■冷戦後最大の危機
欧州では東欧を中心にバルト海から地中海、かつて鉄のカーテンと称された地域を思い出させる広い範囲において冷戦終結後最大と云える危機が進行中です。
新年早々第三次世界大戦の危機はご容赦願いたい、こう考える今日この頃、何故ならばウクライナ情勢が緊迫度合いを増しており、このままでは東欧地域全域をも巻き込んだ大規模紛争へ展開する可能性が徐々に高まってきました。2021年12月よりロシアウクライナ故郷地域へロシア軍が大部隊を展開させ続けていますが、導火線は様々な火点へ延びる。
ウクライナのアメリカ大使館は不測の事態の懸念があるとして、大使館員とその家族にウクライナ国外への脱出を開始させ、またイギリスなど欧州各国も同様の施策を採りました。我が国でも外務省は渡航安全情報について、民間航空機が飛行出来る間にウクライナからの出国を呼びかける危険情報を発表、ウクライナは極めて深刻な緊張状態となっています。
冷戦後初めてNATO指揮下にアメリカの空母戦闘群が編入され地中海に展開、東欧地域に米軍緊急展開の準備が開始され、これは故トムクランシー氏“レッドストーム作戦発動”やラリーボンド氏“CARDRON-ヨーロッパ最終戦争”でも再現しているかの様な緊張です。共に第三次大戦に直結しかねない大規模武力衝突を題材としていますが、今は2022年だ。
ロシアの要求は冷戦後、NATOが東方に拡大しすぎた為に元の状態に戻すよう主張し、先ずウクライナのNATO加盟拒否に関する国際合意の条約を要求、また東欧のNATO加盟国についても元の状態に戻すよう要求しています。NATO東方拡大、実際1990年代にはロシアをNATO加盟させようとの動きもあり、敵対的な関係では元々無かったのですが、今は。
ウクライナ危機。この危機がウクライナ有事に発展する懸念というのは、2021年のバイデン大統領発言、“ロシアがウクライナに侵攻した場合に米軍は参戦しないが最大規模の経済制裁”という発言が、逆に既に経済制裁を受けているロシアとしては、米軍が介入しないならばウクライナ侵攻に勝算有り、こう解釈させた可能性がある、外交の失敗というもの。
アメリカでは戦闘機部隊など機動力の高い部隊を欧州地域へ増派し、その緊張を緩和させる抑止力を検討していると伝えられますが、これはいい方を変えれば、米軍航空部隊がロシア地上部隊を空爆する、この選択肢を強いる訳ですから、反撃に戦術核兵器が検討される、検討と云うのはロシアが有事に際して日常的に用いる用語、こうした緊張にも繋がる。
ロシア軍は10万規模の部隊をウクライナ国境の三カ所に張り付けています。ウクライナ首都キエフに隣接する北方国境地域、そしてウクライナ東部紛争において親ロシア派勢力がウクライナからの分離を主張しウクライナ施政権が不透明なまま停戦となった地域に隣接するウクライナ東部国境、そして2016年にロシア軍が武力奪取したクリミア半島周辺に。
ロシア軍の地上軍作戦単位はBTG大隊戦術群が中心となっていますが、10万のロシア軍は地上軍が保有するBTG大隊戦術群の半数に近いものであり、現在は集結地域に戦車などの重車輛を並べている様子が衛星写真で確認可能です。この集結地は航空攻撃に脆弱ですが示威的でもあり、もしこの部隊が対空疎開へ分散を開始したならば、開戦の信号です。
ウクライナへの防衛協力をドイツが拒否。もう一つは1月18日の米独外相会談とウクライナ問題にかんするドイツ政府の姿勢として、ウクライナへの防衛装備品提供をドイツ政府が拒否し、冷戦時代にNATO副司令官を伝統的に輩出したドイツがウクライナ危機への不関与を間接的に示した事も、ロシア政府にはウクライナ侵攻への勝算を高めたといえます。
冷戦後最大と云える緊張にNATOは警戒を強化している。1月24日、地中海に展開するアメリカの原子力空母ハリーシップトルーマン空母打撃群がNATOの指揮下に入りました。空母戦闘群がNATO指揮下に最後に入ったのは冷戦時代、空母打撃群に改編されてからは2022年1月24日、空母打撃群がNATO指揮下に入るのは今回が初めてとなります。
