① 韓国、「告げ口外交破綻」対日政策は大転換「経済・安保」前面へ
2015-06-02
勝又壽良の経済時評
週刊東洋経済元編集長の勝又壽良
アベノミクスを評価
対日批判は国益害す
朴大統領の「十八番」であった告げ口外交が破綻した。
同盟強化による新しいに日米時代の到来を横に見て、ついに「歴史認識」と「慰安婦問題」を棚上げ。
「ツー・トラップ外交」とやらを採用するという。
経済・安保の問題は、韓国に死活的な影響を与える。
この問題について、韓国は対日外交を再開することになった。
随分と身勝手な言い分に思える。
ようやく、日韓関係の「凍結」状態が、「半凍結」程度には緩和される。半歩前進か。
韓国がここまで降りてきた最大の理由は、前記の「日米新時代」への移行ともう一つ、経済情勢の悪化がある。
あれだけ軽蔑していた「アベノミクス」が成果を上げると共に、にわかに「日本に学べ」と恥も外聞もなく、「日本詣」を始めてきた。
その変わり身の速さに、こちらが驚くほどだ。
この背景には、国内メディアが一斉に韓国政府批判をしている理由もある。
激烈な「反日」キャンペーンを続けてきたメディアは、政府批判に転じているのだ。
アベノミクスを評価
『朝鮮日報』(5月21日付け)は、社説で「景気回復させた安倍、成長鈍化させた朴大統領」を論じた。
① 「日本のメディアは5月19日、今春の大卒者の就職率が96.7%に達し、4年連続で上昇したと伝えた。
高卒者の就職率97.5%も23年間で最高だという。
日本政府は翌20日、今年第1四半期(1~3月)の経済成長率が年率換算で2.4%だったと発表した。
市中予想(1.5%)を大きく上回った。東京株式市場の株価は15年ぶりの高値水準で活気づいている」。
昨年まで、韓国メディアでは日本経済を「下に見てきた」。
日本に進出している韓国系証券会社の東京支店長は、2020年までに韓国が1人当たりGDPで日本を抜く。こう豪語していたものだ。
私はこのブログで猛批判して、韓国経済こそ「韓国版失われた20年」になると警告してきた。
最大の理由は、合計特殊出生率が日本よりも低いこと。
すでに、生産年齢人口比率が2013年にピークアウトしていること、などだ。
韓国経済の基盤である「人口動態」が急速に悪化している以上、これを補う経済政策が打たれない限り、ジリ貧経済になる運命だ。
これに比べて、日本経済は「アベノミクス」をテコにして回復傾向を強めている、
「デフレ脱却」のカギを握る消費者物価上昇率2%目標は、16年後半になれば目途が立つ可能性も見える。
お先真っ暗な状況から一歩ずつ脱出する気配を見せ始めている。
未だに、日本国内でも「アベノミクス」への反対論がある。
雇用の回復において、顕著な成果が出ている以上、主義主張に基づいた「アベノミクス」批判は当たらない。
問題は、ファクト(事実)によって判断することである。韓国が「アベノミクス」を認めたのはファクトによるのだ。
② 「隣国(注:日本)でのお祭り騒ぎをよそに、韓国開発研究院(KDI)は同日、韓国の今年の成長率見通しを3.5%から3.0%に下方修正した。
その上で、KDIは『構造改革が目に見える成果を上げ、韓国銀行が1~2回の追加利下げを行うなど、
通貨・財政政策による積極的な下支えがなければ3.0%を達成できない』という複雑な前提条件を付けた。事実上今年の成長率が2%台に転落すると予想したに等しい」。
韓国経済は、今年あと1~2回の追加利下げがなければ、2%台の経済成長率に止まる懸念を示唆している。
追加利下げをすれば、家計債務がさらに膨らむという副作用が持ち上がる。個人倒産の増加を招いては、韓国経済が瀕死の重傷を負うであろう。
利下げは、一時的に個人消費を押し上げる。
その後には、「個人倒産」激増の事態が予想されるのだ。追加利下げは単純な問題でない。
③ 「安倍政権は12年12月に発足し、その2カ月後に朴槿恵政権も発足した。
しかし、両政権の経済面での成績は好対照だ。
