北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

ワグネル武装蜂起:検証-六月の十五時間,モスクワ南方200km突然の進撃停止とロシアプーチン政権残る傷

2023-06-25 20:05:58 | 国際・政治
■核攻撃は回避,ロシア騒擾
 1991年のモスクワクーデター以来、2020年代ではロシアウクライナ戦争と並んで国際政治上の世界危機と成り得る最大の関心事が昨日午後から本日未明までロシアで展開されていました。

 悪をまき散らす国防省上層部を止めなければならない、兵士たちの命にかかわる問題として立ち上がる。ロシアの民間軍事会社ワグネルが昨日突如として武装蜂起しました、国防省批判発言などから関係が悪化し、FSB連邦保安局の国策捜査が始まる直前にワグネル創設者プリゴジン氏自身もロシア軍の攻撃を受け、ロシア連邦軍南部軍管区司令部を押えた。

 日本国内報道があまり関心が無いような状況でしたが、もう少し報道特別番組を組んで関心を持つべきであったのではないか、ソ連崩壊の際には自衛隊も北部方面隊を中心に非情勤務体制をしきましたし、映画の“クリムゾンタイド”のように核兵器が関わる非常事態に世界が巻き込まれる懸念もあった、僅か15時間で終わるとは誰も思わなかったでしょう。
■六月の十五時間
 ワグネルへのロシア当局捜査が行われるという前日までの報道からウクライナ戦争での貢献もロシア国防省批判の行き過ぎの前には無意味かとと思われたその時、事態は起こった。

 六月の十五時間、ワグネルのプリゴジン氏がワグネル部隊により占拠された南部軍管区司令部に入ったのが日本時間24日1330時、そこから日本時間25日の0500時にモスクワに向かったワグネル部隊が北上を停止し南部軍管区司令部の占拠状態がワグネル撤退により危機が解消されるまでの15時間は、下手をすれば核兵器が使われかねぬ緊張があった。

 大ごとになった、驚かされたのはロシア連邦軍や国家親衛軍などロシアには多数の部隊がウクライナ侵攻作戦とは独立して防衛に当っているのですが、ワグネルは驚くべき速度でモスクワに迫り、しかし15時間後に突如として進撃を停止した。ロシア軍の国内防衛が此処まで杜撰だとは考えられず、また、大規模衝突が回避されたのも、僥倖でまた驚く。

 ロストフの南部軍管区司令部は、ウクライナ戦線を担任する司令部であり、陸海空の統合司令部であるために、クリミア半島というロシアがもっともその併合後の占領を重視している地域に司令部を隣接させる黒海艦隊も南部軍管区司令部隷下にあり、そしてなによりもウクライナの戦場で戦うロシア軍部隊の兵站拠点でもあり、ここの占拠は衝撃でした。
■大統領演説と脱出
 ロシア軍の軍管区司令部が占領される等は前代未聞でソ連八月クーデターやモスクワクーデターとよばれた1991年以来の危機となったのは明白でした。

 プーチン大統領は24日1600時に緊急のテレビ演説を行い、ワグネルの行動は反逆である、とこれがクーデターである事を大統領が認識している事を示したうえで、反逆者に対する行動は厳しいものとなる、こう発言しており、しかしロシア軍が投入できる第1親衛戦車軍などはウクライナ派遣中、厳しい措置とは何を意味するかは非常に大きい関心事です。

 大統領専用機のモスクワからの脱出が航空機運航情報開示サイトフライトレーダーに示されたのは日本時間24日2030時でした、モスクワを離陸した政府専用機は予備機を含んだもので、続いてIl-80国家戦争指揮機もモスクワを脱出し、サンクトペテルブルクへと向かい、これはクレムリン宮殿からプーチン大統領が逃げたのではないかと憶測されました。

