バシッ!
力強いボールがミットに収まる。
ボールを受けているのはニシだった。
室内練習場のピッチャーマウンドには少年が立っている。
リョウタロウだった。
バシッ!
「いいボールだ、いよいよ10日後だな」
「ウンッ!」
バシッ!
リョウタロウは、この鉱山町のリトルリーグでもメキメキと頭角を現しエースに成長していた。そして合衆国北西地区代表としてワールドシリーズの出場を決めていた。
バシッ!
リョウタロウのボールを受けながら、ニシは何物にも代えがたい喜びを感じていた。
しかし、喜びを分かち合えない寂しさを感じていたのも事実だった。
病床にあった妻の最期を仕事で看取ることができなかった3年前を悔やんでいた。
リョウタロウとニシが二人で遅い夕食をとっている。
「お父さん」
「ん?」
「お父さんは、甲子園に出たことがあんるんでしょ?」
「あぁ」
「どうだった?」
「どうって?」ニシは戸惑った。
リョウタロウも戸惑っているようだった。
「あのね、野球の神様っているのかなぁって思ってさ、甲子園に行ったら会えるのかなぁって思って・・・アハハハハ、・・・いるわけないかぁ~、でもさぁ、もし、もしいたらさぁ~」
「いたらぁ?・・・」
「なんでもないや」リョウタロウは笑った。
ニシは少し笑って、ソファに無造作に置いてあるキャッチャーミットを見つめながら、息子が甲子園に出るまで彼のボールを受け続けてやろうと心に強く誓ったのだった。
リビングの隅には飾り棚がある。
甲子園の出場記念ボールの傍には優しく微笑むリョウタロウの母の写真が立ててある。
・・・・写真立ての横に置いてあったリョウタロウのケイタイが突然鳴り響く。
着信の表示を見てリョウタロウは声を上げた。
「タカシからだッ!」
全国大会で優勝した直後に電話を掛けてきたのだった。
液晶画面は前のチームメイトたちが大騒ぎをしている様子を映し出している。
「オレたちもアメリカ行くからなッ!、待ってろォッ、リョウタロウッ!」
つづく
力強いボールがミットに収まる。
ボールを受けているのはニシだった。
室内練習場のピッチャーマウンドには少年が立っている。
リョウタロウだった。
バシッ!
「いいボールだ、いよいよ10日後だな」
「ウンッ!」
バシッ!
リョウタロウは、この鉱山町のリトルリーグでもメキメキと頭角を現しエースに成長していた。そして合衆国北西地区代表としてワールドシリーズの出場を決めていた。
バシッ!
リョウタロウのボールを受けながら、ニシは何物にも代えがたい喜びを感じていた。
しかし、喜びを分かち合えない寂しさを感じていたのも事実だった。
病床にあった妻の最期を仕事で看取ることができなかった3年前を悔やんでいた。
リョウタロウとニシが二人で遅い夕食をとっている。
「お父さん」
「ん?」
「お父さんは、甲子園に出たことがあんるんでしょ?」
「あぁ」
「どうだった?」
「どうって?」ニシは戸惑った。
リョウタロウも戸惑っているようだった。
「あのね、野球の神様っているのかなぁって思ってさ、甲子園に行ったら会えるのかなぁって思って・・・アハハハハ、・・・いるわけないかぁ~、でもさぁ、もし、もしいたらさぁ~」
「いたらぁ?・・・」
「なんでもないや」リョウタロウは笑った。
ニシは少し笑って、ソファに無造作に置いてあるキャッチャーミットを見つめながら、息子が甲子園に出るまで彼のボールを受け続けてやろうと心に強く誓ったのだった。
リビングの隅には飾り棚がある。
甲子園の出場記念ボールの傍には優しく微笑むリョウタロウの母の写真が立ててある。
・・・・写真立ての横に置いてあったリョウタロウのケイタイが突然鳴り響く。
着信の表示を見てリョウタロウは声を上げた。
「タカシからだッ!」
全国大会で優勝した直後に電話を掛けてきたのだった。
液晶画面は前のチームメイトたちが大騒ぎをしている様子を映し出している。
「オレたちもアメリカ行くからなッ!、待ってろォッ、リョウタロウッ!」
つづく
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