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【映画講評】ガメラ3-邪神覚醒(1999)平成ガメラシリーズ最終作品は非戦闘員被害から脱落防止まで描ききる

2023-03-05 07:00:21 | 映画
■BS12日曜アニメ劇場
 この作品が興行収入でもう少し伸びていればガメラ4が製作されていたというちょっと時代を先取りしすぎた作品です。

 ガメラ3-邪神覚醒、BS12日曜アニメ劇場にて本日1900より放映とのことです。この作品は若干SF要素とともにファンタジー的な要素を盛り込んだ作品となっていまして、平成ガメラシリーズ三部作でも異色の存在、といわれるところですが、自衛隊戦車がガンガン頑張るガメラ2も異色でしたし、古代文明の生物兵器という設定のガメラ自体、SFです。

 金子修介監督と樋口真嗣特技監督に伊藤和典脚本という、平成特撮の金字塔的な存在ですが、本作は二つの意味でリアリティを追求したものです。その筆頭は“怪獣同士が戦い、一方が人類の味方をしたとしても、巻き込まれる市民はどうなるのか”という素朴ですが娯楽映画ではかなり禁忌となっている題材を正面から描いた、ということでしょうか。

 ゴジラvsビオランテ。実は過去にリアリティを盛り込んだ特撮映画は存在しました、東宝が1989年に公開したゴジラvsビオランテです、抗核エネルギーバクテリアという新技術と、生命の創造という禁忌、この二つを盛り込むとともに特撮映像をかなりリアリティを盛り込み制作しました、けれどもこれが子供たちの付表に繋がってしまった、やりすぎ。

 ゴジラ、1984年版でもゴジラに対して水際撃破を試みる陸上自衛隊が東京港晴海ふ頭で大損害を被る際、熱線で警戒に当たる自衛隊員が部隊ごと蒸発する描写や、逃げ回る戦車と火のついたままのたうちまわる隊員と、踏み込んではいたのですが。いや、1954年版のゴジラでも路地で熱線に焼かれる描写、ガメラ一作目でもビルごと蒸発する描写はあったが。

 ガメラ-大怪獣空中決戦、平成ガメラシリーズの一作目で間接的ではありますが人間を好んで捕食するという怪獣ギャオスの描写に、やりすぎか、というところはありましたが、これは受け入れられたといいますか、リアリティとして理解されたことで、平成ガメラシリーズは免罪符を得た、そこにリアリティを検証という新しい一歩を開拓できたのでしょう。

 東京を舞台に前半の、あまり紹介しますとネタバレになってしまいますが、怪獣同士が本気でやりあう最中に、避難できなかった人々がどうなるのか、という描写は描かれています。いや、逆にこの視点を含めることができたからこそ、シン-ゴジラやシン-ウルトラマンといった単純な勧善懲悪ものではない、量産しにくいが特撮を一歩前に進めたといえます。

 自衛隊の描写、第3師団管内の方は是非みるべきでしょう、来月の信太山駐屯地祭までに録画でもDVDでも見ておきますと、ああここの正門だ、とわかります。自衛隊の描写はかなりリアルです、演じているのは第1師団の方も交じってるという事ですが、尖兵小隊として普通科連隊から前進して監視していた隊員が攻撃を受け、軽火器で戦う描写など。

 64式小銃と62式機関銃、公開された1999年は車両こそパジェロに高機動車、実写が出てきますが89式小銃は十分いきわたらず、小銃と機関銃は旧式、ただカールグスタフはすでに配備されていました、有名なのは“脱落防止”、演習中に弾倉なんかを紛失すると大変なことになりますので一つ一つ紐で結んでいるのですが、これが機能している描写がある。

 62式機銃も戦国自衛隊のようにばかすか撃ちまくるのではなくいたわる様にバースト射撃している、カールグスタフこと84mm無反動砲を射撃する際には後方爆風に注意する、なにかこう微妙にリアルなのですよね。怪獣が空に逃げればE-2C早期警戒機が監視し、F-15戦闘機が、という具合です。京都怪獣案内というべき一作、ぜひご視聴をお勧めします。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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