韓国、中国とTPPで亀裂 輸出不振、企業競争力低下など「五重苦」直撃
2015.12.24
韓国経済が“五重苦”に見舞われている。
韓国の大手シンクタンクは、
中国経済の失速や米国の金利引き上げ、
企業の競争力低下といったリスク要因を公表した。
朴槿恵(パク・クネ)政権が早急に課題を解決する手段を打ち出さなければ、
経済低迷は長期化しかねないというのだが、その実行力には大きな疑問符が付いている。
シンクタンクの韓国経済研究院が2016年の韓国経済の課題として「5つのR」を掲げた。
まず第1に「中国経済のリスク(Risk)」。
中国企業の収益が悪化し、経済が失速状態で、
銀行の不良債権比率も増大していると分析、
「中国への輸出依存度が高い韓国にとっては大きな脅威」だとした。
対中貿易黒字が縮小すると実体経済が萎縮するだけでなく、
為替レートの不安や外国人の資金流出などを招く恐れがあるという。
第2に、
「米国の金利(Rate)引き上げ」も韓国にとって潜在的な脅威となる。
過去にも米国が利上げを実施した後、韓国が経済危機に陥ったケースがあるためだ。
1994年に人民元の大幅切り下げでウォンが割高になり、
韓国の輸出が伸び悩むなか、
97年には国の利上げをきっかけにヘッジファンドが新興国通貨を売り浴びせるアジア通貨危機が勃発、
ウォン暴落と資本流出が加速した韓国は国際通貨基金(IMF)の管理下に置かれる屈辱を味わった。
米国が前回利上げを行ったのは2006年だが、
それから1年後にはサブプライムローン問題が生じ、
リーマン・ショックや世界金融危機を招いた。
同研究院は「米国は来年中に金利を1%程度まで引き上げると予想され、
ドル高を背景にした資本の流出など、韓国経済は大きな影響を受ける」と予想する。
第3のリスクが「輸出競争力(Rivalry)の低下」だ。
不透明な為替介入でウォン安に誘導し、
輸出を伸ばしてきた韓国だが、
2012年のアベノミクス発動以降、
円安が進んだこともあって日本メーカーとの競争力を失った。
同研究院は「日本企業との競争において、
さらなる円安がなくても韓国の輸出企業の困難さは継続する」と予想するが、
事態はもっと深刻だ。
米国が利上げを決定するなか、
日本は逆に、今後追加金融緩和を実施する可能性があり、
一段と円安、そして間接的にウォン高が進むことも想定される。
韓国メーカーは、日本だけでなく、
中国メーカーとの競争力を失いつつあるという。
中韓の製造業の競合関係が強まるなかで、
「人民元の切り下げは中国の価格競争力を高め、韓国の競争力を弱体化させる」
と警鐘を鳴らしている。
輸出不振に焦る韓国は、
中国の自由貿易協定(FTA)を発行させ、
経済成長の原動力としたい考えだ。
ただ、
韓国は米国主導の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への参加に意欲を示す一方、
中国はFTA網を広げてTPPを牽制する構えで、両国の通商関係に亀裂が生じる恐れもある。
こうした課題を解決するために必要なのが
「企業のリストラ(Restructuring)」と「構造改革(Reform)」だが、
これが実現できないことが、大きな弱点となる。
朴政権は対策として、経済活性化法案や労働改革法案を打ち出しているが、国会審議が進んでいない。
朴大統領は「労働改革法案などの処理遅延が大量失業など経済危機を招く」と発言。
「供給過剰で沈滞した業種を構造改革しなければ全体的に大きな危機に陥ることになる」と述べたが、朴政権の能力不足が問われる事態となっている。
週刊東洋経済元編集長で『韓国経済阿鼻叫喚 2016年の衝撃』(アイバス出版)の著書がある勝又壽良氏はこう指摘した。
「中国依存度の高さが、
韓国経済をさらに不振のふちへ陥れており、
反日姿勢で中国へにじり寄ったとがめとも言える。
韓国政府は営業利益で金利も払えない“ゾンビ企業”を延命させてきたが、
中国経済の失速や米国の利上げを受けて、今後は淘汰(とうた)が進むだろう」
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