北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】自衛隊ホーク後継HGV極超音速滑空兵器迎撃弾開発とFLRAA航空機選定結果へシコルスキー社抗議

2023-06-05 20:21:41 | インポート
■■■防衛フォーラム■■■
 今回も陸軍関連11の話題です。最初の話題は近年の脅威とされる極超音速滑空兵器迎撃能力ですが単或る7極超音速ミサイルならば先日ウクライナがペトリオットで撃墜し話題となりましたね。

 防衛省は2023年度よりHGV極超音速滑空兵器迎撃能力を持つ新型ミサイルの施策を開始します。この装備は三菱電機が製造する03式中距離地対空誘導弾改良型の能力向上型とされ、全国14の部隊へ配備し航空自衛隊のPAC-3-MSEミサイルを補完するとの事、その任務には島嶼部防衛とともに原子力発電所など重要インフラ防護も含む方針のもよう。

 全国14の部隊へ配備、想定されるのは改良ホークの後継です。ホークミサイルは北部方面隊第1高射特科団の8個中隊と東北方面隊第101高射特科隊、西部方面隊第2高射特科団第3高射特科群の2個中隊と高射教導隊第310高射中隊ですが、これを含めても12個中隊でしかなく、沖縄第15旅団隷下など新しい高射中隊の編成を見越すのかもしれません。
■シコルスキー社抗議
 ティルトローター方式の可動翼機と複合ヘリコプターは根本から巡航速度重視か匍匐飛行能力有かという点で違うのです、

 アメリカ陸軍のFLRAA航空機選定に選外となったシコルスキー社が正式に抗議を行いました。FLRAAは次期長距離強襲航空機として選定され、先日ベル社のV-280ヴェローが選定されることとなりました、しかし、この決定過程に疑義があるとしてGAOアメリカ行政監査局に対しシコルスキー社と協力するボーイング社が説明請求をだしたかたち。

 SB-1デファイアント複合ヘリコプターとしてV-280ヴェローへの対抗機種を開発しましたシコルスキー社、この機体は二重反転ローターを採用しており、V-280は可動翼機方式を採用しているため巡航速度は高いのですが、複合ヘリコプターであるSB-1は急激な速度変更に対応し運動性が高く、ヘリコプターに必須である匍匐飛行能力を有しています。

 FLRAAは長らく運用されるUH-60ブラックホークの後継機を選定するもの、SB-1が選外となりました背景には、この機体はT-55エンジンを搭載しているため、燃費が悪く航続距離が短くなるとしており、一方シコルスキー社では新型エンジンの搭載を搭載する計画を示していますが、燃費は向上するものの巡航速度の添加というリスクがあるためです。
■不発弾処理ペンシルSF-1
 ウクライナ戦争は長期化していますが不発弾一つとって将来の復興に大きな影響を及ぼしそうです。

 ウクライナの防衛企業ウクロボロンプロム社は画期的な不発弾処理ペンシルSF-1を発表しました。SF-1不発弾処 理ペンシルは一見して極太の鉛筆の様な形状となっていますが、無人機と協力して不発弾などを発見し、不発弾処理員が直接不発弾にSF-1を装着、磁力ないし粘着力により砲弾に吸着すると金属燃焼効果により弾殻に穴を穿ち不発弾を処理する。

 SF-1不発弾処理ペンシルはテルミット金属燃焼効果により不発弾を破壊、炸薬を燃焼させ爆破処理する方式で、不発弾の他に地表に露出した地雷処理にも用いられるとのこと。現在ウクライナ軍では無人機そのものにSF-1を装備させ遠隔操作により不発弾へSF-1を取り付ける技術を開発中で、ロシア軍がウクライナに残す大量の不発弾を処理する構想です。
■オーストリアAW-169
 自衛隊のUH-2もあまり代わり映えしなかったのですが何故各国はUH-X選定でこうした無難な機体を提示せずエアバスのようなペーパープランをだしたのだろう。

 オーストリア空軍はAW-169多用途ヘリコプターの初号機を受領しました。オーストリア軍はアルプス高山部での救難用に長らくUH-1D多用途ヘリコプターを運用してきましたが老朽化が進むとともに悪天候のアルプス高山部でのUH-1D飛行性能は必ずしも全天候での運用可能というわけにはいかず多用途ヘリコプターとしてAW-169を選定しました。

 AW-169は双発で10名の輸送が可能という多用途ヘリコプターでオーストリア軍は18機の導入を計画しています、機体としては15名を空輸するAW-139よりも一回り小型となっていますが、もともとがUH-1Dの後継機という位置づけであり問題はないとしています、他方でオーストリア軍はAW-169を救難のほか、兵員輸送や対テロ任務などへも運用する。
■フランスHK-416F調達
 FA-MAS小銃もだんだん広報写真では見なくなってきましたね。

