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安倍元首相 左派を震撼させたその実績を検証すると

2022-07-18 18:31:19 | 日記

左派を震撼させたその実績を検証すると

7月14日、岸田首相は、暗殺された安倍元首相について今年秋に国葬を行う方針を明らかにした。


これに対し、公明はコメントせず、共産、れいわ、社民は反対した。

安倍元首相の功績については世界的には称賛されているが、国内の左派やリベラルを中心に「アベ政治を許さない」と露骨に嫌う人も目立った。


安倍氏に反発するメディアも少なくなかったが、安倍氏はそうした人たちのどこを刺激したのだろうか。

本コラムで何度も紹介したが、安倍元首相は、経済政策で雇用の確保の実績はピカイチだった。


安全保障では、西側政治家の中で誰よりも早く専制国家中国の脅威に気づき、民主主義のクワッド(日米豪印)に動き、同盟(集団的自衛権)の重要性から安保法制を作った。

© 現代ビジネスPhoto by GettyImages

これらの経済政策や外交安全保障政策は、世界標準の政策であり、世界からの評価を得るのも当然だった。

経済政策は、複数のノーベル賞受賞者や世界的に著名な経済学者から評価されたし、外交安全保障も各国首脳からも支持を受けている。

だが、それらの実績は左派を震撼させた。雇用の確保は左派の根幹思想であるが、保守の安倍元首相はその「お株」を奪った。


雇用確保ができたのは左派政権ではなかったことで、左派を圧倒した。

実際、雇用の確保について、民主党政権と安倍政権をみると、比較にならないほどに安倍政権の方が優れた業績を示している。

© 現代ビジネス日本の左派やリベラルが、安倍元首相に完全に敗北したワケ

外交安全保障でも、安倍元首相は第1次政権の2000年中頃、西側民主主義国のリーダーがまだ気付かない時期に、中国の野望を分かりやすく世界に暴いていた。

その頃から、対中包囲網であるTPP(環太平洋パートナーシップ)や今でのクワッド(日米豪印)の構想に向けて動いていた。


中国は左派の「心の拠りどころ」ともいえるから、左派は必死になって安倍元首相を攻撃した。

さらに、安倍元首相は、左派の「お花畑論」も安保法制で崩し、今回のウクライナ危機ではその「お花畑論」の欺瞞が皆に知れてしまった。

要するに、安倍元首相は、左派が信じて築き上げた戦後の虚像を、実績により見事に打ち砕いたのだ。

左派は安倍元首相に、経済でも安全保障でも完膚なきまで打ちのめされた。


左派がいくら言い訳しても、安倍政権下での左派の国政選挙6連敗は否定できない。

国民は左派より安倍元首相を選んだ。


雇用を守るのも国を守るのも左派でなく、安倍元首相だったのだ。

国葬は「弔問外交」の舞台になる

雇用と外交安全保障という政策で完敗した左派は、「モリカケサクラ」というスキャンダルで安倍元首相を攻めるしかなかった。


しかし、その結果は左派にとって無残だ。

モリカケでは安倍元首相への嫌疑はまったく出なかった。

財務省による公文書改竄があったが、元財務官僚の佐川氏が自らの国会答弁ミスを糊塗する保身によって生じたものであり、安倍元首相には無関係だ。

サクラでは、安倍元首相の秘書に対する政治資金規正法不記載のみで安倍元首相は不起訴に終わった。

これらがモリカケサクラの司法による結果のすべてである。

安倍元首相については、国内では、左派メディアの影響でモリカケサクラのマイナスイメージが強かったが、海外では経済・外交安全保障での成果により高い評価を得ている。

今回、この好対照が露わになった。

これは、安倍元首相を嫌った人がどういう方々であったのかも、明らかにしてしまった。

これまで、ネットを中心としたいわゆる「ネトウヨ」が安倍元首相を支持しているとされてきたが、銃殺事件の後の事件現場や増上寺、自民党への献花の状況を見ると、国内でも安倍元首相を慕う人は多い。