 クレムリンからプーチン大統領が逃亡したのではないか、こうした憶測に大統領府のペスコフ報道官は、大統領は執務室に居ると発表しますが、しかしプーチン大統領自身がテレビ等を通じて呼びかける事は無く、憶測が広がった形なのですが、実際問題としてプーチン大統領が逃げたのかどうかについては日本時間25日1900時では未だわかりません。ただ、クーデターを珍sネイ化させたトルコのエルドアン大統領程の度量は無い。
■ワグネルと国防省
 ショイグ国防相とプリゴジン氏の政治闘争というべき背景が在った為にもともとプーチン大統領を狙ったものでは無かったという意味で、何故か関ヶ原の戦いを思い出してしまった。

 武装蜂起に至ったのは、ワグネルとしてはロシア国防省が突き付けたワグネル戦闘員の国防省への編入要求、つまり、ワグネルを事実上認めない措置というものは認められない為、これを拒否し続けたプリゴジン氏に対して、再三兵站面や指揮運用で対立したショイグ国防相を、プーチン大統領が支持している状況はワグネルの存亡を賭けた状況といえます。

 民間軍事会社であるにもかかわらず正規軍より強いのは何故か、こう問われますとワグネルは、アフリカ地域や中東地域など、“国家として正規軍を国際政治の観点から派遣できない地域へロシアが派遣できる戦力”という位置づけであり、ロシアとしては“軍事介入はしていない、やっているのは民間企業”と強弁できる位置づけ故、強化されていました。

 存亡という表現は大袈裟ではなく、ロシア国防省の求めた“ワグネル戦闘員一人一人を国防省と個人契約を結ばせる”という要求はワグネルの指揮系統を破綻させるものですが、ワグネル戦闘員への意図的といえる誤射や弾薬補給の遮断は、日本でいえば大戦中のガダルカナル送りのような状態で消耗させる事も可能であり、消されかねなかった状況です。
■ワグネルはモスクワへ
 ロストフ南部軍管区司令部占拠だけでも充分大事件でしたが、今後は司令部を包囲する鎮圧部隊という展開が有るかと思えばワグネルはモスクワへ向かうとプリゴジン氏が宣言し事態は一転する。

 モスクワへ進撃する。ワグネルによる南部軍管区司令部占拠は、なにしろ第二次世界大戦の独ソ戦以来という事態ですので大変な事になったと驚かされました。しかし、プリゴジン氏としてはFSBロシア連邦保安局により過去の発言から、ワグネルに叛乱を呼びかけた疑いでの捜査が開始された為、動かなければ消される状況でしたが、動く規模がおおきい。

 T-72B3戦車やパンツーリ複合防空システムなど、ワグネルの装備がワグネルの信仰経路であったM4高速道路やM2高速道路沿線住民が撮影し投稿したテレグラムなどSNS画像により改めて明らかになりまして、もともとは若干の戦闘ヘリコプターと装輪装甲車を持つ軽歩兵部隊から始まった民間軍事会社でしたが、変な話、本州の師団以上の装備という。

 ウトキン元GRU中佐、更に注目したのはモスクワに向かい北上していたワグネル部隊の指揮官がもとスペツナズ旅団長を務めたGRU退役中佐が指揮していたということで、そもそもレストランオーナーであったプリゴジン氏が民間軍事会社を創設した際の軍事部門創立に関わった主導者という指揮官が率いていた為、モスクワへの北上の早さは際立っている。
■モスクワ南方200km
 200kmという距離は姫路市と京都市の距離なのですが装輪装甲車ならば短時間で到達出来る距離です。

 200km、モスクワの南方200kmまでワグネル部隊が展開していましたが、ロシア連邦軍は戦闘ヘリコプターによる攻撃を行っていましたが、ワグネル自身がウクライナ最前線での無人機攻撃や航空攻撃に曝された際の実戦経験とともに、機関砲と短射程ミサイルとレーダーを一体化させたパンツーリ複合防空システムを装備、複数機が反撃で撃墜されている。

 進撃停止。正直、日本時間今朝0230時頃にこの速報が入るまでは、ロストフに核攻撃が加えられるのではないかという事を真剣に危惧していました、プーチン大統領が執れる選択肢は限られ、一方でモスクワ市では対戦車壕掘削や陣地構築などが開始されていたため、モスクワでの市街戦が必至であるとされ、モスクワ市長は月曜日の学校休校を発表した。

