北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

軽装甲機動車後継研究【4】小松製作所参加せぬ後継装備-丸紅エアロスペースと三菱重工の挑戦

2023-06-10 20:08:22 | 先端軍事テクノロジー
■海外装備ライセンス生産
 個人的には小松製作所に再生産を依頼し排気量規制などは他の協力企業が改修する方式を模索してはと思うのですが。

 軽装甲機動車の後継車両について、小松製作所は開発に応募せず、三菱重工も新規開発ではなく海外装備のライセンス生産を提案しています、これは設計と試作費用を防衛省が惜しんでいるために既存装備から好きなものを選べ、という事なのかもしれません。個人的には開発候補の車両性能を見る限り、高機動車などを原型として国産がいいよう思う。

 三菱重工業はタレスオーストラリア社のハーケイ軽装甲車のライセンス生産を、丸紅エアロスペースはスイスのモワク社製イーグルⅣ装甲偵察車を提案しています。ハーケイはオーストラリア軍が13億ドルで1100両を調達中、イーグルは2017年にデンマークが36両を3500万ドルで調達、共に痛感するのは製造費用が100万ドル前後という費用だ。

 国産装備は高い、という1990年代の認識で2020年代に円安の日本円で防衛装備を調達しようとしますと、防衛予算がGDP2%の時代でも不足するのかもしれません、いや、防衛予算は増額する中でもその増額分は必要な新しい装備の調達に用いれるのですから装甲車両の調達に充てられない可能性も残り、一個連隊に軽装甲車8両、という可能性さえ。

 ハーケイ軽装甲車もイーグル軽装甲車も、9600万円で調達した96式装輪装甲車よりも高くなるものなのだから、これを本当に毎年100両以上、多い年には202両調達した軽装甲機動車の後継に揃えられるものなのか、仮に軽装甲機動車の調達予算と同額しか財務省が認めない場合には毎年の調達数はせいぜい35両前後となり、全く数が揃いません。

 軽装甲機動車、富士重工スバルとAH-64D戦闘ヘリコプター中断問題に際して351億円の賠償金を支払うことで防衛省と富士重工が和解したように、ここはひとつ小松製作所に防衛省が謝罪しては、と思うのです。元をたどればこれは装輪装甲車(改)という防衛装備品開発に際し、小松製作所が落札し厳しい防衛省の要求仕様下で開発した事が始まり。

 装輪装甲車(改)、防衛省が96式装輪装甲車の後継として要求し開発したもので、小松製作所はNBC偵察車を原型とした装輪装甲車(改)を提案、これの製造費用見積もりは1.7億円といい、対して道微視重工が16式機動戦闘車派生の機動装甲車を2.5億円で提案しましたが、装輪装甲車(改)の方が安価で、また車幅を2.5m以内に抑えた点が評価された。

 2.5mというのは重要な点で、これを超える大きさの車両は道路運送車両法の特殊大型車両となる、何故かというと車幅がセンターラインをはみ出すために対向車に衝突するか歩道に乗り上げガードレールを破壊する為です、一部国道や片側二車線道路ならば問題はないのですが、特殊大型車両は所轄警察署など道路管理者に届け出を出さねばなりません。

 NBC偵察車、饗庭野演習場や東富士演習場で演習参加車両を何度か見せていただきましたが、一部の方が言うような不整地突破能力の低さを感じるものではありません。同じ演習場でストライカー装輪装甲車を見せていただき、乗せてもらう貴重な機会もありましたが、言われるほどストライカーに不整地突破能力の高さを感じず、そんなものかと感じた。

 ストライカー装輪装甲車を比較に挙げたのは実は演習中のボクサー装輪装甲車やパトリアAMV装甲車を見たことがないために、比較できるのがこれくらいという印象で示したものなのですが、NBC偵察車や96式装輪装甲車と比較した場合にそれほど国産車が劣っている印象がない、74式戦車と共に96式装輪装甲車で移動した際も乗り心地は良かった。

 装輪装甲車(改)についてなのですが、完成した車両は地雷からの防護能力を想定して車高を高くしてほしいという要求と務めて2.5m以内に収めてほしい、との要求を反映して、かなり難しい形状となっていて、地雷防護を度外視してNBC偵察車からNBC関連機材を取り外したものをそのまま装輪装甲車(改)とすればよかったのに、とは考えたところ。

 防衛省は装輪装甲車(改)について、将来発展性として砲塔を載せられないという要求仕様になかった問題点を指摘、防御力も不十分であるとして不採用を決定しました。開発費を返還するよう求められたことで小松製作所が激怒、特に要求仕様にない点を問題視されては設計などできない、として防衛産業の新規設計からの撤退を表明、という結果に続く。

 コスト管理の面では国産装甲車は比較的成功していた、乗ってみた感想として装輪装甲車の安定性も、優れているとは言わないまでも倍額の海外製装甲車と比較して半分以下の性能とまではいかず、まあほぼ同じ性能を発揮できていた。国産を少し検討したうえで、現実的に1954両を20年弱で揃えられるのかを明確化し、装備を決定してほしいのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都幕間旅情】榛名さんの総監部グルメ日誌-京都四条河原町,街歩きに飽きた時は最上階でレモネード

