北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】イギリス新機雷掃討母艦スターリングキャッスルとアメリカ沿海域戦闘艦用MCM機雷戦装備

2023-06-12 20:00:41 | 先端軍事テクノロジー
■■■防衛フォーラム■■■
 今回は機雷戦闘に重点を置いて特集しますが掃海艇という装備体系が今後どのように転換するのかという注目の事例が最近多いのです。

 イギリス海軍は新機雷掃討母艦スターリングキャッスルの艤装試験準備を完了しました。もともとスターリングキャッスルは中古船アイランドクラウンを王立補助艦隊が取得したもので、バハマ船籍の船として2013年に就役し2017年にノルウェーへ船籍を変更、2023年にイギリス国防省が取得、デヴォンポートにおいて改修作業が行われていました。

 スターリングキャッスルは全長96.8mと通常の掃海艇よりもかなり大型ですが、満載排水量に至っては6000tと掃海母艦や機雷敷設艦並みの規模となっています、この大きな戦隊へMCM-MAS機雷対策海上自律システムを搭載、いわば広範囲を複数の掃海艇で対応するのではなく、一隻の大型機雷掃討システム母艦により対応するのがこの艦の狙いです。

 MCM-MAS機雷対策海上自律システムはイギリスがフランス海軍との間で共同開発を進めているもので、SWEEP複合曳航式機雷探知システムとMAUV無人水上艇等を搭載します。大型である分多数は建造できません、しかし、イギリス海軍は機雷脅威地域に重点的な機雷掃討を行うことを重視、また数か月毎に乗員を交代させ長期運用を構想しています。
■ハリアー機雷掃討無人艇■
 この規模の掃海システムであれば水上戦闘艦に搭載艇のダビットを補強して搭載するという運用が現実味を帯びてきますね。

 イギリス海軍はハリアー機雷掃討無人艇の評価試験を実施中です。ハリアーといいますと垂直離着陸可能という攻撃機を思い起こされるかもしれませんが、こちらは11m級モーターボートを用いた機雷掃討システムであり、自律航行し海中の機雷を捜索、発見した機雷へ機雷処分弾薬を投射します。この試験は潮流の激しいペルシャ湾において実施中です。

 ハリアー機雷掃討無人艇の試験は、イギリス海軍のカーディガンベイ補助輸送揚陸艦の支援により行われ、ウェルドック構造を有するカーディガンベイより発進し試験を行っています。ハリアーは現在運用される有人掃海艇を置き換える10年間に及ぶ開発計画の実証艇で、現段階では単体のほか有人掃海艇との共同運用なども研究されているようです。

 ハリアー機雷掃討無人艇に期待されるのはイギリスが現在艤装中であるスターリングキャッスル掃海母艦のような大型艦へ搭載しての広範囲の掃海任務が挙げられますが、この他に26型フリゲイトなど水上戦闘艦へ搭載し、掃海艦艇の展開しない海域での水上戦闘艦からの機雷掃討、オーガニック方式での機雷戦能力なども想定されているのかもしれません。
■沿海域戦闘艦用MCM■
 漸く完成というよりもこれまでどうやっていたのだろうという疑問符の方が多く特に一番艦は機雷戦能力を持つことなく既に退役しているという。

 アメリカ海軍は沿海域戦闘艦用MCM機雷戦任務ミッションパッケージの初度作戦能力獲得を宣言しました。5月1日、長年の課題であったインディペンデンス級沿海域戦闘艦におけるオーガニック方式、つまり水上戦闘艦からの機雷対処能力の付与は、この計画責任者であるアメリカ海軍のスコット中将によりIOC初度作戦能力を宣言されたのです。

 MCM機雷戦任務ミッションパッケージはAN/AQS-20機雷探知ソナーと艦内搭載のMCM-USV無人水上艇及びMH-60S多用途ヘリコプターにより構成され、AN/AQS-20により探知した目標をMCM-USVからの機雷処理弾薬投下やMH-60Sヘリコプターによる掃討を行い、またMH-60SにはAN/AQS-20ソナーの補完的な機能も含まれています。

 AN/AQS-20はWBFLS複合バンド前方捜索能力とMFSLS側方合成照合ソナー及びDGFデジタル地形照合機能を備えた水中曳航式ソナーで、機雷探知と照合が可能です。MCM-USVは既に2022年に実証実験が完了しており今回沿岸海域戦闘艦シンシナティでの長期にわたる評価試験を完了したことでICO初度作戦能力獲得を宣言するに至りました。
■■パトリアSONAC■■
 小規模な海軍にはこうした装備が必要なのだという。

