北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】アメリカ海兵隊野戦防空能力強化と沖縄近海で初の対艦ミサイル攻撃訓練

2024-09-10 20:23:57 | 先端軍事テクノロジー
■防衛フォーラム
 今回も海兵隊関連の話題を。

 アメリカ海兵隊は野戦防空能力強化へ陸軍防空砲兵へ教育支援を求めています。これは陸軍の防空砲兵射撃管制指揮官課程教育へ海兵隊士官を初めて受け入れたもので、海兵隊は2024年7月、キャンプペンドルトンの第3海兵航空団第38海兵航空管制群より要員を派遣、三週間にわたり陸軍のペトリオットミサイル研修課程を受けたものです。

 水陸両用作戦を主任務としていたアメリカ海兵隊は、必要であれば上陸任務に際し海軍のイージス艦から防空援護を受けることが可能でした、イージス艦の配備数は年々増強され、またイージス艦が搭載するスタンダードミサイルもSM-2からSM-6へ転換したことで射程が大幅に延伸していました、しかしそれは上陸作戦の身において機能します。

 海兵沿岸連隊、大きな転換点はアメリカ海兵隊がインド太平洋地域での中国との緊張を受け、水陸両用作戦部隊から沿岸砲兵部隊へ、1940年代初頭までの運用に回帰した事で、自隊防空は海兵隊自身が行う必要が生じ、1990年代まで海兵隊が配備していたホーク地対空ミサイルの後継となる装備を2020年代に配備する必要が生じたための措置です。
■防衛フォーラム
 部隊を離党に分散させなければならない状況でどのように防空基盤を構築するかは日本も当事者として課題に。

 海兵隊は陸軍の協力支援を受けるとともにワシントン州ルイスマッコード統合基地での空軍州兵参加についても進めています。空軍州兵の防空教育訓練参加は5月に行われたという。アメリカ海兵隊の防空強化は喫緊の課題となりつつある。陸軍の防空砲兵射撃管制指揮官課程教育へ海兵隊士官を派遣したアメリカ海兵隊は、既に課題に直面した。

 当初想定した島嶼部での戦いの前に既に今年1月に空からの攻撃に曝されています、それはシリアヨルダン国境に展開しているタワー22前哨基地が無人機攻撃を受け3名の海兵隊員が戦死し、このタワー22前哨基地での3名の戦死と数十名の負傷者が出た攻撃に続き、8月9日にもシリアのルマリン補助飛行場が無人機攻撃を受け8名が負傷した。

 海兵隊は現時点でMRIC中距離迎撃能力という新しい防空装備調達を計画しており、MR海兵沿岸防空大隊を海兵沿岸連隊に組み込みます。MRIC中距離迎撃能力、想定されている装備は射程60kmで20発のミサイルを装備するものとなっています。ただ、海兵沿岸防空大隊は、既に海兵沿岸連隊の編成が始まっているものの未だ具現化していません。
■防衛フォーラム
 自衛隊も戦闘ヘリコプターについて真面目に考えて欲しい、高高度を滞空する無人航空機が上陸を試みる船団に攻撃を加えても出来る事はなく広域防空艦に一斉に落とされてしまう。

 アメリカ海兵隊は沖縄近海で初の対艦ミサイル攻撃訓練を実施しました、地対艦ミサイルによるものではなく攻撃ヘリコプターによるもので、6月26日に実施されました。31MEU第31海兵遠征群第262海兵中型可動翼機飛行隊に配備されたAH-1Z攻撃ヘリコプターが実施したもので、太平洋上での海兵隊対艦攻撃訓練はこれが初めて。

 第262海兵中型可動翼機飛行隊はMV-22オスプレイ可動翼機を装備する部隊ですが、MEU編成に際して混成航空部隊編成へ臨時改組し、AH-1Zバイパーを装備しました。沖縄近海での訓練では最近配備開始された撃ちっ放し方式のAGM-179統合空対地ミサイルを使用、曳航された標的船に対して正確に命中、これを破壊したとのこと。

 この訓練ではAH-1ZとともにUH-1Yヴェノム軽多用途ヘリコプターが随伴し、FARP前方再武装燃料補給の訓練も実施しました。AGM-179統合空対地ミサイルはヘルファイアミサイルやマーベリックミサイルの後継に当たるもので、2022年には射程を従来の9kmから18kmへ大幅に延伸した改良型も開発、運用に際する生存性を強化しています。
■防衛フォーラム
 B-2よりもF-2が必要なきも。

