北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】DDG133サムナン起工式と沱江級コルベット増強,ロシア空母アドミラルクズネツォフ後継艦

2023-06-20 20:21:44 | インポート
■■■防衛フォーラム■■■
 今週は海軍関連の10の話題を集めました。昔ながらのイージス艦の最新型への発展とロシア海軍が構想する強いロシア海軍を回復させるための航空母艦の話題など。

 アメリカ海軍が導入するイージスシステム搭載の駆逐艦DDG133サムナンが12月11日、起工式を迎えました。サムナンはHII社参加のインガルス造船所においてスチールカットが行われ、100tの鋼材に最初の切断を実施、これが起工式となります。イージス艦サムナンはアーレイバーク級ミサイル駆逐艦のフライトⅢに区分される最新型のイージス艦です。

 インガルスではアーレイバーク級ミサイル駆逐艦フライトⅢ建造として、このほかにDDG128ミサイル駆逐艦テッドスティーブンス、DDG129ミサイル駆逐艦ジェレマイアデントン、DDG131ミサイル駆逐艦ジョージMニールを建造中です。インガルスはこれまでに多くのアーレイバーク級を建造、また過去135年間に渡り米軍艦艇を建造してきました。

 アーレイバーク級はイージスシステムを搭載するアメリカ海軍の主力駆逐艦です。ただ、艦隊防空艦などの建造やズムウォルト級駆逐艦の開発失敗、タイコンデロガ級の後継艦開発の棚上げが長く続くと共に補完すべき沿海域戦闘艦の開発失敗などにより、アメリカ海軍はこのアーレイバーク級への依存度が高くなっており将来の後継艦課題が考えられます。
■LCU-MLU上陸用舟艇■
 自衛隊ではLCACと複合ボートへ依存している上陸ですが2000年代初めには確かにこの種の交通船を輸送艦に搭載するという検討があったものの実現しませんでした。

 オランダ海軍はLCU-MLU上陸用舟艇近代化プログラムを開始しました、オランダ海軍はドック型揚陸艦ロッテルダムとヨハンデウィットの2隻を運用しており、これらドック型揚陸艦は艦内のウェルドックに2隻の上陸用舟艇を収容可能です。オランダ海軍には上陸用舟艇は予備艇を含め5隻を運用しており、2022年にその延命改修が決定しました。

 LCU-Mk2型は満載排水量255t、全長36.3mで全幅6.85m、その輸送能力は最高速力9ノットであり、巡航速度8ノットでの航続距離は720㎞、船体前部にハッチを有し中央部が車両甲板、後部が操舵室となっている構造であり、人員130名乃至車両など65tを搭載可能で、これはトラック3両とBvS.10全地形装甲車2両を同時輸送可能というものです。

 LCU-MLU上陸用舟艇近代化プログラムでは推進装置の換装による航続距離の延伸、航法システムの改良とデータリンクシステム更新、上陸用舟艇内の調理区画改良による食堂の近代化、仮眠室の改良などが行われるとのこと。この改修はオランダ海軍が装備する5隻すべてに対して行われるとのことで、計画では2025年に全ての延命改修を完了します。
■沱江級ステルスコルベット■
 ミサイル艇は対戦車ミサイルを搭載した哨戒ヘリコプターに対して一方的に駆逐されるという問題がありまして、台湾がこの問題をどのように考えているか関心事なのだ。

 中華民国台湾海軍は沱江級ステルスコルベットのさらなる増強計画を発表しました。計画によれば2026年までに沱江級ステルスコルベット10隻体制を目指すとしています。沱江級ステルスコルベットは水上打撃力を重視しており、前型の錦江級コルベットが実質的にミサイル哨戒艦であったことを考えれば、補助戦力から主戦力への格上げとなります。