一部左派メディアの報道に影響を受けなかった人が少なくなかったことは明白だ。

© 現代ビジネスPhoto by GettyImages

その上、海外からの弔問も凄い。

エリザベス女王、ローマ法王をはじめ、トランプ前大統領、バイデン大統領、そしてプーチン大統領と世界各国の要人から追悼の言葉が寄せられた。

さらにブリンケン国務長官や台湾の頼清徳副総統が来日し、弔問に訪れた。

弔意の数は、259ヵ国・地域や機関などから計1700以上にのぼっている。

オーストラリアでは各都市の建物をライトアップし、インドは全土で喪に服した。

米上院では安倍元首相の功績をたたえる決議案が提出された。

これだけ内外から慕われたのだから、安倍元首相の国葬は当然だろう。

国葬では費用を全額国が負担するので、これが問題とも言われる。


2020年の中曽根康弘元首相の内閣・自民党合同葬では約2億円かかったといわれる。

今回の国葬ではその倍としても4億円。

官房・外務機密費の1割程度なので、大きな支出とは言えない。

国葬となれば、各国要人の出席にもなるだろうから、日本が「弔問外交」の舞台になることもあり得る。

葬儀は故人を偲ぶものであるが、安倍元首相なら世界平和のきっかけになると許してくれるだろう。

日本が外交舞台になる恰好の機会と考えれば、国葬は決して意味のないことではない。

むしろ、国際的に名が知れた安倍元首相の葬儀としてふさわしいものになるだろう。

なお、石平氏が「安倍元首相の国葬に一番困っているのは中国の習近平」という興味深いツイートをしていた。

これに対して、筆者は「習氏の困ることを反対するのは当然のことか。わかりやすい」とツイートした。

石平氏の見立ては、国葬に反対している国内勢力の立ち位置をわかりやすく解説している。






『イカゲーム』に見る韓国格差社会の現実

2022-07-18 17:39:47 | 日記
WEDGE REPORT
2021年12月16日

『イカゲーム』に見る韓国格差社会の現実

『ヴィンチェンツォ』も大ヒット
高橋一也 (ジャーナリスト)
»著者プロフィール


 2019年から20年にかけてNetflixで公開された『愛の不時着』に続き、今年またもや韓国ドラマの嵐が吹き荒れた。

コロナ禍のため自宅で過ごす時間が長くなったこともあり、もはや韓国ドラマが生活の一部となった日本人も少なくないだろう。

 そこで本稿では、21年に公開された韓国ドラマ『ヴィンチェンツォ』と『イカゲーム』を取り上げて、ドラマから見える韓国事情を解説していきたい。

『イカゲーム』は世界的なヒットにより一部で社会現象にもなっている(ロイター/アフロ)

『ヴィンチェンツォ』が見せる〝移民大国〟韓国

 幼い頃にイタリアに渡りマフィアのボスに育てられた韓国人ヴィンチェンツォ・カサノ(演:ソン・ジュンギ)は、マフィアの顧問弁護士となり韓国に渡る。

その目的は、ソウルの雑居ビル地下に隠された金塊を手に入れること。

ヴィンチェンツォはビルの住民を立ち退かせようとするが、ビルは違法な手段で開発を進める大手ゼネコンの手に渡ってしまう。

ヴィンチェンツォは心を通わせたビルの住民とともに悪事を働く大手ゼネコンに立ち向い、悪をもって悪を制していく――。

 主人公の人物設定から荒唐無稽な印象を受ける方も多いと思われるが、韓国人にとって韓国系外国人は珍しい存在ではない。

そこには一つ目のキーワード「移民」の存在がある。

 海外に住む韓国人(永住者を含む)は約700万人で、
人口が多い順に米国約254万人、中国約246万人、日本約82万人となっている。

既に現地で帰化した人たちは除外されているため、それらを含むとその数はより多くなる。

韓国の人口が約5100万人であることを考えると、人口の2割近くが海外に居住する「移民大国」であることが分かる。

 本稿ではそれらの人々をあえて「移民」と表現するが、それら移民が韓国から離れた理由は経済的なものだ。

近年「キロギアッパ」(雁のお父さん)と呼ばれる、子どもを母親同伴で海外留学させて、父親は韓国で暮らしながら仕送りを続ける移民が多いことが社会問題になっている。

 これは韓国の受験戦争が激化するとともに、一流大学を出ても大手企業に就職できず、就職できたとしても熾烈な出世競争で多くが40代で退職しなければならないという事情がある。

イタリア系韓国人の弁護士という人物設定が成り立つのは、このような背景があるからだ。

権力闘争の狭間に置かれた検察

 二つ目のキーワードは「検察」だ。韓国パワーエリートの系譜を辿ると、1945年の独立から93年の軍事政権終焉までは軍人が圧倒的な力を持っており、次いで国家安全企画部(現在の国家情報院)関係者が位置していた。

その後、金泳三(キム・ヨンサム)政権に始まる文民政権で軍人や情報機関関係者は意趣返しを受けて権勢が削がれ、国家機関としては検察のみがパワーエリートとして生き残った。

 検察が生き残れたのには理由がある。

韓国の歴代大統領が金泳三氏と金大中(キム・デジュン)氏を除いて安らかな余生を送れなかったように、文民政権以降は新大統領が前大統領を訴追する事態が続いた。

 そこで猟犬の役割を果たしたのが検察だ。

韓国の検事は日本と同様に司法試験を突破した秀才たちだが、軍事政権時代は軍人の風下に置かれてルサンチマン(怨恨)を鬱積させていた。

文民政権になり軍事政権関係者糾弾の動きが始まると検事たちは、それまで忠誠の対象であった関係者を次々に取り調べ、全斗煥( チョン・ドゥファン )氏と盧泰愚(ノ・テウ)氏の元大統領を獄に繋いだ。

 その後は政権が交代するたびに、新政権の守護者と世論の代弁者よろしく前政権関係者を訴追し続けた。

2019年になぜか日本のお茶の間でも話題になった当時の法相である曺国(チョ・グク)への数々の疑惑事件は、最後に残ったパワーエリートである検察と、検察を含む旧来的な韓国を破壊しようとする文在寅政権の対立であったと見れば理解が容易だ。

ドラマではヤメ検弁護士が殺人を指示するなど悪事を尽くすが、そのような検事像は韓国人の検察へのイメージを反映しているといえるだろう。

『イカゲーム』が浮き彫りにする「借金漬け」の韓国民たち

 会社を解雇されてギャンブルにのめり込むソン・ギフン(演:イ・ジョンジェ)が、地下鉄のホームで出会った男に「数日ゲームをやれば金を稼げますよ」と唆されて、秘密の施設に送り込まれる。

