むかごの日記Ⅱ

70歳を過ぎてにわかに植物観察に関心を持ち、カメラを提げて、山野を歩いています。新・むかごの日記より引っ越しました。

アメリカハナノキ:亜米利加花の木(花はいまひとつ) 

2018-03-22 17:24:56 | 植物観察記録

万博公園日本庭園の門前にアメリカハナノキ:亜米利加花の木(ムクロジ科カエデ属)の雄花が咲いていました。北米東部原産の落葉高木で、高さ15~20m、大きいものでは40mにもなります。枝には白い皮目があります。

雌雄別株、花は橙紅色~濃紅色で、前年枝の葉脇に束生します。万博公園には雌雄並んで植えられていますが、雌花の方はまだ咲いていませんでした。

日本のハナノキは隔離分布で知られていますが、極めて近縁とされているアメリカハナノキとは、氷河期陸続きであったべーリング海(地峡)を挟んで北アメリカと東アジアに分布していた同じカエデ属を祖先としているという話があり、現在も両者はベーリング挟んだ隔離分布といえるでしょう。

赤い花が美しいハナノキの別名がハナカエデ、紅葉が美しいアメリカハナノキはベニカエデということは、写真のようにアメリカハナミズキの花はそれほどでもないということでしょうか。


ケクロモジ:毛黒文字(違いは花にも)

2018-03-21 10:07:10 | 植物観察記録

春先の植物園にケクロモジ:毛黒文字(クスノキ科クロモジ属)の花が咲いていました。

本州、四国、九州の山地に生える落葉低木で、高さは3メートルほどになり、葉は狭倒卵形で、長さ8~16センチで全縁。葉には名前の由来である短毛が密生し、葉脈が裏に著しく隆起する特徴があります。

雌雄別株で、早春葉と同時に小さい黄緑色の花を付けます。

花は普通のクロモジに比べて密についていて(‘06年4月11日記事)あたかも新芽が花に包まれて伸びだそうとしているようです。クロモジとの違い葉だけだはなさそうです。


ヒスイカズラ:翡翠蔓(珍しい翡翠色の花) 

2018-03-16 11:26:50 | 植物観察記録

各地の植物園では、時季時季によって今咲いている面白い花を取り上げて紹介しているものです。3月初めの宇治い植物公園では、それが温室にい咲いているヒスイカズラ:翡翠蔓(マメ科ヒスイカズラ属)でした。

フィリピンのルソン島、ミンドロ島などの雨林や小川のそばなどの樹木に絡みつくつる植物で、植物の中では珍しい翡翠色の花をつけます。花は直径約6cm、偽総状花序は3mになることもあります。受粉の媒介はコウモリで、コウモリが蜜を貰うために花にぶら下がると雄しべ、雌しべがあらわれ、その際に花粉がオオコウモリの頭につき、違う株の花粉を運ぶ役をします。共進化の分かりやすい例とされています。1つ1つの花は長さ6~8センチの爪形で、翡翠のような青緑色をしています。和名のヒスイカズラは英語のJade vineの直訳です。開花は数日で終わり、花はぼとぼとと落ちます。宇治市植物公園でもすぐ落ちるので手を触れないようにと注意書きがありました。

葉は3出複葉で、小葉は楕円形で先がとがり革質です。

原産地では森林の伐採により自生のものは全滅寸前といわれ、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリスト(絶滅危惧種)に登録されています。

 

 


イスノキ:柞の木(珍しい群生自然林) 

2018-02-28 17:11:18 | 植物観察記録

みなべ梅林の遊歩道の傍らに小さい神社があり、県の天然記念物に指定されているイスノキ:柞の木(マンサク科イスノキ属)の自然林がありました。ユスノキ・ヒョンノキとも呼ばれるイスノキは、暖地性の広葉常緑樹で、伊豆半島から沖縄までの太平洋岸に自生します。みなべ町の晩稲、小殿神社境内17aには約110本が群生し、太いものは幹回り約3mに達するという立派なものです。自然林か植林かは不明ということですが、イスノキ以外には、マキ、クス、スギがわずかにあるだけなので、自然林ではないかと考えられています。大きな虫こぶがオカリナようになって音が出るのでヒョンノキの名があるくらいでイスノキには虫瘻が多くつき、現在までに発見されている7種ほどのうち、そのうちイスタマフシ・イスエダタマフシの2種は、日本で最初にここで発見されということから見ると、このイスノキ自然林は古くから学術的にも関心をもたれてきたのではないかと思います。