 沱江級は双胴船構造を採用し現在二番艦塔江が竣工、三番艦富江が昨年進水式を迎え四番艦旭江は今年2月16日に進水式を迎えたばかりです。満載排水量は685tで最高速力38ノット、雄風III型等対艦ミサイル16発を搭載するほか、76mm艦砲と20mmCIWS、海剣二型短距離対空ミサイル16発を搭載し、建造費は1隻あたり2億9350万ドルとのこと。

 台湾海軍はOHペリー級ミサイルフリゲイトをライセンス生産した成功級やキッド級ミサイル駆逐艦を中古取得し基隆級として運用するなど一定程度の水上戦闘艦部隊を有していますが、想定される台湾海峡有事に際し2020年代の中国海軍は圧倒的であり、台湾海軍では大型水上戦闘艦以上に小型水上戦闘艦による沿岸打撃戦闘能力を強化しています。
■ジョンLキャンリー■
 海兵隊のフォースデザイン2030を背景にこうした上陸技術の開発がいかに進められるのか惰性で進めているのかが気になるところ。

 アメリカ海軍は機動揚陸プラットフォームとして知られる遠征輸送ドックジョンLキャンリーを竣工させました。ルイスBプラー級の四番艦ジョンLキャンリー、その名は名誉勲章叙勲者で、2020年にカリフォルニア州サンディエゴにありますジェネラルダイナミクス社傘下のナショナルスチール&シップビルディング社造船所において起工されました。

 遠征輸送ドックは、海軍事前集積船を筆頭に世界中に展開する大量の装備を有事以前に配置しているが、問題は有事の際に現地へ展開させる手段である。遠征輸送ドックの任務は港湾を使用できない状況における代替措置で事前集積船を横付けし、ここから揚陸艇などに載せ替える、支援用なのですが満載排水量は81435tと巨大で15ノットで自航可能です。
■LWT短魚雷開発計画■
 大国間の武力紛争というものが再認識されるようになります今日において対潜装備の重要性が急浮上しています。

 オーストラリア国防省はMU-90-LWT短魚雷開発計画へ参加を発表しました。もともとLWT短魚雷開発計画とはアメリカのMk54短魚雷に相当する水上戦闘艦や哨戒ヘリコプター及び対潜哨戒機などから投射する対潜用短魚雷の開発計画として、フランスとイタリアが開発開始したもの、両国はアキテーヌ級やカルロベルガミーニ級などを運用している。

 LWT短魚雷開発計画はフランスとイタリアが開発していた当時はOCCAR計画と呼称されていましたが、続いてドイツが参加することとなり現在の名称に改められました。今回ここにオーストラリアが新たに参加表明を示したこととなります。魚雷は航空機投下などによる400ノットの加圧に耐える構造であり、SUN対潜誘導弾への転用も期待されます。
■アドミラルクズネツォフ後継艦■
 ロシアはロシアウクライナ戦争において恐竜のような大きいだけのシステムは役に立たない事を自ら証明する事となりましたが。

 ロシアの統合造船企業はロシア海軍用の将来航空母艦設計を進めているとのこと。現在ロシア海軍は唯一の航空母艦として空母アドミラルクズネツォフを重航空機巡洋艦として運用していますが、ロシア海軍自身からの航空母艦後継艦の設計建造を要求した具体的な動きはなく、統合造船企業が独自に海軍へ大型の航空母艦建造を提案したかたちです。

 アドミラルクズネツォフ後継艦、しかしロシア海軍自身は空母アドミラルクズネツォフの老朽化は認識しており、2015年にアドミラルクズネツォフ後継艦構想に着手しています、他方でロシア海軍水上戦闘艦は1990年代以降、ソ連未成艦建造を除けば小型化の一途をたどり、4000t以上の水上戦闘艦建造にめどがついたのは2020年代、空母護衛艦が居ません。