施設に集められたのは金に目がくらんで犯罪を犯したり、借金取りに追われたりしている男女456人。

最後まで勝ち残った者が賞金約45億円を総取りできるゲームを提案される。

ただし、ゲームに負けることは死を意味する。

男女は拒否して社会に戻るが、二進も三進もいかない現実をあらためて認識して、秘密の施設に戻ってくる。

死か一攫千金かをかけたゲームは、子どもの頃に慣れ親しんだ遊びだった――。

 イカゲームを観る上でのキーワードは、ずばり「借金」だ。

ドラマを一貫する経済格差と拝金主義というテーマも、この借金を淵源とする。

世界金融協会(IIP)によれば、

2021年4月~6月期における韓国の家計債務残高の対国内総生産(GDP)比が104.2%となり、世界ワースト1となった。

これは韓国の経済規模よりも、韓国人による銀行からの借入れとクレジットカード使用額などの販売信用が大きいことを意味する。

韓国に次いで香港が92%、英国が89.4%、米国が79.2%と続き、さらに順位は下がって日本が63.9%であることを見れば、韓国が世界で唯一、家計債務がGDPを上回る「借金漬け」の国であることが理解できるだろう。

大きな要因は見栄っ張りな気質

 IIPはその原因について、韓国政府の不動産政策失敗で住宅価格が高騰したことと指摘する。

例えば、

ソウルと東京の分譲マンションを比較すると、

ソウルは約8800万円(韓国不動産統計院)、東京は7712万円(不動産経済研究所)でソウルは東京の約1.14倍であるが、この数字からでは韓国人の皮膚感覚が分からないので別の数値を示してみよう。

 20年末に韓国紙ハンギョレ新聞が行った調査によれば、17年に平均年収の16.5倍だったマンション価格は、20年には26.5倍になった。



 加えて、韓国人の見栄っ張りな特性も家計債務の増大に影響している。

再びマンションを例にすれば、東京の平均面積68.2平方メートルのところ、ソウルは104.9平方メートルと広大だ。

夫婦と子ども一人世帯の韓国人の友人になぜそんなに広い家に住むのかと聞いたところ、「家の広さはステータスに直結するので、狭い家に住むのは恥ずかしい」からだと答えた。見栄っ張りという特性は、上述のクレジットカード使用額などの販売信用にも影響している。

 韓国は1997年のアジア通貨危機を機に、個人消費の増大と脱税防止を目的として、政府が主体となりクレジットカードの利用を推進したため、今ではキャッシュレス比率89.1%と世界で最もキャッシュレス化が進んだ国となった。

さらに韓国政府はこの過程で、30万円を上限として年間クレジットカード利用額の20%を所得から控除(現在は15%)するとともに、1000円以上のクレジットカード利用で自動的に毎月行われる当選金1億8000万円の宝くじを配布(レシートに抽選番号を印字)する政策をとった。

この射幸的ともいえる政策が見栄っ張りな特性を刺激して、一挙に家計債務が増大したという訳だ。

はたして韓国は幸せな国になったのか?

 内閣府が実施した調査(令和2年度外交に関する世論調査)では、韓国に「親しみを感じる」とする者は34.9%で、そのうち18〜29歳の女性が最も多くの割合を占めている。

また、日本テレビは今年6月のニュースで、「韓国での就職目指す 日本の若者が増加」を報じ、韓国のコンテンツの影響が大きいという声を紹介した。

これらの傾向は、ひとえに韓国ドラマが日本の若者に好影響を与えた結果だといえる。

 確かに、率直に言って韓国ドラマの質は俳優や脚本、演出、映像の面で日本のドラマやバラエティー番組を凌駕していると思う。

これは韓国政府と芸能関係者が一体となって、「韓流」を輸出コンテンツとして育成してきた成果であり、素直に賞賛すべきだろう。

ただ、日本の若者が憧れるような夢の国なのだろうか?

 イカゲームは日本のみならず、米国や西ヨーロッパでもヒットしたという。

ここから思い起こされるのは、19年アカデミー賞で最優秀作品賞を受賞した『パラサイト 半地下の家族』だ。

 イカゲームとパラサイトが西欧キリスト教文化圏ではない韓国を舞台としながら欧米人に親近感を抱かせたのは、貧富の格差が拡大していることへの共感があるからだ。

つまり、これら作品は不平等や機会の減少という世界に共通する格差問題を韓国人特有の豊かな感情表現で描き出したからヒットといえる。

世界中の視聴者が楽しむドラマの裏には、経済格差で苦しむ韓国の市民がいることを忘れてはならない。

 果たして、ドラマとして社会問題を切り売りしている韓国の未来に夢はあるのだろうか。
  





台湾が官民挙げて安倍氏追悼 野党国民党本部も半旗

2022-07-18 16:57:28 | 日記
台湾が官民挙げて安倍氏追悼 野党国民党本部も半旗

井上雄介 (ジャーナリスト)
»著者プロフィール

 安倍晋三元首相が7月8日、参議院議員選挙の選挙演説中、銃撃され死去する事件が起きた後、台湾の蔡英文政権の動きは早かった。

 台湾メディアの風伝媒によると、蔡政権は8日の事件発生直後に国家安全会議を開き、「元首相に対し、台湾人民の最高の敬意を示す」との基本方針を確認。

わずか3日後の10日、台湾代表として、頼清徳副総統を葬儀に出席させることを決め、翌11日にはもう派遣した。

頼清徳副総統(右)が安倍元首相の私邸に駆け付け、葬儀にも参加した(ロイター/アフロ)

