ブッテラ

　　連日の日本人によるノーベル賞の受賞は、
久しぶりのビッグ・ニュース。
沈みがちだった日本国民の心を明るくさせてくれた。
本当に素晴らしい快挙である。

　高校の物理の教師に寺内先生という方がいらした。
彼が新任教師として初めて赴任したのが我が女子高。
若い男性教師は生徒の関心の的であった。
先ずは【アダ名】を何としよう？
彼の風貌はと云えば、決してハンサムではなかった。
何かいつも不満そうに仏頂面をしている。
口を衝いて出る言葉は皮肉っぽい。
「偉～～らそうに！」で、進呈したアダ名が≪ブッテラ≫
勿論、物理の寺内からそうなったが、偉らぶってる～の揶揄もあった。

　女の園で好かれないと結果はみじめ。
或る時、暗幕を使った授業中、先生が黒板にビッシリ書いたものを、
誰かがきれいに消してしまった。　悪戯である。
彼はひどく怒ったが、その後のことは記憶していない。
あの頃、物理に興味を覚えていたら、もしかして、ひょっとして、
今頃、「面白いことを一生懸命やってきました」なんて会見をしていたかも・・・

　しかし、我が脳は≪物質と反物質が衝突して消滅≫の状態である。
辞書を暗記しても３歩歩いたら忘れる粗末さでは、
望んでも叶わなかったことだ。
物理学賞で思わず【ブッテラ】を思い出した。懐かしい限りである。