北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【日曜特集】第7師団創設56周年記念行事(01)戦車が視界一杯の東千歳駐屯地(2011-10-09)

2022-01-23 20:00:20 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■第7師団は日本唯一の機甲師団
 機甲部隊とは装甲機動部隊の略称で東日本大震災の記憶新しい2011年10月に延期されていました師団祭は挙行されました。

 第7師団創設記念行事、2011年の行事ということで10年以上前の行事となりますが、今回改めて掲載する事としました。この10年間で日本の防衛力と防衛力整備というものは大きな変革に見舞われ、そして周辺情勢も大きく転換しました。今回、改めてみてみよう。

 東千歳駐屯地は広い、こう表現する事は単純なのかもしれませんが東千歳駐屯地を、おっ街道の駐屯地に慣れている方はそう思わない方もいるのでしょうか、しかし開門と同時にゲートをくぐりまして、まず手荷物検査は無いという部分から、少し不思議に思いました。

 82式指揮通信車。恐らくはテロ警戒の為なのでしょうかヒグマ対策の為なのでしょうか、いつでも装甲車の車体を盾に駐屯地と観覧者を防護する準備が出来ていまして、要するに来るなら来い、という機甲師団ならではの迫力を醸し出しています。この当たりから違う。

 広い、この一言に尽きるといいましたが、普通に歩いて式典会場まで40分ほどかかります、いや、誇大表現と思われるかもしれませんが、早歩きで45分ほど掛かります、演習場の中を歩くのではなく、建物と倉庫とモータープールを縫って歩いて45分、本当にひろい。

 北の大地、こう表現しますと厳寒な冬の吹雪や荒漠たる大自然の猛威と手つかずの原風景、というものを思い出されるかもしれませんが、単純にロシアとの国境、最短は国後島か、最短距離では20km程度という事実を突き付けますと、ここは防衛の最前線だとわかる。

 戦車、戦車、戦車、あと自走砲に自走高射機関砲に装甲車と、戦車、戦車、戦車、あと偵察警戒車に装甲戦闘車に装甲車、戦車、戦車、戦車、あと自走迫撃砲に戦車橋に装甲ドーザー、戦車、戦車、戦車に。第7師団祭を表現しますと安直ですがこうしたものとなる。

 90式戦車が、こう横一列に並びますと迫力に圧倒されます、いや東千歳駐屯地だからでしょうか、新千歳空港に隣接する東千歳駐屯地は周辺に目立つ建物が無く、横一列に視界を埋め尽くすように戦車が並んでいますと、迫力を通り越して異次元の様相を帯びてくる。

 北海道の自衛隊関連行事で毎回感じますのは、本州の自衛隊行事は機械化部隊が自慢の富士学校祭を含めて、何とか強大な敵を撃破した、という印象のものが多い中、北海道の場合は陸上火力におり圧倒撃滅する、そんな機械化部隊の偉容というものがあるのですね。

 第7師団、驚いてはいけないのですが東千歳駐屯地には戦車連隊は駐屯していません、戦車連隊の定数を考えれば各中隊から小隊を参加させていて、式典に参加している車輛は師団のごく一部であり、そう考えますと第7師団というものを改めて大きく感じるもの。

 圧倒撃滅、こう印象づけるのは駐屯地の式典会場が広いことも挙げられるのかもしれませんが、戦車の多さ、という部分が無関係ではないように思う。日本周辺には大規模な軍事パレードを定期的に実施する国が幾つかありまして、その様子は報道発表されています。

 軍事パレードは予算を要する以上目的が必要で、なにしろ国威発揚が目的なのだから当然といえば当然だけれども、映像で流されます。正直なところ、自衛隊行事を知っている方々でも師団祭で戦車が数両しか参加しない地域にお住まいの方は、見比べてどう思うのかと。

 日本の防衛力で軍事恫喝に対応できるのか現実を突き付けられ、いや日本は日本海と東シナ海があるし、と考えるのかもしれませんが、北海道の自衛隊行事を知っている方からみるならば、いやこのくらいならばウチの戦車連隊でなんとかなるな、こう思われるようで。

 平和主義、これは非常に重要な外交政策ではあるのですが、周辺国での戦争をみて見ぬ振りをする、世界での圧制による犠牲は無かったことにする、平和は大事にするもの、平和は維持するもの、発音では似ているものですが前者を選びますとどういう事になるのか。

 平和というものが大事という部分では共有できる価値観ですが、その上で戦争を回避する具体的な施策を考えない場合は、これをわたしは"平和を手段とする"か"平和を目的とする"と相容れないものである視点であると指摘しているのですが、前者を選んだ場合は、さて。

 結局のところ万一の状況に大切なもの、戦争というものの脅威を前に、極論で平和だけを手段として回避し屈服することで人命を薄なわずにすんだとしても基本的人権や幸福追求権、場合によっては財産権や生存権を失う危険に曝されるという実状があるように思う。

 平和を手段として結果としての平和を実現できるならば、何しろ戦車にしても戦闘機にしても安価ではありませんので世界中がその選択肢をとりそうなものですが、資源や地政学的立地を求める諸国がすべて共有できない場合にはどうしても摩擦が生じるのは道理です。

 予防外交。脅威を突き付けられた際、その際に防衛力を有していれば予防外交、予防外交が実らない場合でも抑止力を維持することで武力紛争を一時的でも回避し、その上で恒久的な武力紛争回避や紛争解決への卓上で意見集約を行う時間的余裕が生じるように思う。

 防衛力というものはそのためのものなのですね。その上で、北部方面隊の隷下部隊行事にみられる、敵を押し返すのではなく押しつぶす、圧倒撃滅の能力誇示は、もう一つの役割があるように思う、それは主権維持と憲法の堅持へ国民の支持を得られるか否か、という。