 スピーディーだが、拙速ではない。

8日に基本方針を確認後、代表派遣に伴って起こり得る数通りの事態を、情報機関がシミュレーションした。

政府が外交ルートで日本側へ連絡する一方、頼副総統は、かねて親交がある安倍家と接触して、葬儀出席の可能性を探った。

頼氏は、事件翌日の9日に早くも、12日に葬儀が行われることを告げられ、出席を許されたという。

 蔡政権は、日本側の立場に配慮し、国際社会の摩擦を避けるため、頼副総統を私人の身分で派遣することを決めた。

台湾側が先導し、日本側が同意する形で迅速に進んだ。

蔡政権の事務方の有能さに加えて、頼氏と安倍家の長年の関係、台湾の「駐日大使」(台北中日経済文化代表処)謝長廷・元行政院長(首相)の尽力が物を言っった。

頼副総統と安倍元首相との特別な関係

 頼副総統は11日に到着後、まっすぐに東京・渋谷の安倍氏の私邸に向かった。

同日、東京・増上寺で行われた通夜では、「親友」として並ばずに焼香した。1

2日午後、斎場に向かう前に営まれた、ごく私的な「家族葬」にも「身内」として臨んだ。

台湾の各メディアは、焼香の列に並んだ中国大使との対比を、やや誇らしげに伝えた。

 安倍氏の事件が与えた衝撃は、一般国民にも大きかった。

安倍氏は、親台派の日本の大物政治家として誰もが知る。

筆者に「安倍さんの笑顔が浮かんで、眠れなかった」と訴える知人もいた。

一方で、頼副総統に対する安倍家の特別待遇は、双方の深いきずな感じさせ、台湾の人々に別の驚きを与えた。

 頼副総統と日本の関係は長い。頼氏は1999年の立法委員(議員)時代から日本との交流が始まった。

2010年末以降の台南市長時代に、日本との友好に力を入れ、11年の東日本大震災直後、日本の観光業再建に協力しようと代表団を率いて訪日した。

 安倍首相も、16年の台南大地震では現地に深い関心を寄せ、頼氏との関係が深まった。

頼氏の安倍氏との交流は家族ぐるみで、訪日のたび、安倍氏の弟の岸信夫防衛相とも会っているそうだ。

安倍元首相の母親の洋子氏とも懇意だという。

 頼氏は、次期総統の最有力候補の一人で、早くも「9割当確」と見る市民もいる。

「次期政権」は、蔡政権以上に日本重視の外交スタンスを取る可能性がある。

総統、首相、閣僚らが相次ぎ弔問

 頼氏が日本で奔走する中、台湾各地で追悼の活動が一斉に始まった。

台湾紙・聯合報によれば、蔡英文総統は11日、窓口機関の台湾日本交流協会台北事務所を訪れ、自ら献花した上、「台湾の永遠の良き友人」と記帳した。

蔡総統は11日、政府機関と公立学校に対し、安倍氏を追悼して半旗の掲揚を命じた。

 なお、台湾で半旗の掲揚は、総統が「世界平和や人類の進歩に偉大な貢献があった」と認めた時、行われる。

行政機関などに求める行政規則で、一般国民への強制力はない。

 蘇貞昌行政院長(首相)も11日、総統府秘書長の李大維氏、呉釗燮外交部長(外相)、陳時中・衛生福利相を伴って同事務所を訪問。

蘇院長は「台湾が中国の圧力を受けている時、安倍氏は『台湾有事は日本の有事』と語り続けた。

台湾が新型コロナウイルスで困難に直面した時、ワクチンを贈ってくれた」などと述べ、安倍氏の死を悼んだ。

 ちなみに陳時中氏は、衛生福利の中央感染症指揮センター(CECC)トップとして、新型コロナ対策の指揮を続けた「時の人」。

今年11月の統一地方選挙で、民進党の台北市長候補に決まっており、首都奪還の重責を担うスター政治家だ。

 一方、最大野党の朱立倫主席も、同協会台北事務所を弔問。

朱主席は「安倍元首相は、台湾の永遠の良き友。家族歴代、台湾の良い友だ」と語った。

家族歴代とは、安倍氏の祖父、岸信介元首相が反共の立場から、国民党の蒋介石政権を支持していたことを指している。

国民党主席は安倍氏国葬に出席へ

 国民党は、中台統一志向で、反日的な幹部も少なくない。

しかし、台北市の党本部ビルは11日午後いっぱい、安倍氏を追悼して半旗を掲げた。

ネット上では「国民党もついにまともになった」、

「今回だけは、国民党を支持する」とやゆする言葉が相次いだ。
 ただ、台湾メディアの民視新聞網によると、国民党本部の半旗掲揚に、極端な親中派の洪秀柱元主席が猛然と反発。

「日本は、釣魚台(尖閣諸島の台湾名)や慰安婦問題で謝罪していない。抗戦8年(日中戦争)を指導した中国国民党がこのようでは、我慢ならない」と述べた。

 また、中台統一派の国民党のベテラン政治家で、テレビ・ラジオで政治番組の司会者としても知られる趙少康氏もフェイスブックで「日本は、中国侵略を謝罪しておらず、反省していない。