ハリーシップトルーマン空母打撃群がNATOの指揮下へ。しかし間の悪い事に、アメリカ海軍の稼働空母はハリーシップトルーマンとカールビンソン、ロナルドレーガン、エイブラハムリンカーン。この内、カールビンソン、ロナルドレーガン、エイブラハムリンカーンの3隻は極東地域に前方展開しており、地中海へ増派するには時間が掛かり過ぎます。
ネプチューン2022合同空母打撃群。NATOではハリーシップトルーマンにイギリスが空母クイーンエリザベス戦闘群、フランスが原子力空母シャルルドゴールを加えた米仏英空母打撃群を編成し地中海へ展開させる方針ですが、これをうけ、ロシアバルチック艦隊と北海艦隊の行動が活性化しており、地中海と大西洋の海峡を護るスペイン軍も警戒を強める。
しかし、新しい問題が。果たしてロシア軍がウクライナ侵攻に踏み切った場合、戦域はウクライナの一部に留まるのかという懸念があるのです。前述のロシア軍集結地域でキエフに近い地域に展開しているとしましたが、その地域にはロシアの友好国であるベラルーシ領域内が含まれており、このベラルーシはNATO加盟国であるポーランドと国境を接する。
東欧地域への事態拡大。考え過ぎだろうと反論があるのかもしれませんが、ウクライナと同じ様にCIS独立国家共同体として、ロシアがウクライナに対する行動と同様の措置を執る可能性のある地域に、飛び地であるカリーニングラードがあります。ここにはロシア海軍バルチック艦隊が配置され、地政学的にも政治的にもクリミア半島に近い条件が揃う。
スバルキギャップという戦略上の要衝があります。カリーニングラードはロシア本土からベラルーシとバルト三国を隔てている飛び地なのですが、ベラルーシはロシア友好国であり、ベラルーシ国境までロシア軍が展開できるならば、ベラルーシを進発するとカリーニングラードまで100kmという距離で、しかもこの100kmは舗装された高速道路が通る。
スウェーデン軍は先々週、バルト海の離島であるゴトランド島に機械化部隊を緊急展開させました。ゴトランド島は鳥取県と同規模の離島ですが、バルト海の要衝に位置し、仮にロシア軍がバルト三国に隣接する飛び地カリーニングラードを経由し、東欧地域へ侵攻する際には、ゴトランド島が兵力集積地に適地であり、先手を打って防衛を強化したかたち。
第三次世界大戦の危機。こう表現しましたのは、バイデン政権がここ48時間、手のひらを返すように軍事介入の可能性を示唆した点です。NATOは24日、緊急に欧州東部への兵力強化を決定、アメリカ国防総省も24日に、必要に応じて8500名を欧州へ緊急展開させる待機態勢を完了したと発表しました、恰も冷戦時代のリフォージャー作戦を彷彿させます。
リフォージャー作戦リターンオブフォーストゥジャーマニー、要するに冷戦時代のドイツにソ連軍中心のワルシャワ条約機構軍が侵攻した場合に、第二次世界大戦手戦時の規模まで米軍をドイツに再展開させるという冷戦時代のNATOドクトリンに基づく準備体制で、リフォージャー演習として米本土から十万前後を展開させる演習を毎年実施していました。
ウクライナへ侵攻した場合は強い措置を執る、アメリカと欧州各国、そして日本やオーストラリアなどは一致してこうした姿勢を続けていますが、ウクライナの首都キエフを占領するか、親ロシア系住民の多い東部のハリコフに限定侵攻するのか、このままロシア軍が兵力を引くか、こう問われますと最後の可能性も残りますが、時間の問題ともいえます。
オリンピックは平和の祭典、その北京五輪開会式はいよいよ2月4日に迫っていますが、思い出すのは2008年北京五輪開会式に世界が湧く中、ロシア軍とグルジア軍の北オセチア戦争の火蓋が切られた事を思い出さずにはいられません。強力な力で圧力を掛ければ、一時的に事態を鎮静化させる事は出来ましょうが、導火線は第三次大戦へも繋がっています。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
