北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【日曜特集】金沢駐屯地創設63周年記念行事(2)第14普通科連隊観閲行進(2013-09-08)

2018-09-23 20:09:29 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■観閲行進にみる連隊編成
 金沢駐屯地祭、式典に続き観閲行進が開始されます。その威容と共に普通科連隊の編制を視てみましょう。

 普通科連隊、連隊長を頂点に副連隊長が補佐し、第1科長、第2科長、第3科長、第4科長の幕僚機構があります。そして第一線中隊は本部管理中隊長、第1中隊長、第2中隊長、第3中隊長、第4中隊長、重迫撃砲中隊長、対戦車中隊長、教育隊長が当たる訳です。

 普通科連隊は、陸上自衛隊の戦闘骨幹戦力であり、近接戦闘を主任務とすると共に有事の際、戦車中隊や特科大隊と施設中隊及び後方支援連隊からの配属部隊や衛生小隊と共に連隊戦闘団を編成します。この為、連隊は独立戦闘能力をかなり深く意識しているのですね。

 第1科長、S-1と略称され連隊幕僚機構に在って人事担当を担います。第1科は第1科長以下、庶務班長、広報班長、募集-援護担当幹部、が配置されていまして、連隊本部の運営を具体的に担う事務機能と共に隊区全般の広報業務から報道対応まで一手に担う部署という。

 第2科長、S-2と略称され情報担当を担う幕僚です。第2科は第2科長以下、情報幹部と地誌幹部が就きます。地誌幹部とは連隊は特定地域を警備隊区として防衛警備任務に当るのですが、その際に河川や道路と隘路や稜線等の地形に国民保護情報を一手に担当している。

 第3科長、S-3という作戦運用担当の幕僚機構です。第3科は第3科長以下、運用訓練幹部主任と運用訓練幹部、警備幹部、予備自衛官担当幹部、通信幹部、より成りまして、運用訓練幹部は有事の際には作戦幹部として連隊長へ幕僚見積等所見を提示する要職の筆頭だ。

 第4科長、S-4と故障される兵站幕僚機構、自衛隊用語では後方支援担当という。第4科には第4科長以下、部隊車両幹部、管理幹部、が就いていまして、整備全般状況を把握すると共に連隊段列地区という独自の兵站拠点地域の管理と第一線への補給線維持も担います。

 幕僚陣は第1科長、第2科長、第3科長、第4科長、4名が人事と情報と作戦に兵站、と担います。上記の通り所管職域は明確化していますが、第一線中隊長と違い近接戦闘部隊を直接担う事は無く、職域に留まらず必要な所見を阿らず連隊長に提示する役割とのこと。

 本部管理中隊長、本部管理中隊には本部管理中隊長以下、人事班長、情報小隊長、施設作業小隊長、管理整備小隊長、衛生小隊長が就きます。各小隊は情報小隊は斥候等情報収集、施設作業小隊は戦闘工兵任務に当り、等など、連隊の行動全般を支援する任務に当ります。

 第1中隊長、普通科中隊には中隊長以下、副中隊長、運用訓練幹部、第1小隊長、第2小隊長、第3小隊長、第4小隊長、迫撃砲小隊長、対戦車小隊長、が就きます。対戦車小隊は対戦車ミサイル普及以前には無反動砲小隊が当てられ、呼称も無反動砲小隊長でした。

 第2中隊長、中隊長以下、副中隊長、運用訓練幹部、第1小隊長、第2小隊長、第3小隊長、第4小隊長、迫撃砲小隊長、対戦車小隊長、は共通です。小銃小隊は高機動車か軽装甲機動車により高度に自動車化されており、一個中隊が軽装甲機動車中隊となっています。

 第3中隊長、中隊長以下、副中隊長、運用訓練幹部、第1小隊長、第2小隊長、第3小隊長、第4小隊長、迫撃砲小隊長、対戦車小隊長、という共通編成です。対戦車小隊は射程2kmの87式対戦車誘導弾を装備、迫撃砲小隊は射程5kmのL-16/81mm迫撃砲を有する。

 第4中隊長、中隊長以下、副中隊長、運用訓練幹部、第1小隊長、第2小隊長、第3小隊長、第4小隊長、迫撃砲小隊長、対戦車小隊長、は同じ。半装甲化編成という現行では普通科連隊に一個の装甲車中隊を置く編成が全国的に普遍化され、第4中隊か、近年一部普通科連隊に増強される第5中隊が軽装甲機動車化されている事が多い。

