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中国の若者を襲う就職難、コロナの影響だけではない厳しい現実

2022-07-22 17:41:46 | 日記
中国の若者を襲う就職難、コロナの影響だけではない厳しい現実

【洞察☆中国】

2022年06月26日09時00分

中国の雇用情勢が厳しい時期は過去にもあった。

写真はリーマン・ショック後、世界的な不況の影響が広がる中、湖北省武漢の大学での就職斡旋(あっせん)会に詰めかけた数千人の求職者たち。整理に警官が動員されている=2009年2月20日、中国・武漢【AFP時事】

 中国教育部(日本の文部科学省に該当)が発表した統計によると、今年秋に中国の大学新卒者数は前年より167万人増え、1076万人となる。史上初めて1000万人を突破。

2000年に新卒の数はわずか100万人だった。年々増え、この20年余で約10倍だ。(文 日中福祉プランニング代表・王 青)

 ◆学習塾関連だけで失業者1千万人

 「ゼロコロナ政策」で中国経済が失速している中で、多くの専門家は「新卒者にとってこれからの時代の就職は極めて厳しい状況になる」と指摘している。

 「就職難」の背景には、上述した経済状況が原因であることはいうまでもない。さらに、昨年あたりから政府が繰り出すさまざまな規制が雇用市場に大きな影響を与えている。

 昨年7月に打ち出した小中学校の勉強の負担を減らすという「双減政策」、インターネット関連や不動産関連にも厳しい規制が加えられた。

 大手学習塾運営関連企業だけで、約1000万人の失業者が出たと伝えられている。このほかも、大規模なリストラが行われた。

 特に今年に入り、資本市場の変化で「テンセント」や「EC大手京東」などの人員カットのニュースが大きく注目された。

もともと、これらの大手は今まで、一番雇用をつくり出していただけに、雇用市場へのダメージは大きい。

 ◆企業倒産多発の恐れ

 中国国家統計局が5月16日に発表した4月の全国都市部の失業率は6.1%で、20年3月以来、最大となった。

16~24歳の失業率は18.2%で、前月の3月より2.2ポイント上昇、統計を始めてから最も高い数値という。

 これら一連のデータを裏付けるように、中国のある教育機関の調査では、5月現在、大学の新卒(今年9月に卒業予定)の内定率が30%以下にとどまった。

このうち、教育関連と不動産企業の新卒採用定員数は、前年比でそれぞれ50%減、30%減となった。

 中国教育部が各大学側に「企業との連携を強化して学生の就職率を上げよう」と促し、訪問する企業の数のノルマまで付けている。

 中国では今年、オミクロン株の感染が拡大したため、多くの地域でロックダウン(都市封鎖)が実施された。最大の経済都市、上海では3月下旬から始まった。

 解除後、経済活動の回復には時間がかかり、企業倒産の津波がやってくるのではないか、と専門家たちは危惧する。

 実際、ゴーストタウンになった上海では、飲食店や雑貨店、洋服店など、個人が経営する多くの零細企業が家賃や人件費への資金の枯渇により、閉店に追い込まれた。

 ◆公務員や国有企業に人気

 経済の減速が顕著になった近年、若者の就職志向が大きく変わった。公務員や国有企業などが人気を集めるようになるにつれ、競争も激しくなっている。

 昨年の公務員試験の倍率は約64倍だった。

また先頃、中国の名門大学である北京大学核物理専門の博士学位を取った女性が、北京市のある区の都市管理巡回員として就職したことが世間を驚かせた。

 そして、これまで一流大学の卒業生の目に全く入らなかった、地方の無名な市や鎮などの政府機関に、名門校の卒業生が殺到していることも大きく注目された。

 若者が「自身のキャリア」や「将来の夢」より、まず安定した生計を選ぶ、いわば「安全運転」の傾向が強くなってきている。

 中国は9月が新学期であるため、今年の大卒生のほとんどが2000年に生まれた「ミレニアル世代」だ。

中国の経済の高度成長を経験し、デジタルネーティブ世代でもある。

 比較的豊かな時代を経験している彼らが、社会人になろうとしている時に、就職氷河期に直撃されるとは、誰にも予測できなかっただろう。

 その影響として、「スロー就活」「フレックス就職」などの言葉も生まれた。

また「修士課程に進学して時間を稼ぐ」学生が増えると同時に、「親のすねをかじる」人、「寝そべり族(何も努力しない、最低限の生活をする)」の人も少なくない。

今後、「多種多様」な就職形態が出てくるだろう。

(時事通信社「金融財政ビジネス」より)

 【筆者紹介】

 王 青(おう・せい) 日中福祉プランニング代表。中国・上海市出身。大阪市立大学経済学部卒業。アジア太平洋トレードセンター(ATC)入社。大阪市、朝日新聞社、ATCの3者で設立した福祉関係の常設展示場「高齢者総合生活提案館 ATCエイジレスセンター」に所属し、 広く福祉に関わる。 (了)


韓国がここへきて「史上最大の幅」で金利を引き上げ…そのウラにある韓国経済の「現実」

2022-07-22 16:50:34 | 日記
韓国がここへきて「史上最大の幅」で金利を引き上げ…そのウラにある韓国経済の「現実」

2022.07.21

高安 雄一大東文化大学教授

史上初めての決定

7月13日、韓国経済の歴史で初めての決定がなされた。韓国銀行の基準金利が通常の0.25%の2倍である0.5%引き上げられる、いわゆるビックステップが行われたのである。

