②韓国、「大卒浪人」青年失業率12.5%「行き詰まる経済」
2016-03-29
勝又壽良の経済時評
週刊東洋経済元編集長の勝又壽良
韓国の青年失業率が二桁にも達しているのは、産業組織の歪さを示している。
大企業が雇用の場として優位な立場にあるのは、寡占経済構造を表れである。
最近の日本では、大企業や公務員からスピンアウトした人々が、自分のしたい仕事を求めて転職、ないしは仲間と起業するケースが増えている。
まだまだ、欧米に比べればその歩みは遅いとしても、大企業や公務員を職業として絶対視する気風は消え始めている。
その意味で、韓国の失業率の高さは、韓国経済の未成熟さを象徴している。
②「韓国の昨年の経済成長率は2.6%で、0.4%にとどまった日本よりも高い。
成長スピードが速いにもかかわらず失業率が高いということは、成長が雇用の増加につながっていないことに他ならない。
さらに深刻なのは、経済活力を示すほかの指標だ。
輸出は日本を上回る減少率を記録し、物価上昇率は日本を下回った。
内需と輸出がそろって日本よりも低調だということだ」。
日本の経済成長率は韓国よりも低い。
失業率も同様に日本は韓国よりも低い。
通常であれば、成長率の低い日本の失業率が高くても不思議はない。
この記事では、この点に疑問を呈している。
日本の潜在成長率が、韓国よりも低下している結果、日本の経済成長率が低いのだ。
潜在成長率に大きな影響を及ぼすのは、生産年齢人口(15~64歳)比率である。
日本は1990年がピークでその後は低下している。
韓国は2013年がピークである。
この差が、潜在成長率に表れている。
韓国の潜在成長率が、日本より高くても失業率が高い理由は、生産年齢人口の有効活用を怠っている表れである。
日本では、生産年齢人口の上限である65歳を過ぎても働いている人々が、100万人単位で存在している。
日本の労働市場が弾力的な証拠である。
その点で、韓国はまだ改善余地が大いにあるのだ。
③「まだ先進国の仲間入りを果たせずにいる韓国経済が、高齢化と人口減少に直面している日本を上回る『無気力状態』に陥ったのは、変化と構造改革の努力を怠った結果だ。
企業はいくつかの産業の成功に酔いしれ新産業への参入を先送りした揚げ句、売り上げと利益が減ると何よりも先に人員削減に乗り出した。
日本がこの5年間、370兆ウォン(約35兆円)に達する合併・買収(M&A)で産業体質を改善しようともがいていたのとは対照的だ」。
先進国の仲間入りに基準があるわけでない。
だいたい、1人当たり名目GDPが4万ドル前後で先進国と見なされる。
韓国は昨年、約3万1000ドルになっている。
1人当たり名目GDPが注目されるのは、一国経済の生産性の尺度になっているからだ。
生産性が上がれば、1人当たり名目GDPが上がる。
韓国経済の弱点は、輸出依存度の高いことである。
最近は対GDPで26%になりむしろこの比率は上がっている。
内需依存度を上げなければ安定した成長は望めないし、失業率の低下も空念仏に終わる。
だが、寡占経済体制で大企業が支配しており、所得格差が拡大している。
こうした基調下での内需=消費の拡大は困難だ。
既存の経済体制下で先進国化は不可能であろう。
④「政府と教育業界は就職活動をする学生の70%が大卒者という偏った構造を放置し、改革を先延ばししている。
日本の大卒者の比重は20年前、若者失業率が上昇し始めた当時でも30%(注:正しくは約50%)台を超えなかった。
硬直的な労働市場を変えるには改革法案の成立が急がれるが、国会はまひ状態だ。
この5年間、3~3%台の低成長が続いたにもかかわらず、産業、教育、労働など各分野では20年、30年前からの旧態がそのままだ。
政治が、経済の最大のリスク要因となって久しい。
問題が問題に見えない慢性化現象まで現れている。
このままでは韓国は衰退を止められない」。
韓国の大学進学率は約70%であり、米国に次いでの高い水準である。
日本は約50%である。
ただ、一国の科学技術のレベルは、大学進学率と直接の関係はない。
韓国では、この高い大学進学率が障害になっている。
大学卒というメンツが、就職では大企業や公務員を志望させ、高い失業率を招いているのだ。
むしろ、経済的には損失をもたらしている。
このパラグラフでは、韓国の経済システムが20~30年前と変わらない旧態依然としたものだと嘆いている。
この点は、私が指摘し続けているところである。
記事では、具体論には一切、触れていない。
これが韓国メディアの欠陥である。
私に言わせて貰えれば、寡占経済体制の打破であり、財閥の解体まで行き着かなければ、韓国経済が立ち直れないのだ。
その認識がないから、適当な手直しをすれば復活可能と見ている。
それが、間違いである。
記事では、韓国政治が最大のリスクになっていると指摘している。
確かに、その通りである。
与野党が感情的に対立して、冷静な議論をしない。
そういう感情論に溺れる国民性であるのだ。
韓国経済の限界はここにある。
韓国人の価値判断は、感情8割、理性2割という感情過多症である。