 フランス国防省は2022年分HK-416F小銃完納を迎えました。フランス陸軍は1979年より運用しているFA-MAS小銃の後継としてドイツのH&K社製HK-416小銃を選定し、フランス軍仕様のものをHK-416Fとして調達してきました、2022年調達予定は12000丁であり、12月に最後の1000丁の納入、フランス軍ではFA-MAS装備部隊が減っている。

 HK-416F小銃は2023年1月1日までに6万9340丁がフランス軍へ納入されていますが、調達は2028年まで続き、最終的に11万7000丁が配備されるとのこと。フランス軍がFA-MAS後継としてHK-416Fを決定したのは2016年であり、毎年1万丁以上が調達されている。基本設計はAR-18でFA-MASよりも古いのですが頑強さと高い精度で有名です。
■バーレーンAH-1Z
 日本では廃止されることとなている航空打撃力ですが実際はこの通り各国が増強している装備だ。

 バーレーン空軍はヘルヘリコプターテキストロン社とのAH-1Zヘリコプター調達計画を無事完了しました。この計画は2018年にアメリカとの間で成立したAH-1Z戦闘ヘリコプター12機の調達計画、2022年の納入開始から今回最後の機体が引き渡されたというもので、これによりバーレーン空軍は旧式のAH-1S対戦車ヘリコプターを置き換えました。

 AH-1Z戦闘ヘリコプターはアメリカ海兵隊が永らく運用したAH-1W戦闘ヘリコプターの後継に充てるとともに、機体構成要素の多くを共通化させることで近代化改修を可能としたものであり、その機体構成要素は部品面などでUH-1Y多用途ヘリコプターと共通部品が多く、二つの機種を導入することで整備性や補給面の共通化が可能となる設計です。

 9億1140万ドルとなる、今回の調達計画ではAH-1Z戦闘ヘリコプター12機とともにT-700-GE-401Cエンジン26基、その他の消耗品や弾薬などを込みとしたものです。新型のA/A49E7機関砲システムやヘルファイアミサイルなどを運用するAH-1Zですが、AN/APG-78ロングボウレーダーの搭載も可能であり、将来発展性を秘めた航空機です。
■ウィーゼルにMELLS
 ウィーゼルは自衛隊が軽装甲機動車を開発する当時に参考とした装軌式車両の一つ。

 ドイツ陸軍はウィーゼルAWS空挺装甲輸送車からのMELLS対戦車ミサイル発射実験に成功しました。ウィーゼル空挺戦闘車は重量わずか2.7tの装軌式装甲車です、軽量ではありますがドイツで降下猟兵部隊用に開発されCH-53輸送ヘリコプターの機内にも搭載可能となっており、また山岳部隊へも配備されています、開発されているAWSはその改良型だ。

 MELLS対戦車ミサイルはドイツ陸軍に長らく装備されているミラン対戦車ミサイルの後継装備であり、イスラエル製スパイクLR-2のドイツ軍制式名称、2020年から納入が開始され射程は4kmに達します。ウィーゼルは7.62mm弾に耐える程度の装甲しか有しておりませんが、見た目に反し70km/hと俊足で、1993年まで製造されたものを改良しました。
■エストニアK-9増強
 自衛隊も離島防衛を考えれば99式自走榴弾砲の調達を再開すべきだと思うのだけれど。

 エストニア軍は韓国からK-9自走榴弾砲を追加調達します。エストニア軍はすでにK-9自走榴弾砲24門の調達を決定していますが、今回はウクライナ戦争における52口径155mm榴弾砲の有用性を確認したことでさらに増強することとなり、12門を3600ユーロで調達するとのこと。K-9自走砲は現在世界で最も生産されている自走榴弾砲となっています。

 先行して導入した24門はまず12両を5000万ドルにて調達、続いて韓国軍が運用していた比較的新しい中古のK-9自走榴弾砲12両を4600万ユーロにて取得しています。そのうえで訓練は初期運用要員を韓国に派遣しての訓練となっていまして、2020年9月に訓練が開始されています。エストニアはロシアの飛び地カリーニングラードに近い立地です。
■HIMARS増産
 自衛隊はMLRSを2030年までに全廃するようですが。

 アメリカのロッキードマーティン社はHIMARS高機動ロケットシステムの増産を決定しました。この決定により現在は年産60両の生産体制となっていますが、96両まで大幅に増強されることとなります。これは2022年ロシアウクライナ戦争におけるHIMARSの威力が証明されるとともに、なによりNATOでのHIMARS需要が高まった為といえます。

 HIMARS高機動ロケットシステムは、冷戦時代にNATOに大量に配備されたMLRS多連装ロケットシステムの廉価版という意味合いの装備ではありましたが、大量にあったMLRSの多くをNATO各国は冷戦後大半を廃棄しており、急遽HIMARSを調達する必要に迫られたオランダのような事例もあります。しかし生産絶対数は足りていない状況です。
■クロスボウ自動迫撃砲
 120mm迫撃砲は歩兵火力の一種なのか野砲の一種なのかが疑問になってくるところです。