就任初期から大規模な金融緩和を通じた成長政策を取った安倍政権は3年で景気回復に成功したと評されている。
一方、朴槿恵政権は経済活動の主体である企業と国民から評価されるような政策を打ち出せず、依然低成長と景気低迷から脱却できずにいる」。
安倍政権と朴政権は発足時に2ヶ月の違いはあるが、ほぼ同時期にスタートした。
安倍政権は、すでに一定の成果を上げつつあると評価されている。
朴政権は、何らの経済的な成果も上がらないどころか、景気停滞の様相を深めている。
これでは、韓国メディアも「反日」一本槍の論調をつらぬくことが困難になる。
そこで、対日接近策としては「歴史認識問題」と「慰安婦問題」を棚上げする。
「経済・安保」面での日韓合意を迫られてきたのだ。
④ 「これに関連し、チェ・ギョンファン経済副首相はこのほど、
経済関係閣僚会議で『アベノミクスの3本目の矢である規制改革と対外開放の成果が上がっている』と指摘した。
しかし、韓国経済については、『利害集団間の対立調整メカニズムが働かず、構造改革が進んでいない。このままでは“好調日本、低迷韓国”に転落する可能性もある』と警告した」。
韓国のチェ・ギョンファン経済副首相は、「アベノミクス」に対してこれまで否定的な発言を続けてきた。
だが、今年第1四半期(1~3月)のGDP成長率が実質2.4%になって狼狽えた。
アベノミクス批判の根拠が崩れたからだ。
この結果、「アベノミクスの3本目の矢である規制改革と対外開放の成果が上がっている」と評価を変えたもの。
3本目の矢の最大テーマは、TPP(環太平洋経済連携協定)の妥結である。
これは、日本の幅広い産業改革に寄与するはずだ。
農業や医療など過保護体制下に置かれた産業には負の影響が出る。
将来的に見れば、日本の産業構造全体の合理化を実現して、減少する労働力人口の有効活用が実現する。
TPPこそ、日本経済再生への切り札になる。
韓国は、TPPの原加盟国(12ヶ国)に入ることはできなかった。
中国への「気兼ね」が先行した結果である。
最近、米国に対して加入申し入れをしたが、冷たくあしらわれたという。
目下、TPP合意寸前の段階であり、新規加入による話し合いの混乱を忌避されたからだ。
韓国では、これも「日米新時代」の影響であるとの受け取り方をしている。
日本とのコンタクトを密にせよ。
韓国が、こういう外交方針に転換した背景に、TPP加入問題がある。韓国は浮き足立っているのだ。
韓国が、対日外交において強硬姿勢を見せた裏には、日本経済そのものへの「低評価」があった。
もはや、日本経済は立ち直れない。そういう読みである。
ここは、過去の積もる恨みを晴らす絶好の機会が訪れた。そう判断したのだ。
日韓首脳会談を拒否する。
日韓の政治的立場の逆転を世界に印象づける動きをした。
朴大統領による「告げ口外交」は、それを明白に表している。
「日本いびり」をしている間に、皮肉にも地殻変動が起こったのである。
日本経済の復活と日米新時代の到来である。
韓国はにわかに慌てだした。次の寄稿は実に興味深いものだ。
対日批判は国益害す
『朝鮮日報』(5月24日付け)は、寄稿の「韓国の国益を害す歪んだ対日認識」を掲載した。
筆者は、尹平重(ユン・ピョンジュン)韓神大学教授(政治哲学)である。
⑤ 「韓半島(朝鮮半島)と東アジアの秩序が揺れ動いているのにもかかわらず、現代韓国の深層構造は旧韓末時代に似ているという考えが意外にも広範囲に広まっている。
大韓帝国の滅亡を招いた100年前の韓半島の歴史構造の本質が、今も変わらず繰り返されているという見方だ。
この『韓半島歴史繰り返し説』とでも呼ぶべき憂国衷情(国を憂う気持ち)の仮説は、旧韓末のように時代錯誤的な派閥争いで分裂を繰り返す今日の政界を強くしかる。
百年の計はおろか、無能と短見で国を危機に陥れた現代の指導層を叱責(しっせき)するものだ」。
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