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【映画講評】ゴジラvsビオランテ(1989)【3】検証:第4護衛隊群激闘!浦賀水道海戦

2018-09-24 20:05:06 | 映画
■ひえい頑張るから見捨てないで
 今回は作品中の一つの転換点、自衛隊がゴジラ東京上陸を阻止した第4護衛隊群の浦賀水道海戦を検証してみましょう。

 1989年公開のゴジラvsビオランテ、終戦記念日特集と同じ岐阜の名画座ロイヤル劇場では週替公開として先週一杯まで平成ゴジラシリーズ最終作のゴジラvsデストロイアがリバイバル上映されいたという。ただ、何分あの作品までいきますとSF要素が濃すぎて軍事検証というものが成り立たないものです。しかし、本作は前作ゴジラが軍事検証の下に依拠した作品であったように検証できる。

 自衛隊がどのようにゴジラvsビオランテにおいて巨大生物と戦ったのか、今回はこの点に軸を置いてみたいと思います。ゴジラは作品世界では1954年と1985年に上陸、74式戦車の105mm戦車砲やF-1支援戦闘機からの航空攻撃は勿論、実在しないVTOL攻撃機スーパーXや67式ロケット発射装置後継と思われる83式ロケット発射装置にも耐えています。

 ゴジラvsビオランテでは、上記の通り強大なゴジラの東京侵攻を何とか阻止する事に成功しました。ゴジラは伊豆大島三原山火口直下で休眠状態にあったのがテロ攻撃による大規模な爆破、人口噴火に必要な膨大な爆薬をどのようにテロリストが持ち込んだのかは不明ですが、これにより活性化し、火口から出現しました。三原山周辺に積層対戦車地雷、伊豆大島周辺に機雷を敷設しておかなかった為、そのまま太平洋に出ました。

 第4護衛隊群護衛艦ひえい、を中心に海上家謡は浦賀水道においてゴジラ迎撃を行います。旗艦ひえい、第1護衛隊護衛艦たかつき、きくづき、第43護衛隊護衛艦いそゆき、はるゆき、第23護衛隊護衛艦あおくも、あきぐも、ゆうぐも、これが当時の第4護衛隊群陣容で第4護衛隊群は現在呉基地に司令部を置いていますが、1995年までは横須賀にありました。

 ひえい以下第4護衛隊群は海上自衛隊で最も新しい護衛隊群という事もあり、1989年当時艦隊防空に当るミサイル護衛艦などの配備はありません。しかし、1990年1月には第41護衛隊の護衛艦はつゆき、しらゆき移管を受ける等拡大改編が続いた当時であり、その能力水準も艦艇新鋭水準も、世界的に見ても有力な水上戦闘艦部隊であるといえましょう。

 浦賀水道海戦では、127mm艦砲に加え、ボフォースロケット等の射撃も描かれていましたので、あおくも、あきぐも、ゆうぐも、そして、たかつき型護衛艦が参加していると思われます。ただ、ゴジラに接近し過ぎた事により、護衛艦ひえい、護衛艦はつゆき、至近距離より熱線の直撃を受け上部構造物の大半を破壊、大破します。127mm艦砲の射程を考えれば、あの距離は接近し過ぎたといえる。

 ひえい、と共に護衛艦はつゆき大破という状況、恐らく第41護衛隊の移管が前倒しで行われたのだと推測しますが、護衛艦はつゆき、しらゆき、いそゆき、はるゆき、は長射程のハープーン対艦ミサイルを搭載しています、射程100kmを越え、ヘリコプターからのミサイル誘導で横須賀基地からも浦賀水道のゴジラを攻撃可能、実はここに疑問があるのです。

 ゴジラは表皮部分にステルス性があり従来型の火器管制装置やレーダー誘導兵器が全く制度を発揮出来ない。若しくは、ゴジラが海中を航行しておりHSS-2対潜ヘリコプター等からの魚雷攻撃を受け浮上した時点で既に護衛艦部隊に間合いを詰められていた、セットのプールが狭かった。護衛艦とゴジラが接近し過ぎた理由はこの何れかしか考えられません。

 ひえい大破は衝撃的でした。しかしその後沈没には至らなかったようです、実際次作にあたる1991年のゴジラvsキングギドラに際し、北海道近海に出現したゴジラ警戒へ護衛艦ひえい、より艦載機HSS-2を出動させており、実に二年間という短期間で上部構造物全損という大損害を受けつつ、現役に復帰している事が分ります。あの状況から生還したのか、居旬驚きますが、実は水上戦闘艦は上部構造物破壊だけでは沈みにくい。

 ベルナップ衝突事故、上部構造物が全滅しても沈没に至らなかった事例があります。1975年11月22日にアメリカ海軍ミサイル巡洋艦ベルナップが地中海において演習中、誤って空母ジョンFケネディと衝突する事故がありました。この際にベルナップ上部構造物が空母艦首を引っかける形となります。航空母艦は第二次大戦中の反省から最大の可燃物である航空燃料管を艦内に置かないという設計上の配慮があります。

 ジョンFケネディは上手く回避に成功した事で一部を損傷しただけとなりますが、外部の舷側に配置された航空燃料送油管が切断されると共にそのままベルナップ上部構造物に大量の航空燃料が降り注ぎ、そのままベルナップ艦上が大火災に見舞われました。ベルナップ級は軽量化へ上部にアルミ合金を採用した事が起因し、大火災の後、上部構造物が全て溶解する大被害を受けます。

