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 「サムスンや現代自動車も崩壊してしまうかもしれない」「このままでは韓国が売る商品がなくなる」

2016年05月24日 08時40分54秒 | Weblog

「サムスンや現代自動車も崩壊してしまうかもしれない」「このままでは韓国が売る商品がなくなる」

2016.05.23

ZAKZAK夕刊フジ


 こんな衝撃的な言葉が最近、韓国大手紙(電子版)に掲載された。

“崩壊”を口にしたのは韓国工学界の第一人者とされるソウル大学工学部の李建雨部長。

売る商品がなくなると嘆いたのは大韓貿易投資振興公社(KOTRA)のキム・ジェホン社長だ。いったい韓国経済に何が起こっているのか。


朝鮮日報のインタビューに対し、李部長は「韓国の産業界は他人の技術を追いかけて先頭まで来た。

しかし、これ以上突き進んでいく実力や推進力は皆無の状態だ」と指摘した。

韓国の産業界には「模倣・改良精神」が根深く浸透していて、企業のオーナーはナンバーワン企業のやることをみて、その後を追いかけさえすれば安全だと考えているのだという。

こんな状態を続けていれば先には崩壊が待っている。

サムスン電子や現代自動車といった韓国を代表する企業も例外ではないとし、

李部長は、産学官など、すべてが力を合わせて創造的な蓄積を目指す社会システムと文化を構築しなければならないと警鐘を鳴らした。

一方、中央日報によると、今年3月まで15カ月連続の前年割れとなった過去最長の輸出不振を踏まえ、

最大の貿易相手国、中国の状況を視察したKOTRAのキム社長は、

中国経済の状況をみると短期的な輸出回復は容易ではないと分析。

「中国の成長に無賃乗車してきた輸出戦略を思い切って変えなくてはいけない」と述べた。

 2人の発言に「何をいまさら」と思う人も少なくないだろうが、韓国経済に貢献してきただろう“身内”からの「模倣体質」「無賃乗車」との手厳しい声が噴出してきた理由を考えてみた。

韓国は輸出の4分の1が中国向けだが、3月(速報)は前年同月比で対中国が12.2%減と米国(3.8%減)や日本(3.6%減)と比べて落ち込みが大きかった。

中国経済の減速が主要因だが、それだけではない。

韓国の未来創造科学省によると、2012年に1.9年だった中韓の技術格差は14年に1.4年に縮まった。

中国は部品や素材などの中間財の技術力向上に取り組み、国産比率を高めている。

韓国貿易協会によると、対中輸出に占める中間財の比率は2000年の84.9%から15年には71.8%に低下したという。

なるほど、中国からみると韓国から買いたい製品が年々減っているということだ。

一方で、韓国の国内総生産(GDP)の5分の1近くを稼ぐとされるサムスン電子はといえば、まだまだ元気だ。

韓国経済新聞によるとスマートフォンの最新機種「ギャラクシーS7」は発売から20日間で1000万台を販売し、ギャラクシーシリーズで最速の売れ行きをみせている。

スマホ事業とも関連するモバイル決済サービス「サムスンペイ」は、米国でアップルの同種のサービス「アップルペイ」よりも使いやすいとされ、小売業界に大きな影響力のあるPOS(販売時点情報管理)端末の世界大手ベリーフォンとの協業にも乗り出したという。

サムスンはバイオ医薬品や自動運転、AI(人工知能)といった先端分野の強化にも取り組んでいる。

朝鮮日報は、サムスングループ16社が4月実施した大卒新入社員の採用試験の問題で、例年出題されていたスマホ関連問題はほとんど出ず、

代わってAI関連の「ディープラーニング」やロボット技術、リチウムイオン電池などが出題されたとし、グループを挙げて新規分野の人材獲得にかじを切っていることを伝えた。

 サムスン電子の今年1~3月期連結決算は、ギャラクシーS7の健闘や生産コストの削減にウォン安効果も加わり、営業利益が6兆6800ウォン(約6500億円)と前年同期比11.7%増え、市場予想を上回る実績を示している。

