日本と世界

世界の中の日本

働き方改革はドイツに学べ

2022-07-31 14:04:39 | 日記
働き方改革はドイツに学べ

池田 信夫 2018.02.28 23:00


安倍政権の「働き方改革」関連法案から、裁量労働制の適用拡大の法案が切り離されることになった。

「不適切データ」が原因だが、このデータには意味がない。

裁量労働制と残業時間は無関係だからだ。

「企業が裁量労働制を悪用してタダ働きさせる」というのは裁量労働制の問題ではなく、社員がノーといえない「正社員」の問題である。

今回の法案は、成立しても大した効果はない。

コンセプトが混乱しているからだ。

普通は雇用改革でもっとも重要なのは雇用の流動化だが、今回の改革には含まれていない。雇用を流動化すべきだという財界と正社員を守ろうとする労働組合が対立し、改革としては裁量労働制の拡大と高度プロフェッショナルだけが残った。

シュレーダー元独首相(Wikipedia:編集部)

雇用改革として学ぶべきものがあるのは、ドイツのシュレーダー改革だ。

東西ドイツの統合で旧東ドイツというお荷物を抱えたドイツは、高い失業率と低迷する経済で「ヨーロッパの病人」と呼ばれていた。

これを打開するため、1999年のユーロ導入のあと社民党(SPD)のシュレーダー首相が、ドイツ版「サッチャー改革」を始めた。

その最大の目標は10%近かった失業率を下げることだったので、雇用改革が最大の焦点だった。

1990年代までドイツの雇用保護は手厚く、解雇は事実上できなかった。

シュレーダー政権はその規制を緩和し、2003年には金銭的な補償による解雇を可能にし、失業手当の給付を短縮するなどの労働市場改革法を実施した。

これによって図のように一時的には失業率は上がったが、2005年以降は大幅に改善した。

今では「ドイツ一強」といわれるほど、経済は強くなった。

世界経済のネタ帳より

日本の状況は、90年代まではドイツと似ている。

日本では不良債権問題で経済が低迷していたので、2000年代初めの小泉改革の焦点は不良債権の清算で、労働市場にはまったく手をつけなかった。

その後も正社員を保護したまま「非正規」の雇用規制を緩和したので、失業率は改善したが、労働生産性は低いままだ。

今回の働き方改革には政権の方向性がみえないが、しいてあげると厚労省のパターナリズムだろう。

これは温情主義とも家父長主義とも訳すが、役所が慈愛あふれる父親として企業の雇用に介入しようという発想だ。

役所の善意はわかるが、その恩恵を受けるのは「企業一家」のメンバーたる正社員だけである。

この状況は昔のドイツと似ている。

戦後のドイツはパターナリズムの本場で「社会的市場経済」を標榜していたが、シュレーダー改革がこれを転換した。

周回遅れの安倍政権もせめて2003年の労働市場改革をめざしてほしいが、それは岸信介以来のパターナリズムを信条とする安倍首相には無理な注文かもしれない。

アベノミクスがなければ日本経済はどん底のままだった…

2022-07-31 13:27:35 | 日記
アベノミクスがなければ日本経済はどん底のままだった…そして現在の日本経済が停滞している根本原因これから必要なのは「労働市場を中心とする構造改革」
PRESIDENT Online