 統合造船企業は国営兵器会社ロステック系列の造船企業ですが、2015年にロシア海軍がアドミラルクズネツォフ口径構想を示し、いくつかの模型が提示されるも海軍には具体的な動きがないことを受け、8年間の空白とともに海軍戦略の転換などの不確定要素はあるものの、そろそろ概念的な模型の段階を超えての設計に着手した、というかたちなのでしょう。
■ラファールF4.1の艦上試験■
 フランス海軍の場合はラファールも重要ですが背系が開始された将来空母に果たしてこれから開発が本格化する次期戦闘機を搭載出来るのかという問題の方が大きい。ただ一度日本にラファールを送ってほしいものだ。

 フランス海軍はラファールF4.1の艦上試験を完了しました。ラファールF4.1はラファールF4をさらに改良した最新仕様であり、新規製造機はもちろん、既存機からの近代化改修も可能となっています。試験はフランス海軍第10S飛行隊分遣隊が原子力空母シャルルドゴール艦上で実施され、3月21日から30日にかけ100時間実施されました。

 シャルルドゴール艦上での試験は海軍第10S飛行隊分遣隊がラファールF4.1を3機、また60名の搭乗員や技術者が参加しています。シャルルドゴールでは現在ラファールF3Rが運用されており、またシャルルドゴールそのものが老朽化も始まっていることからカタパルトを含めラファールF4.1の運用への適合性などが40回にわたり試験されています。

 ラファールF4.1はスペクトラ機体防御システムとミーティア空対空ミサイル運用能力の運用能力向上、そしてヘルメット照準能力を付与したスコーピオンヘルメットサイトの追加、更に新しく開発された1000kg級の誘導兵器運用能力などが追加されました。ミーティア空対空ミサイルは射程100㎞以上、僚機照準誘導能力等共同交戦能力が強化された。
■UAS無人航空機システム■
 自衛隊のMQ-8を哨戒ヘリコプターとして導入する計画はどうなったのか、MQ-8を導入するからSH-60の調達数を減らすという約束がMQ-8は実現せずただSH-60だけが減ってゆく。

 イギリス海軍はシーベル社とタレス社との間でUAS無人航空機システムに関する契約を結んでいます。シーベル社はオーストリアの精密機器メーカーでS-100カムコプターは同社がアメリカやフランス、中国やロシアなど18か国に輸出する小型無人機、空虚重量は110kg、機材50kgと燃料57ℓを搭載し飛行時間は6時間、増槽装着で10時間です。

 ペレグリンというイギリス海軍での正式名称、S-100についてイギリスはタレス社のIマスター合成開口レーダーとAIMS-ISR複合監視装置を搭載し、哨戒任務に充てる構想で、最長180㎞の地域まで進出可能というS-100の性能は水上戦闘艦から運用し、艦艇への脅威を常時センサーとして使用することにより未然に探知することが狙いという。
■H-160多用途ヘリ2号機■
 フランス海軍の場合は領域警備任務や海外県での哨戒任務もある為に対潜ヘリコプター以外の航空機も相応に重要なのです。

 フランス海軍はH-160多用途ヘリコプター2号機を受領しました。フランス海軍ではH-160多用途ヘリコプターを特殊作戦支援や救難ヘリコプターとして導入しており、水上戦闘艦や揚陸艦などに搭載、2021年にエアバスヘリコプターとの間で6機の導入を契約、最初の機体は2022年に引き渡され、2023年内に残る機体全てが引き渡し予定です。

 H-160多用途ヘリコプターはエアバスが開発した新世代のヘリコプターで日本でもAHNが報道ヘリコプターとして2022年から運用しています。フランスの2019-2025国防計画では陸軍80機と海軍49機と航空宇宙軍40機の合計169機の調達計画が発表されましたが、2024-2030計画ではCOVID-19による経済後退により20機に削減されました。
■スペイン海軍はMH-60R■
 関連資材を含めての金額とはいえシーホークも高くなった。

