リトルリーガーリョー坊の名誉のため、今日は、真面目モードで記録しようと思う。
昨年末からバッセン(バッティングセンター)に行くようになったボクら親子は、年が明けてから、週に1度はバッセンに遊びに行こうという約束をした。ついでにルールも作った。
ルールその1
基本は1ゲーム(25球)まで。
ルールその2
1ゲーム目で半分以上がフェアであれば2ゲームOK。
ルールその3
3ゲーム目はよっぽどのことが無い限り認めない。
年明け2週目の中日の今日は、今年2回目のバッセンデーだった。
7時半過ぎに帰宅しとき、リトルリーガーリョー坊はヤル気1000%だった。
西高東低の冬型の気圧配置になっている今日は冷え込みが厳しく、ボクは風邪気味ということもあって、バッセンデーのことは忘れていてくれたらなという淡い期待を抱いて玄関のドアを開けたのだが、リョー坊はボクの帰宅を首を長くして待っていたのだろう、ボクがリビングに入ると同時に飛びついてきた。
「もう、夕ごはん食べたよッ!」リョー坊。
「じゃぁ、行くかぁ」ボク。
そう答えたボクだったが、カミさんにはリョー坊の体の温まり具合を尋ねたのだった。
「温まってると思うよ~、さっきまでホーちゃんと派手に喧嘩してたから~」新聞片手にカミさんが応えた。
リョー坊は道具置き場から590gの軟式少年バットを選び、それを上着と一緒に抱えると裸足のままで靴を履きはじめたのだった。
バッセンの駐車場は閑散としていて今日の寒さを物語っていた。ボクはいつもの所に車を止めて、そこから入り口までリョー坊と歩いたのだが、リョー坊はその間中、素振りをしていた。
先週は、バットのヘッドが下がるという悪いクセが出てしまい、調子が全く上がらないまま1ゲームで終了してしまったリョー坊は、それを修正していたようだった。
バッセンのブースには二人しかいなかった。一人は年末に遊びに行ったときホームランを放った白髪の老人だった。もう一人はどこから見ても浪人生という冴えない風貌の青年で、彼は明らかに憂さ晴らしでバットを振っていた。
ブースに入る前、ボクはリョー坊に屈伸や柔軟体操をするように言った。
リョー坊は素直に従った。そして、ブースに入る直前になって、「あのネ、素振りばするけん、いいって言ってからお金ば入れてね」と言ったのだった。
1ゲーム目
ボクはフェアになったボールの数を防寒着のポケットの中の短い指を折りながら数えた。
フェアになったボール数は15個だった。しかし、明らかに力んでおり、スウィングは素振りとは全く異なった状態だった。
2ゲーム目
「ルールその1」をクリアしたので2ゲーム目をやった。
1ゲーム目と変わらない程度だった。
ブースから出てきたリョー坊は、不服を絵に描いたような表情だった。一言も喋らない。
「んじゃぁ、帰るかぁ」ボク。
駐車場に戻ってボクが車にキーを差し込むまで、リョー坊は一言も喋らなかった。
「んじゃぁ、もう1ゲームするかぁ?」ボク。
リョー坊はコクリと頷いた。
3ゲーム目が始まった。
クリーンヒットを何本か交え、10球目まで全てを打ち返した。
しかし、それ以降は調子が上がらなかった。力みが力みを呼んでいる感じで、空振りをするたびに地面を蹴るリョー坊。それでは打てるはずがない。
最後の球も空振りすると、リョー坊は地面を強く蹴った。一呼吸を置いてブースから出てきたリョー坊は嗚咽を漏らし、その場で泣き崩れた。
家に帰り着くまで泣きどおしだった。
家に入ってからも、突っ伏したまましばらく泣いていた。
ボクは泣きじゃくるリョー坊を抱え脱衣場に連れて行き、服を脱がせて、一緒に湯船に浸かった。
泣き始めて1時間、ようやく発した言葉は「泡のオフロに入りたい」だった。
