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【映画講評】ガメラ2-レギオン襲来(1996)平成特撮が挑んだ"リアリズムへの挑戦"と安全保障を考える映画

2023-02-19 18:22:44 | 映画
■BS-12日曜アニメ劇場
 ガメラ2が放映されると聞きますと少し心躍る。津波で原発が吹き飛び世界中が新柄ウィルス蔓延に曝されロシアが隣国に侵攻し核戦争の危機が続き元総理大臣が選挙演説中に暗殺される昨今ですが。

 ガメラ2-レギオン襲来、その4Kデジタル修復版が今夜1900時からBS-12の日曜アニメ劇場にて放映されます。BS-12というのは無料BS放送で衛星放送受信が可能なテレビでしたら誰でも視聴することができるデジタル多チャンネル時代の恩恵というところでしょうか、なにしろ衛星放送、地方に関係なく日本全国一律に見ることができ感想を共有できるのです。

 自衛隊が全面的に協力し、ああこの90式戦車が走っている場所は駐屯地祭でだれもが横断しているあの坂道ではないか、とすごく有名な場所がしれっと登場しますし、ああこの戦車部隊が集結しているのはあそこの駐屯地記念行事で、普通に式典車両が並んでいるところではないか、というどこかで見たような風景が登場するのも、ある意味見どころといえる。

 駐屯地祭、COVID-19によりなかなか行えないところなのですけれども、さりげなく真駒内駐屯地に第11戦車大隊が駐屯していた時代の様子が、モータープールに74式戦車の並ぶ様子ということで出ていたり、ああここでCH-47の体験飛行や地上滑走に乗ったよ、というような一角が出てきますので、行事によく行く方ほどたのしめるのかもしれません。

 平成ガメラシリーズの第二弾に当たるこの作品は、Weblog北大路機関をご覧になるような、安全保障に多角的な関心を持たれる方には是非一度、いや何度でも見ていただきたいという作品で、これは日本の平成特撮に新しい潮流を吹き込んだ野心的な作品、特に平成ガメラシリーズでは、ガメラをもう一度、という一点に集中し、題材を深めることが難しかった。

 平成特撮、その最大の特色は歴史的なヒット作となりました“シン・ゴジラ”、庵野秀明監督のゴジラを実際の危機管理という側面から説得力を持って映画として描き、連隊長を演じたのちに麻薬で引っ張られる役者さんがヘルメットバンドを装着していない以外は、あとは陸幕副長が陸将でなく陸将補である以外は徹底したリアリズムに徹した点があります。

 巨大生物災害、もしこうした危機管理の想定外における事態が発生した場合に、既存の政府機関や防衛当局はどのように動くのだろうか、この視点をかなり綿密に踏み込んだというのがこの本作“ガメラ2-レギオン襲来”の一つの特色となっています。そしてこの点で庵野秀明監督の“シン・ゴジラ”と重なるのは樋口真嗣特技監督の拘りが反映された仕上がりです。

 樋口真嗣特技監督、この特撮世界の巨人が挑んだリアリズムへの挑戦が、庵野秀明監督の“シン・ゴジラ”と重なりまるのは意外でもなんでもなく、庵野秀明監督と樋口真嗣特技監督は、1982年にダイコンフィルムが制作しました特撮映画“八岐大蛇の逆襲”にてともに製作現場に助け合ったという背景がありまして、方向性で重なり合うものがあるのですね。

 エヴァンゲリオン、庵野秀明監督といえば1990年代の日本アニメーション史に大きな影響を及ぼし、2020年代に劇場版のかったいでようやく完結を見ました新世紀エヴァンゲリオンの総監督として著名ですが、樋口真嗣氏は策が監督などでこの作品に大きく関与していますし、そもそも主人公碇シンジの名は樋口真嗣のシンジからとられたとさえいわれます。

 機動警察パトレイバー 2 the Movie、1990年代のアニメーション史に大きな影響を与えた作品として多数ある作品の中からもう一つ忘れてはならないのは押井守監督の“機動警察パトレイバー 2 the Movie”が挙げられます。この作品もリアリズムに挑戦したアニメーション作品の一つであり、地球温暖化による海面上昇を背景に建機の発達が作品の背景という。

 パトレイバーという架空の人員作業用機械は、もともと地球温暖化による海面上昇を背景に日本の沿岸部の主要都市部を海面上昇から護岸するべく東京湾埋め立て事業が開始、この作業効率向上のために開発された人型工機が犯罪に悪用されるために警視庁がこの建機を警備部に試験配備するという、これもリアリズムとロボットを融合させた作品でした。

 伊藤和典氏、ガメラ2-レギオン襲来の脚本を担当されている方ですが、この方は機動警察パトレイバー 2 the Movieの脚本も担当されていまして、いうなれば平成ガメラシリーズというのは特撮や場面構成などで機動警察パトレイバーと新世紀エヴァンゲリオンの二つを調和させ実写としたような作品といえるかもしれません。似たような場面も多々でます。

 リアリズムへの映画の挑戦、押井守監督の普段の発言などに端的に示されていますが、戦争というものの非日常性への警鐘というものを、こうした特撮から考えとることができるかもしれません。こういいますのも、安全保障という問題は非日常に思われるかもしれませんが、厳然たる有事は政治や法整備に想定されているもので、目を向けていないだけといえる。

 自衛隊がこの作品には全面協力していまして、87式自走高射機関砲の実弾射撃はおそらく映画では初めてではないでしょうか。その前任であるL-90高射機関砲は特撮番組“大鉄人17-ワンセブン”にてしっかり描かれているのですけれども。こうした協力も募集広報の一助という視点もあるのでしょうが、非日常の有事への広報という側面も皆無でないでしょう。

 第1師団に90式戦車はないよ、と反論が出てくるかもしれませんが防衛出動に際し富士教導団を戦闘加入させた、と理解すれば問題ないでしょう。第11師団なんてない、というかたは真駒内駐屯地の第11旅団はむかし第11師団だったんですと反論したい。前作で高射中隊長だった大野3佐が師団司令部幕僚というのはなあ、というのは多分頑張ったんです。

 金子修介監督、しかし本作の監督は樋口真嗣特技監督ではなく金子修介監督が総監督であるはず、こう反論があるのでしょうが、現場はいろいろ大変だったようです。こんな個性の強い二人を、よくまとめられたなあ、と思いながら、リアリズムというものに挑戦し始めた日本特撮、日曜日の夜という事でこれをじっくりと見ていただければ、と思うのですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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