イスノキは、材が緻密で固く、ツゲと同様に古くから櫛に用いられたことが知られており延喜式に宮中でイスノキの櫛が使われたとの記述があり、平常宮跡からイスノキの櫛が多数発掘されたといいます。

白洲正子の著書「樹」では、イスノキを「檮」と書き、宮中では今でも婚儀などで実際にイスノキ櫛が使われるとか、昔は、天皇は一日使えば捨て、皇后は2日使って捨てたという話が載っています。

 

 


カナリーヤシ:カナリー椰子(シダのスカートで)

2018-02-24 14:38:16 | 植物観察記録

長居公園に、シダを着けたカナリーヤシ:カナリー椰子(ヤシ科ナツメヤシ属)がありました。

フェニックスの名でも親しまれている、アフリカの西に浮かぶカナリー諸島原産の常緑高木で、高さは15~20m、幹は太く、葉柄の脱落した跡が細長いひし形の模様になって残ります。そのところにしばしばシダなどが着生しているのが見られますが、長居公園のも、タマシダと思われるシダが大量に密着していて、まるで緑のスカートのを佩いているようです。

雌雄別株で、4~6月葉の付け根から長さ2mほどの大きな花穂を吊り下げ、淡黄色の小さな花を多数つけます。果実は長さ2㎝ほどの楕円形でオレンジ色に熟します。

 


ヒトツバ:一つ葉(分かりやすいシダ) 

2018-02-21 10:15:18 | 植物観察記録

本州ではここだけという珍しいハマジンチョウを見にいった(2月10日記事)三重県南伊勢町の小島、獅子島の林床をほぼ全体を覆い尽くしていたのがヒトツバ:一つ葉(ウラボシ科ヒトツバ属)でした。

本州南関東以西から琉球に分布し、暖地の乾いた岩上や樹上に着生する常緑の多年草で、根茎は針金状で、長く横に這い鱗片を密生します。栄養葉の葉身は長さ20~40㎝の披針形~広披針形で、厚くて硬い革質です。

和名は葉が単葉で、1本1本分立することからきています。シダの仲間では一目見てわかる品種の一つです。


アサガオ:変化朝顔 獅子咲牡丹  2月14日

2018-02-14 09:12:18 | 植物観察記録

2月3日、第26回松下幸之助花の万博記念賞贈呈式と受賞者の講演会がリーガロイヤルホテル山楽の間で行われました。(むかごの高槻2月4日記事

松下幸之助記念奨励賞を受賞したのが九州大学仁田坂英二氏で、江戸時代にはもてはやされた特異なアサガオの品種群で、現代の園芸界では通常扱われないような、奇妙な姿を示す変異体群、変化朝顔の体系的な保存と維持、配布を推進してきたことが評価されたものでした。

その授賞式会場に展示されていた獅子咲牡丹という変化朝顔2株のうち1株を頂いて帰り、自宅で観察しました。

結果は当日満開だった花はその後も開花状態が続き、4日目ごろからようやく萎み始めました。また、蕾は普通の朝顔のように朝に開花しました。普通の室内に置いたこのアサガオは、細い線状の葉が約10日後にはほとんど萎れてしまいました。

                              2月4日(授賞式の翌日)

            2月7日(4日後)萎れ始める

典型的な一日花のアサガオが、数日咲き続けたのは、この特異な品種が持つ特徴なのか、単に開花が低温期だからなのかはわかりません。ただ、蕾が開くのが必ず朝であったのは、姿かたちはかわっていても、やはりアサガオはアサガオでした。


ヒメガマ:姫蒲(北風に乗って) 

2018-02-12 09:42:23 | 植物観察記録

  

       果穂の一部がほころび始める 

     北風に載って柳絮が次々に飛んで行く

公園を歩いていると北風に乗って綿毛のようなものが無数に飛んでいました。風上のほうへ辿ってゆくと池のほとりに群生するヒメガマ:姫蒲(ガマ科ガマ属)の蒲の穂が風に吹かれて小さく白い毛をつけた種子(蒲絮)を飛ばしているのでした。