ここを克服しない限り、韓国経済はジリ貧状態になろう。
感情過多症が命取り
韓国の感情過多症を立証する話しが出てきたので紹介したい。
『朝鮮日報』(3月18日付)は、「韓国科学界バカにしたパスツール研究所所長解任」と題して、次のように伝えた。
この記事を読むと、韓国人が「韓国をバカにした」という理由で、外部から招聘した韓国パスツール研究所長を解任した顛末を報じている。
パスツール研究所と言えば、1888年にパリで創立された研究所である。
微生物学、血清学、生物化学などの分野の研究者を集めた世界で最も権威のある研究所の一つである。
この世界的にネットワークを持つパスツール研究所の韓国分院の所長を解任した。ちょっと考えられない非常識なことをやったのだ。
これがもたらす負の連鎖を考えなかったであろうか。
韓国は、微生物分野の研究に力を入れている。
この分野では、医薬面で優れた成果を上げてきたところである。
その矢先の「解任事件」である。
いくら、頭に血が上ったからとは言え、冷静な処理ができなかったのか。
その短絡さを不思議に思うのだ。
⑤「国際学術誌に韓国科学界をおとしめる発言をして物議を醸した韓国の研究機関の外国人所長が解任された
韓国パスツール研究所は、3月7日の理事会でハキム・ジャバラ(Hakim Djaballah)所長の解任を全会一致で可決した。
同研究所は世界的なバイオテクノロジー研究機関『パスツール研究所』(フランス)の韓国分院で、2004年に設立された。
韓国政府と京畿道は優秀な研究人材を招くため、これまで2000億ウォン(約193億円)を上回る運営費を支援してきた。
ジャバラ氏は米モリアル・スローン・ケタリング癌(がん)センター(MSKCC)の元教授で、3年の任期を1年4カ月残した状態で解任された」。
韓国企業が現在、バイオ医薬品で後発薬にあたる「バイオ後続品」の製造受託を武器に攻勢に出ている。
その背景には、韓国パスツール研究所の貢献があったことは疑いない。
すなわち、「韓国各社が生産能力の増強を競い、主な企業の年産能力は世界の3割を超えた。
大型薬の生産に成功したり、従来の10分の1の投資で済む生産技術を開発したりする新興企業も現れ、海外から製造委託要請が相次ぐ。
自社ブランドでなく製造受託でのし上がる、バイオ後発薬業界『鴻海(ホンハイ)精密工業』は生まれるか」(『日本経済新聞』2月19日付)と期待がかかっている分野なのだ。
ここが韓国人の限界であろう。
「韓国をバカにした」という感情過多症で、韓国バイオ医薬品の後発薬に多大の貢献をしている韓国パスツール研究所長を首にするとは、考えられない行動だ。
韓国が、今なお日韓併合で日本批判を続けていることと極めて似通っている。
日本の韓国近代化への貢献を一切、認めずに日韓併合という現象のみを取り上げて批判する。
ある意味、「自己過信」で救いがない民族ともいえる。
⑥「同氏は昨年8月、ネイチャーの求職ガイドに
『韓国では公然と“幼稚園の同期だから研究費をやる”と話す』、
『ソウル大で学でなければ国際学術誌に論文を載せるのも難しい』など一方的な主張を掲載して物議を醸した。
この時、科学分野関係者の間では、『韓国政府からあらゆる恩恵を受けながら、支援が先日減るや悪意のある非難をした』と反発した。
ある私立大学教授は、『政府から支援を受けている研究所の所長が韓国をおとしめる発言をインタビューでしたということが、今回の解任の決定的な理由になった』と語った」。
韓国パスツール研究所長が、解任された理由は次のようなものだ。
(1)「韓国では公然と“幼稚園の同期だから研究費をやる”と話す」
(2)「ソウル大で学でなければ国際学術誌に論文を載せるのも難しい」
客観的に見れば、韓国では起こっても不思議のない例ばかりである。
韓国も儒教社会であって、「人縁社会」である。
「幼稚園の同期」という独特の人的なつながりが生涯、役立っているのだろう。
「ソウル大学」は、日本が建学した京城帝国大学(1924年創立)が母体である。
旧帝大という誇りは事大主義の韓国では想像を超える存在に違いない。
韓国の独立後に創立された大学と、一線を画しているとしも不思議はない。
要するに、いずれも事実であって、目くじら立てて韓国パスツール研究所長を解任する必要はなかったであろう。
むしろ、韓国独特の感情過多症を世界に「アッピール」した、そのマイナスの方が大きい。
ある韓国の私大教授は、「韓国政府から支援を受けている研究所の所長が、韓国をおとしめる発言をインタビューでしたということが、今回の解任の決定的な理由になった」と裏事情を明かしている。
ならば、3月19日のブログで取り上げた的外れな日本批判をした、東京経済大学の韓国人教授の徐京植〈ソ・ギョンシク〉氏はどうなるのか。
日本では誰も徐教授を解任せよ、などと言い出す者はいまい。
言論の自由があるからだ。日本と韓国では自国批判に対して、これだけの違いがある。
韓国社会はもっと、「大人」にならなければダメなのだ。
(2016年3月29日)