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北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

新年防衛論集二〇二二,中央情報機関が必要だ!アフガニスタン情勢解析失敗と北極海情勢

2022-01-09 20:12:34 | 北大路機関特別企画
■中央情報機関
 国力が停滞している時こそ情勢変化が生まれる為に危機管理の為の情報収集が重要となります。

 中央情報機関。日本には情報機関に当る組織は外務省や防衛省と法務省に内閣府や警察庁など非常に多くの組織があるのですが、分野ごとの情報に特化した組織が多く、横断的な中央組織がありません。また、日本国家の活動は戦後かなり早い時期からグローバルに展開していますが、情報収集、安全情報も含めて、その分析を含め国として追い付いていません。

 日本にとり情報機関と云いますと、一般的な観念として秘密諜報や暗殺など後ろめたい印象があるのかもしれません、もちろん情報収集には防衛面の通信解析や電波情報収集等が含まれますので、否定するものではありませんが、例えば突発的な情勢変化から邦人保護というものを展開するには必要な施策です。この分野はもう少し国力を投じて良いと思う。

 アフガニスタン情勢。日本の情報収集における近年最大の失敗はアフガニスタン情勢の急変を全く予見できず、自衛隊機のアフガニスタン派遣も法的に難しくなる情勢悪化まで踏み切れず、邦人保護や輸送対象者を出国できないという、国家として長期に禍根を残す失敗を犯しています、いや失敗はまだ良い、しかしリカバーする動きが国に、見られません。

 台湾の成功。情報収集の重要性を端的に示すのは、2019年に台湾が中国国内の情勢分析を行った際、中国武漢市内の特異な情勢変化から危機的な状況を見ぬき、新型肺炎、この発生が2020年初頭に顕在化した際、素早い対応を執るまでの準備情報を得られた点でしょう。諜報による情報分析というものではなく、民間情報の分析という努力の結果と云えます。

 COVID-19対策については、ここ数日間のオミクロン株感染拡大が例外となりつつあるのはさておき、超過死亡抑制という視点で日本の施策は成功したものでした、が、これは2020年初頭に中国衛生基準と発表情報の少なさから脅威度見積もりを各国が低く見た中で、日本は横浜港ダイヤモンドプリンセス防疫から脅威度を認識する機会が在ったにすぎません。

 超過死亡の観点からは致死率に照らせば厚生労働省は対策不十分ならば日本では一年間に40万死亡と警鐘を鳴らしています、欧米では人口比そうなった。情報収集というものはこのように、国家の存亡、欧州や北米の視点からは人口一億人当たりの死者40万程度は受忍できる水準なのかもしれませんが、国民の生命に大きくかかわるということになります。

 第四次中東戦争に際しては日本の総合商社によりスエズ運河周辺でのエジプト軍の特異な動きから危機発生をイスラエルよりも先に見抜き、国内に必要な物資調達などの面で先手を打てた、という伝説的な話がありまして、商社情報やラジヲプレスのような情報分析と市場情報のようなものから解析するという選択肢も、情報機関としては必要な施策という。

 北極圏情勢や台湾情勢、実のところ日本の情報収集能力が極めて重要となるのはこうした、現実の課題へ対処する為に必要だという考えがあります。台湾情勢の重要度については敢えて示す必要はないのかもしれません、例えば台湾情勢が緊迫化すれば、日本周辺での戦闘の懸念や邦人保護の必要性も生じますが、浮流機雷が日本船舶を沈める危険性もある。

 台湾情勢は、仮に台湾が失陥するならば例えばサプライチェーンひとつとても東南アジアから日本に至るシーレーンが圧迫されることとなりまして、日本は東シナ海情勢だけでなく南シナ海情勢にも直接のステイクホルダーとなり負担となります。戦争は良くない、大陸での侵攻兆候を情報分析により早期察知、徹底的な予防外交で平和的手段以外抑えねば。

 北極海情勢。気候変動により欧州とアジアを結ぶ新航路として北極海航路が注目されています、日本として砕氷艦を建造し乗り出すべきとは全く考えないのですが、しかし日本がどう当ろうとも無関係でいられないのは確かです、何故ならば欧州とアジアを結ぶ最短経路として北極海航路が開拓されるのですから、日本はその航路上にある、無関係は無理だ。

 インド洋情勢の緊張ではありませんが、海上通商路として北極海の重要性が高まるならば、その通商路を保護する為に海軍艦艇を遊弋させ周辺国に圧力を加えようとする事例が、個北極海航路の開拓が進めば進むほど高まるでしょう。すると日本は圧力を加えられる側になるのです、インド洋航路の重要性から中国がインド洋にてインドへ圧力をかけたように。

