文政権、4月の総選挙惨敗か【2020年を占う・韓国】
・文在寅政権への国民不信拡大、2020年4月の総選挙は与党惨敗か。
・文政権とチョ・グクを追及する韓国検察激突の構図で検察優位。
・北朝鮮、2020年春に何らかの挑発
韓国・文在寅政権は2020年、危機的な状況を迎えそうだ。国内の支持は目に見えて低下しており4月の総選挙では「与党惨敗」の予測が出ている。
国際関係は日韓関係のさらなる悪化、米韓関係の停滞、南北関係の沈殿と八方ふさがりで出口がみえない。
この不安定な情勢のなか、支持挽回のための奇策を弄する可能性もあり、日本としては文政権の動向を注視する必要がある。
文在寅政権の最大の失敗は2019年夏のチョ・グク法相指名だった。
娘の不正入学や怪しげなファンド(私募)を使った資金集め、自身の論文の剽窃疑惑など「特権でズルをしてウソをつく」タマネギ男ことチョ・グク氏だ。
チョ氏を文大統領が強引に法相に就任させたことへの国民の怒りは政権への不信感を根付かせ、その後も払拭どころか拡大の一途といえる。
理由は青瓦台(大統領府)が国民の声に耳をかさずに反日でチョ・グク政局を乗り越えようとした傲慢な態度だった。
現在は文政権とチョ・グクを追及する韓国検察・尹錫悦(ユン・ソクヨル)検事総長の激突の構図で検察が優位に立っている。
政権側は検察のチョ・グクの逮捕状請求を阻止できず対立は先鋭化した。
背景には「民主化や積弊清算(過去の政権の悪弊をただすこと)を唱えてきた文政権だが、結局、自分たちも特権を利用して権力を振り回している」と国民感情(韓国では民心と呼ぶ)が反映している。
ソウル市内の保守派による反文集会は人数の増加が目立つ。
4月の総選挙のカギを握るのは、大票田で浮動票の多いソウル首都圏だが、文政権は中道左派のこの大票田の信頼を完全に失った。
さらに文氏の地盤である釜山の票もかなり失った。
釜山のある慶尚南道は元来、保守地盤だったが、朴槿恵スキャンダルで揺れた大統領弾劾後の大統領選では文在寅氏を選んだ。
しかし、いまや「文政権も権力で不正三昧」との評価が広がり、釜山は政権に見切りを付けたようだと観測されている。
韓国の第1野党、自由韓国党は保守だが、国民の反文勢力や保守層が第1野党を支持するとは限らない。保守は朴槿恵弾劾をめぐって弾劾派にまわった保守と最後まで朴槿恵支持だった保守に分裂している。
文政権内はすでに不協和音があちこちから出ている。
「政権の弱体化をみた官僚たちは仕事をしなくなった」(韓国人ジャーナリスト)。今後、行政の停滞は必至で青瓦台からの業務指令に各官庁の現場は「文書で内容を書いてください」と明文化を要求し、後で問題にならないよう自己防衛にはいっている。
選挙で与党が過半数を割れば法律も通らなくなり、文政権は身動きが取れなくなる。
韓国の反日政策はまだまだ続きそうだ。1年3カ月ぶりの日韓首脳会談は得意の面従腹背で無難にまとめたが中身は皆無だった。
日本が問題の本質とする徴用工賠償判決についての従来の立場のまま、「話し合いの継続」だけリップサービスしたが、青瓦台の動向に詳しい韓国筋によると「大統領府は徴用工判決で何も動きはない。やる気もない。
まして日本に譲歩する気は全くない」とする。
大法院の賠償判決により現在、差し押さえられている日本製鉄や三菱重工の資産は、韓国では「現金化される可能性が高い」と見られている。
資産を差し押さえた弁護団は現金化を順延してきたが、順延には限界がある。2月なのか3月なのか、現金化されれば日本は報復措置を取ることになる。この問題も含め日韓関係も来春が正念場となる。
一方、北朝鮮情勢は予断を許さない局面に入った。
北朝鮮が一方的に設定した米朝協議の期限の年末が迫るなか、米国はこれに応えて譲歩する可能性はゼロなので、問題はその後の北朝鮮の挑発行為である。
年末の韓国は「異例な数の米情報関係者が韓国入りしている」(韓国情報筋)という。
また韓国上空など米偵察基による対北監視が急速に強化されており、無人偵察基のグローバル・フォークはじめ、各種の偵察基が飛んでいる。
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2月25,26日には沖縄から米空軍のRC135Sが飛んだ。同機は弾道ミサイルの軌道を追跡できる機種で潜水艦発射ミサイル(SLBM)の発射を警戒したとみられる。
攻撃レーダーシステムを搭載している米偵察機E8Cもたびたび出動している。
E8C機は地上のミサイル基地などの動きを監視できる。
韓国の米軍に詳しいジャーナリストは「北朝鮮が来春、何らかの挑発を行う可能性にそなえ米軍が体制を整えている。
これまでとは異なる状況になりつつある」としている。米国は今回の北朝鮮の挑発に対し、封印してきた軍事オプションをテーブルの上に上げたようだ
軍事動向で部隊の異常な動きなどは察知されていないので、急変説の信憑性はまだ低いが、2019年11月から高まっている緊張状態は続いており、2020年の北朝鮮情勢はこれまでになく不安定要因が増えそうだ。
久保田るり子(産経新聞編集委員・國學院大學客員教授)