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アメフト観戦記や読書日記を綴っていましたが、最近は古墳(コフ)ニストとして覚醒中!横穴式石室をもつ古墳にハマっています。

新装版 戦いすんで日が暮れて

2017-10-15 21:30:58 | 読書日記
「新装版 戦いすんで日が暮れて」
 佐藤愛子著 講談社文庫

 初めての佐藤愛子である。もともと北杜夫のファンであるので、お名前はずっと昔から知っていたのだが、あまり読むこともなく今に至っていたのだが、ぶらっと本屋に立ち寄った時、平積みになっていて、長谷川町子の表紙にも少し惹かれ、そういえば、北杜夫のエッセイなどにはよく登場していて、しかも、そういった作家の方々はそういったことから改めて読んだりしていたのに、佐藤愛子さんだけは全く手にしたこともなかったなあというわけで読んでみることにした。

 ちなみに本書は、1969年(昭和44年)上半期の直木賞を受賞している。ちなみに芥川賞は、庄司薫の「赤ずきんちゃん気をつけて」と田久保英夫の「深い河」である。庄司薫と同時期の受賞ってちょっとおどろきであった。というかもう50年近く昔なのという感じでもある。

 本書には、表題作「戦いすんで日が暮れて」のほか、「ひとりぼっちの女史」「敗残の春」「佐倉夫人の憂愁」「結婚夜曲」「マメ勝ち信吉」「ああ、男!」「田所女史の悲恋」の8編が収録されており、そのうち3編は、夫の会社が倒産したことにまつわるものである。
 当時の貨幣価値は、今とどれだけ違うのかわからないが、今ですら2億という金額がかなりの金額ではあるので、50年前ということを考えると押して知るべしみたいなものなのかであろうか。僕は住宅ローンぐらいしか借金というものをしたことがないが、それでも結構大変なのだから、2億円、しかも高利貸しなんてのが絡んでくるとそりゃ大変であろう。想像を絶するものがあるのだろうと思う。

 会社経営に失敗したというか、経営能力がないのに会社を経営して想像通り倒産させた「ボンクラな」夫と才能を生かして収入を得、それで必死に返済しようとする妻である。でも可哀想なことに、張本人の夫よりも與限りの努力で何とかしようとする妻の方が悪者扱いなっている、逆転の世界になっている。確かに私のわずかな経験の中でも借金等を繰り返して放蕩しているものよりも地道にちゃんと働いて生活しているものの方が悪いみたいな言い方されることって確かにあるもんな。そういった理不尽な世界って存在するんだよなあ。家族もみんな失って可哀想って、いや、もともとそうなる原因を作ってるのはそっちだしということだよなあ。本書も、躍起になって借金を返そう、夫の役に立とうとしている方が悪いみたいになってて、そこが何とも辛いものである。
 ただ、読んでいて、思い出したのは、「戦後強くなったのは女性とストッキング」という言葉。この本に登場する女性は、非常に強い女性であり、世の男性を蹂躙するパワーの持ち主でもある。出てくる職業も、作家、漫画家、美容師など女性が進出してきた職業である。そして、「ウーマン・リブ」って言葉が流行った時代だ。そういった風俗的なところを面白い気がする。確かに描かれている女性の感覚などはもう過去のものだろうし、もはや昭和の男性のようなたくましさや男らしさというものを現代女性が求めていないであろうし、もはや化石とでもいえるような男女感ではあろうけど、昭和40年代の時代の気質というものをうまく表しているような気がする。まだまだ、日本の未来は、バラ色であると信じることができた時代であったのである。
 そういえば、どの話だったか、子どもたちが親を見て結婚するのもどうかねみたいなことを話して終わるのがあった。こういう親たちの子は、結婚するのも大変だあって思ってしまうのかもしれない。ちょうど私の親世代なのかな。そういえば、高校や大学の同級生に結婚していないものがそこそこいたりする。

 などと思いながら、あっという間に読了。読みやすい。ただ、風俗的なものが昭和真っ盛りなので、ちょっと感覚的にわかりにくいところもある半面、ああそうだったなあと思う場面もあり、現代史の一コマ的に考えるのもいいのかな。

 ちなみに、お友達の北杜夫も株で破産した時のことを小説に書いている。「まっくらけのけ」という短編集に収録されている。その中には、北杜夫を助ける側に回ってたようなことをぼんやりと思い出した。まあ、数十年前に読んだ本だからなあ。

 この本が、新装版で出たのは、最近獅子文六や阿川弘之の通俗小説、中間小説?が復刊したりしている流れにあるものなんかな?違うか?
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