だが、サムスンが堅調でも韓国経済はさえない。

韓国銀行(中央銀行)が4月26日発表した16年1~3月のGDP成長率(速報)は実質で前期比0.4%増だった。

伸び率は前期の0.7%増から減速し、3四半期ぶりに0%台前半にとどまった。

サムスンや鉄鋼大手のポスコなど、韓国の30大企業は昨年、投資を18%増やす一方で、人員削減によってグループ従業員が金融危機以降、7年ぶりに減少に転じたと朝鮮日報は指摘している。

その設備投資も1~3月GDP速報では5.9%減と落ち込む始末。

韓国の3月の青年失業率(15~29歳)は11.8%と1999年の統計開始以来、最悪だ。

 そもそも、サムスンが主力とする半導体やスマホの事業は、多くの労働力に頼らない装置産業。

鉄鋼や造船、建設などに比べて雇用創出力は大きくない。

生産拠点のグローバル化・現地化が進む中で、日本では電機産業の輸出・国内雇用の牽引力がかつてに比べて弱まっていることを考えれば、サムスンの世界で稼ぐ力が、いつまでも韓国経済全体を潤すわけではないことに気付くはずだ。

 さらに、サムスン電子や現代自動車などの存在感が強く光る影で、韓国には中国同様の“ゾンビ企業”も累々と放置されいる。

造船や鉄鋼、海運など中国の競争にさらされている業種が中心とされる。

韓国銀行などによると、営業利益から銀行融資の利益も返せないゾンビ企業(限界企業)は14年末時点ですでに外部監査対象企業2万7995社の14.4%に上る。

企業経営情報サイトの「CEOスコア」は韓国の大企業10社のうち1社はゾンビ企業と分析しており、世界経済の減速でその割合はさらに増えている可能性もある。

こうした状況について、中央日報など韓国大手紙は、財閥や雇用などへの配慮、

「大きすぎて潰せない」といった及び腰から政府が問題を先送りし、

構造調整の機会を逃してきた結果だと批判。

総選挙の結果を党が協力して改革に当たるべきだと主張している。

財閥の牽引に頼った経済運営は限界だということなのだろう。

 ところで、経済界で有名な「GM(ゼネラル・モーターズ)にとって良いことは、

米国にとって良いこと」という言葉を聞いたことがあるだろうか。

 GM会長のチャールズ・ウィルソンが、アイゼンハワー政権の国防長官に任命された際に上院軍事委員会で述べたとされる言葉だ。

多くのGM株を所有していたウィルソンに対し、

GMの利益に反することを国防長官として行わなければならない場合に実行できるかを問われ、実行できるとしたうえで、「そうした事態が起こるとは考えられない。

なぜなら米国にとって望ましいことはGMにとっても望ましく、またその逆も真だからだ」と発言したものだ。

 米自動車産業が隆盛だった時代、GMと米経済の利害関係が一致したように、政府の経済政策が時代に応じて特定産業との結びつきを強めることが全体の利益となることはある。

 だが、その後のGMがたどった道はご存じの通り。

政府に守られながら、低燃費競争や生産性向上、労務コストの削減で後手に回り、結局は破綻に追い込まれた。

ウィルソンの時代にはGMの破綻など夢にも思わなかっただろうが、現実には起こった。

 つまるところ、「サムソンも崩壊してしまうかも」とのソウル大学工学部の李建雨部長の発言は、もはや「財閥にとって良いこと、サムスンにとって良いことは韓国にとって良いこと」と言えた“幸せな”時代が終焉し、韓国経済が新たな展望が開けるか否かの瀬戸際に立っているとの認識なのだろう。

 “身内”からのモノマネ批判は、韓国政府の今後の政策運営によっては、サムスンが栄えても韓国経済は沈み続け、やがてサムスンもGMと同じ道をたどりかねないとの危機感の裏返しだ。(池田昇)



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