これまでも耐性菌(抗菌薬の効かないタイプの細菌)を増やさないため、抗菌薬(抗生物質)は必要な時のみに適正に使用しましょう、と説明してきましたが、特に小児では今年4月から抗菌薬の適正使用の指導を徹底するようになりました
小児の発熱、咳、鼻水、下痢などは90%以上は「ウイルス」が原因であるため、抗菌薬は効果なく、服用し続けることで抗菌薬が効かないタイプの耐性菌を作ってしまい、本当に抗菌薬が必要な時に効かなくなることが懸念されるためです。
「風邪なので抗生剤を出して下さい」、「熱があるのに今日は抗生剤は出ないのですか」と言われることは、小児科においては最近ほとんどなくなりました
しかし鼻水止めに関しては、今でも「なかなか鼻水が止まらないのでもっと強いクスリを下さい」などと言われることが多々あります。
一般的に風邪の際、保険適応がある鼻水止めは、第一世代と言われる抗ヒスタミン薬(ポララミン、ペリアクチンなど)です。
しかし第一世代の抗ヒスタミン薬は脂溶性が高く血管脳関門を通過しやすく、鎮静作用(眠気)のある薬です。
そのため、熱性けいれんがある乳幼児(特に2歳未満)やてんかんのある人が服用するとけいれんを引き起こしやすくしなり、熱性けいれんではけいれんの持続時間も長引く傾向などが以前から指摘されています。
そこで血管脳関門を通過しにくい鎮静効果の低い抗ヒスタミン剤が1986年以降に市販され、これを第二世代の抗ヒスタミン薬と言います
以下のような第二世代抗ヒスタミン薬は、主にアレルギー性鼻炎や花粉症、蕁麻疹、かゆみ止めなどで使用するものです。
第二世代抗ヒスタミン薬一覧・特徴
一般名 | 商品名 | 特徴・回数 |
---|---|---|
ケトチフェンフマル酸塩 | ザジテン DS(イチゴ味)・カプセル・シロップ |
1日2回朝・就寝前 車運転× |
アゼラスチン塩酸塩 | アゼプチン錠 | 1日2回 車運転× |
オキサトミド | セルテクト 錠・DS |
1日2回朝・就寝前 車運転× 妊婦に禁忌 |
メキタジン | ゼスラン ニポラジン 錠・小児用細粒 小児用シロップ(ミックスフルーツ味) |
1日2回 車運転× |
フェキソフェナジン塩酸塩 | アレグラ 錠・OD錠・DS |
1日2回 車運転OK |
エピナスチン塩酸塩 | アレジオン 錠・DS(ヨーグルト味) |
1日1回 車運転注意 |
エバスチン | エバステル 錠・OD錠(ストロベリー味) |
1日1回 車運転注意 |
セチリジン塩酸塩 | ジルテック 錠・DS(ストロベリー味) |
1日1回就寝前 車運転× |
レボセチリジン塩酸塩 | ザイザル 錠・シロップ |
1日1回就寝前 車運転× ジルテックの光学異性体 |
ベポタスチンベシル酸塩 | タリオン 錠・OD錠 |
1日2回 車運転注意 |
エメダスチンフマル酸塩 | レミカットカプセル | 1日2回朝・就寝前 車運転× |
オロパタジン塩酸塩 | アレロック 顆粒・錠・OD錠 |
1日2回朝・就寝前 車運転× |
ロラタジン | クラリチン 錠・レディタブ錠・DS |
1日1回食後 車運転OK |
デスロラタジン | デザレックス錠 | 1日1回 車運転OK |
ビラスチン | ビラノア錠 |
1日1回空腹時 |
たくさん薬の種類があるように思えますが、2歳未満で使用できる第二世代の抗ヒスタミン薬はほとんどなく極わずかのみ
下痢や嘔吐も体から菌を排泄する防御反応であると同じく、鼻水もウイルスなどを排泄させる目的で出ているので、何がなんでも鼻水を止める必要はありません。大人でも薬を服用しても鼻水は止まりにくい症状の一つです。
そのため2歳未満の乳幼児での鼻水止めの薬は処方せず、鼻水を吸引したりしながら様子をみることが多く、2歳未満の乳幼児に対し眠気のある第一世代の抗ヒスタミン薬の使用はほとんどの医療機関で処方されなくなってきています。
このようなことを外来で一人一人へ説明出来れば良いのですが限られた時間内では難しいため、ブログなどで少しずつ保護者の理解を高めていけたらと考えています。
とは言いものの、「赤ちゃんの鼻水、鼻詰まりがつらそうなので、早く楽にしてあげたい」と思うのは当然の親心
我々もどうにか楽にしてあげたいと思いますが、一般的に風邪の鼻水に抗ヒスタミン薬は効きにくく、お子さんの場合は薬を飲むよりもふき取ったり、吸い出してしまうのが一番効果的ですので、改善するまではちょっと大変ですが通院などで鼻水を吸い出して回復を待ちましょう