安倍氏は退任後、靖国神社を参拝し、台湾の慰安婦に謝罪していない」と批判。

「国民党が半旗を掲げるのは、自尊心と自主性に欠ける」などと書き込んだ。趙氏の書き込みには、数万件の「いいね」が寄せられた。

 中台統一派の小野党、「新党」は、国民党本部前で半旗掲揚に反発して、抗議活動を実施。「中華民国への裏切りで、国辱だ」などと叫んだ。

 台湾メディアの新頭穀(ニュートーク)よると、安倍氏追悼をめぐる国民党の内ゲバに、民進党の基隆市議会議員の張之豪氏が参戦。

フェイスブックで、半旗の掲揚に反対する「中台統一派」に対し、安倍氏追悼に反発するのは、故・蒋介石総統を否定することだと指摘。

「それでも国民党支持者か」とからかった。

 張之豪氏によれば、安倍氏の祖父の岸信介氏は、戦後一貫して、蒋介石総統と関係が良好で、国民党政権を支え続けた。

蒋介石氏が中国共産党との戦いに敗れて、台湾に逃れた後、日本は旧軍の有志が、「白団」と呼ばれる高級軍人からなる軍事顧問団を密かに派遣し、防衛を支えた。

張氏によれば、真の国民党支持者なら、安倍氏を否定できようがない。

 ただ、安倍氏の追悼反対の声は、国民はもちろん、国民党でも主流ではない。

台湾メディアの三立新聞網によると、朱主席は、同等の海外部主任の陳以信氏らを随員に、安倍元総理の国葬に出席する考えを明らかにした。

11月の統一地方選挙を念頭に、「親米日」路線を強調して、統一派でも独立派でもない、無党派層の取り込みを図る狙いもありそうだ。

市民1500人、大手企業が弔意

 台湾では一般国民の間でも、安倍氏追悼の動きが広がった。

中央通信社によると、日本台湾交流協会台北事務所では、銃撃事件翌日の9日、各界から花束が続々と届いた。

事務所前の屋外に高さ2メートルの大型の「伝言ボード」が置かれ、市民の多くが中国語と日本語で「台湾の永遠の良い友」などと書き込んだ。

 同事務所が11日、弔問の受付を始めると、夏の陽光が照りつける中、約1500人が訪れた。

「伝言ボード」は、早くも11日午前にはメッセージで一杯となり、午後にさらに1枚が増設された。

中には目を真っ赤にして、泣き腫らす人もいた。

 中央通信社によれば、台湾最大の鉄鋼会社、中国鋼鉄(高雄市)は10~11日、本社ビルの壁面にいっぱいに、レーザーイルミネーションで「謹んで安倍首相を追悼します」の文字を浮かび上がらせた。

同社は、ベトナムで日本製鉄やJFEと合弁事業を行うなど、日本と関係が深い。

「重要なパートナー国で、このような重大事件が起きた。当社も深い哀悼の気持ちを示した」と述べた。

 台湾の官民挙げての追悼ぶりは、英BBC(中国語版)もいぶかるほど。

「安倍氏は、なぜ台湾人に敬愛されるのか」と題する記事を掲載し、国際教養大の陳宥樺助教の「日本の政治家で、反中を語る人は非常に多いのに、『親台』は少ない」などの分析を伝えた。

 安倍氏亡き後、台湾人の心をこれだけつなぎ止められる日本の政治家が何人いるだろうか。岸防衛相らの尽力に是非とも期待したい。

世界最下位を記録した韓国の出生率、その現状と政府の対応

2022-07-18 11:37:55 | 日記
世界最下位を記録した韓国の出生率、その現状と政府の対応

  • フォーカス:2022年7月
【海外有識者からの報告】

海外の有識者から提供された現地の状況についての報告です(なお、本報告は執筆日における当地の情報であり、必ずしも最新の情報を反映されたものではない)。
イー・サンヨン(JILPT滞在研究員)

はじめに

今年5月、世界有数の富豪であり、Twitterの投稿が度々大きな話題になる、テスラCEOのイーロン・マスク氏のツイートが韓国に大きな反響を呼び起こした(注1)。

「出生率が変わらなければ、3世代のうちに韓国の人口は現在の6%になり、大部分が60代以上の高齢者になるだろう」という内容だ。

過去数十年の間、世界の合計特殊出生率(一人の女性が一生の間に産むとした時の子の人数)は、先進国を中心に低下し続けており、少子化がもたらす成長率の鈍化や高齢化は、各国政府の主要課題と認識されてきた。

中でも日本は、世界で最も急速に少子高齢化が進行し、最近まで高齢化問題の代表国とされていた。

東アジアの中で最も高度な経済成長を遂げた日本は、1970年代から合計特殊出生率が人口維持の目安とされる2.13の人口置換水準を下回るようになり、少子化による人口減少をアジアで初めて経験した。

しかし、その深刻さを認識した政府による継続的かつ多様な取り組みにより、日本の合計特殊出生率は2005年の1.26を底に再び増加に転じ、人口置換水準(2.13)よりは低いものの、1.3~1.5を維持している。

日本の出生率は現在も減少し続けており、人口問題の解決にはほど遠いが、近年の韓国と比べると状況はまるで天国のようである(注2)。

世界銀行によると、韓国の合計特殊出生率は世界200カ国のうち最下位の200位である。

韓国統計庁によると、2021年には0.81を記録した(図1)。

人口維持どころか、日本の1.33(2020年)の6割の水準であり、OECD加盟国の中で唯一、1を下回っている。

そして現在、統計では、さらに出生数が減少しており(図2)、2022年には世界で初めて0.7台を記録すると予想されている。

このような韓国の急激な少子高齢化は以前から予見されていた。

晩婚化、育児のしにくい環境など、日本や他の東アジア諸国でもよく見られる共通の問題が主な要因と作用する一方、韓国だけが持つ特殊な事情もあると考えられる。

本稿では、世界で最も低い出生率を記録した韓国特有の事情、このような少子化が韓国社会にもたらす衝撃、そして最後に急激な少子高齢化に対応するために、これまで政府が取組んできた政策と今後の展望について述べたい。

