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安倍元首相殺害に韓国人歓声を上げる 安重根と重ねたり戒める報道も

2022-07-10 10:55:57 | 日記
安倍元首相殺害に韓国人歓声を上げる 安重根と重ねたり戒める報道も

2022/07/10 07:00


2019年に来日したゼレンスキー大統領と会談する安倍晋三首相 出典 安倍晋三公式ツイッター

(コリアワールドタイムズ)
韓国でも速報された安倍元首相銃撃事件
 「安倍晋三元首相、撃たれる!」のニュースは、韓国でも日本のニュースを引用する形で速報された。

 尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は、安倍氏が亡くなった後、ただちに「日本の憲政史上、最長の首相であり、尊敬される政治家を失った遺族と日本の国民に哀悼とお見舞いの意を伝える」とのコメントを発表した。

 ところが、韓国の一部のネットユーザーは、安倍氏死亡のニュース記事に対し、あたかもそれを喜ぶかのようなコメントをつけ、良識ある読者の目をひそめさせた。


「死んで良かった」に賛成多数
 大手ポータルサイトDaum(ダウム)に載った聯合ニュース「日本右翼の象徴安倍、遊説中に銃撃死亡…容疑者は前職自衛隊員」という記事には、次のようなコメントがついていた。

お祝いします 賛成133 反対9
死んで良かった。勇気ある元自衛隊員に拍手!! 賛成1455 反対22
ナイスショット〜 賛成149 反対9
戦犯の子孫はみな銃殺しなければ 賛成268 反対6

 安倍元首相は、その右寄りな言動から、韓国では「極右政治家」というレッテルを貼られてきた。

 たとえば、安倍氏は憲法改正を推進してきたが、韓国では、その目的が「再軍備して再び朝鮮半島を侵略する」ことだと解釈されている。

 また、A級戦犯を合祀している靖国神社を参拝したり、慰安婦問題についての河野談話の見直しを行ったりしたことも、韓国では激しい批判の対象になっていた。

 さらに、安倍氏のそのような政治的傾向は「血統」によるという主張も、韓国ではよく見られる。

安倍氏の右翼思想は血統による?
 よく知られているように、安倍晋三氏の父親は安倍晋太郎で元外相。さらに母方の祖父は岸信介で元首相である。岸信介は太平洋戦争中、東条内閣の閣僚だったことから極東軍事裁判でA級戦犯の被疑者になったことがある(不起訴)。

 先のコメントにあった「戦犯の子孫」というのは、このことを指している。

 また、同じ記事に、「朝鮮総督府最後の総督の孫、アベ。自業自得、報いは最後まで。 賛成633 反対3」という投稿もあった。

 朝鮮総督府最後の総督は陸軍大将阿部信行。同じ「アベ」姓でも漢字が違うし、安倍元首相とは血縁関係もない。

 韓国のネットには、「安倍晋三が阿部信行の孫である」という誤った情報を載せているサイトもあるのだ。


113年前の伊藤博文暗殺と重ねる投稿も
 別の記事には、犯人を「第2の安重根!」とする投稿もあった。

 安重根というのは、日本の初代総理大臣にして韓国統監(統監府は日本が朝鮮を植民地にする直前の朝鮮半島統治機構)だった伊藤博文を1909年、ハルビン駅頭(現 中国黒龍江省)で暗殺した人物。

 日本ではテロリスト扱いだが、韓国では「義士」とされる。

 今回の安倍元首相狙撃事件は、首相経験者が銃で殺害された事件としては、1936年の2.26事件で殺害された高橋是清、斎藤実以来86年ぶりとなる。

 韓国のネットでは、113年前の1909年に安重根が殺害したとされる伊藤博文暗殺と重ねたような投稿も確認できる。


伊藤博文暗殺犯の安重根を処刑したのは安倍氏の先祖?
 日本でもあまり知られていないが、安倍晋三氏の祖先には、伊藤博文暗殺事件とかかわった人物もいる。

 安倍晋三氏の母方を4代さかのぼると、大島義昌という人物に行き当たる。

 実は、大島義昌は日本陸軍の軍人で関東都督を務めた。関東都督府は、関東州(日本が領有していた遼東半島先端部)の統治機関である。ちょうど大島が都督だった時に、伊藤博文暗殺事件が起こったのである。

 事件発生時、ハルビン駅はロシアが管轄していたが、在外韓国人(大韓帝国人)は、日本が管轄する取り決めがあったため、犯人の安重根の身柄は、旅順の関東都督府に移送された。

 1910年、関東都督府地方法院(裁判所)で死刑判決が下され、安重根は絞首刑に処せられた。

 韓国のあるサイトでは、安倍晋三氏が大島義昌の子孫であることを説明した上で、大島義昌が、本来ロシアで行うべき裁判を「国際法を無視して安重根を日本の法廷に立たせ、死刑を執行した」などと説明している。事実に反した説明である。

 いずれにしても、安倍元首相の先祖が安重根処刑に関わっていたという事実は、奇妙な因縁を感じさせる。


悪質な書き込みをたしなめる記事も
 このように韓国のネットには、安倍元首相をおとしめるための虚実ないまぜの様々な情報が乱れ飛んでいる。

 今回、安倍元首相の記事に対する悪意あるコメントは、これらのネット情報を元にしている場合もあるのだろう。

 一方、ネットメディアの「オーマイニュース」は、事件が起こった日の夜、「安倍氏のニュースを喜ぶネットユーザーたち、それは違う」というタイトルの記事を配信した。

 記事は、安倍氏銃撃事件を歓声を上げる韓国の一部ネットユーザーの書き込みを批判したものだ。

 記事によれば、彼らは日本のニュースサイトにも「慶祝(おめでとう)」「因果応報」など、安倍元首相や日本人たちを嘲笑するコメントを書き込んでいたそうだ。

 記事は、テロを礼賛し日本人全体を嘲笑する一部の韓国ネットユーザーに懸念を示し、「テロを排し、対話によって問題解決を図るのが民主主義だ。われわれ韓国人にはそれができる」と主張していた。

 韓国メディアの中に、このような良識が健在であることに安堵を覚える。



犬鍋 浩(いぬなべ ひろし)
1961年東京生まれ。1996年〜2007年、韓国ソウルに居住。帰国後も市井のコリアンウォッチャーとして自身のブログ「犬鍋のヨロマル漫談」で発信を続けている。