 ロシア人同士で血を流す事態を避けたい、プリゴジン氏は日本時間25日0200時にこうした発言を行いまして、ロシア側と和解に居たたというロサ報道があり、しかしプリゴジン氏自身がSNSを通じてその発言を否定したりという、明日には映画の“モスクワ大攻防戦”か、南部軍管区の核兵器で映画“クリムゾンタイド”再現かと危惧したところですが。
■ルカシェンコ大統領
 今回の騒擾で評価を挙げたのは雲隠れしサンクトペテルブルクへ逃げたとも云われるプーチン大統領ではなく、実力と覚悟を見せつけたプリゴジン氏とベラルーシのルカシェンコ大統領なのかもしれません。

 ルカシェンコ大統領、ワグネルの北上を停止させた背景には隣国ベラルーシの大統領であるとされています。隣国の大統領に此処まで交渉が出来たのかは当初懐疑的に思いましたが、ワグネルの北上停止とともに、プリゴジン氏とベラルーシのルカシェンコ大統領の個人的関係により、事実上、プリゴジン氏をベラルーシに追放する事で停戦に至ったという。

 罰せられるものは誰もいない、ロシア大統領府のペスコフ報道官がこうした発言を日本時間深夜に突如発表します。ベラルーシ大統領がロシアの国家危機を収束させられるのかについては、実際にワグネルの停止が確実となるまでは懐疑的でしたが、今回のワグネル武装蜂起に対して刑事的に罰せられるものはいないと、発言、一応危機はさったかたちです。

 プーチン政権には、しかし大きな爪痕を残したといえる。大統領の権威は傷ついたとしか言えません、強い発言でワグネルを罰すると発表しましたが、15時間後、まさに朝令暮改というかたちで圧しきられた構図であり、また国家親衛軍もFSB軍も連邦軍もワグネルの北上を停められず、モスクワまで十数時間であと200kmまで前進させられたに他ならない。
■民間軍事会社ワグネル
 ワグネルはどうなるのか。今回の騒乱に参加したワグネルは罪に問われないというロシア政府の方針が示され、これまでのウクライナでの戦果を考えれば罰せられないというロシア政府の発言は千夏に向かい撃墜されたロシア軍航空機搭乗員の家族や戦友には響く。

 ワグネルは、ロシア民間軍事会社からベラルーシとロシアの多国籍企業となって生き残る可能性がある、独裁政権と欧米から非難されるルカシェンコ大統領は親衛隊に当る信頼できる武装組織を必要としています。一方、ロシアもアフリカの鉱山警備や希少金属掘削などでワグネルを必要としており、国防省直轄にしてしまえばその利点は失われてしまう。

 ウクライナ戦争の最中に生じた、六月の十五時間、ロシアウクライナ戦争全般の情勢には変化はない事をロシア政府は強調していますが、しかしロシア具軍事機構が一枚岩ではない事を示した構図ですし、ロシア軍の防衛力が低い事を改めて証明した形、なにより想定外の事態に何も対処出来ないロシア軍官僚主義を露呈しました。この影響は、大きい。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都幕間旅情】京阪7000系電車,京阪本線と鴨東線の京都市内に走る地下路線と国際報道-六月の十五時間

2023-06-25 18:16:41 | コラム
■京阪の地下路線
 15時間に上る緊張が続きましたがこの問題を日本国内の報道が下手すれば核兵器が使われる状況なのにまったく報道せず、変な話ロシアよりも日本で報道管制が有るのではと皮肉りたくなった。

 京阪三条駅、京阪電鉄の地下の駅に入る7000系電車です。6000系あたりから貫通扉が目立たないデザインの車両が京阪に入りまして世代交代といわれたものですが同時に京阪鴨東線により京阪電鉄の京都側にも東福寺駅以北地下の駅、というものができたものでした。

 六月の十五時間、というべきロシアでのワグネル武装蜂起、ロストフクーデター事件、断固たる措置を執るとプーチン大統領がTV演説し、逆にワグネルが掌握した南部軍管区司令部隷下には核ミサイル部隊もあり、核兵器の懸念を久々に感じ、こんな路線の話題をする。