1.韓国の少子化の背景

韓国や日本等、東アジア諸国の最大の特徴であり、少子化の主な原因として指摘されているのは「結婚してから子どもを産む」という風潮だ。

結婚せずに子どもを産む家庭の割合は2018年時点で韓国は2.2%、日本は2.3%と、それぞれOECD加盟国の最下位、下から2番目という極めて低い水準だった

出所:OECD Family database

韓国の場合、このような認識は政策にもつながっており、非婚家庭に対する出産支援政策などは他国に比べて劣悪な状況である(注3)。

既婚者(配偶者がいる女性)に限定した合計特殊出生率を見ると、2016年に2.23と(注4)、それほど低くないが、未婚者が増え、彼らが出産をしないことにより、人口全体の出生率が低下したと言う指摘もある。

このような晩婚化と出産年齢が遅れている背景には、日本と韓国に共通する要因もあるが、韓国特有の事情もある。以下に簡単に紹介する。

第一の事情は、韓国の就職難とそれによる就職年齢の上昇だ。

日本の場合「1人の求職者あたり何件の求人があるか」を示す有効求人倍率は、2020年にはCOVID-19の影響で大幅に下落したが、継続的に1以上の水準を維持している。

一方、韓国の場合、2018年に0.58、2019年に0.49、2020年に0.39、2021年に0.50と、求職者数に比べて求人数が半分にも満たない状況が続いている(注5)。

若年失業率(15~29歳)は、2019年に8.9%、2020年に9.0%、2021年に7.8%で、ほぼ10%に近い高水準が続いている(注6)。

韓国の人材紹介会社「インクルート」の調査によると、大手企業の大卒新入社員の平均年齢は、1998年には25.1歳だったが、2020年には31.0歳と、過去22年で6歳近く上がったことが判明した(注7)。

韓国では男性に徴兵制度があるため、男性の社会進出は他国に比べて遅れるが、これに加えて就職難が重なったことで、さらに結婚年齢が遅れる状況となった。

第二の事情は、就職年齢の上昇とともに急激に上昇した結婚費用の増加である。

これが結婚年齢を遅らせる主な原因として指摘されている。

韓国最大手の婚活会社「デュオ」の調査によると、結婚に必要な初期費用が非常に高く、特に男性にその負担が大きかった。

2022年にデュオを通じて結婚した顧客の結婚費用を見ると、住宅を用意するのに2億4千万ウォン(約2,200万円)、嫁入り道具を購入するのに1,470万ウォン(約130万円)、結婚式および新婚旅行などに約3千万ウォン(約250万円)を支出しており、費用の平均60%を男性が負担していた(注8)。

特に、住宅を用意する費用が2021年の1億9,271万ウォン(約1,800万円)と比べて24.6%上昇していたが、これは2020年以後、全国的に発生した住宅価格の急騰によるものである。

韓国の場合、結婚する時に住宅を購入することが一般的で、住宅を購入しなくても、他国のように家賃で家を借りる場合が少ない。

家賃の代わりに、住宅価格の約60%程度の金額を家主に保証金として先払いし、これを担保に該当住宅に居住する「チョンセ」というシステムを使用する場合が多いため、住宅の初期費用が非常に高い。

このように、結婚に必要な初期費用が急激に増える中で、十分な結婚費を貯蓄し終える時期がさらに遅くなり、これが結婚年齢を遅らせるのに大きな影響を及ぼしたと解釈される。

同時に、政府が不動産価格の急騰を抑制するために継続的に実施した不動産関連の貸出制限強化政策(ex:住宅ローンの上限額の引き下げ等)も、新婚夫婦の住宅準備を難しくした要因となった可能性がある。

さらに、韓国の人口政策を総括する少子高齢委員会が2020年に発表した「少子高齢社会基本計画」では、上述の要因以外にも、

就職と結婚に成功したとしても、仕事と育児の両立が不可能な文化による出産放棄、女性がやるべきものとされる家事労働の強い性別役割分担意識、教育の競争激化による育児費用の増加などが少子化の加速要因として指摘された。

このように多様かつ複合的な要因によって、韓国の出生率は世界で最も低くなったと考えられる。

2.少子化が韓国社会にもたらす衝撃

深刻かつ急激な少子化は韓国社会にどのような衝撃をもたらすのであろうか。
まず、少子化を経験したすべての国々が直面せざるを得ない低成長は、すでに避けられないと予想されている。

韓国の人口は、2020年を基点に減少し始め、2100年の時点で、現在の5,164万人から2,678万人まで減少する(注9)。

このような人口構造の変化は人的資本投資を中心に成長した韓国における労働需給を低下させるだけでなく、投資や貯蓄の減少、経済成長全体の低下をもたらす。

韓国銀行は、出生率が1人台に留まる場合、2026年以降10年間の年平均経済成長率は0.4%だと予測するが、出生率が継続的に低下する現在、経済成長率がより一層低くなる可能性も排除できないと考えている(注10)。

そして教育問題の深刻化も予想される。韓国の場合、公立学校の比重が高く、雇用硬直性が高い。

そのため、学齢人口の減少により教育インフラの供給過剰が現れると予測される。

すでに、大学入学者数が入学定員を下回り、教員採用試験に合格したにもかかわらず、新規教員に対する需要がなく配置が遅れる事態が首都圏の小学校を中心に発生している(韓国の場合、小学校の先生になるためには専門大学である教育大学を卒業した後、地域別の小学校教員採用試験を通過しなければならないが、学齢人口の減少にもかかわらず大学の入学定員や教員採用試験の定員を減らさずにいることで問題が生じている)。

