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新哨戒艦はどんなフネ?新中期防考察記【3】将来型三胴船,防衛装備庁が研究する新型構造船

2019-01-22 20:08:01 | 先端軍事テクノロジー
■中期防計画排水量と一致
 新哨戒艦というものがどういうものか不明故に想像を掻きたてるものなのですが、防衛装備庁の研究に不思議とこの視点に一致するものがありました。

 将来型三胴船、防衛装備庁が研究する新型構造船としてこうした研究があります、胴体を三つに分け、上部構造物を広くとるもの。新たに建造される哨戒艦は、可能性の一つとして三胴船構造等を大胆に取り入れ、波浪に耐える新型艦、という可能性もあります。これはアメリカ海軍の沿海域戦闘艦などで既に実用化されており、アメリカ以外にも動きが。

 インディペンデンス級沿海域戦闘艦として2010年より運用が開始されているアメリカ海軍の三胴船方式水上戦闘艦は、満載排水量3104t、乗員40名と省力化を実現しつつ、平時には57mm艦砲とSEA-RAM近接防空システムを搭載するのみですが、三胴船の利点として上部構造物を広く採れる利点を活用し、MH-60多目的ヘリコプター2機を搭載しています。

 沿海域戦闘艦とは1990年代にアメリカ海軍が2000年代の海洋安全保障を定めたフロム-ザ-シー戦略に依拠し、従来の大艦隊同士の海上戦闘よりは沿岸海域でのテロ対策や人道支援を行う事が大規模武力紛争回避の重要な要素であるとし、沿岸部へ展開可能な規模の艦を50ノットで高速機動させ、航空機や水陸両用作戦部隊の支援を含めた任務に充てるもの。

 沿海域戦闘艦として建造されましたが、当初想定されたテロ対策よりも戦闘が重視され、現在はフリゲイトに区分される。非常に軽武装ですが、近年は中国海軍へ対抗するべく射程16kmのグリフィンミサイルを搭載、ハープーンミサイルの搭載も検討されています。艦内に多目的スペースを有し、陸軍のストライカー装甲車一個中隊の輸送も出来るという。

 防衛装備庁の将来型三胴船、防衛技術シンポジウムなどで提示されています、防衛装備庁の研究では一案として全長80m、基準排水量1160t、満載排水量1400t、600平方mのミッションスペースを有し、35ノットを発揮するというもの。防衛技術シンポジウムでは具体的な装備計画ではなく、あくまで様式の一例、と強調していましたが研究はしていた。

 三胴船の特色は上部構造物を広く採れる点で、基準排水量は掃海艦やえやま型と同程度ですがMCH-101掃海輸送ヘリコプターが発着可能という飛行甲板を持つ。将来型三胴船の特色はそれ程大型ではないという点です。前述のインディペンデンス級は三胴船の過重対策として軽量化を求める観点からアルミニウム合金を使用しているのですが、問題が出る。

 インディペンデンス級のアルミニウム合金上部構造物が予想以上に早く腐食が進んでおり、問題視されています。将来型三胴船について、負荷という視点からインディペンデンス級のような3000tを越える大型水上戦闘艦ではなく、1400tと抑えた事で負荷と過重による腐食への現実的な対応策となっている可能性もあります。また速力の要求も現実的範囲内だ。

 MQ-8無人哨戒ヘリコプター、将来型三胴船の能力についてですが、高望みしすぎない速力とともに上部構造物は、MQ-8,海上自衛隊が中期防衛力整備計画において20機程度の取得を予定しているシュワイザー333を原型とした無人航空機ですが、防衛技術シンポジウムに提示されました水準の将来型三胴船であれば、この無人機の運用も可能かもしれません。

 将来型三胴船の35ノットという能力は護衛艦よりは優速で、600平方mのミッションスペースは、ひうち型多用途支援艦のように車両を積載し輸送に充てる事も、機雷探知装置と機雷処理弾薬を搭載し、すがしま型掃海艇の補完に充てる事も出来ますし、将来型三胴船概念図では76mm艦砲を搭載しており、ミサイル艇後継艦としても運用する事が可能です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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3 コメント

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Unknown (軍事オタク)
2019-05-24 17:50:28
哨戒艦12隻は
三胴船になるものと自分は信じていますが、

雑誌やプロのコメントは現行の標準船体でいくのでは?
との意見のなんと多いことか!

チコちゃんに叱られますぞ!!

ひうち型多用途支援艦もどきまで
案としてて出てたな。

是非三胴船でお願いしたいですね。
多用途支援艦 (はるな)
2019-05-25 23:44:22
NHKのゆるキャラにイチャモンつけられても無害ですが、麻生財務大臣に問題視されたらば実用化出来ません、そこで、将来三胴船の建造費見積もりが、特に経験のない分野だけに気になるのですよね

余り高くなると、30FFMの建造遅延や、むらさめ型後継艦や近代化の遅延に繋がります

多用途支援艦の転用、多分言い出しはここではないかな、と

blog.goo.ne.jp/harunakurama/e/0b540ba4a839471e31414d205178a7ff
Unknown (通りすがり)
2024-02-04 13:42:59
IHI案が採用との事で、現在建造中の様ですね。
三胴船案は結局見送りとの事で。果たしてどんな艦になるか… 主砲が30㎜砲というのがやや不安ですが、まあ楽しみです!!

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