欧州では東欧を中心にバルト海から地中海、かつて鉄のカーテンと称された地域を思い出させる広い範囲において冷戦終結後最大と云える危機が進行中です。
新年早々第三次世界大戦の危機はご容赦願いたい、こう考える今日この頃、何故ならばウクライナ情勢が緊迫度合いを増しており、このままでは東欧地域全域をも巻き込んだ大規模紛争へ展開する可能性が徐々に高まってきました。2021年12月よりロシアウクライナ故郷地域へロシア軍が大部隊を展開させ続けていますが、導火線は様々な火点へ延びる。
ウクライナのアメリカ大使館は不測の事態の懸念があるとして、大使館員とその家族にウクライナ国外への脱出を開始させ、またイギリスなど欧州各国も同様の施策を採りました。我が国でも外務省は渡航安全情報について、民間航空機が飛行出来る間にウクライナからの出国を呼びかける危険情報を発表、ウクライナは極めて深刻な緊張状態となっています。
冷戦後初めてNATO指揮下にアメリカの空母戦闘群が編入され地中海に展開、東欧地域に米軍緊急展開の準備が開始され、これは故トムクランシー氏“レッドストーム作戦発動”やラリーボンド氏“CARDRON-ヨーロッパ最終戦争”でも再現しているかの様な緊張です。共に第三次大戦に直結しかねない大規模武力衝突を題材としていますが、今は2022年だ。
ロシアの要求は冷戦後、NATOが東方に拡大しすぎた為に元の状態に戻すよう主張し、先ずウクライナのNATO加盟拒否に関する国際合意の条約を要求、また東欧のNATO加盟国についても元の状態に戻すよう要求しています。NATO東方拡大、実際1990年代にはロシアをNATO加盟させようとの動きもあり、敵対的な関係では元々無かったのですが、今は。
ウクライナ危機。この危機がウクライナ有事に発展する懸念というのは、2021年のバイデン大統領発言、“ロシアがウクライナに侵攻した場合に米軍は参戦しないが最大規模の経済制裁”という発言が、逆に既に経済制裁を受けているロシアとしては、米軍が介入しないならばウクライナ侵攻に勝算有り、こう解釈させた可能性がある、外交の失敗というもの。
アメリカでは戦闘機部隊など機動力の高い部隊を欧州地域へ増派し、その緊張を緩和させる抑止力を検討していると伝えられますが、これはいい方を変えれば、米軍航空部隊がロシア地上部隊を空爆する、この選択肢を強いる訳ですから、反撃に戦術核兵器が検討される、検討と云うのはロシアが有事に際して日常的に用いる用語、こうした緊張にも繋がる。
ロシア軍は10万規模の部隊をウクライナ国境の三カ所に張り付けています。ウクライナ首都キエフに隣接する北方国境地域、そしてウクライナ東部紛争において親ロシア派勢力がウクライナからの分離を主張しウクライナ施政権が不透明なまま停戦となった地域に隣接するウクライナ東部国境、そして2016年にロシア軍が武力奪取したクリミア半島周辺に。
ロシア軍の地上軍作戦単位はBTG大隊戦術群が中心となっていますが、10万のロシア軍は地上軍が保有するBTG大隊戦術群の半数に近いものであり、現在は集結地域に戦車などの重車輛を並べている様子が衛星写真で確認可能です。この集結地は航空攻撃に脆弱ですが示威的でもあり、もしこの部隊が対空疎開へ分散を開始したならば、開戦の信号です。
ウクライナへの防衛協力をドイツが拒否。もう一つは1月18日の米独外相会談とウクライナ問題にかんするドイツ政府の姿勢として、ウクライナへの防衛装備品提供をドイツ政府が拒否し、冷戦時代にNATO副司令官を伝統的に輩出したドイツがウクライナ危機への不関与を間接的に示した事も、ロシア政府にはウクライナ侵攻への勝算を高めたといえます。
冷戦後最大と云える緊張にNATOは警戒を強化している。1月24日、地中海に展開するアメリカの原子力空母ハリーシップトルーマン空母打撃群がNATOの指揮下に入りました。空母戦闘群がNATO指揮下に最後に入ったのは冷戦時代、空母打撃群に改編されてからは2022年1月24日、空母打撃群がNATO指揮下に入るのは今回が初めてとなります。
