業務日誌

許せないヤツがいる 許せないことがある
だから倒れても倒れても立ち上がる立ち上がる
あいつの名はケアマネージャー

往生際 その2

2007年07月29日 | 業務日誌
家庭不和のイライラがつのり、透析を拒否してしまったトシオさん。
我侭です。
迷惑です。
命知らずです。
それでもこのまま放置するワケにはいきません。
連絡を受けた私は、すぐさま師長室に飛んでいきました。
とにかく私からもトシオさんを説得したいと思うがどうしたらいいだろうかと相談に行ったのです。

クリニックが受けたトシオさんからの苦情は、
・送迎時間が早いので朝飯が食べられない
ということでしたが、森師長がおっしゃるにはもっと他にも理由があるそうで。

「トシオさんは透析開始から毎日3,4回、クリニックに電話をかけてきてました。それがねえ、どうでもいいようなことなんですよ。明日は誰が自分にハリを刺すのかとか、クリニックで出る食事がどうとか、そんなことばかり。
トシオさんから電話があったときに私たちナースが穿刺でバタバタしているときには電話を保留にして待ってもらったりしたこともありますが、そのときトシオさんから患者を待たすなと叱られたりもしましたよ。
でも、私たちとしてはトシオさんに対してもどの患者さんに対しても、同じように丁寧に対応しているつもりですし、最初にここで透析開始になるときに何度も説明したように、理由なく透析を拒否するような患者さんはうちでの透析をお受け出来ないと言ったとおり、トシオさんにはもう他所にいっていただきます

それでもなんとか、それはマズいでしょうという事務長のとりなしもあり、

昼の透析までに自分で来て、トシオさんが謝罪すれば継続してもいい

とのお言葉をいただきました。

事務長はあとで
「私としては、患者が医療機関に謝罪しなくてはならないなんてことがあるとは思えないので、いくら我侭な患者さんでも謝罪って言葉はちょっとね…」
とおっしゃってましたが、森師長は患者さんや関係者に謝らせるのが何よりも大好きな方なので…。
「そこまで徹底するからこそこのクリニックは秩序が保たれているのです」
とは師長のお言葉です。

それからトシオさんに電話して説得です。
もともとクリニックの透析患者送迎は無償でやっていることですから、送迎の時間がお気に召さなければ介護タクシーを組みますよ、と。
そしたらトシオさん、
「そもそも自分のヨメが朝飯を作らないことが原因なのじゃい!ハリケンさん、もう我慢できんのじゃい、なんとかしてヘルパーさんを使えるようにしてくれなければ、ワシは透析が出来なくなって死ぬんじゃい!」
トシオさん、何度も言ったでしょう、同居家族がいる御宅に生活援助は入れられないんですよ。
「だったらどうするんじゃい!」
朝の透析が時間が早すぎるのなら、お昼の透析に変えたらどうですか?
「たとえ昼の透析にしても、リリーがメシを作ってくれないからどうしようもないんじゃい!どうしてもヘルパーさんが必要なんじゃい!!

わかりましたトシオさん、では、トシオさんからナマホのワーカーさんに現状を説明して下さい。
そして保険者がトシオさんの事情を認めてくれて、ヘルパーを入れてもいいと判断されれば、すぐにヘルパーさんを組みましょう!

そしてトシオさんはすぐにナマホ課のワーカーに電話し、リリーさんが夜の仕事をしていることだけ隠して、ヘルパーさんが欲しいと訴えました。





どうなったと思います?





なんとナマホのワーカーから
ヘルパー利用可
というお答えが返ってきたんです!

                   つづく






往生際 その1

2007年07月29日 | 業務日誌
往生際:(1)死にぎわ。(2)追いつめられてあきらめる時。また、その時の決断力や態度。「―が悪い」

お待たせいたしました。
当ブログの主要登場人物、トシオさんの続報でございます。
トシオさんの直近のトピはコチラ

私の担当する利用者 田中トシオさん(仮名)要介護3 72歳/男性、ナマホ。
いろいろありまして、韓国人妻のリリーさんと結婚し同居(入籍はしたものの法務省から認可がおりていない)。
今年に入ってからも、何度も何度も入退院を繰り返し、ネフローゼになっても透析拒否されていましたが、この5月にやっとシャント作製。その後も腫れがひかずに透析導入できたのが45日後と、ゴネにゴネまくったトシオさん。

そのトシオさんが
ひがしクリニックで

透析維持通院することになりました。

透析を導入したC病院では、当ひがしクリニック以外にも2,3の透析クリニックを紹介したのですが、ご本人が
「わしはひがしクリニックがいいんじゃい!」
と仰るのですから仕方ありません。
私や前担当ケアマネのナース河合より、トシオさんの情報を事前に把握していた森の神(クリニック師長)も、これがC病院の病診連携室のワーカーからの紹介であれば断って下さっていたはずなのですが、ふだんはそのようにワーカーを通じてやってくる患者紹介が、このトシオさんに限って主治医先生を介してやって来ました
そーなるともーどーしよーもありません。
この先どんなトラブルがあろうとも迎え撃つ覚悟で、森の神と何度も話し合いの場を持ち、受け入れとなりました。


そんなトシオさんから
「明日の透析はお休みするんじゃい!」
という電話がかかってきたのは、透析開始からまだたった3回目のことでした。

皆様もご存知でございましょう。
透析患者さんは、いくら透析しても、通常の人たちの10%程度しか除水できません。
たった1日でも、透析を休むなんてことはもってのほかでございます。
ウチのクリニックはリスクマネジメントが大変しっかりしておりまして、事前面接のときに、透析拒否をする患者さんは即刻放り出しますよという確認をキッチリとっています。特段の理由もなく日時をずらすことも決してしません。

トシオさんが透析を休むと電話してきた朝、すぐにケアマネの私にもクリニックから連絡がありました。
私はああ、終わったなと思いました(色んな意味で)。
ナマホ課のワーカーさんに連絡をとって、説得してもらわなければ、とか、トシオさんをみてくれる透析クリニックが他にあるだろうか、とか、これからとりかからなくてはならない仕事のことを思いアタマがクラクラしたのでございます。
トシオさんが透析を休むと言った理由は、本人いわく
「送迎が早すぎて朝飯も食えんのじゃい!」
「朝飯が食えんとインスリンが打てんのじゃい!」
などなどと訴えられますが、ホントの理由は家庭不和からくる八つ当たりなのです。
トシオさんの妻のリリーさんは、ご本人は否定されますが仕事をされています(ナマホなので超秘密)。それも夜のお仕事です。
で、夜のお仕事が終わると早朝から宗教の集まりに参加されます。帰宅は朝の5時とかです。
そこからリリーさんはお休みになられますので、トシオさんの朝食を作ってくれません。
トシオさんはそのことでリリーさんと大喧嘩になり、イライラして

ヨメが朝飯も作らない
   ↓
自分にかまってくれない
   ↓
キレまくる
   ↓
透析に行かない
となったのでございます。

                    つづく