 重迫撃砲中隊長、中隊長以下、射撃幹部、偵察幹部、前進観測幹部、第1迫撃砲小隊、第2迫撃砲小隊、が置かれています。射程8.1km、延伸弾使用時に13kmの射程を有する120mm重迫撃砲RTを12門装備しており、冷戦時代には射程5kmのM-2/107mm重迫撃砲を有していました。

 対戦車中隊長、中隊長以下、副中隊長、運用訓練幹部、第1小隊長、第2小隊長、第3小隊長、という編成で射程4kmの79式対舟艇対戦車誘導弾12セット有する。師団対戦車隊から普通科連隊へ対戦車火力を増強改編し誕生、ただ近年は全国的に近接戦闘部隊強化の流れを受け第5中隊へ改編されつつある。

 教育隊長、新隊員という昨今は自衛官候補生の前期教育を担うと共に前期教育終了後の第一線部隊配置となった新隊員の後期教育支援をも担います。教育隊長と並列し金沢駐屯地のように自動車教習所を有する駐屯地では自動車教習所長として幹部が充てられています。

 世界の歩兵中隊とは概ね100名程度の人員を以て編成され、云々、と諸外国の部隊編成では哨戒されますが、陸上自衛隊の普通科中隊は220名規模の人員を有しています。これは普通科中隊が小銃小隊に加えて迫撃砲小隊と対戦車小隊を独自に編成下に置いている為という。

 歩兵大隊の隷下に武器中隊として迫撃砲小隊と対戦車ミサイル小隊を有する編成が、米軍やNATO諸国が冷戦時代に一般的な編成としていました。しかし、陸上自衛隊は普通科連隊隷下に普通科大隊を置く編成を1962年の陸上自衛隊改編において中隊に代えています。

 普通科中隊は諸外国の歩兵中隊と比較し二倍程度の人員を有する小型の歩兵大隊、という水準となっています。これは自動車化等運動戦という陸上戦闘体系の変容を予見し、部隊の分散と集合を迅速化させる、との視点から導入されたもので、米軍を参考としたもの。

 ペントミック編成という1950年代にアメリカ陸軍が核戦争時代を見越し、一発の戦術核で師団が全滅しないよう従来の4000名規模歩兵連隊編成を改め、師団を小型化すると共に大隊戦闘群を基本に、従来の三単位編成から五単位編成としたものを日本が参考としました。

 1962年の陸上自衛隊改編は、自衛隊創設当時から採用された大型師団にあたる管区隊制度と機械化混成団の連携、という運用を改め、管区隊を四単位編成の甲師団に縮小、混成団を三単位編成の乙師団に拡大、この過程で普通科連隊数を大幅増強する必要が出ています。

 三単位編成というものは、基幹部隊が三個ある、という意味です。当然五単位編成とは基幹部隊が五個という。ペンタゴンという単語が五角形を示すように元々ペンとミック編成とは五単位編成であった訳ですが、日本は五単位編成ではなく小型編成概念だけ導入した。

 核戦争時代の小規模編成というアメリカ陸軍改編を、単に自衛官定員をそのままに部隊数を増強するために一つ一つの部隊定員を縮小するという苦肉の策を用い、この際に普通科連隊隷下に在った普通科大隊を廃止、代えて普通科中隊の定員を増やしたという構図です。

 フランス陸軍も自衛隊以外に歩兵連隊から歩兵大隊を廃止し、歩兵中隊を連隊の直下に置く編成を採り、歩兵連隊定員が1100名程度と、自衛隊の1200名規模の普通科連隊と重なる改編を行っています。一方、他のNATO諸国では歩兵連隊を止め歩兵大隊を基幹とした。

 基盤的防衛力整備という1976年防衛大綱の概念は、元々日本の抑止力を強化するために防衛力強化が必要という部内意見を内局が平時に最小限の人員を維持し有事に急速強化するための基盤整備だ、という方便で説明したもの。この為過去には有事の際、一応普通科中隊を大隊化する構想は、あったともいう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事捕捉-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【くらま】日本DDH物語 《第... | トップ | 【映画講評】ゴジラvsビオラ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

陸上自衛隊 駐屯地祭」カテゴリの最新記事