 情報機関が必要だと考えます、それも勿論偵察衛星や電子偵察機や情報収集艦のようなものも必要だとは考えるのですが、所謂地域研究者や技術情報研究者と政治学研究者を集めて地域情勢の変化を官邸へ学者を招いて調査というようなものではなく、情報機関として集めて、もちろん現地調査も必要なのですが、機能する常設機関として必要だと考えます。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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新年防衛論集二〇二二,文民保護の防衛ドクトリン-南西諸島防衛や日米同盟・米中関係の課題

2022-01-09 18:12:34 | 北大路機関特別企画
■防衛力整備の根底に必要
 南西諸島にしても北方にしてもシーレーンにしても防衛力そのものを設計する防衛ドクトリン、その根底に必要なものがある。

 文民保護、この視点は防衛を考える際に絶対に忘れてはならない視点です。防衛とともに予防外交と抑止力という概念そのものは戦争を回避する事により文民保護の概念に繋がる、こう考える事も出来るのですが、防衛ドクトリンの段階から文民保護、この視点を念頭として防衛力整備を行う必要があるでしょう。戦争放棄と平和的生存権の関係に繋がる。

 沖縄を戦場にしない。日本の安全保障を考える上で避けて通れないのは日米同盟と対中関係ですが、洋上ミサイル戦を基本としたアメリカ海兵隊の海兵沿岸連隊への改編や、陸軍への戦域ミサイル配備と日本本土への配備要求というものは、所謂巻き込まれ論として危惧します。即ち、なぜ巡航ミサイル原潜では対応できないのかと素朴な疑問というもの。

 自衛隊においても島嶼部防衛用滑空弾の開発は進んでいますが、南西諸島への陸上防衛力配備に際して、例えば狭い島嶼部での防衛配置は防衛空白地帯への展開と云う意味は理解できるのですが、国土よりも遥かに広い海洋があるのですから、スウェーデンの旧沿岸砲兵のような装備体系と、アメリカが想定する装備体系に一線を画す必要を感じるのですね。

 上陸させない地対艦ミサイルと、策源地攻撃に用いるスタンドオフミサイル、懸念するのはこの境界線が曖昧となる事です。例えば沿岸特科連隊として、即応機動連隊の機動戦闘車隊を地対艦ミサイル装備の特科隊へ、火力支援中隊を高射特科中隊に置換えたような沿岸防備に特化した機動運用部隊は必要だとは思う、しかしミサイルの境界線が曖昧ならば。

 地対艦ミサイルとスタンドオフミサイルの境界が曖昧となれば、今度はこちらの島嶼部防衛部隊が策源地攻撃の対象となる事を意味します。すると、スタンドオフミサイルなどはアメリカのラピットドラゴン方式のように輸送機から直接投射するというような陸を拠点としない方式を整備し区別できなければ、地上戦以外の戦闘に住民が巻き込まれかねない。

 ラピットドラゴン方式ならば例えば航空自衛隊にはC-2輸送機がありますので、はるか離れた空域からF-2戦闘機とは比較にならない規模のスタンドオフミサイル運用能力があります。また、退役前の旧式潜水艦を巡航ミサイル潜水艦へ転用し、小笠原諸島など万一策源地攻撃を行われた場合でも文民被害が及ばない選択肢というものも検討すべきでしょう。

 国民保護法制。文民保護については、国民保護法制により非戦闘地域からの退避という原則があるようですが、これこそ絵に描いた餅というもので、そもそも人口密集地はもとより島嶼部から短期間で住民を避難させるほどの旅客機や旅客船は民間には在りません、そして来年度に侵攻があるようだ、という情報などはなく危機は基本的に奇襲的にはじまる。

 平時の感覚ならば年次計画を組んで実施に先立って準備を進めて、となるのでしょうが災害と先方に主導権のある有事は突然発生します。すると、云ったからな的な免罪符的といえる法整備よりは、ドクトリンの段階で民生被害を回避する、極力国土から離れた防衛力整備が必要となる訳です。もっとも、憲法違反である、の一言で現状が醸成されたのだが。

 文民保護。もう一つ忘れてはならないのは、2021年8月のアフガニスタン事案、日本政府は事実上の棄民に近い施策を行ったという、コロナ対策では世界に誇る成功を果たした菅政権には大きな失策となりました、情報収集の稚拙もありましたが、邦人保護の法整備をもう少し踏み込んだ施策を採れるよう、様々な法的制約を除かねば、国ではありません。

 本来は国を守るとは国民を守る事と同義であるべきなのですが、平和を手段としていれば結果を期待するのみという視点と、平和を結果として得られる施策の乖離がこの命題を阻んでいる様にもみえてしまいます。流されるままの防衛力整備や泥縄式の能力構築ではなく、もう少し踏み込んだ、若しくは根本的な部分での防衛力整備への議論が、必要でしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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