 ベルナップは大破しましたが、沈没には至っていない。搭載するスタンダードミサイル弾庫への引火だけは爆発物処理班の行動で回避、船体が無事だった事で結果沈没を免れました。ベルナップ修理には1976年から1980年まで長期間を要しましたが現役に復帰、1995年まで現役艦として維持されています。ひえい大破も大損害でしたが、上記の通り上部構造物が全損しても沈まない事例はある。ダメージコントロールが効いたのでしょう。

 比叡、旧海軍戦艦比叡と上部構造物については奇妙な一致があります。護衛艦ひえい、アルミ合金製ではありません、鋼製です、そしてもう一つの比叡も。太平洋戦争最大の艦艇消耗戦となったソロモンの戦い、第三次ソロモン海戦において戦艦比叡は僚艦霧島、軽巡洋艦長良に駆逐艦13隻と共にガダルカナル島米軍飛行場艦砲射撃へ展開中、重巡洋艦サンフランシスコを基幹とする第67/4任務群14隻と遭遇し大規模な夜戦となりました。

 第三次ソロモン海戦では戦艦比叡が至近距離から大量の艦砲を受け上部構造物が大破、艦内電話も切断という状況に陥ります。この際に戦艦比叡の西田艦長は機関部全滅航行不能の誤情報を受け、実は機関部は健在だったのですが自沈命令、太平洋戦争最初の日本海軍戦艦喪失となる。これ実は人気ゲーム“艦隊これくしょん”でも戦艦比叡が“頑張るから見捨てないで”という台詞があるほど、知られている事なのですよね。しかし、作品世界では二代目ひえい、見捨てられず沈みませんでした。

 ゴジラにステルス性、ハープーン攻撃を行わず艦砲での戦闘に至った背景ですが、可能性として高いのはこちらです。その論拠として、1985年ゴジラ上陸では東京湾へF-1支援戦闘機、正確にはF-1支援戦闘機CCV改造型という機動性を高めた機体と思われますが、投入されています。F-1支援戦闘機は射程40kmの80式空対艦誘導弾ASM-1を二発搭載可能、ASM-1であればゴジラ熱線の射程外から攻撃可能です、しかしそうできなかった、理由が有る筈だ。

 ASM-1は1985年の作品世界において、東京湾の晴海沖という錯綜地形でもゴジラを識別し射撃可能でした。ただ、攻撃映像を見ますとかなり近距離で発射、空対艦ミサイルの割には命中精度が低く、実はレーダーに映りにくい可能性が見て取れるのです。そして浦賀水道海戦において、最も有効であろうF-1支援戦闘機とASM-1は投入されませんでした、1985年の晴海埠頭水際防御戦闘での反省が生かされた為でしょう。

 無人攻撃機スーパーX2,第4護衛隊群の支援に派遣されたのは前回検証したこの無人攻撃機でした。陸上自衛隊が木更津駐屯地に配備した新型攻撃機により太平洋上に出たゴジラは浦賀水道において攻撃を受けます。無人攻撃機といえばMQ-9リーパーやMQ-1プレデター等の米軍装備を思い浮かべるところですが、実戦投入は2001年同時多発テロ以降の対テロ戦争以降、作品世界の自衛隊は1989年に無人攻撃機を実用化していた。

 スーパーX2は超音速飛行が可能な垂直離着陸無人航空機で戦闘行動半径についても伊勢湾戦闘空中哨戒後大阪へ転進可能というほど余裕があります。実は無人航空機でありながら水中も航行可能という、今日でも不可能と言い切れる性能を有し、この点は後述するとしましょう。浦賀水道で阻止、一定の成果を上げるものの、結局はゴジラ無力化に失敗します。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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4 コメント

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そうか! (ハリー)
2018-09-27 01:13:33
ゴジラの体皮にステルス性がある、という説明は盲点でした!
あんなに、護衛艦隊が接近してしまうことに違和感があったので、思わず膝を打ちました(笑)。
「ハープーンや88式地対艦ミサイルでも使えよ!」と、いつも突っ込んでいたので、、、。後は、大破した護衛艦ひえいが、ゴジラの放射火炎により、放射能汚染している可能性の問題をクリアすれば、、、。
しかし、本作品は、中央指揮所で統幕議長が指揮していたり、84年版のリアリティーを上手く引き継いでいましたね。
ただ、サラジアとのゴジラ細胞争奪戦などは、もう少し、公安警察などが出てきた方が良かった気がします。前作では内閣調査室が、ゴジラ出現の隠蔽工作をしていたことですし、、、
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ノベライズ本は (はるな)
2018-10-23 23:38:49
ハリー 様 こんばんは

ステルス性、いろいろ考えた結論です。ただ、その場合、スーパーX2が近距離で捕捉できた理由が矛盾するのですよね

抗核バクテリア、ノベライズ本では、KGBが強奪を試みて自衛隊と交戦、とか展開があるのですけれど、ね
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Unknown (MOGERA)
2018-11-16 21:12:36
ビオランテで護衛艦ひえいは沈んだと思いますよ 劇中のセリフに「護衛艦はつゆき ひ

えい撃沈」がありましたから
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Unknown (MOGERA)
2018-11-16 21:12:38
ビオランテで護衛艦ひえいは沈んだと思いますよ 劇中のセリフに「護衛艦はつゆき ひ

えい撃沈」がありましたから
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