 アメリカ空軍はクイックシンク船舶攻撃誘導爆弾試験を実施しました。この試験は7月にメキシコ湾上で実施され、B-2戦略爆撃機が使用されています。メキシコ湾上に遊弋する標的船には退役した貨物船モナークカウンテスが用いられ、改良型のJDAM誘導爆弾により実施、目標に命中し標的船は水没したとのこと。

 クイックシンク船舶攻撃誘導爆弾というJDAMの改良型は、従来の爆弾は目標を逸れて海面に着弾した場合に反跳することがあり、これはスキップボミングという第二次大戦中の爆撃機からの船舶攻撃手法ではあったのですが、高高度から投下する爆弾の場合は大きく跳ねすぎ威力圏外に飛び出してしまうことがあり、弾頭形状を変えることとした。

 B-2戦略爆撃機によるクイックシンク船舶攻撃誘導爆弾運用は、2022年に先行して実施されたF-15Eストライクイーグル戦闘爆撃機による試験に続くもので、アメリカ空軍では巡航ミサイルや海軍の潜水艦が用いる魚雷などよりも遥かに安価な誘導爆弾を用いることで、膨大な輸送船弾などに対する有用な打撃力を空軍が整備する事を期しています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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ウクライナ情勢-テルミット空中散布無人機ドラゴン実戦投入と警戒されるベラルーシ国境情勢

2024-09-10 07:00:05 | 先端軍事テクノロジー
■防衛情報-ウクライナ戦争
 近接航空支援という概念を無人機が開拓しつつありまして自衛隊も数が限られる対地攻撃任務対応航空機に新しい視座を開ける可能性が。

 ウクライナ軍は無人機からテルミット焼夷剤を撒布し陣地攻撃に多用している、通称"ドラゴン"、アメリカCNNは9月7日にその概要を報道しました。若干、特定通常兵器制限条約対象の油脂焼夷弾やその代表例であるナパーム弾と混同している報道の論調ではありますが、おそらく記者の兵器関連と国際法への理解不足が背景にあるのでしょう。

 テルミット焼夷剤の無人機からの撒布は9月3日頃からウクライナ軍が運用の景況を情報開示として動画を発表していまして、大型のクワッドドローンからテルミットを撒布、森林などに隠された歩兵部隊陣地の真上まで進出して、そこから農薬散布のようにテルミット剤を撒布、真下の陣地を焼尽させるか、陣地を隠す森林を焼き払う構図です。

 テルミットは酸化金属粉末とアルミニウム粉末を混合し燃焼させることで酸化物還元の際に二千度以上の高熱を発します。油脂焼夷弾などは都市部で使用されると大規模な延焼、東京大空襲のような、被害を引き起こすとして特定通常兵器制限条約の対象となっていますが、酸化金属の還元反応についてはいまのところ制限する条約はありません。
■防衛情報-ウクライナ戦争
 日本もこういう事情が有るので西方シフトと北方警戒を並行しなければならないという。

 ベラルーシからのウクライナ侵攻懸念の現状について、ISWアメリカ戦争研究所はウクライナ軍事評論家のマショヴェッツ氏による現状報告を紹介しています。マショヴェッツ氏によれば、現状のベラルーシ軍にはウクライナへ侵攻する能力はない、とした上でベラルーシとウクライナとの国境地域に展開している軍事力について顕著な動きを指摘します。

 ウクライナと国境を接するゴメリ州には二つの戦術群が展開しており、バイキング戦術群とヴォラート戦術群、この二つの戦術群をあわせると3000名規模の部隊になると指摘、またこの3000名のうち1000名はロシア人要員により構成されていると指摘しました。もっとも、3000名の規模ではゴメリ州からウクライナへ本格的な侵攻は現実的ではありません。

 ゴメリ州の兵力についてISWはここまで踏み込んだ説明をしていませんが、ウクライナが警戒するのは首都キエフからの北方国境がベラルーシであり、2022年開戦劈頭にロシア軍はベラルーシ側からキエフ攻略を試み大規模侵攻を実施しています。兵力枯渇のロシアが1000名もの兵力をおいていることもウクライナには不確定要素なのでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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