真壁 昭夫多摩大学特別招聘教授

金融政策に依存し、構造改革には至らず
7月8日、奈良県で街頭演説中に安倍晋三元首相が銃撃され亡くなった。心から哀悼の意を表し、ご冥福をお祈り申し上げる。

安倍氏の経済運営の手法=アベノミクスには賛否両論あった。

しかし、一つ明確なことは、安倍氏の考えは一時的にではあれ、少なくともわが国の先行きの期待を高めたことは確かだろう。

2012年11月14日、野田佳彦首相(当時)は衆議院を解散すると表明した。

それを境に、日本の株式市場は堰せきを切ったように上昇した。

世界の多くの投資家は、アベノミクスが日本を変えると期待した。

経済成長期待は高まり株価が上昇した。2012年末まで日経平均株価の上昇率は20%に達した。

当時の状況を思い返すと、人々の心理も前向きになった。
わが国が一つの希望を持った瞬間だった。

需要創出を目指す雰囲気が沸き立ったのである。

安倍氏はわが国の将来を真剣に考え、懸命に経済政策を進めた。

情熱と発信力を持ったその政治家が、志半ばで凶弾に倒れたことは非常に残念だ。

ここで、3本の矢からなるアベノミクスを総括したい。

アベノミクスを冷静に分析すると、金融政策に依存する割合が高く、結果として構造改革への踏み込みが不足してしまった。

特に、わが国経済に必須の労働市場の改革が不十分だったことは否めない。

その結果として、好循環は続かなかった。

今後、岸田政権には労働市場を中心に構造改革を徹底して進めてもらいたいものだ。

それが今後の経済政策の重要ポイントの一つだ。

「異次元緩和、需要創出、成長戦略」を推進

アベノミクスは3つの政策から構成された。

具体的には、金融政策(日本銀行による異次元緩和の推進)、

財政政策(各種景気対策による需要創出)、

および構造改革(規制緩和などを進めて個人や企業の新しい取り組みを引きだす施策、成長戦略)だ。

アベノミクスが目指した最大の目標は、デフレ経済からの脱却だった。

3本の矢の中でも、特に依存度が高かったのが金融政策だ。

2013年4月4日には日本銀行が“量的・質的金融緩和”を開始した。

日本銀行は消費者物価指数の前年比上昇率2%を物価安定の目標に定め、2年程度を念頭にできるだけ早期に実現すると表明した。

そのために、大量の資金が金融市場と経済に供給された。企業や個人は資金を借り入れやすくなった。

株式市場では、新しい株式インデックスでaある“JPX400”の算出が始まった。

JPX400は、自己資本利益率(ROE、純利益を自己資本で割った指標)などが高い企業で構成される。

企業が借り入れを増やすとバランスシートに占める資本金の割合は低下する。

他の条件を一定とした場合、ROEが上昇する。

アベノミクスは金融を大胆に緩和して企業などに借り入れを促した。それによって需要を増やそうとした。

そのために財政政策も機動的に運営された。

米経済の回復で円安の流れは強まり…

大きな影響を与えたのがドル/円などの為替レートだ。

2011年10月末、ドル/円は75円32銭の史上最高値を記録した。

その後、徐々に円安が進んだ。

当時、米国ではデジタル化の加速やシェールガス革命によって労働市場が回復しつつあった。

米金利の先高観は高まった。

そこに金融緩和を重視するアベノミクスが加わった。

日米の金利差拡大観測は高まり、外国為替市場で円キャリートレードが急増した。

このようにして円安の流れが増幅された。

その後も米国経済は緩やかに回復した。インフラ投資や不動産市況の高騰などを背景に、中国経済も高成長を維持した。

その状況下でわが国の企業は海外進出を加速し、海外での収益が増加した。

海外に保有する資産の評価額や海外子会社からの受取配当金が円安によってかさ上げされた。

世界的に注目されたアベノミクスの功罪

アベノミクスは一時、わが国経済にプラスの効果をもたらした。

財務省が公表する“法人企業統計調査”からそれが確認できる。

2013年4~6月期以降、本邦企業全体(金融除く)で営業利益の増加が鮮明化した。

製造業に限ってみると、2012年度各期の前年同期比増益率の平均値は8%だった。

2013年度は45%に跳ね上がった。

アベノミクスが円安を勢いづけ、企業業績がかさ上げされた。それが、賃上げを支えた。

安倍総理自ら主要企業のトップを官邸に招き、賃上げを求めた。それを“官製春闘”と呼ぶ。