また、韓国の教育市場で主導的な役割を果たしてきたネット講義業界では、修学能力試験(日本のセンター試験と似ているが、韓国の場合、大学を志願する学生は、国立、私立に関係なく全員受験しなければならない)の数学科目における人気1位のスター講師「ヒョン・ウジン」氏(年俸は200億ウォン(約22億円)に達する)が6月10日、今後7~8年以内にこれまでの大学入試体系が大きく変わると指摘し、引退を暗示するツイートを残すなど急激な変動が予想されている。

さらに、韓国特有の少子化問題として、大きく注目されているのが国防関連だ。

韓国は徴兵制を導入しているが、少子化の影響により入隊対象者数が逓減し続けており(図4)、兵力を効率化することで対応しなければならない。監査院によると、2020年に33.3万人であった兵役義務者(入隊判定を受けて入隊しなければならない男性の数)は、2025年22.6万人に減少し、2039年には15.1万人まで減少すると予想されている(注11)。このような状況で兵力を効率化しても国防上の空白が生じるのは避けられない事態が起きており、軍部隊の統廃合および移転などによる駐留地域周辺の経済低迷も同時に加速するとみられる。このような入隊者数の減少は、募兵制への転換や、女性徴兵の必要性の提起などいった社会的議論を加速させており、今後、大きな社会的葛藤要素として様々な影響を及ぼすと考えられる。
図4:年間の入隊状況 (単位:人)
出所:兵務庁
最後に、外国人労働者に関する議論を紹介する。韓国の場合、2019年時点で国内に居住する外国人の割合は2.4%(日本の2.24%に比べて少し高い程度)に過ぎず(図5)、移民に対して友好的でない国家の一つだ(注12)。
滞在している外国人労働者に対して永住権を付与する基準が厳しく、日本と同様に数年間中小企業の工場などで働く機会を付与するものの、該当期間が終わればほとんどの労働者が自国に戻るように誘導する政策を取っており、ビザを延長したり永住権を取得したりするより帰化することの方が簡単だと言うほど、外国人の滞在に対して友好的でないのが韓国の外国人政策だ。
しかし、人口減少に対応するために外国人労働者に門戸を開放し、積極的な移民政策を展開しなければならないという主張は国内でますます増えている。しかし、それと同時に、外国労働者が韓国に入国しやすくなる場合、内国人の雇用、特に低熟練・低賃金の雇用を外国人が奪うという憂慮が常に存在しており、これもやはり社会的に大きな葛藤を誘発しうる問題と認識されている。
図5:外国人の比率(2019年)
出所:OECD
以上のように、韓国の場合、世界で類を見ない出生率の急激な低下とともに高齢化問題が深刻化するにつれて、国内経済の停滞危機に加えて、国防、外国人労働者の受入れといった多角的な方面についても議論し、解決しなければならなくなっている。これらの問題を打開するため、今後どのような方針で政策を推進していくかについて、これまでの政策と2020年に政府が発表した「少子高齢社会基本計画」に基づく今後の政策方針について説明したい。

3.少子化問題に対する政策

韓国の場合、少子化に対する問題認識が他国に比べて遅く始まった。韓国の出生率は1950年代の朝鮮戦争以後、急激に高まり、歴代政府は積極的な産児制限政策を基調としてきた。1970年代には保健所で中絶手術を支援するなど、現在では想像もできない人口抑制政策が展開された。その影響によって韓国の出生率は人口置換水準(2.13)を下回り、1983年に2.06まで低下し、翌1984年には1.74まで下落した。

このように出生率が人口置換水準を下回った後も韓国の産児制限政策は続き、1996年になってようやく産児制限政策を廃止し、産児自律政策に切り替えた。

しかし、その後も少子化問題を解決するための努力は行われなかった。少子化問題が社会に大きな影響を及ぼすと認識されたのは1998年で、2003年になってようやくこの問題を解決するために政府は「少子高齢社会委員会」を発足し、「少子高齢社会基本計画」を5年ごとに発表するようになった。しかし、こうした委員会が発足したにもかかわらず、韓国の少子化対策は十分な成果を上げることに失敗した。

韓国も他国と同様に、少子化対策として、はじめの数年間は出産した人にサービスを提供することに集中し、出産奨励策、育児支援策などを展開した。

しかし、先に説明したように出生率はさらに下落し始めた。特に、育児休業支援などの多様な政策支援の拡大にもかかわらず、男性の育児休業の取得が実質難しい文化、不十分な社会のセーフティネットなどが問題となり、いくら出産時に提供されるサービスが増えても育児しにくい文化自体が改善されない以上は、出生率を上げにくいという共感が形成され始めた。

このため、委員会を含む政府でも、人口政策を展開するにあたって、単純に出産時のサービスの拡充に力を入れるよりは、出産と育児の両立が望ましいという認識を強化する社会的構造の改善を目的として、出生率向上策を進めるとともに、出生率が回復しない場合にも焦点を当てた政策を計画し始めた。

その一環として、政府は2018年に出産奨励中心の政策から全世帯の生活の質を高める政策へのパラダイム転換を宣言し、2020年に発表された「第4次少子高齢社会基本計画(注13)」では、①児童・20~40代・引退世代の生活の質の向上、②平等な職場・家庭の男女平等実現、③人口変化への備え、を主な政策方針として決定し、出生率向上だけでなく生活の質の向上、男女平等の実現、人口変化に備えるための政策領域を拡張した。
この基本計画は約200ページにわたって多様な課題が提示されており、全て紹介することは難しいため、その中でも特に注目に値する個別政策を紹介しようと思う。1つは、以前から出生率向上のための政策として実施されてきた乳児手当の支給である。政府は2022年度に生まれた子どもたちからは、妊娠時100万ウォン(約11万円)、出産時200万ウォン(約22万円)を支給することを決めた。さらに、生まれた最初の月から24ヶ月間毎月現金を支給する乳児手当ての創設を決めた(2022年には月30万ウォン、2025年まで漸進的に拡大し月50万ウォンまで増額)。