もっとも、「歴史上」といっても、韓国銀行が基準金利(過去はコール金利誘導目標)を公表し始めたのが、1999年5月であるので、四半世紀足らずの期間で初めての出来事である。

韓国銀行の基準金利リーマンショック後の不況期にはいきなり1%下げられたことはあったが、引き上げはこれまで必ず0.25%ずつであったので、韓国銀行もついに本腰をあげてインフレ抑制に大きく舵を切ったといえそうである。

0.5%引き上げた結果、韓国銀行の基準金利は2.25%となった。

ただし、2014年10月以前は2.25%であったわけであり、5%を超えていた時期もあったわけで(2000年2月~2001年6月、2007年8月~2008年9月)、現在がこれまでになかった高金利というわけではない。

とはいっても、2021年8月から1年足らずで基準金利が1.75%引き上げられたうえ、今回は歴史上初めて1回に0.5%の引き上げがなされた事実は大きい。

インフレへの恐怖

韓国銀行がなぜ今回、このような決断を下したのか、韓国銀行の資料(2022年7月13日報道資料「通貨政策方向」)を翻訳し引用する形で示していこう。

韓国銀行が0.5%基準金利を引き上げた一番の要因はインフレである。

韓国銀行は、国内外の景気が下振れするリスクや国際金融市場の不確実性を認識している。

韓国銀行は、世界経済と国際金融市場を以下のように分析している。

すなわち、世界経済は高いインフレーションが持続するなか、ロシアのウクライナ侵攻の長期化により成長の勢いが弱まっている。

また、国際金融市場では主要国の政策金利引き上げが加速しており、それにともなう景気後退への懸念で危険回避心理が強まっている。

さらに、米ドルの価値が増価して株価が相当幅下落したとともに、主要国国債金利は大幅に騰落している。

今後世界経済と国際金融市場は、グローバルインフレーション動き、主要国の通貨政策変化、地政学リスクなどに影響されるものとみられる。

一方、韓国銀行は国内経済については現在のところは肯定的な判断をしている。

すなわち、国内経済は回復傾向が継続している。

輸出増加傾向が多少鈍化したものの、民間消費が回復傾向を持続したとともに、設備投資は不振が緩和される様相を呈している。雇用状況は大幅な就業者数増加が続いている。

ただし今後の国内景気についてはリスクも指摘している。

国内経済は消費回復傾向が続くと考えられるが、主要貿易相手国の成長の勢いが弱くなる影響で輸出が鈍化して今年の成長率は、去る5月の見通し値である2.7%を多少下回ると予想されて、成長過程の不確実性も高いと判断している。

世界経済や国際金融市場のみならず、国内経済にも不確実性が出てきたなか、それでも基準金利を引き上げた理由はインフレ懸念が大きいからである。

韓国では物価上昇の勢いが持続しているなか、物価上昇の範囲も広くなったことを指摘している。

さらに、期待インフレ率も非常に高くなっており、インフレが定着することを防ぐための先制的政策対応がより一層重要であると判断したと、韓国銀行は説明している。

具体的には、消費者物価上昇率は、石油類価格の高騰が持続したとともに、その他の品目も価格上昇幅が拡大して6%と非常に高かった。

根源インフレ率、すなわち、食料品およびエネルギーを除外したインフレ率についても、4%に近接する水準に上昇した。

消費者物価指数は、当分6%を上回る高い上昇率が持続するとみられる。また、根源インフレ率も相当期間4%以上の高い水準を持続するものとみられる。

不動産価格に動きが…

このような物価と景気状況を総合してみるとき、韓国の景気後退リスクは大きいが、まだ不確実性が高いに過ぎない状況である。

一方、消費者物価上昇率は確実に高まっており、今後もこれが継続することもほぼ確実である。

そこで韓国銀行は、インフレ懸念の拡散を抑制することの方が景気の下支えよりもプライオリティが高いと判断して、今回、0.5%という通常より幅の大きい引上率で基準金利を引き上げることを決断したと説明している。 

韓国は本格的に金利引き上げに舵を切ったが、この影響はまだ物価上昇率にはまだ現れていないが、不動産価格にはすでに影響を与えている。

大統領選挙でも争点になったが、韓国では不動産価格、特に首都圏でマンション価格が高騰し、若年層を中心に不満が高まっていた。

この要因はこれまで続いた低金利政策であり、低い金利で資金を借り、これを不動産に投資する動きが広がり、不動産価格が大きく高まっていた。

しかし韓国不動産院の売買価格指数によれば、韓国銀行の基準金利が引き上げられ始めてから数か月経った2022年2月から、これまで上昇傾向であった全国のマンション価格が緩やかではあるが下落に転じた。

また、ソウルにおいても同様に2022年2月からマンション価格が下落に転じた。

韓国にとってインフレは問題であるが、不動産価格の高騰も大問題であり、韓国銀行が金利引き上げに本格的に舵を切ったことは、不動産価格高騰問題の解決に資することが期待される。

景気後退のリスクはあるものの、韓国銀行の政策により韓国が抱えてきた問題も解決できるとなると、韓国経済にとってはプラスの方が大きいのではなかろうか。