その結果、実質ベースで賃金水準は緩やかに上昇した時期があった。

アベノミクスは、観光産業にもプラス効果を与えた。2020年までに2000万人の訪日旅行客数を達成することをアベノミクスは掲げた。

2015年にその目標は事実上達成された。

円安と、わが国の観光資源の魅力向上によるインバウンド需要の増加は、地方創生に大きく貢献した。

訪日旅行客数はアベノミクスが達成した数少ない目標だ。

労働市場の改革にまで切り込めなかった

ただし、アベノミクスは構造改革に切り込むことができなかった。

それはわが国にマイナスだ。

特に、硬直的な労働市場の改革が難しかった。時代にそぐわなくなった制度や慣行を変える。

それによって人々の新しい取り組みを引き出す。

それが構造改革の意義だ。

わが国では年功序列、終身雇用が続いている。

若年層の時は賃金水準が低い。結婚し、子育ての負担が増す世代になると賃金が増える。

雇用も安定している。

高い経済成長が可能である場合、年功序列や終身雇用は有効だった。

しかし、1990年代初頭にバブルが崩壊し、わが国は自律的に成長することが難しくなった。

多くの企業はコストカットのために正社員を減らした。非正規雇用が増え経済格差は拡大した。

産業競争力は凋落している。

それでも、年功序列の固定観念から抜け出すことができない企業が多い。

成長を目指すためには政府が新しいルールを導入して、既存の価値観を打破しなければならない。

その点でアベノミクスは踏み込み不足だった。

人口減少、内需の縮小、円安、物価高…

岸田政権は労働市場など構造改革を実行しなければならない。

それが経済政策の要諦だ。

労働市場改革が遅れるほど、わが国経済の苦しさは増す。

わが国の人口は減少している。内需は加速度的に縮小均衡に向かう。

それに加えて、金融政策を重視したアベノミクスの副作用として円安が進んでいる。

ウクライナ危機などを背景に、世界でインフレも進んでいる。

特に、資源価格や穀物などの値上がりは鮮明だ。

円安と物価の上昇の掛け算によって、わが国の輸入物価は急騰している。

5月まで10カ月続けて貿易収支は赤字だ。

企業はコストの転嫁を一段と急ぐ。

家計により大きな皺寄せがいく。

その一方で、わが国には強い部分も残っている。

超高純度の半導体部材、自動車、精密な製造機器はその代表格だ。

強みがあるうちに、政府は年功序列などの雇用慣行を刷新しなければならない。

同一労働・同一賃金の価値観を社会に浸透させ、実力によって人が評価される環境整備は急務だ。

世界の変化に対応する力を残したとはいえない先例がある。

独シュレーダー政権の労働改革だ。

主たる内容は、解雇規制緩和、職業訓練強化、失業給付期間の短縮だった。

企業は人員を調整し、事業運営の効率性を高めやすくなった。

解雇された人は職業訓練を受け能力向上に取り組んだ。

失業保険の給付額の引き下げなどが就業を促した。経済全体で、新しい取り組みが増えた。

それによってドイツ自動車産業の競争力が高まった。

その後、メルケル政権は中国の自動車需要を取り込んだ。こうして1990年代に停滞したドイツ経済は復活を遂げたのである。

現時点でアベノミクスを総括すると、一時的に好循環をもたらしたことは大きい。

安倍氏は、金融・財政政策によって景気を支えた。その上で、労働市場を改革し、経済全体で好循環を持続させようとした。

しかし、労働市場改革は進まなかった。労働市場の流動性の向上などは、人々の生き方に直接かかわる。

それだけにインパクトは大きい。

結果として好循環は続かなかった。ウクライナ危機などによって脱グローバル化は加速する。

アベノミクスがわが国経済に、急激な環境変化に対応する力を残したとはいえない。

長期的に見た場合に必要なのは労働市場を中心とする構造改革だ。それ無くして本当の成長は難しいだろう。



【データから読み解く】主要国の家計金融資産

2022-07-31 11:50:40 | 日記
【データから読み解く】主要国の家計金融資産
  • #谷口賢吾
今回は「主要国の家計金融資産」を取り上げてご紹介いたします。

今年の2月下旬にロシアのウクライナ攻撃が始まり、株式市場にも大きな影響がもたらされています。今後の国際情勢がどうなるか、金融市場がどうなるのか見通すのは非常に難しい状況となっています。