 鴨東線、地下路線、平和学習といますか大昔の子供の頃に学んだ大阪大空襲の話で偶然動いていた市営地下鉄により相当数の人命が空襲の最中で焼失地域圏外に逃れる事が出来たと聞いていますので、京都の地下鉄はそれほどでもないなあ、と心細く思った人もいた。

 京都は中心部にも文化財と共に木造家屋の密集地域がありますが、市営地下鉄の阪急線の一部が地下路線になっている、ということで地下路線も換気系統が麻痺しますと酸欠状態になる為に危険なのですが、爆風を一時的に避けるのは地下が理想的であることもたしか。

 日本には公共核シェルターなんてものはないものですから、非核三原則を堅持し核兵器による武装を拒否して核兵器の恫喝に立ち向かおうというのだから、こうしたシェルターというものはもう少し考えなければならない、もちろん建設費は掛かるものだけれども。

 京阪の地下路線を見ていまして、これを撮影するとともに、しかし日本亜未だ平和だなあ、と待つ人々の、ゲームの話題や動画の話題が聞こえてきましたのでほっと和むところでしたが、国際報道の、六月の十五時間、終電後にあってなかなかに緊張したひと時でした。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナ情勢-DGFドニエプル軍集団の移動開始と督戦に当る防壁部隊,ウクライナ軍攻撃中断は威力偵察か

2023-06-25 07:00:23 | 国際・政治
■臨時情報-ウクライナ情勢
 ワグネル武装蜂起のクーデター事案に関しては現在情報収集中ですのでウクライナ戦争の全般状況を。

 ロシア軍はザポリージャ戦区とバフムト戦区の防衛のためにドニエプル川東岸を防衛するDGFドニエプル軍集団の一部を移駐させ始めた可能性がある、イギリス国防省ウクライナ戦況報告6月19日付版により分析されています。移動を開始した部隊は第49軍の第34独立自動車化狙撃旅団と空挺部隊や海軍歩兵部隊など、少なくとも数千名規模という。

 DGFドニエプル軍集団の移動開始について、ロシア軍はカホフカダム破壊によるドニエプル川周辺地域の水没により、ウクライナ軍がドニエプル川周辺地域での反撃が行えない状況にあると解釈した可能性をイギリス国防省は指摘しています。大規模な洪水被害に見舞われたドニエプル川周辺地域については、ようやく水が引き始めたとされています。

 ドニエプル川周辺地域について、ロシア軍占領地域ではコレラの発生が報告されており、ダム破壊による上下水道の破壊と不徹底の消毒作業により伝染病が蔓延し始めたことを示しています。コレラは住民にも感染者が多数出ていると予測できますが詳細は不明で、ロシア軍部隊には相当数の患者が出ていることが病院占拠などにより判明しています。
■威力偵察なのか?
 現在の隔靴掻痒という状況は反撃の攻撃軸を探る威力偵察なのでしょうか。

 ウクライナ軍は威力偵察の段階を完了した可能性がある、これはISWアメリカ戦争研究所が6月18日に発表した情報で、この戦争を分析しているエストニア国防研究所のマルゴゴルスベルク大佐の分析として、一週間にわたりウクライナ軍の顕著な攻撃が見られない、としており、これまでの反撃は大規模な反撃前の威力偵察である可能性を示した。

 威力偵察、ウクライナ軍は陸軍10個旅団に加え新設部隊や海軍陸戦隊と志願兵部隊などを加え25個旅団をこの反撃に準備しており、これまで戦闘加入した部隊は明らかに小規模となっています。これは前線のすべての地域で小規模な攻撃を加え、その反撃度合いなどからロシア軍防衛線の穴を探そうとしている可能性が考えられるのです。その穴とは。

 ロシア軍は防壁部隊という、前線からの逃亡兵などを制圧する督戦部隊を配置しており、例えば小規模な攻撃に対して逃亡する兵力の大きな地域は指揮系統の問題や士気そのものに問題があることを示しています、ウクライナ軍の戦闘はロシア軍前哨陣地を相手としたものに限られていますが、主陣地の戦力評価を考えている可能性をISWは指摘しました。

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