ウォン高の影響で、勢いのあった韓国企業の輸出が急激に減っている。
J-CASTニュース
韓国の産業通商資源部が発表した最新の輸出入動向によると、
2015年5月の輸出額(速報値)は423億9200万ドル(5兆2666億円)で、
前年同月に比べて10.9%減少。
5月の輸出の減少幅が2ケタになったのは、世界的な金融危機にあった2009年以降で初めてという。
貿易黒字40か月連続、価格を下げて輸出量を確保
韓国の輸出がさえない。
2015年5月の輸出額は前年同月と比べて10.9%減の423億9200万ドル。
1月の増減幅は0.9%減、2月が3.3%減、3月4.3%減、4月は8.1%減と、減少に歯止めがかからない。
それどころか、5月は今年に入って最大の減少幅となった。
朝鮮日報日本語版(2015年6月1日付)などによると、
米国の製造業の国内回帰と中国の内需成長によって世界的に貿易量が鈍化しているうえ、
原油価格の下落から石油化学関連の落ち込みや、スマートフォンなどの無線通信機器の輸出が低迷したことが響いたとみている。
一方、5月の輸入額は360億7200万ドルで、15.3%の減少。
輸出と輸入は5か月連続でそろってマイナスとなった。
とはいえ、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は63億2000万ドルの黒字。
これで40か月連続の貿易黒字だ。
減少傾向にはあるものの、貿易黒字を維持しているのだから、韓国の輸出は頑張っているようにもみえる。
こうした状況に、ニッセイ基礎研究所経済研究部の斎藤誠研究員は「たしかに韓国の輸出は頑張っています。
しかし、円安ウォン高によって市場での価格競争力が落ちており、そのため価格を下げて輸出量を確保するようになりました」と説明。
結果的に、輸出企業が自身の利益を削って貿易黒字を確保しているようだ。
韓国の輸出企業を追い込んでいるのが、
日本のアベノミクスによる円安とウォン高であることはいまや周知のとおりだが、
それを裏付ける統計も発表された。
同日付の中央日報日本語版は、「ウォンがこの3年間で最も大きく上がった通貨に選ばれた」と報じた。
国際決済銀行(BIS)の統計を分析した結果、4月のウォンの実質実効為替相場は2012年4月と比べて20.2%上昇。
調査対象の61か国のうち、韓国が1位。2位は中国の19.8%、3位は米国の16.9%だった。
これに対して、円の実質実効為替相場は3年間で26.6%下落。
61か国のうち4番目に下げ幅が大きかった。
中央日報は、円安を「輸出浮揚を旗印に掲げたアベノミクスの力」と評価する一方で、
自国通貨の価値を下げて輸出を増やそうとする世界的な「通貨戦争」で、
「韓国だけむなしくやられた」と嘆いている。
韓国の輸出企業、「ようやく海外移転に動いている」
急激な円安に加えて、最近は中国経済の後退もある。
韓国の輸出の約25%を占めるとされる中国向けの輸出が、そのために減少している。
さらには、スマートフォンに代表される中国企業の台頭が急なこともある。
前出のニッセイ基礎研究所の斎藤誠氏は「ちょうど10年ほど前の日本に似ています」といい、
いま韓国が中国企業に市場を追われる状況は、
かつてウォン安を背景に韓国企業に市場を奪われた日本のようと指摘する。
韓国の輸出企業が苦しむのは、こうした外部環境の急変への対応が遅れたことが要因の一つ。
たとえば、円高時代の日本は製造業を中心に生産拠点を海外に移したが、
ウォン高にある韓国の輸出企業は「いま、
ようやく海外移転に動きはじめているところ」(斎藤氏)と腰が重い。
動きが鈍いのは輸出企業が値引きで輸出量を維持しながらも、どうにか利益を得て生きながらえていられるから。
輸出企業の多くがサムスン電子や現代自動車、鉄鋼のポスコといった、体力のある大手に集中していることもある。
ウォン高になっても、注文から実際の輸出まで2年程度かかるので、
輸出統計にすぐに変化が表れない。
そのためにウォン高の深刻さに気づかなかったとの見方もある。
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