しかしながら、これまで新型コロナの感染拡大以降、米国を中心とした金融緩和を背景として世界的に株高などの現象が起きました。

こうした金融緩和を背景とした株高現象が、主要国の家計の金融資産形成にも大きな影響をもたらしているものと考えられます。

それでは、世界の主な国では、家計金融資産(一人当たり)はどの位の規模なのでしょうか。

長期的に見て、どのように推移しているのでしょうか。

また、主要国の金融資産の株や現金預金などの内訳・構成比はどのようになっているのでしょうか。

長期的に見て、構成比の変化に特徴があるのでしょうか。実際に数字を見て確認したいと思います。

まず、主要国の家計金融資産(一人当たり)の推移を見てみます。

2020年時点で最も大きいのは米国で31.7万ドルとなっています。

次いで、大きいのはスイス(29.7万ドル)で、スウェーデン(19.7万ドル)、日本(16万ドル)、ドイツ(11.7万ドル)と続きます。

家計金融資産(一人当たり)の長期推移を見てみると、米国は2000年に12.2万ドルでしたが、そこから2007年(17.9万ドル)まで増加トレンドとなりますが、リーマンショックで一度落ち込みます。

以降は増加トレンドとなり2020年に31.7万ドルとなります。

この20年間の年平均伸び率(CAGR)は4.9%となっています。

スイスも米国とほぼ似たような動きをしており、2000年(12.3万ドル)から20年(29.7万ドル)でAGR4.5%となっています。

スウェーデンは、2000年に4.9万ドルでしたが、そこから増加トレンドで20年に19.7万ドルと、この間R7.24%と高い伸び率を示しています。

日本は、2000年の7.8万ドルから緩やかな増加トレンドを続け、20年に16万ドルと、20年間でCAGR3.6%となっています。

ドイツ、2000年の4.6万ドルから増加トレンドが続き20年の11.7万ドルとCAGR4.8%となっています。

特に、2019年から2020年にかけて新型コロナの影響から、金融緩和・給付金等のマネーがあふれたことにより、米国、スウェーデン、日本はこの期間に高い伸びを示しています。

次に、家計金融資産の内訳・構成比を見てみます。

2020年で、現金預金比率を見ると、日本が最も高く54.2%となっています。

次いでドイツ40%、スイス32%、スウェーデン13.2%、米国12.7%と続きます。

同じく株式の比率を見ると最も高いのはスウェーデンの37.8%で、次いで米国36.9%、スイス13.2%、ドイツ11.4%、日本10.9%と続きます。

投資信託では、最も高いのは米国で13%、次いでスイス11.9%、ドイツ11.5%、日本4.4%となっています。

こうしてみると、20年間で家計金融資産の伸び率が最も低かった日本は、最も現金預金の比率が最も高いことが分かります。

一方、家計金融資産の伸び率が高かったスウェーデン、米国は株式や投資信託の比率が高いことが分かります。

特にスウェーデンは、この20年間で株式の構成比も2000年の29.2%から2020年の37.8%と伸びていることから、金融資産の伸び率の高さが、株式の比率を高めたことが要因となっていることが分かります。

2021年に、家計金融資産が日本国内全体で約2000兆円規模と過去最高に達するとの報道がありましたが、それでも伸び率で見ると、欧米諸国と比べてまだまだ低いことが分かります。