そして現在は、文化的に女性および大企業労働者以外は取得しづらい育児休業を、男性と中小企業労働者も使えるようにするために両親がそれぞれ育児休業を3ヶ月以上使う場合、最大月300万ウォン(約33万円)を支給するようにした。
併せて、多子世帯の基準を、子どもが3人以上の場合から、子どもが2人以上の場合に変更し、公共賃貸住宅移住などの支援対象を広げることにした。そして、3人以上の子ども世帯の場合には既存の制度をより一層拡大し、3人目の子どもからは大学費用全額を支援することにした。そして、高齢社会の加速により発生しうる生産年齢人口の減少の影響を最小限に食い止めるため、高齢者雇用に対する奨励金支援も継続拡大することを決めた。

4.まとめ

統計庁が2020年に発表した将来人口推計によると、中位推計の場合、合計特殊出生率は2020年の0.84人から2024年0.70人まで下落する見通しだが、2010年以降の出生率が将来人口推計より低い水準を記録したことを勘案すれば、0.70より低い出生率を記録する可能性もある。
2020年に発表された「少子高齢社会基本計画」では、様々な事業を創設したため、2025年時点で年間約83.4兆ウォン(約8.7兆円)がかかると予想されるが、この予算が果たして少子化問題を解決するのに適しており、これにより少子化問題を解決することが可能なのかを含めて、今後の人口問題解決のために必要な予算を割り当て、使用できるよう、政策担当者の継続的な努力が必要だと思われる。

同時に、政府の予算支援だけでは昨今の韓国社会が直面した問題を解決できないという明らかな事実も周知し、政府だけでなく民間分野でも、今までの働き方を変える努力を展開しなければならない。

日本の場合、最近話題に上るSDGsなどを皮切りに、持続可能な成長のための努力を民間企業が自発的に始めた。

しかし、韓国はまだ数値で現れる経済成長率、営業利益、売上などを向上させることが最重要課題として認識されている。

このような過程で発生する多様な葛藤と社会的問題が究極的には韓国の成長動力を低下させ、市場自体を縮小させ、企業にもブーメランになって戻ってくるという点を常に周知し、持続可能な成長のための努力を展開していかなければならないと考える。
プロフィール

イー・サンヨン(李尙容、Sangyong Lee)
JILPT滞在研究員
韓国企画財政部 経済構造改革局 福祉経済課 課長補佐
韓国企画財政部で2012年から主に国際金融、社会経済政策の業務を担当。 2020年、日本政府によるアジア諸国の行政官・経済人等招聘プログラム(文部科学省ヤング・リーダーズ・プログラム)を通じて政策研究大学院大学(GRIPS)に留学し、現在は労働政策研究・研修機構(JILPT)において、「労働時間規制の日韓比較」に関する研究を実施中。




〝三重苦〟の韓国、救い求めるのは日本か ウォン安・外貨急減・物価高騰で尹政権すり寄り画策 「日韓関係の『一括妥結』を目指す」識者

2022-07-18 11:23:08 | 日記
〝三重苦〟の韓国、救い求めるのは日本か ウォン安・外貨急減・物価高騰で尹政権すり寄り画策 「日韓関係の『一括妥結』を目指す」識者

韓国経済が苦境にさらされている。利上げや為替介入でもウォン安は止まらず、外貨準備高は2008年のリーマン・ショック時以来の減少を記録した。物価の上昇率も約6%と国際通貨基金(IMF)に救済された1998年以来の高さだ。「3度目の金融危機」が現実味を増すなか、尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権が画策するのは、やはり日本へのすり寄りのようだ。


韓国銀行(中央銀行)は13日、政策金利を年1・75%から2・25%に引き上げた。通常の2倍にあたる利上げで史上初だ。米連邦準備制度理事会(FRB)の先手を打った形だが、15日の外国為替市場は〝防衛線〟の1ドル=1300ウォンを突破し、1326・1ウォンと「効果なし」だった。

ウォン安が進む韓国の為替市場=14日(AP)
韓銀は、6月末時点の外貨準備高は4382億8000万ドル(約59兆2406億円)と、前月末比で94億3000万ドル(約1275億円)減少したと発表した。4カ月連続減で、減少幅は13年7カ月ぶりの大きさだ。

外貨準備は為替介入に使用される資金であるとともに、通貨危機の際に外貨建て債務の返済に利用する「万一の備え」としての役割を持つ。

追い打ちをかけるのが物価高だ。韓国の6月の消費者物価指数は前年同月比6・0%上昇した。こちらも23年7カ月ぶりという記録的高水準だ。生活実感に近い生活物価指数は7・4%上昇しているという。 



窮地に立たされる韓国は、18日に朴振(パク・チン)外相が来日し、林芳正外相と会談を行う予定で、14日には中央日報が識者のコメントとして日韓の通貨スワップ(交換)協定締結の必要性を伝えている。
朝鮮近現代史研究所所長の松木國俊氏は「韓国経済は、国内での経済対策を行っても効果が限定的という構造的な問題があり、国外経済の影響を受けやすい。98年時には日本などとのスワップ協定があったが、現在は米国との契約も満了し、相当な焦りがあるとみる。尹氏は日韓関係の『一括妥結』を目指すが、韓国側が元徴用工問題や慰安婦問題などの解決策を用意しなければ健全な関係など構築できるはずもない」と指摘した。