 実際のところ国民が政府を支持するか外国政府の圧に屈することを支持するかは防衛力を筆頭に政府が、そして自国の防衛力が国民に支持されるのかという部分にあるのですね。国民の支持がなければ国家は維持できません。その為には国家にも覚悟というものが要る。

 もちろん、理想は、この理想というのはカント的なという意味でですが、国民が外国の軍事恫喝に徒手空拳はもちろん生命を掛けて屈しない共同体意識があれば、常備軍が不ようになる、と考えられたものですが、なかなかそこまで堅固な意識、全体では持ち得ません。

 民族自決を全員自爆の覚悟まで昇華させることは出来ませんし、個々人の意志と抵抗には現代兵器を凌駕することは非現実的でもあります、すると防衛力整備の重要性はここにある。そして、日本の防衛力ならば軍事恫喝を受けた場合でも、という自信に繋げねば。

 日本の防衛力ならば軍事恫喝を受けた場合でも、それが海を越えて襲来した場合でも破砕できる、だからこそ憲法の掲げている基本的人権や男女同権、環境権や幸福追求権は維持されるべきであるし、自国民統制手段に銃砲さえ用いる圧政を行う様な国に屈しないべき。

 国家が香港や平壌と武漢やヤンゴンで行われていたような行動を21世紀の今日に繰り返すような勢力からの恫喝は頑としてはねのける気概を、実際の軍事恫喝を受けた場合でも堅持するには、そのための備えが必要だと思う。この点で重厚な防衛力に意味合いがある。

 重厚な防衛力を北海道に集約する構図には、もちろんこの防衛力は北海道の地政学上の要求からは必要ではあるために、引き抜くという意味ではなく整備という意味で、現状の本州防衛力には不可思議であるよう、思うのですね。全国的に機械化を進めるべきと感じた。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

エンストロムヘリコプター社が倒産,陸上自衛隊TH-480練習ヘリコプター三〇機の維持へ暗雲

2022-01-23 18:10:39 | 防衛・安全保障
■エンストロム,全事業終了
 今回は予定を変更して。自衛隊機で新造機を導入数年後にメーカーが倒産し予備部品も入手でき無くなる事例は今回が初めてではないか。

 防衛産業、自衛隊に驚きの報道がありました、本日2022年1月22日、アメリカのヘリコプターメーカーであるエンストロム社が倒産しました。エンストロム社はヘリコプターメーカーとしては老舗といえる1959年創業、安価な小型機に定評はありました。そして自衛隊に練習ヘリコプターTH-480を30機納入しているのですね。そのエンストロムが。

 エンストロムヘリコプターは10年前の2012年に、中国のCGAG重慶航空製造公司に買収され、この際には自衛隊へ航空機を納入しているメーカーが中国企業となったことは少し話題となりましたが、これにより経営は安定化した、とも考えられていました。従来、航空機メーカーは経営統合ならば統合先のメーカーがアフターサービスを行うものなのだが。

 TH-480練習ヘリコプター、陸上自衛隊は2011年度予算で30機を一括調達しており、ライセンス生産などは行わずにそのまま取得する方式を採り、定期整備などはアメリカより予備部品の提供を受け、仙台空港に工場を置くジャムコが提携企業として請け負っています。そして、自衛隊機としてはまだまだ新しい航空機なのですが、今後どうなるのか、と。

 エンストロムヘリコプターは2022年1月を以て定期整備などのアフターサービスを終了するとしていまして、今年1月7日を最後に予備部品の受注も終了しているとのこと。防衛省は単年度契約により整備契約を行う為、駆け込みの予備部品調達が行えたとは考えにくく、エンジンそのものは整備可能でしょうが、操縦系統始め機体維持部品となると難しい。

 2015年までに納入された30機の練習ヘリコプター、例えば共食い整備という、退役機や一部の機体を予備部品扱いとして飛行停止させ、稼働率を維持する方法もありますが、30機一括取得したのですから退役機などはなく、世界中で退役した同型機を探し部品取りに補給処へ並べるか、もしくは今ある現用機を一部除籍させ部品用にあてる必要があります。

 総合評価方式として、練習ヘリコプター選定の際にはMD-500ヘリコプターとシュワイザー333と共に競合し、MD-500は当時自衛隊が未だ広く運用していたOH-6D観測ヘリコプターのシリーズ最新型、そしてシュワイザー333はかつて陸上自衛隊がTH-55練習ヘリコプターとして運用していた機体、陸上自衛隊はMD-500を本命視していたとされるのだが。

 MD-500,伝え聞くところでは練習ヘリコプターにMD-500を採用した際にOH-6と同じく川崎重工によるライセンス生産の態勢を構築できれば、そのまま東日本大震災後に重要性が認識されていたOH-6D観測ヘリコプターの後継機に充てたい姿勢もあったというのですが、総合評価方式の最高費用に収まらない事が判明し、早々に候補から落選、TH-480が選ばれたかたち。

 TH-480も、自動操縦装置は無く練習機に徹していたという点で現場の評価は高かったのですが、ならばOH-6Dの後継機に転用できるのかを現場の方に聞いてみますと、性能から無理だと数名の方が即答していました。価格は安いものですので無人ヘリコプターの原型機には最適なのかもしれませんが、TH-480をOH-480としても第一線で生き残れないとも。

 エンストロム社製ヘリコプターはインドネシアやタイなど複数の国で軍用練習機として運用されています、生産数はTH-480で150機以上あります、協力企業を世界中に探すならば、予備部品や共通部品を取得する事は不可能でないと考えるのですが、安価だからと調達した機体が、実はとんでもない出費に重なる厳しい授業料となる可能性もあるでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする