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韓国経済、「おんぶに抱っこ」サムスン一社では支えきれない

2015年12月22日 20時04分15秒 | Weblog

2015-12-22

韓国経済、「おんぶに抱っこ」サムスン一社では支えきれない

勝又壽良の経済時評

週刊東洋経済元編集長の勝又壽良

 サムスンが政策大転換
「1強他弱」の悲哀

一部省略

韓国は、想像以上に薄っぺらな経済である。

サムスンが転けたら韓国は「一巻の終わり」になる。

日本で言えば、仮にトヨタ自動車の業績不調でも、

他社がその穴をカバーする「重層関係」にある。

その点で、韓国経済は寒々とした、薄氷を踏む状態だ。

よくこれで、「克日」(日本を上回る)といった目標を立てたものだと思う。

韓国も、中国に劣らず「大言壮語」(ほら吹き)の国である。

経営戦略はこれまでの「BtoC」というスマホのような耐久消費財から、

「BtoB」という企業間取引中心へと転換する模様だ。

サムスンもスマホの「BtoC」から、電子部品の「BtoB」へ切り替わると、

「サムスン全滅、中国スマホの勝利」と言った大仰な記事を流すに違いない。

中国の官製メディア、特に人民日報の経済情報は、信じがたいほど低レベルだ。

サムスンが政策大転換


『中央日報』(11月10日付)は、次のように伝えた。

この記事は、サムスン・グループ全体で大きな経営戦略転換を図っていることを示している。

流行の激しい耐久消費財よりも、部品などの安定した収益が見込める分野へ大転換するもの。

このモデルは、日本である。

日本の家電産業が部品から製品組立までの一貫体制を捨て、

「川上」部分の部品生産に特化して、

世界中に製品販路を広げるという戦略である。

①「本格的な『李在鎔(イ・ジェヨン)体制』を迎えたサムスンの電子系列会社が、

(1)スマートカー、

(2)人工知能ロボット、

(3)モノのバッテリー(BoT)を次世代核心収益源に圧縮し、

全社的な力を投じることにした。

サムスン電子はスマートカーと人工知能ロボット時代に備え

『頭脳素子』を担当する会社に素早く変身している。

業界の推定ではスマートカー市場は2017年に2740億ドルに達する見通しだ。

今年12月、人材再配置と社屋移転が終わればサムスン電子の半導体事業は

人工知能(AI)ロボットに必要な『人間の頭脳』に相当するすべてのものを作る会社に変わる」。

サムスン電子は、スマートカー(注:全自動運転車)と人工知能ロボット時代に備え

『頭脳素子』を担当する会社に素早く変身している、としている。

この「変身」はたかだか1年以内のことであり、

正確には「変身し始めた」という表現がぴったりであろう。

まだ、成果は出ていないのだ

現に、12月9日の記者会見では、

「電装事業」(自動車部品)へ本格的に取り組むという、「決意表明」だけであった。

②「最近、ロッテに化学事業を譲渡したサムスンSDIは、

2020年までに総額3兆ウォン(約3000円)を投資してバッテリー生産規模を

現在より約10倍に増やす。

サムスンSDIのキム・イクヒョン常務は、

『会社の経営資源を自動車用バッテリーに集中している。

化学事業売却資金は自動車用バッテリー事業に使うだろう』と明らかにした。

化学部門を切り離したサムスンSDIが準備する未来キーワードは、

『モノのバッテリー』。

すべてのものがインターネットに連結されるモノのインターネット(IoT)時代になれば、

これを作動させるバッテリーが必要という判断からだ。

特に人工知能ロボット時代になれば電源につながずに作動できるバッテリーが

重要になると見通し多様な形態のバッテリーを開発している。

同社関係者は、『自動車のほかにもドローンとロボットなど新たに登場する

多様な機器に向け世界で初めて開発した丸められるフレキシブルバッテリーの技術を確保した状態だ』と説明した」。

サムスンSDIは最近、化学部門をロッテに譲渡して自動車用のバッテリー生産に経営資源を集中させる。

新たに、「モノのバッテリー」という製品分野にも進出するという。

「モノのインターネット(IoT)」時代をエネルギー面でバックアップするものだ。

サムスンSDIも自動車に焦点を合わせている。

親会社のサムスン電子と歩調を合わせるのだ。

③「サムスン電機は、スマートカーの『神経系』を担当する自動車部品に集中する。

半導体とともに産業のコメと呼ばれる積層セラミックコンデンサー(MLCC)を自動車用に拡大する。

14年1兆2000億ウォン規模(約1200億円)だったこの市場は、

徐々に電気自動車を筆頭に自律走行車まで『電子製品化』され、

5年以内に市場は2兆ウォン規模(約2000億円)に増えるとみた。

同社関係者は、『スマートカーの目を担当する自動車用カメラ事業は自律走行の基本である車線感知と事故防止のためのセンシング機能が付加され拡張の可能性が大きい。

2020年まで自律走行の核心であるカメラシステム モジュール事業まで拡大する予定だ』と明らかにした」。

系列下のサムスン電機は、スマートカーの『神経系』を担当する自動車部品に集中する。

ここで注意しておくべきは、韓国の代表的な自動車メーカーの現代自動車が別途、次のような動きを見せていることだ。

「現代車グループは現在、

自律走行車用のチップとセンサーを協力会社から購入しているが、

今後こうしたチップとセンサーを独自で開発する予定だ。

現代車と現代オートロンが協力して自動車半導体を設計し、

半導体の生産は専門会社に委託する予定だ。

現代オートロンが半導体チップ開発と設計を担当するファブレスとなり、

半導体の生産はサムスン電子や台湾のTSMCなど受託生産(ファウンドリー)企業が担当する」(『韓国経済新聞』12月10日付)。

現代自が独自の道を模索している。

サムスンの「電装事業」構想は、現代自と競合するので、

国内で安定した需要の確保に陰りが出る。

サムスンはすでに、海外の有力自動車メーカーとコンタクトを取っている。

現代自との話し合いが、スムースに行かなかったのだろう。

数年前に、サムスンと現代自が合同でスマートカー用の「システム半導体開発」に取り組み、

成果が出ずに打ち切られた経緯がある。

この時の痼りが、今なお尾を引いていると見られる。

サムスンがグループを挙げて、経営戦略の大転換を図る。

これは、サムスン・グループとしての決断である。

経営基盤を、「最終製品」から「中間部品」へと方向転換させることは、

グループの収益安定化を目指すものだ。

韓国経済全体から見れば、そのインパクトは著しく落ちる。

サムスンの経営戦略が、「太く短く」(BtoC)から「細く長く」(BtoB)へと切り替わる。

この点は、あらかじめ頭に入れておくべきだ。

「BtoB」は、地道な経営政策であるから、

「BtoC」のような「一攫千金」的なブームを期待できない。

それだけに、韓国のGDPを大きく押し上げる力に欠けるはずである。

サムスンが韓国経済を引っ張る、というイメージはかなり消えるだろう。

経営の柱は、「最終製品」でなく「中間部品」になる。

付加価値率は下がるのだ。

サムスンに対して、従来のような過大な期待を持つべきではない。

「1強他弱」の悲哀


『中央日報』(12月9日付)は、コラム「サムスンがもっと強くなるようにする道」を掲載した。

筆者は、キム・ジュンヒョン経済部記者である。

この記事は、韓国の巨人・サムスンが弱気を見せていることへの「応援メッセージ」である。

④「韓国国内で危機説を訴える時、

サムスンだけは『私たちを見よ、希望はある』と話すように願っていた。

サムスン共和国やサムスン王国だと言ってねたんだり嫉妬したりしても、

サムスンは韓国経済の自慢だった。

しかし、この頃のサムスンの動きを見ると当惑する時がある

サムスンというプリズムを通して韓国経済の危機を見る理由だ。

サムスンの核心であり世界最高のIT企業の1つであるサムスン電子の動きも尋常ではない。

2013年に37兆ウォン(約3兆7000億円)に肉迫していたサムスン電子の営業利益は、

昨年25兆ウォン(約2兆5000億円)、

今年も27兆ウォン(約2兆7000億円)にとどまる展望だ。

特に数年間キャッシュ・カウの役割を果たしてきたスマートフォンが

アップルと中国企業に挟まれてサンドイッチの境遇だ」。

韓国では、「不沈空母」と見られていたサムスン電子が、

主力のスマホが中国企業にシェアを食われている。

スマホ自体が普及したことと、

技術的な参入レベルが低くなっており、

簡単に新興メーカーが追随できる環境になっている。

もはや、サムスン・ブランドの優位性が消えたのだ。

先発企業アップルのようなオリジナリティがないこと。

コスト面では、中国の新興企業に追われているというサンドイッチ状態になった。

⑤「サムスン電子のある協力企業代表のA氏は10月、

協ソン会(サムスン電子とサムスンディスプレイの協力会社協議会)総会で聞いた話が、

『衝撃的だった』と打ち明けた。

彼は、サムスン関係者が公式の席上で協力企業に

『これ以上サムスン電子だけを信じるな。事業を多角化してほしい』と言った。

協力企業の離脱を取り締まっていた以前とは余りにも異なる様子だった。

『サムスンでさえ苦労していることを実感した』と話した」。

これまでスマホは、増産に次ぐ増産であった。

下請け企業が1社でも欠けることは、生産計画に狂いを生じる。

それ故、サムスンは下請けの脱落防止が最大の課題であった。

それが、「サムスンだけに頼るな、他社の仕事も探せ」と180度違うことを言い始めているのだ。

まさに、韓国経済の曲がり角を象徴する話しである。

⑥「サムスンを見て息がぐっと詰まるのは、

サムスンがこの程度ならばほかの企業はさぞかし大変だろうと思うからだ。

サムスンの進路変更によってもたらされる波及度は、

そのほかの企業よりもはるかに大きいはずだ。

鉄鋼・化学・重工業など相当数の主力産業が、すでに「病院」行きの境遇だ。

30大、50大の企業リストを広げて見てほしい。

10年後もグローバル競争力で完全な企業がいくつ残るのだろうか」。

サムスンの「弱気」は、

韓国経済が先々大変な事態を迎える「前兆」とも言える。

鉄鋼・化学・重工業などは、いずれも輸出が不振である。

韓国輸出の60%は新興国向けだ。

16年以降の新興国経済は、中国経済の停滞余波を受けて不振が予想されている。

韓国にとっては対中国輸出が25%を上回っている。

中国経済と「心中」しかねない状況である。

「反日」を旗印にして韓国は中国へ身を寄せた。

今になってみれば、大変な代償を払わせられかねないポジションに落ち込んだ。

『中央日報』(12月11日付)は、

趙淳(チョ・スン)元副首相兼経済企画院長官による、

「大企業依存の限界」発言を掲載した。

私の持論でもあるが、韓国経済は大企業依存症から早く脱皮しなければならない。

この記事は、韓国経済の脆弱性を明確に指摘している。


⑦「政府が、

低成長の沼に落ちた韓国経済を活性化させるために推進している

規制緩和、不動産取引活性化、追加予算執行などは効果を発揮していない。

その時々の状況を見て経済政策を出すのではなく、

韓国の『ニューノーマル(2008年のグローバル経済危機後に浮上した新しい経済秩序)』に対する戦略を作っていく必要がある」。

ここでの指摘は、正鵠を得ている。

韓国政府が現在行っている政策は、枝葉末節なものが多い。

例えば、

不動産取引活性化策などは、個人債務を増やしただけの「愚策」と見る。

韓国経済の構造転換を図る、「骨太の政策」が求められているのだ。

問題は、そうした政策は国会で議決されることが極めて困難である。

既得権益に固執する野党の反対が厳しく、現に宙に浮いたままになっている。

韓国ほど、政争の激しい国はない。

⑧「新しい発想で新しく対処するべきだが、それは中小企業政策になるだろう。

中小企業が活性化してこそ青年雇用と福祉問題を解決でき、二極化を緩和できる。

過去に国家が大企業を中心に『漢江(ハンガン)の奇跡』を築いたが、

依然として大企業を動員した政策を使っている。

長期的な改革課題では教育改革と政治改革が必要である」。

中小企業政策は重要だが、単なる保護政策をとってはならない。

政府の信用保証機関による「債務保証」は、

ゾンビ企業の延命に手を貸しているだけである。

韓国で必要な中小企業政策は、

大企業による「中小企業いじめ」を取り払い、

競争条件を同じにすることである。

大企業だけ大幅賃上げを実現して、

中小企業からの納入単価を切り下げさせる「暴挙」を許してはならない。

公正取引政策を厳重に実行させるべく、政府の監視が不可欠だ。



(2015年12月22日)



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