自分の今回の行動は不用意だったとはいえ、雪をかぶって状況の分からないクラックは恐ろしい。これを見極めて歩行する技術はどうすれば身に着くのか。

そして、さらに上方まで来ると、これまた大きなクラックというかクレバスが。


途中ですれ違った他の登山者の方々が言っていたクレバスだと思いますが、確かに左側からトラバースした跡があります。しかし、気温が上がっていることと先ほどクラックにはまった事実、トラバースのトレースもかなりの急斜面についていて足を踏み外したら滑落の恐れが高いことなどから、今回はここで引き返すことにしました。おそらく標高的には山頂まであと100メートルもなかったでしょう。この時点では白毛門山頂方面は雲が取れ始めていたので残念な気もしますが、仕方ない。登山開始から2時間半くらいでちょうど1時頃の決断。体調的には好調で、相当速いペースで登っていたので残念ですが。

まあ、そうと決まれば安全な松ノ木沢ノ頭まで戻り、そこでおにぎりやパンで栄養補給するのが理にかなっています。クラックが怖いので写真をあまり撮らずに下山開始。
ちょっと安定したところから振り返った白毛門山頂方面。晴れ始めています。


雪庇の凄い下山ルート。


谷川岳方面は稜線の雲が取れない。


そして、松ノ木沢ノ頭に下りてきて休憩です。他の登山者の方もやって来て、少しにぎやかな感じでした。白毛門山頂方面は晴れて格好いいので自撮り。




谷川岳方面ははれない。白毛門に登頂できなくても、谷川岳東面の絶景が見られれば今回は勝利なのですが、どうもスッキリいかない。稜線だけ雲が取れない。


蓬峠方面も同様。


この後、2時過ぎまでしぶとく待ちましたが、稜線にはずっと雲が居座っていてどうしようもありませんでした。何枚も写真を取ったものの、青空は出てきてくれても雲は取れず。




仕方ないので諦めて下山です。


下山中の動物の足跡。下山時に気が付いたことですが、ちょっとした斜面では小さい雪崩の跡もありました。怖いものだ。


途中で眺めても、やはり雲が稜線に残っていた谷川岳。この日はこのままだった模様です。


気温上昇で雪が腐ると言われる現象でしょうか、標高が下がってくると雪が柔らかくグズグズの状態に半分溶けてきて、一歩一歩が踏み抜きの状況に。これは体力を消耗します。パウダースノーの下山はモフモフで膝への負担もなくて快適ですが、この日の下山はかなり厳しかった。やっとの思いでロッジ脇の入山口まで戻ってきました。


電車に乗ろうと思い土合駅まで歩きましたが、3時台の列車は10分程度の差で逃していました。仕方ないので4時過ぎに来るバスに乗って水上に出ます。バスを待つ途中、夕日に照らされた白毛門。今回は山頂も踏んでいないし、何より谷川岳東面の絵を撮り切っていないので、来年にでももう一度挑戦ですな。


最後に、Google Plusのサービスでパノラマ化したもの。雲がかかっていても、大絶景ポイントであることに変わりはないですな。谷川岳、贔屓の山です。