先日のE区小児科医会での特別講演では、I先生の「アトピー性皮膚炎に対するプロアクティブ療法」の話題がありました。
プロアクティブってニキビ用の製品でよく聞く名前ですが、最近はいろんなアレルギー疾患の治療でよく使われています。
リアクティブ療法が症状が出たときのみ治療するのに対して、プロアクティブ療法は症状が治まってからもしばらく治療を継続させるもの
特にアトピー性皮膚炎のような再発を繰り返す慢性疾患では、ある程度良くなったと思っても外用薬をやめてしまわないで、皮膚の状態が改善してからしばらくステロイド外用薬やプロトピック(免疫抑制剤)軟膏を使用し続けると再発までの期間が長くなり、トータルで見ると外用薬の使用量は少なく済む、という治療法です。
「良くなってからもうしばらく外用薬を塗布し続ける」
この「しばらく」という期間など含め塗布方法も詳細は今のところ定まっていないようです。
最低1週間~数か月と各施設でバラバラで、これからしっかりとしたエビデンスのもと期間や塗布方法も決まってくるのかもしれません
クリニックで乳幼児のアトピー性皮膚炎の患者さんの保護者へは、良くなっているように見えても皮膚の下ではまだボヤという炎症が起きて続けているから、「1日2回を1日1回へと回数を減らしてあと1~2週間続けましょう」とか、「2~3日置きに夜1回はあと1~2週間続けて下さい」などと指導しています。
ここで大事なのが患者さん、小児科では本人というより保護者、特にお母さんへの指導です。
医師が直接処置をする手術などと違って、薬物療法はいくらDrが懸命に指導しても、実際自宅ではDrの期待通りに薬を使っていないケースも多くあります。
これまでは、「治療コンプライアンス(遵守)」という言葉が使われていましたが、最近では「治療アドヒアランス」が慢性疾患の治療効果を高めるために重要だと考えられています。
コンプライアンスとは
医療従事者の服薬・外用指示に患者さんがどの程度従っているかの程度を表す概念
★主体は医療従事者であり、患者さんは受動的にその指示を守るという関係
アドヒアランスとは
患者さんや保護者が病気のこと、治療の必要性などを十分に理解し、「積極的」に治療方針の決定に参加・実行し、粘り強く継続する姿勢を重視する概念
★医療従事者と患者さんの共同作業
このアドヒアランスの向上のためには、日々外来での地道な説明が重要ですね