 フィンランドのパトリア社はパトリアSONAC-ACS水中システムを発表しました。これはドイツのロストックにおいて5月9日から三日間にわたり行われたUDT国際水中防衛装備展の展示ブースにおいて発表されたものです。SONAC-ACS水中システムは掃海艇やミサイル艇といった小型艦艇にも搭載可能という多目的ソナーシステムとなっている。

 SONAC-ACS水中システムはモジュール式の20フィートコンテナに搭載、基本的には機雷探知用ですが、浅海域での対潜捜索にも対応しているとのことで、補助艦艇への搭載など従来ソナーを搭載していない艦船への搭載が可能です。またこのソナーは探知のほか、アクティヴソナー機能の応用により一種の音響掃海器具としても活用が可能となっています。

 パトリア社では併せてAUV水中ターゲティングキットを発表、対潜戦闘能力を小型艦艇に整備することができても中小国の海軍は潜水艦と訓練することが難しい事例があり、この装備を導入することで自律航行式の無人水中標的として、いわば対潜戦闘が可能です。また標的以外にもミッションソフトウェアの更新で様々な水中任務が可能とのことです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナ情勢-春季反攻本格化,レオパルド2主力戦車にM-2A3ブラッドレイ装甲戦闘車投入とロシア軍トレフォイル縦深陣地

2023-06-12 07:00:50 | 防衛・安全保障
■臨時情報-ウクライナ情勢
 今回の反攻作戦は日本の防衛を考える上でもどうしても見ておかなければならない戦訓がいくつもあるのです。

 ウクライナ軍の反撃が本格化しました。レオパルド2主力戦車にM-2A3ブラッドレイ装甲戦闘車、AMX-10RC装甲偵察車にPzH-2000自走榴弾砲やカエサル自走榴弾砲にMLRSとHIMARS,M-113装甲車からVAB軽装甲車にマックスプロ耐爆車両からブッシュマスター輸送防護車まで、ほぼすべての供与車両が惜しげもなく投入され、既存車と協同します。

 ロシア軍はトレフォイル縦深陣地という前哨陣地8kmと主陣地12kmの三つ葉葵のような陣地を組み相互に防御する方式を演練し、また一年間の占領期間によりかなりの規模の防御陣地、地雷原などを広げています。近接戦闘部隊の宿命でしょうが、かならず一定数の損耗を強いられる事になります。ウクライナ軍は今回の反撃に10個旅団を投入するという。
■南部戦線と東部戦線
 戦闘ヘリコプターの恐ろしさを改めて痛感させられたのは地雷原で行き場を失った戦車に戦闘ヘリコプターが襲いかかったらしい状況から。

 ウクライナ軍の攻撃軸は東部方面と南部方面の複数、そしておそらく主攻撃軸は一つです、が、こればかりは作戦が終了するまで分析の仕様が有りません。南部方面ではウフレダール近郊でロシア軍占領地がウクライナ保持地域に突出した地域がありましたが、先ず此処が攻撃されている。そして南部のトクマク占領地に向け一部で前線突破に成功した。

 ウフレダールはドネツクの鉄道拠点都市であり昨年11月にロシア海軍歩兵2個旅団とウクライナ2個機械化旅団が戦闘を繰り広げウクライナ軍が撤退した地域です。現在戦闘はウクライナ軍が大隊規模の威力偵察を繰り返している状態と推測でき、防御陣地の薄い地域が突破、対して今回ロシアは防衛用に戦闘ヘリコプターを大規模に投入しているもよう。
■レオパルド2A6損耗
 近接戦闘部隊において損耗は宿命的なものです、これは日本の場合で冷戦時代の戦車1200両編成が今や300両まで定数が削減されていますが、予備の車両を真剣に考えなければ300両の戦車の維持は時に1000両の調達費よりも高くつく事がある。

 レオパルド2の撃破映像について。恐らく地雷原などの処理不充分である地域での正面突破を図った際に撃破されたのでしょう、撃破された車輛の一部にはA6型が含まれ、砲塔後部の弾薬庫を隔離するブローオフパネルが吹き飛んだ後で数カ所破損個所が見受けられる事から相当数のミサイルを命中させられています、ただ、驚いたのは全損していない。

 レオパルド2A6,乗員が脱出したあとが蜂などから見受けられ、また開いたままのハッチ部分には炎上の痕跡が無い音から、行動不能となっていますが修理可能です。その周辺には米軍が供与したM-2A3ブラッドレイ装甲戦闘車の破損車体も確認できますが、うち少なくとも3両は全損の可能性が。なお短時間でこれだけM-2A3が破壊されたのは恐らく初だ。

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