「昔、兎が岐島から因幡国に渡ろうとして、鰐鮫を騙して海の上に並べその背を渡ったが、嘘がばれ、鰐鮫に皮を剥ぎ取られた。八十神の教えに従って潮水で洗ったためにかえって痛み苦しんでいるのを、大国主命が、真水で洗って、蒲の穂の花粉をつけよと教えて助けてやった。」古事記にも出る有名なこの因幡の白兎の伝説では、皮を剥がれた兎がこの白く柔らかい綿のような種子にくるまって傷を治したと一般には思われていますが、本当は、昔から蒲黄(ほおう)と呼ばれて止血薬として用いられてきたガマの雄花の黄色い花粉にくるまったというのが正しいそうです。

ヒメガマは、全国各地の池や沼に生える多年草で、ガマより小型で、ヒメガマは上部の雄花序とソーセージ状の雌花序の間に隙間がありますが、果実期には雄花序は枯れて見分けがつきにくくなります。

雌花序は果穂となり、無数の種子を含み、最後は綿毛状になって飛散します。種子の数は膨大で約10㎝の穂には10万個を超えるといい、穂には種子とほぼ同数のしいな(不稔)があり、しいなの空洞が通気孔になり、密な穂も内部までよく乾くので、種子の成長、飛散を助けているそうです。

 説話のとおり、花穂には傷を治す薬効があるそうですし、かつては、葉を編んで筵にしたり、穂を布団の芯に入れたことから“蒲団”の名があり、昔の蒲鉾は主に竹串を芯にして筒型につくり、これが蒲の穂に似ているところから、蒲鉾の名が生まれたというのはよく知られた話です。

 

 


ハマジンチョウ:浜沈丁(本州唯一の自生地) 

2018-02-10 10:52:47 | 植物観察記録

         

州ではここだけといわれる珍しいハマジンチョウ(浜沈丁)の花を見に三重県南伊勢町を訪ねました。

 日本ではここ五ケ所湾に浮かぶ獅子島のほかは、九州五島列島、天草下島、鹿児島県の一部に自生するだけの希少種です。

ハマジンチョウの名は、浜に咲くジンチョウゲに似た花ということでしょうが、類縁的には全く異なり、花には香りはありません。ハマジンチョウ(浜沈丁)、学名 Myoporum bontioides は新エングラー体系ではシソ目に、クロンキスト体系ではゴマノハグサ目に含まれ、APG植物分類体系では、独立の科とせずゴマノハグサ科に含めています。

南日本から中国南部、インドシナ半島に分布する常緑低木で、塩沼やマングローブに自生する塩生植物で、成長しても高さ1-2mほどの低木で、枝はよく分かれて繁茂し、互生する葉は、長さ6-12cm・幅2-3.5cmとやや細長くて厚く。鮮やかな緑色で光沢があります。

花期は1-3月で、花は葉のわきに1-3個まとまって開き、直径2-3cmほどで薄紫色、花弁は漏斗状で先端が5裂します。雄蕊4本と雌蕊1本があり、花弁の内側に紫色の小さな斑点が散在します。

果実は先が尖った球形で、数個の種子があり、果皮はコルク質で水に浮き易く、海流を介して分布を広げます。

日本の中での隔離分布となっている獅子島のハマジンチョウは、当地の漁夫による移植説もありますが、黒潮による漂流説が有力なようです。

           獅子島のハマジンチョウ 

 


フウセントウワタ:風船唐綿(北風を待って?)

2018-02-04 11:23:33 | 植物観察記録

門外の花壇に植えたフウセントウワタ:風船唐綿(キョウチクトウ科トウワタ属)の果実が、年を越してやっと割れ、綿毛のついた種子を北風にのせて飛ばしています。

なかなか風船が割れないので気になっていましたが、どうやら種子を遠く飛ばすように、北風が強くなるのを待っていたようです。

南アフリカ原産の植物で、葉は柳のような感じで細長く、草丈は1~2m、初夏、枝先に近い位置にある葉の付け根から花茎を伸ばし、小さな乳白色の花をぶら下げるように下向きにつけます。

花後にできる袋状の果実の形がユニークで、表面がうす緑色で先が少しとがって風船のようにふくらみます。フウセントウワタは名の通り、花より果実の形が面白く、もっぱら果実を観賞したり、生け花の花材にしたりします。

家の前を通る人からよく名前を尋ねられるので名札をつけていますが、かつてはガガイモ科であったのがAPGではキョウチクトウ科となっているのがわかり、去年から書き直しました。