
「遥拝隊長・本日休診」
井伏鱒二著 新潮文庫
井伏鱒二氏の中編を2編をまとめたもの。昭和25年頃に書かれた作品である。
井伏鱒二氏の本というと、教科書にも出てくる原爆投下直後の広島を描いた「黒い雨」を高校時代に読んだっきり、全くご無沙汰であった。この本自体、本の奥付を見ると平成4年となっており、ずいぶん昔に購入したまんまになっていた。
最近の僕は、国語便覧に出てくるような名著とよばれる小説を読んでおり、本書もその流れの一環で読み始めたものである。
読後感で言えば、本書に収録されている「遥拝隊長」にしても、「本日休診」にしても題材的には暗くなっても仕方がないようなものを扱っているのだが、そうならないのは作者の作風なんだろうなあと思う。
「遥拝隊長」については、職業軍人が、戦地でのけがをきっかけに精神に異常をきたした姿を描き、「本日休診」にしても、冒頭、地方から東京に出てきた女性が性被害にあうところから始まり、貧困で医者にも通えない女が、結局死んでしまうところで終わってしまう。題材の取り方では、非常に重苦しいものになるはずなんだが・・・。
「本日休診」を読んでいて気付いたのだが、昔はお医者さんが病人の家庭に往診することが日常的にあったことなんだろう。僕が小さかった時も来てもらった記憶があるなあ。(もう40年程前ですが・・・。)今は、お医者さんのもとの通うのが当たり前になってますよね。そうなると、地域社会の中に医療というのが入らなくなってくるんだろうなあ。地域の人とのつながりが消えていくような気がしますね。考えればこの時代のお医者さんって、地域の数少ない知識人であり、本当に尊敬のされる存在だったのだろう。
しかし、この小説が書かれた時代は、まだまだみんなが貧しい時代であったんだろうなあ。お医者さんにかかること自体が大変なことだったんだ。そのかわり地域のつながりは濃厚であり、現代の人間関係が希薄な時代とは大きく違っている。
そして最後に、昭和の時代の小説って、なんか落ち着いて読めますね。何だろう?時間の進み方とかが穏やかだからかな。
それと最近、戦争というのが、ヒロイックな言説になっているような気がします。想像で戦争を語っているからでしょうか。地に足がついてないようで不安を感じます。
井伏鱒二著 新潮文庫
井伏鱒二氏の中編を2編をまとめたもの。昭和25年頃に書かれた作品である。
井伏鱒二氏の本というと、教科書にも出てくる原爆投下直後の広島を描いた「黒い雨」を高校時代に読んだっきり、全くご無沙汰であった。この本自体、本の奥付を見ると平成4年となっており、ずいぶん昔に購入したまんまになっていた。
最近の僕は、国語便覧に出てくるような名著とよばれる小説を読んでおり、本書もその流れの一環で読み始めたものである。
読後感で言えば、本書に収録されている「遥拝隊長」にしても、「本日休診」にしても題材的には暗くなっても仕方がないようなものを扱っているのだが、そうならないのは作者の作風なんだろうなあと思う。
「遥拝隊長」については、職業軍人が、戦地でのけがをきっかけに精神に異常をきたした姿を描き、「本日休診」にしても、冒頭、地方から東京に出てきた女性が性被害にあうところから始まり、貧困で医者にも通えない女が、結局死んでしまうところで終わってしまう。題材の取り方では、非常に重苦しいものになるはずなんだが・・・。
「本日休診」を読んでいて気付いたのだが、昔はお医者さんが病人の家庭に往診することが日常的にあったことなんだろう。僕が小さかった時も来てもらった記憶があるなあ。(もう40年程前ですが・・・。)今は、お医者さんのもとの通うのが当たり前になってますよね。そうなると、地域社会の中に医療というのが入らなくなってくるんだろうなあ。地域の人とのつながりが消えていくような気がしますね。考えればこの時代のお医者さんって、地域の数少ない知識人であり、本当に尊敬のされる存在だったのだろう。
しかし、この小説が書かれた時代は、まだまだみんなが貧しい時代であったんだろうなあ。お医者さんにかかること自体が大変なことだったんだ。そのかわり地域のつながりは濃厚であり、現代の人間関係が希薄な時代とは大きく違っている。
そして最後に、昭和の時代の小説って、なんか落ち着いて読めますね。何だろう?時間の進み方とかが穏やかだからかな。
それと最近、戦争というのが、ヒロイックな言説になっているような気がします。想像で戦争を語っているからでしょうか。地に足がついてないようで不安を感じます。
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