 イスラエルのエルビットシステムズ社はクロスボウ120自動迫撃砲砲塔システムを発表しました。これは1月末にロンドンで行われた国際装甲車両会議2023装備品展示において発表されたもので、自動装てん装置を内蔵した120㎜迫撃砲を砲塔化したもので、開発は全体構造ではなく自動装てん装置の基部のみがモックアップとして発表されました。

 クロスボウ120自動迫撃砲砲塔システムはエルビットシステムズ社によれば2020年から開発、一人での操作が可能となっており、射程10㎞を誇り、毎分12発、また最初の一分間に限り16発の連続発射能力を有するほか、MRSI同時弾着射撃能力を有するとともに、開発中の火器管制システムが完成した場合には行進間射撃も可能になるとしています。

 イスラエル国防軍はFMTV中型戦術車両にクロスボウ120自動迫撃砲砲塔システムを搭載する自走迫撃砲を数十両調達する計画があるとのことです、ただ、FMTVは装甲車両ではなく中型トラックであり、一応HIMARS高機動ロケットシステムのように装甲を追加し運用することは可能ですがエルビットシステムズ社は欧米装甲部隊へ輸出を期しています。
■ボラン超軽量榴弾砲
 この火砲の射程を見れば明らかに120mm迫撃砲を意識しているようにも。

 北マケドニア軍はトルコ製ボラン超軽量105mm榴弾砲18門を取得します。これはギリシャとの国名係争を終えて2020年にようやく念願のNATO加盟を果たした北マケドニア軍のNATO標準装備への転換として導入される榴弾砲の取得です。陸軍はオシュコシュJLTV統合軽量戦術車両とストライカー装甲車を導入する方針で、さらに野砲を新規調達します。

 ボラン超軽量105mm榴弾砲はトルコが航空輸送用榴弾砲と名付けているヘリコプターにより空輸できるほどの軽量榴弾砲です、その口径は105mmと現在世界各国で運用される野砲の主力である155mmよりは小口径ですが、その分重量を1.72tに抑えており、一方で射程は17kmとロシア製152mm野砲の大半やNATOの重迫撃砲以上の射程を確保しています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナにイーグルという選択肢はあるか,F-16よりロシアを刺激しない制空専用戦闘機F-15Cイーグル

2023-06-05 07:00:16 | 国際・政治
■米軍退役進むイーグル
 今とは比較にならない専守防衛の厳格な防衛政策下で日本が選んだF-15イーグルは文字通り周辺国に配慮した防衛用装備なのでしょう。

 ウクライナ空軍への供与に向けての訓練が間もなく開始されるF-16戦闘機ですが、実際のところアメリカがウクライナや東欧の同盟国、アジアの友好地域へ供与を考えなければならないのは、アメリカ空軍が加速度的に退役させているF-15C戦闘機の方ではないでしょうか。F-15C戦闘機、航空自衛隊でもまもなく退役が本格化するF-15Jの原型機です。

 F-15C戦闘機、アメリカ空軍の制空戦闘機として大量配備されましたが、F-35A戦闘機の量産に伴いアメリカでは数年内に全廃される方針であり、嘉手納基地の第18航空団からも飛行可能であるF-15Cは順次退役に向けて日本を去っています、そして空軍において酷使され続けた事もあり機体の状態は必ずしも新造機と比較し良好な状態ではありません。

 イーグル、しかし、AIM-120AMRAAM空対空ミサイル運用能力があり、能力向上されたAPG-63V3レーダーは、最新鋭のF-35のようなステルス機が相手であれば分が悪いのですが、Su-35戦闘機のようなロシアの最新鋭戦闘機が相手の場合では、相応にレーダー反射面積が大きい為に遠距離で捕捉し、180km以遠から空対空ミサイルにより交戦が可能です。

 F-16戦闘機と比較した場合、空対地攻撃能力ではF-16には及びません、それはF-15C戦闘機が純粋な制空戦闘機として設計されている為で、一方で能力向上により主任務ではないものの一定の空対地攻撃能力はあります。しかしなによりもウクライナの戦場を見る限り必要なものは制空戦闘機であり、敵戦闘機と巡航ミサイルから国土を守る事ができます。

 対地攻撃能力の低さは、ウクライナに供与した場合もモスクワ攻撃などロシア国土を直接攻撃する用途には用いる事が出来ない、という方便でも役立つ事でしょう。いや、実際問題として、専守防衛として周辺国に脅威を与える戦闘爆撃機の能力を避けていた1970年代末の日本が、航空自衛隊の戦闘機として採用したのもF-15戦闘機なのですから、ね。

 F-15C,老朽化は進んでいますし巨大な双発機ですので運用費用も安くはありません、しかし、ラファールやユーロファイターやF-35を導入できない東欧諸国には中古のF-15Cは制空戦闘能力の高さで合理的な選択肢ですしイーグルは象徴的な装備で、例えばウクライナと並ぶもう一つの脅威にさらされるアメリカの友好地域の空軍にも最適な装備と考えます。
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