ハリーシップトルーマン空母打撃群がNATOの指揮下へ。しかし間の悪い事に、アメリカ海軍の稼働空母はハリーシップトルーマンとカールビンソン、ロナルドレーガン、エイブラハムリンカーン。この内、カールビンソン、ロナルドレーガン、エイブラハムリンカーンの3隻は極東地域に前方展開しており、地中海へ増派するには時間が掛かり過ぎます。
ネプチューン2022合同空母打撃群。NATOではハリーシップトルーマンにイギリスが空母クイーンエリザベス戦闘群、フランスが原子力空母シャルルドゴールを加えた米仏英空母打撃群を編成し地中海へ展開させる方針ですが、これをうけ、ロシアバルチック艦隊と北海艦隊の行動が活性化しており、地中海と大西洋の海峡を護るスペイン軍も警戒を強める。
しかし、新しい問題が。果たしてロシア軍がウクライナ侵攻に踏み切った場合、戦域はウクライナの一部に留まるのかという懸念があるのです。前述のロシア軍集結地域でキエフに近い地域に展開しているとしましたが、その地域にはロシアの友好国であるベラルーシ領域内が含まれており、このベラルーシはNATO加盟国であるポーランドと国境を接する。
東欧地域への事態拡大。考え過ぎだろうと反論があるのかもしれませんが、ウクライナと同じ様にCIS独立国家共同体として、ロシアがウクライナに対する行動と同様の措置を執る可能性のある地域に、飛び地であるカリーニングラードがあります。ここにはロシア海軍バルチック艦隊が配置され、地政学的にも政治的にもクリミア半島に近い条件が揃う。
スバルキギャップという戦略上の要衝があります。カリーニングラードはロシア本土からベラルーシとバルト三国を隔てている飛び地なのですが、ベラルーシはロシア友好国であり、ベラルーシ国境までロシア軍が展開できるならば、ベラルーシを進発するとカリーニングラードまで100kmという距離で、しかもこの100kmは舗装された高速道路が通る。
スウェーデン軍は先々週、バルト海の離島であるゴトランド島に機械化部隊を緊急展開させました。ゴトランド島は鳥取県と同規模の離島ですが、バルト海の要衝に位置し、仮にロシア軍がバルト三国に隣接する飛び地カリーニングラードを経由し、東欧地域へ侵攻する際には、ゴトランド島が兵力集積地に適地であり、先手を打って防衛を強化したかたち。
第三次世界大戦の危機。こう表現しましたのは、バイデン政権がここ48時間、手のひらを返すように軍事介入の可能性を示唆した点です。NATOは24日、緊急に欧州東部への兵力強化を決定、アメリカ国防総省も24日に、必要に応じて8500名を欧州へ緊急展開させる待機態勢を完了したと発表しました、恰も冷戦時代のリフォージャー作戦を彷彿させます。
リフォージャー作戦リターンオブフォーストゥジャーマニー、要するに冷戦時代のドイツにソ連軍中心のワルシャワ条約機構軍が侵攻した場合に、第二次世界大戦手戦時の規模まで米軍をドイツに再展開させるという冷戦時代のNATOドクトリンに基づく準備体制で、リフォージャー演習として米本土から十万前後を展開させる演習を毎年実施していました。
ウクライナへ侵攻した場合は強い措置を執る、アメリカと欧州各国、そして日本やオーストラリアなどは一致してこうした姿勢を続けていますが、ウクライナの首都キエフを占領するか、親ロシア系住民の多い東部のハリコフに限定侵攻するのか、このままロシア軍が兵力を引くか、こう問われますと最後の可能性も残りますが、時間の問題ともいえます。
オリンピックは平和の祭典、その北京五輪開会式はいよいよ2月4日に迫っていますが、思い出すのは2008年北京五輪開会式に世界が湧く中、ロシア軍とグルジア軍の北オセチア戦争の火蓋が切られた事を思い出さずにはいられません。強力な力で圧力を掛ければ、一時的に事態を鎮静化させる事は出来ましょうが、導火線は第三次大戦へも繋がっています。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)