2023-06-10 14:11:44 | グルメ
榛名さんの総監部グルメ日誌
 舞鶴地方総監部の置かれる京都、その京都府の府庁所在地である京都市には数多くの喫茶店が並び日常に満足感を与えてくれます。

 京都の中心部、香春町通り沿いの奈良屋町、ここには京都丸善がありまして昔は洋書や文房具などを良く買ったものです、なにしろWebのインターネット環境を揃えるのが案外遅かったものですから、学生時代に洋書の教科書などは輸入販売に頼っていたものでした。

 BAL,京都BALという模様替えの際に京都丸善は移行してしまいまして、いまでは無印良品等が入り、ちょっと気の利いた調度品を購入する際に散策するお店となっているのですが、京都の街中は真夏には散策する際にちょっと勇気が要る程の灼熱につつまれます。

 レモネードをひとつ。炭酸のしゅっとした爽快感というか刺激の楽しみの中に、もう一つレモンの酸味が、くどいのか爽やかなのかという甘いシロップとともに調和を醸し出していまして、疲れている時にはちょうど良い刺激と甘味とおもう。こういうのを愉しみたい。

 Ron-Herman-café,ここは京都BALの最上階に位置していますレストラン街の、一寸奥の方にありますが、穴場というのは此処なのかもしれない、いや都会のオアシスといいますか、あまり混雑しないものの比較的広い店内にゆったり過ごす事が出来る空間がある。

 最上階というのは一つのこのお店を探訪する醍醐味でして、実に大きな窓辺のガラスの天井には大空が広がり、しかし空調が利いています、真夏には涼しく真冬には暖かい、春と秋にはそれなりに。一口レモネードを口に含み吟味する味覚の奥に大空がうつりこむ。

 ソファーはふかふかで、こういうのが欲しいなあと思いつついざ調度品でソファーを眺めると、昔から愛用のソファーを捨てて買い替えるには惜しいように思い、もう少し別の調度品を観ようと歩み進めてしまう、するとこういうところのソファーがうれしいのだ。

 河原町の散策は、なにかお買い物をする時が多いものですから書籍や調度品やお洋服に紅茶、嵩張るか重いものを抱えていますと、やはり疲れてしまう。そういう時にふと休める秘密基地のような喫茶店というものを見つけておくと、日常をより豊かにできるのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナ情勢-戦闘工兵能力の欠如が突き付けた出血の戦訓,反転攻勢を阻むロシア軍一年間の占領地防御線構築

2023-06-10 07:00:55 | 防衛・安全保障
■臨時情報-ウクライナ情勢
 F-16戦闘機のような空軍力の不足が指摘されていましたがもう一つ重要な要素が有りました、それは我が国自衛隊にも当てはまる戦闘工兵です。

 戦闘工兵は陸自の弱点。この話題を今年一月に掲載しましたが、ウクライナ軍がこの48時間で展開している反転攻勢において、ロシア軍が構築した縦深防御陣地がウクライナ軍の前進速度を大幅に削いでいます。特に地雷原により接近経路が限定され、行動が成約されたところをロシア軍が戦略予備として投入した戦闘ヘリコプターに阻まれている構図だ。

 スレッジハンマー作戦を行うにも“鉄は熱いうちに打て”という原則があり、ロシア軍占領期間で鉄が冷えて固まった。そもそもNATOのドクトリンはソ連軍の西欧侵攻に対する防御が第一として構築されているため、ロシア軍が年単位で構築した防御陣地を、しかも航空支援を無しとして突破するという運用、湾岸戦争のサダムライン突破以来の運用です。

 エアランドバトル、NATOドクトリンを厳密に踏襲する場合、AH-64Eアパッチなどを動員し防御線の後方の梯団を徹底的に叩き後方連絡線と段列地区を破壊し干上がらせるという選択肢が執られるのでしょうが、そもそもウクライナは空軍力を筆頭に航空打撃力が元々少なく、一年以上の戦闘により航空戦力は更に枯渇している状況を無視すべきでない。

 M-58-MICLIC爆導索、ウクライナ軍には一定数が武器援助により供与されています、これは地雷原を縄状の爆薬により直線状に爆破する装備ですが、これを供与したアメリカ軍自身が、1991年に“重師団における工兵連隊”として工兵戦力が不足しており、欧州地域における戦闘では24時間に3か所の地雷原を障害処理する必要、などが指摘されていました。

 前線突破は充分可能である、しかし縦深陣地突破には損耗をこれ以上に強いられる可能性、ロシア軍は航空戦力を温存している為に地雷原などにより行動が成約されている状況では、更に損耗を強いられる事は間違いなく、泥縄的な対処法として戦闘工兵装備を増強するほか、第一線の野戦防空に当る防空砲兵部隊装備の増強供与を求める選択肢はあります。

 縦深防御陣地、しかし重要なのはロシア軍の機動運用部隊が再充足されるまでは、防衛線の一部を突破した場合に機動防御、つまり防衛線に開いた穴を塞ぐための部隊を集中させる機動力がありません、ただこれもロシア軍が一年間の膨大なT-72損耗から回復するまでという時間の制約があります。すると、近接戦闘部隊の宿命という厳しい現実があります。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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