0.01%程度の低金利の現金・預金の割合の高さが、その要因になっています。

世界と比べて、日本の賃金が伸びていないことが話題となりましたが、金融資産で見ても実は世界と比べて低い伸び率だということを認識する必要がありそうです。

株式市場は、冒頭に伸びたように国際情勢の影響を受けて、見通すことが困難な状況となっています。

そうはいっても日本の現金預金比率の高さを、もう少し見直し、資産運用シフトしていくようなビジネスに事業機会がありそうですね。

出典:OECD “Household financial assets”
  • #谷口賢吾

国家の流儀 世界に売り込め日本の石炭火力技術 CO2の90%以上を分離・回収「CCUS」を主導

2022-07-31 11:34:15 | 日記

国家の流儀 世界に売り込め日本の石炭火力技術 CO2の90%以上を分離・回収「CCUS」を主導


昨日 15:00

日本のエネルギー技術が改めて脚光を浴びている。

© zakzak 提供革新的低炭素石炭火力の実現を目指す「大崎クールジェン株式会社」=広島県大崎上島町

安倍晋三元首相の遺産ともいうべき、日本と米国、オーストラリア、インドによる戦略的枠組み「QUAD(クアッド)」。そのエネルギー相会合が13日、オーストラリア・シドニーで開催され、ロシアによるウクライナ侵略を受けて顕在化したエネルギー安全保障について、4カ国が一致して対応することが確認された。

その際、火力発電所から出るCO2を回収・再利用する技術「CCUS」などで協力を深めることが重要との認識で一致した。実は、このCCUSは、日本が主導している技術なのだ。

日本のエネルギー自給率はわずか10%。石油や天然ガスと比べ、埋蔵量が豊富で安定供給が見込め、価格も原油や天然ガスに比べ半分から3分の1である石炭は、発電コストの低いエネルギー源として重要だ。

パリ協定を前提に策定された日本政府のエネルギー需給見通しにおいても2030年には、石炭火力エネルギーが26%を占める予測になっている。

世界の発電電力量も、約4割が石炭火力で、アジアなどの新興国を中心に石炭火力の需要が拡大していくことが予想されている。問題は、石炭火力はCO2排出量が多いことだ。

このため、先進国は排出量削減のため、太陽光・風力などの再生可能エネルギーや原子力へと切り替えているのだが、太陽光などは天候などにより発電量が大きく変動する。この不安定な発電を補う調整弁の役割を果たしているのが石炭と天然ガスだ。

CO2排出量は減らしたいが、再生エネだけでは不十分だし、CO2排出量が少ない天然ガスは高価なうえ、安定供給が不安だ。かくして、安価で豊富な石炭に頼らざるを得ないのだが、石炭だと排出量が多く、気候変動対策とぶつかることになる。

この難問を解決すべく、日本は技術開発を進めてきた。それが、酸素吹石炭ガス化複合発電技術(IGCC)と、クアッドの会合でも話題になったCCUS、つまり石炭火力から排出するCO2の90%以上を分離・回収する技術だ。

その実証試験をしているのが広島県にある「大崎クールジェン株式会社」だ。中国電力とJパワーの出資で09年に設立、12年度から経産省から補助を受け試験を開始、16年度からは国立研究開発法人新エネルギー・産業技術開発機構(NEDO)から助成を受け実証試験を実施している。

国際社会では近年、石炭火力は目の敵にされてきた。だが、CO2を分離・回収することが可能な技術および日本が誇る酸素吹石炭ガス化発電技術を組み合わせて利用することで、石炭火力と気候変動対策を両立させることができる。

まずは、石炭輸出国であるオーストラリアをはじめとするクアッドにおいてその技術の存在をアピールしつつ、いずれはヨーロッパや新興国にも輸出できるようにしたいものだ。

■江崎道朗(えざき・みちお) 評論家。1962年、東京都生まれ。九州大学卒業後、月刊誌編集や国会議員政策スタッフなどを務め、安全保障やインテリジェンス、近現代史研究などに従事。「江崎塾」を主宰。著書『日本は誰と戦ったのか』(KKベストセラーズ)で2018年、アパ日本再興大賞を受賞、19年はフジサンケイグループの正論新風賞を受賞した。著書に『日本人が知らない近現代史の虚妄』(SB新書)、『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』(扶桑社)など多数。






