イカットの島 / バリ島に暮す / 風に吹かれながら

バリ島ウブドの小路は手工芸にあふれています。バリヒンドゥーの信仰に息づく暮らしに触れながら手織りの時を楽しみたい。

ジャティルウィ Jatiluwih のライステラスを訪れる

2015年05月22日 | BALINESE LIFE
2012年にユネスコ世界文化遺産に登録された
「バトゥカル山保護区スバックの景観」を代表する
ジャティルウィに1泊の予定で訪れました。
シドゥメンともまた、違うダイナミックな
ライステラスの風景です。

標高700メートルの麓はなだらかに広がり、気温もウブドより低く、陽が落ちると肌寒く感じます。

いつものタクシードライバーのマデさんにお願いして、ウブドを午前中に出発しました。途中、スーパーに寄り
水とパン、クラッカーなどの軽食を調達しました。宿は決めていないので着いてから探しました。
新月の翌日なので、星空が綺麗かなと楽しみです。

バリ島は山からすそ野に広がる地形です。山から流れる川は削られ深くなっています。地上とかなりの高低差があり尾根に沿ってできた道と道を結ぶには橋が必要です。ウブドからジャティルウィの東西を直線に結ぶ道路はなく、シガラジャに抜ける大きな道に出るまで、ジグザグにいくつかの川を渡りました。約90分で着きました。村の入り口で入場料RP.20.000を払い、チケットをもらいます。しばらくして進むと、再度チケットをチェックするセキュリティ小屋がありました。この場所はライステラスの中を散歩するスタート地点でもあります。

村の入り口で入場料を支払う





次のセキュリティ小屋



まずは宿探しです。ホームステイが2軒しかなく、始めに立ち寄ったガラン・カンギン・イン Galng Kangin Inn の部屋が空いていたので決めました。

道路沿いの3部屋とも空いていました。





バルコニーから見えるライステラス



ベッドルーム



シャワー&トイレ





もう1軒のテラス・スバック Teras Subak 。
建物は小綺麗でワルンも併設されていました。
夕食はここで頂きました。気さくなご主人が
ライステラスの地図を、そして奥様が黒米の
デザートをご馳走してくれました。
道路沿いにありますが部屋からのライステラスの眺めは
少し見にくいようです。





ユネスコの世界文化遺産に登録されたと書かれた石碑があり、ナイスビューのポイント。





その脇に散歩道の出入り口があり、チェック小屋のスタート地点と繋がっています。



見晴らしの良いレストラン。
ビリーズ・テラス・カフェ Billy's Terrace Cafe





レストランの先を少し歩くとジャティルウィの集落です。
ウブドでは見かけない色のお寺。



ペンジョールが立てられていました。



自給米の米倉がありました。こちらでは収穫したお米をストックするそうです。ウブド周辺ではお米業者が稲刈りを請け負い買い取ります。農家に自給米はなく、食べるお米は買うと聞きました。




この時期は在来種の赤米が主でした。丈が高いので倒れやすく、収穫量も少なく、収穫日数は長いのですが、吸肥力が強く、病害虫の環境変化に強く育成が容易なことが特徴です。
後半の二期作目は収穫日数が短い、高収量品種を作付けるようです。バリ島のたんぼではバリ州が進める収穫日数が短く、収穫量の多い新品種に変えるところがほとんどのようです。農薬も化学肥料も使わず、牛を引いて田起こしするなど、昔からの手間のかかる農法を続けているのがジャティルウィのたんぼです。

穂先は毛筆のように長くて稲の背丈も高く、ウブド周辺の稲の倍近く150センチほどあります。稲刈り前の黄金色の棚田がひろがります。1月の雨季の田植えから乾季に入っての穂揃期とちょうど良い時でした。6月上旬が稲刈りでしょうか。





水源はバトゥール山の湧水で、井堰で水を止めています。
取水から分水、用水路の整備など各たんぼに必要な
水を公平に分配する水利組合がスバックです。
2011年8月の記録ではグヌンサリ慣習村とジャティルィ慣習村の人口は2674人で8つのバンジャールに7つのスバックがあり、構成員は664名。平均経営面積は1戸あたり50アールだそうです。ここでは土地の所有者ではなく耕作者が構成員となり、他のスバックと違います。

水量が多く必要なのでしょうかコンクリートの
分水堰です。
登熟の期間なのか、水は止めていました。







水の神様 ブタラ・ウィシュヌ、稲の神様 デウィ・スリを祭る寺院が各スバックごとにあります。たんぼには石で造られた祭壇があり、一年を通して様々な祭事があります。




ヒンドゥーの哲学である 「神と人」、「人と人」、
「人と自然」との調和の実現が感じられる風景です。
8~9世紀に形成されたスバックのシステムが
現在に至るまで人々の祈りと知恵と努力で
維持し続けています。

「自然の征服と破壊」、「宗教間の武力による排除」、
「効率優先の進歩」を信じる思想の対極にある精神
とも思えます。
公平と平安な世界を望む、もうひとつのあり方の
モデルではないでしょうか。


参照 
永野由紀子 論文
インドネシア・バリ島の水利組織における
人間と自然の共生システム

HOME STAY Galang Kangin Inn
0811-389-419
道路沿いに3室。
1泊朝食付き RP.250.000

Teras Subak
0812-3702-6333
道路沿いに4室。無料Wi-Fi
1泊朝食付き RP.250.000 (ガイドブック参考)