火曜日。マネージャはこの日も休みだった。前の週の金曜日に子どもがウィルス性腸炎か何かで入院したとかで早退していたが、あるいはそれが感染ったのかもしれない。そしてこの日もゆるい会議で一日を過ごすことになる。
ゆるいついでに早めに切り上げて買い物に行くことにした。買い物と言ってももちろん社用だ。土曜日に電気店を回った時にいろいろ買いたかったのだが、どの店もクレジットカードが使えないというので大きな買い物が出来なかったのである。
「キャッシュかユーロカードだけです」(店員談)
ユーロカード(EC)とは欧州連合圏内だけで使えるカードらしい。SATURNほどの大型店でも使えないというのでこれは絶望的かと思っていたが、オフィスの現地人に探してもらうとクレジットカードが使える電気店があった。フランクフルトからさらに電車を乗り継いで行かなくてはならない郊外の店だ。
5時にオフィスを出てホテルに荷物を置き、郊外の店「ProMarkt」へ向かう。電車でフランクフルトまで出てそこからタクシーに乗る。想像していたよりも遠く、順調に飛ばしても20分ほどかかったが何とか店に到着。最初にクレジットカードが使えるかを確認してから日本から頼まれていた品々をかき集める。
SCARTケーブル:10本
電源テーブルタップ:10本
3Dメガネ:3個
WiFiスティック:1個
HUMAX STB:1台
約10万円。
かなりの量になった。
ビニールの袋が破れそうなので追加をもらって二重にしてみたが、指に食い込むほど重くてかなりつらい。さらに運の悪いことにタクシーが全然通りかからない。さっきの運転手に30分後に来てもらえばよかった。
仕方がない、トラムに乗って帰ることにする。
ProMarktのすぐそばにトラムの駅(停留所?)があった。券売機で券を買おうとするが、どうやって買えばいいのか、つまり目的地までいくらのチケットなのかが分からない。しばらく券売機と格闘していたがやっぱり分からない。誰かに聞いてみようと周りを見渡すとすぐ近くのベンチに美女が一人座って本を読んでいた。その向こうには若い男女数人がきゃっきゃ騒いでいる。
「Excuse me.」
と声をかけるとその美女はすっとこちらを見た。と同時に向こうでキャッキャはしゃいでいた若者たちの騒ぎ声が止まった。アジア人が長い時間券売機の前に立ち尽くしているので気になっていたのだろう。
さらに美女に話しかける。
「XXXに行くんですが、こちら側であってますか?」
念のために断っておくが、美女を選んで声をかけた訳ではない。一番近くにいたのがたまたま美女だっただけだ。
「Yes」
とだけ彼女は答えた。そしてまっすぐこちらを見た。
「その、すみません、どのボタンを押せばいいのか分からなくて」
すると彼女は一瞬はっとした様にほんのわずか表情を変え、素早くすっと立ち上がって券売機に付いている無数のボタンの中の一つを指差した。
「これです」
と言ってまたまっすぐにこちらを見た。冷静沈着で知的な雰囲気のある彼女だが、一瞬見せた表情の変化と素早い行動から彼女の人柄が垣間見えた。
「どうもありがとう」
「どういたしまして」
と言って、また本に目を落とした。向こうではまだ若い男女がはしゃいでいた。
無事トラムに乗り、途中で電車に乗り換える。もう一度礼を言いたかったが美女はもういなかった。
フランクフルトからでも会社の経費でタクシーに乗ればよかったのかもしれないが、変に貧乏根性が出てしまってホテルまで思い荷物をぶら下げて帰る。これを日本までハンドキャリーするのは無理だ。明日、事務所に寄って日本へ送ってもらうよう頼んでから帰ろう。
グッと腹が減って来た。
ゆるいついでに早めに切り上げて買い物に行くことにした。買い物と言ってももちろん社用だ。土曜日に電気店を回った時にいろいろ買いたかったのだが、どの店もクレジットカードが使えないというので大きな買い物が出来なかったのである。
「キャッシュかユーロカードだけです」(店員談)
ユーロカード(EC)とは欧州連合圏内だけで使えるカードらしい。SATURNほどの大型店でも使えないというのでこれは絶望的かと思っていたが、オフィスの現地人に探してもらうとクレジットカードが使える電気店があった。フランクフルトからさらに電車を乗り継いで行かなくてはならない郊外の店だ。
5時にオフィスを出てホテルに荷物を置き、郊外の店「ProMarkt」へ向かう。電車でフランクフルトまで出てそこからタクシーに乗る。想像していたよりも遠く、順調に飛ばしても20分ほどかかったが何とか店に到着。最初にクレジットカードが使えるかを確認してから日本から頼まれていた品々をかき集める。
SCARTケーブル:10本
電源テーブルタップ:10本
3Dメガネ:3個
WiFiスティック:1個
HUMAX STB:1台
約10万円。
かなりの量になった。
ビニールの袋が破れそうなので追加をもらって二重にしてみたが、指に食い込むほど重くてかなりつらい。さらに運の悪いことにタクシーが全然通りかからない。さっきの運転手に30分後に来てもらえばよかった。
仕方がない、トラムに乗って帰ることにする。
ProMarktのすぐそばにトラムの駅(停留所?)があった。券売機で券を買おうとするが、どうやって買えばいいのか、つまり目的地までいくらのチケットなのかが分からない。しばらく券売機と格闘していたがやっぱり分からない。誰かに聞いてみようと周りを見渡すとすぐ近くのベンチに美女が一人座って本を読んでいた。その向こうには若い男女数人がきゃっきゃ騒いでいる。
「Excuse me.」
と声をかけるとその美女はすっとこちらを見た。と同時に向こうでキャッキャはしゃいでいた若者たちの騒ぎ声が止まった。アジア人が長い時間券売機の前に立ち尽くしているので気になっていたのだろう。
さらに美女に話しかける。
「XXXに行くんですが、こちら側であってますか?」
念のために断っておくが、美女を選んで声をかけた訳ではない。一番近くにいたのがたまたま美女だっただけだ。
「Yes」
とだけ彼女は答えた。そしてまっすぐこちらを見た。
「その、すみません、どのボタンを押せばいいのか分からなくて」
すると彼女は一瞬はっとした様にほんのわずか表情を変え、素早くすっと立ち上がって券売機に付いている無数のボタンの中の一つを指差した。
「これです」
と言ってまたまっすぐにこちらを見た。冷静沈着で知的な雰囲気のある彼女だが、一瞬見せた表情の変化と素早い行動から彼女の人柄が垣間見えた。
「どうもありがとう」
「どういたしまして」
と言って、また本に目を落とした。向こうではまだ若い男女がはしゃいでいた。
無事トラムに乗り、途中で電車に乗り換える。もう一度礼を言いたかったが美女はもういなかった。
フランクフルトからでも会社の経費でタクシーに乗ればよかったのかもしれないが、変に貧乏根性が出てしまってホテルまで思い荷物をぶら下げて帰る。これを日本までハンドキャリーするのは無理だ。明日、事務所に寄って日本へ送ってもらうよう頼んでから帰ろう。
グッと腹が減って来た。