焦点:韓国不動産ブームが利上げで暗転、借金抱えた消費者に重圧

2022-07-31 10:44:04 | 日記
焦点:韓国不動産ブームが利上げで暗転、借金抱えた消費者に重圧

7/31(日) 8:01配信


 7月29日、最近まで沸騰していた韓国の不動産市場が突如として暗転し、世界有数の規模の借金を背負っている消費者に重圧がのしかかっている。

[ソウル 29日 ロイター] -  

   最近まで沸騰していた韓国の不動産市場が突如として暗転し、世界有数の規模の借金を背負っている消費者に重圧がのしかかっている。

引き金を引いたのは、記録的なペースの利上げだ。

 首都ソウルのマンション価格は先週、過去2年2カ月間で最も大幅な下落に見舞われた。

6月の売買件数は前年同期比で73%減少している。

 2600兆ウォン(約270兆円)に上る不動産関連債務が今、金利上昇の洗礼を受けている。

不動産市況が低迷し、住宅ローンの支払い額が増えれば、消費を冷やす恐れが強い。

 韓国では家計資産の4分の3近くが不動産市場にひも付けられている。

このため政策当局者は、住宅ローン金利の上昇に伴って債務不履行が増え、経済危機が近づきかねないと危惧する。 

一般市民は既に痛みを味わっている。

生後6カ月の子どもを抱え、ソウル中心部に住むジェーン・ジョンさん(36)は、住宅ローンの支払いが膨らんだため厳しい選択を迫られた。 

「夫の給料だけでは月々の返済に間に合わなくなったため、私は産休を早めに切り上げて職場復帰せざるを得なかった」とジョンさん。

当初は産休を1年3カ月取るつもりだったという。

 ジョンさん一家は5億ウォンの住宅ローンを抱えており、月々の返済額は昨年に比べて72万ウォン増えた。

ブローカーからは、月間返済額は年末までにさらに増えて400万ウォン近くになりそうだと聞かされている。

これは、夫の月給の70%に達する額だ。

 金融監督当局の推計では、住宅ローン金利の平均が現在の5─6%から7%に上昇すると、債務不履行に陥る人の数は50万人増えて190万人に達する見通しだ。

 韓国では不動産投資関連のサービスとモノの消費が経済活動全体の約15%を占めている。

不動産不況と輸出不振が重なれば、経済成長の大きな足かせとなりかねない。

 キウム証券のアナリスト、セオ・ユンスー氏は「韓国の金融システムは世界で最も金利上昇に弱い部類に入る。

パンデミック期間中の債務増加幅は世界有数だった」と語る。 

「最も大きな問題に直面するのは、最近になって住宅ローンと(投資のための)融資の両方を受けた人々だ」

 <住宅ローン金利はさらに上昇へ> 

韓国銀行(中央銀行)は昨年8月以来、累計175ベーシスポイント(bp)の利上げを行った。今月は過去最大の50bpの利上げを実施している。

現在2.25%の政策金利は、年末までに2.75%に上昇してピークを迎えるとの見方が多い。

既に9年ぶりの高水準に達している住宅ローン金利はさらに上がり、多額の債務を抱えた家庭を締め付けそうだ。 

ソウルの住宅価格は過去5年間で2倍以上に高騰した。

景気刺激策にあおられた住宅購入から始まり、やがて不動産投機は国民的な「娯楽」へと発展。

融資規制が強化され、30代を中心とするミレニアル世代の多くが経済的苦境に陥っても投機は止まらなかった。 

韓国の家計債務の対国内総生産(GDP)比率は第1・四半期に104.3%と、世界屈指の高さだったことが、国際金融協会(IIF)が示す主要36カ国のデータで分かる。

 規制当局は家計債務が金融システム全体にもたらす影響を和らげようと、固定金利での借り換えを可能にする措置を導入した。

この救済策が発表されたのは、韓国中銀が予想外に50bpの利上げに踏み切って2週間たってからだ。

 秋慶鎬・企画財政相は今週、「家計債務の構造を迅速に改善する」と表明。

「借り換え策が始動すれば、家計債務に占める変動金利債務の割合は78%から73%弱へと、最大5ポイント低下するはずだ」と述べた。

 可処分所得に対する債務の比率は、昨年末に206%に達した。

 前出のジョンさんは「私たちの財産はマンションが全てだから、何とかやりくりしていく。

ソウルから出て行くなんてまっぴら」と語った。 (Cynthia Kim記者)