ボクもようやく肩の力が抜けたのだった。
昨年末からバッセン(バッティングセンター)に行くようになったボクら親子は、年が明けてから、週に1度はバッセンに遊びに行こうという約束をした。ついでにルールも作った。
ルールその1
基本は1ゲーム(25球)まで。
ルールその2
1ゲーム目で半分以上がフェアであれば2ゲームOK。
ルールその3
3ゲーム目はよっぽどのことが無い限り認めない。
年明け2週目の中日の今日は、今年2回目のバッセンデーだった。
7時半過ぎに帰宅しとき、リトルリーガーリョー坊はヤル気1000%だった。
西高東低の冬型の気圧配置になっている今日は冷え込みが厳しく、ボクは風邪気味ということもあって、バッセンデーのことは忘れていてくれたらなという淡い期待を抱いて玄関のドアを開けたのだが、リョー坊はボクの帰宅を首を長くして待っていたのだろう、ボクがリビングに入ると同時に飛びついてきた。
「もう、夕ごはん食べたよッ!」リョー坊。
「じゃぁ、行くかぁ」ボク。
そう答えたボクだったが、カミさんにはリョー坊の体の温まり具合を尋ねたのだった。
「温まってると思うよ~、さっきまでホーちゃんと派手に喧嘩してたから~」新聞片手にカミさんが応えた。
リョー坊は道具置き場から590gの軟式少年バットを選び、それを上着と一緒に抱えると裸足のままで靴を履きはじめたのだった。
バッセンの駐車場は閑散としていて今日の寒さを物語っていた。ボクはいつもの所に車を止めて、そこから入り口までリョー坊と歩いたのだが、リョー坊はその間中、素振りをしていた。
先週は、バットのヘッドが下がるという悪いクセが出てしまい、調子が全く上がらないまま1ゲームで終了してしまったリョー坊は、それを修正していたようだった。
バッセンのブースには二人しかいなかった。一人は年末に遊びに行ったときホームランを放った白髪の老人だった。もう一人はどこから見ても浪人生という冴えない風貌の青年で、彼は明らかに憂さ晴らしでバットを振っていた。
ブースに入る前、ボクはリョー坊に屈伸や柔軟体操をするように言った。
リョー坊は素直に従った。そして、ブースに入る直前になって、「あのネ、素振りばするけん、いいって言ってからお金ば入れてね」と言ったのだった。
1ゲーム目
ボクはフェアになったボールの数を防寒着のポケットの中の短い指を折りながら数えた。
フェアになったボール数は15個だった。しかし、明らかに力んでおり、スウィングは素振りとは全く異なった状態だった。
2ゲーム目
「ルールその1」をクリアしたので2ゲーム目をやった。
1ゲーム目と変わらない程度だった。
ブースから出てきたリョー坊は、不服を絵に描いたような表情だった。一言も喋らない。
「んじゃぁ、帰るかぁ」ボク。
駐車場に戻ってボクが車にキーを差し込むまで、リョー坊は一言も喋らなかった。
「んじゃぁ、もう1ゲームするかぁ?」ボク。
リョー坊はコクリと頷いた。
3ゲーム目が始まった。
クリーンヒットを何本か交え、10球目まで全てを打ち返した。
しかし、それ以降は調子が上がらなかった。力みが力みを呼んでいる感じで、空振りをするたびに地面を蹴るリョー坊。それでは打てるはずがない。
最後の球も空振りすると、リョー坊は地面を強く蹴った。一呼吸を置いてブースから出てきたリョー坊は嗚咽を漏らし、その場で泣き崩れた。
家に帰り着くまで泣きどおしだった。
家に入ってからも、突っ伏したまましばらく泣いていた。
ボクは泣きじゃくるリョー坊を抱え脱衣場に連れて行き、服を脱がせて、一緒に湯船に浸かった。
泣き始めて1時間、ようやく発した言葉は「泡のオフロに入りたい」だった。
ボクもようやく肩の力が抜けたのだった。