 スペイン海軍はMH-60R哨戒ヘリコプター8機を増強する予算計画について、閣僚会議の承認を受けました。シコルスキーMH-60Rシーホークは、現在スペイン海軍が運用するSH-60B哨戒ヘリコプターの老朽化により2025年に退役することとなり、その後継機として選定されるもの。8機の調達は8億2051万5490ユーロで取得されるとのこと。 

 MH-60R哨戒ヘリコプター8機とともにT-700-GE-401Cエンジンを予備含め20基、MIDS JTRSリンク 16 多機能データリンクシステム8基、AGM-114RNヘルファイアミサイル32発、ALFS低周波ソナー4基などが含まれます。低周波ソナーは8機に対して4機分となっていますが、MH-60Rはソノブイ等ソナー以外の対潜哨戒能力も有しています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナ情勢-反転攻勢の航空攻撃への苦戦と破損戦車装甲戦闘車修理開始,CV-90訓練完了

2023-06-20 07:00:50 | 国際・政治
■臨時情報-ウクライナ情勢
 昨年のヘルソン奪還やハリコフ反撃に比べれば徹底して要塞化された前線の突破に苦しんでいるという概況が見て取れる。

 ウクライナ国防省は15日の次官会見において、ウクライナ軍の反転攻勢が大きなロシア軍の抵抗に見舞われていることを率直に認めました。ロシア軍はこれまで少なくとも250機以上の無人機と140発以上のミサイルを用い反撃に転じたウクライナ軍を攻撃しているとしています。一方、ウクライナ軍の攻撃主軸はいまのところ発表されていません。

 攻撃主軸は、全戦線において現在威力偵察を行っている段階で、防御線の薄い地域を攻撃によりあぶりだしている状況、例えば防衛線を担当する旅団と旅団の任務境界線や突破に適した多数の地形の中で比較的地雷原や防御部隊の配置の薄い地域は必ずあり、これを攻撃により反撃の有無から探る、可能ならば前哨陣地を突破する偵察の段階のもよう。
■破損装備の修理急ぐ
 人員だけは何としても守る設計思想の違いゆえの話題です。

 レオパルド2主力戦車とM-2A3ブラッドレイ装甲戦闘車について、ウクライナ軍は破損した車両の一部を回収し修理を急いでいます。やはりT-64戦車のようなソ連製設計車体や自動装填装置とともに戦闘室に露出した弾薬庫を配置するT-72戦車は被弾すると全損する事例が多く、同じ設計のBMP-1などは二次爆発を起こし修理不能となる事例が。

 M-2A3ブラッドレイ装甲戦闘車は破壊された車両が、地雷などで履帯を切断し行動不能となり、その後に対戦車ミサイルなどの攻撃を受け破壊される事例がロシア軍発表映像から見受けられますが、乗員が脱出する時間的余裕があり、華々しい攻撃前進よりも、破壊された車両を如何に乗員を防護し装備を修理し復帰させるかが肝要となるでしょう。
■CV-90訓練完了
 自衛隊の89式装甲戦闘車とかつて機関砲の威力や設計思想で比較されたものですが。

 スウェーデン国防省はウクライナ軍兵士へスウェーデン国内で実施したCV-90装甲戦闘車教育訓練が完了したと発表しました。CV-90は40mm機関砲を搭載した装甲戦闘車で開発したスウェーデンのほか、フィンランドやオランダにノルウェーやデンマーク、スイスなどで幅広く運用されており、生産も継続中、欧州標準装甲戦闘車とも呼ばれるもの。

 CV-90はウクライナへ供与されますと、ウクライナ軍にはアメリカ製M-2A3ブラッドレイ装甲戦闘車とドイツ製マルダー装甲戦闘車が供与されており、三種類目の装甲戦闘車となります。運用装備の種類が増えることは兵站面からよいことばかりではありませんが、ウクライナ軍のBMP-2装甲戦闘車よりもはるかに生存性が高い点は重要でしょう。

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