山の頂から

やさしい風

儚さ・・・

2008-10-20 15:43:44 | Weblog
  「焼き鳥と玉子焼きのお土産を・・・」
久しぶりに見かけたその方の御名前は知らない。
毎朝、山を歩いてこられるご夫婦。
いつの頃からか一言二言ことばを交わし、顔見知りになった。
品の良いご夫婦で、雨の日以外は我が家の庭を横切って行く。

 そういえば、この2~3か月姿を見かけなかった。
「お父さんに上げるの」と言われ、ハッとした。
「あの~~」と私。奥さんはみるみる涙目になった。
急に亡くなられ、3か月が経つのだと仰った。
いつまでも閉じこもっていると、鬱になるからと家人が心配しするので、
また、山を歩き始めたのだそうだ。

 人の命の、なんと儚いことだろうと胸が熱くなった。
どうか元気を出してくださいとの慰めの言葉しか言えなかった。
お買い上げくださったものに添えて、団子を仏前にと差し出した。
たった朝夕に挨拶を交わす仲だが、
小さなドラマは絶えることなくあるものだと思った。  合掌。

 実家に父の仏壇が運ばれてきた。
紫檀の位牌に彫られたた戒名。母が床に就いてからそっと手にした。
とめどもなく涙が溢れ、文字が見えなくなった。