北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

南太平洋トンガ大規模噴火,宇宙から観測-フンガトンガフンガハアパイ火山が地球規模の影響

2022-01-16 20:11:10 | 防災・災害派遣
■トンガ噴火,極めて異例大規模
 大学入学共通テストが完了しましたが、その最中に発生した噴火は将来の共通テストに出題される歴史的な規模となるのかもしれません。

 南太平洋のトンガ王国、フンガ・トンガ フンガ・ハアパイ火山において極めて顕著な大規模噴火が発生しました。現地とは通信がつながりにくい状況ですが、ニュージーランド政府によれば首都ヌクアロファ西部に深刻な津波被害等があるとしています。火山はヌクアロファの西方65km、しかし噴火規模は現地への人道支援や長期視野が必要といえます。

 火山噴火は地球上で毎日発生しています、エトナ火山やキラウエア火山は数日間隔で噴火を引き起こしています、しかし噴煙に含まれる火山灰や溶岩などの火山噴出物は少ない火山爆発指数VEI-0のものが大半です。一ヶ月に数回、地球上では2000年の有珠山噴火に匹敵するVEI-2の中規模噴火が発生しています。ただ、VEIにはVEI-8まで区分がある。

 ピナトゥボ火山噴火、過去百年間で地球最大の火山噴火は1991年のフィリピンピナトゥボ火山の噴火で、これはVEI-6の巨大噴火であったのですが、この噴火は在比米軍撤退に繋がり、現在の東アジア軍事バランスの変化による緊張の要因となっていますが、トンガの噴火は、情報が少ない中で断言は難しいのですが、ピナトゥボよりも大規模ではないか。

 トンガ大規模噴火、津波注意報は本日1400時に全て解除されました。昨日1310時頃発生した大規模噴火は本日0015時に岩手県沿岸と鹿児島県島嶼部に津波警報、太平洋岸の広い地域に津波注意報発令、津波は鹿児島県トカラ列島で120cmの岩手県久慈港で110cmの津波を観測しました。僥倖だったのは日本では引き潮の時間帯と重なり被害を抑えた点です。

 外務省はトンガ在留邦人の安全確認を続けていますが、トンガ在留邦人にいまのところ被害はないとしています。しかし、トンガ全土では電話やインターネットがつながりにくい状況が続いています、外務省と在トンガ日本大使館との連絡は一応不通とはなっていないようですが、いったい日本から8000km、南太平洋のトンガでは何が起こったのでしょうか。

 トンガの音信不通、この状況に危機感を覚えたニュージーランド政府は空軍の輸送機をトンガに派遣しましたが途中で引き返しています。ただ、トンガでは海底通信ケーブルが一本しかなく、これが切断したか全土停電となり通信インフラが麻痺している状況で、火砕流などによりトンガが全滅したという訳ではない様です。そう、火山噴火は上限が無い。

 津波がトンガにおいて観測されたのは噴火から20分後の日本時間1330時、高さは80cmとなっていました、当初日本では潮位変化はあっても大きなものではないと気象庁が判断していましたが2000時頃、小笠原諸島などで潮位上昇を観測し、また2300時頃には潮位変化が顕著な高さとなったため、津波を観測してからの津波警報注意報発令となりました。

 津波は地震による津波ではない、これは気象庁の発表です。火山性地震による津波は過去、サントリーニ島での噴火での古代の記録から雲仙普賢岳の江戸時代における山体崩壊による津波などの事例はあり、海底地形の崩落による津波は発生し得るもの、地震と火山による山体崩壊とは計測の特性が異なります。しかし、今回の津波は山体崩壊とも違うもよう。

 フンガ・トンガ フンガ・ハアパイ火山。今回の噴火は山体崩壊も発生していますが、それよりも噴火に伴うブラスト、空振が地球規模の気圧変化を引き起こし津波を生じさせたのではないかとの暫定的な分析もあるようです。ブラストは核爆発などでも発生しますが、火山噴火は火山爆発指数6で100メガトン水爆を上回るエネルギーを秒単位で発します。

 ひまわり。日本の気象衛星は今回、フンガ・トンガ フンガ・ハアパイ火山噴火の様子を宇宙空間から撮影に成功していますが、噴火とともに火山灰が直径300kmに広がり、これは東京彦根間の直線距離に相当します。また気象衛星の写真には宇宙空間から観測できる規模のブラストが雲を放射線状に変化させるようすが記録され、日本でも気圧変化が生じた。

 2hpa程度の気圧変化、日本では昨夜2000時頃に2hpaの気圧変化が発生しています、この2hpaと云う気圧変化は1m平方に20kgの圧力が加わる事で、これは太平洋に面していない北米大陸東方の大西洋に面したカリブ海でも潮位変化を生じさせています。地球規模の気圧変化による海面の瞬間的上昇、これは極めて特異な災害といえるのかもしれません。

 大規模噴火。しかし地球規模の気圧変化を起こす規模の噴火です、いったい何が起こったのでしょうか。フンガ・トンガ フンガ・ハアパイ火山は標高149mの火山です、そしてこの火山は2009年3月16日の規定火山噴火により誕生した新島で、元々は36の海底火山が並ぶ火山帯、噴火の四日後にマグニチュード7.6の火山性地震を引き起こしています。

 フンガ・トンガ フンガ・ハアパイは2014年を最後に大規模噴火を起こしておらず、2022年1月11日に安全宣言がトンガ政府により発表されています、しかしわずか数日後の1月14日、フンガ・トンガ フンガ・ハアパイ火山は大規模な噴火を開始、この噴火により標高149mの火山は山体崩壊を引き起こし、中央部が吹き飛んでいます。これだけでも大噴火だ。

 最大規模の噴火は、火山のメカニズムとして地中のマグマ溜まりが地上に吹き出す事で発生します、マグマ溜まりは地球深部のマントルから上昇する過程で生じるのですが、可能性として14日の山体崩壊によりマグマ溜まりまで亀裂が生じ海水が浸透、マグマ溜まりと海水が接触した事で大規模な水蒸気爆発がマグマ溜まりを一挙に放出させたのでは、と。

 山体崩壊は火山により山そのものが吹き飛ぶ現象で、島原大変肥後迷惑という言葉がありますが、日本でも1792年に雲仙普賢岳が噴火により崩壊、山の一部が有明海に崩落し佐賀に津波被害を起こしたほか、1888年に会津磐梯山が大噴火により吹き飛び甚大な被害を引き起こしています。最近では1980年のアメリカセントヘレンズ火山噴火でも発生している。

 破局噴火。これは火山用語ではなく九州巨大火山噴火を描いたSF小説“死都日本”において造語された表現ですが、火山爆発指数VEI-7の“super-colossal”やVEI-8“mega-colossal”という表現に日本火山学会が説明するに適した表現として用い始めている用語です、今回の噴火は火山灰が上空に直径300kmに渡り広がった点で、少なくともVEI-5に相当します。

 トゥポウ6世トンガ国王は高台へ避難、トンガ本土との情報が途絶している為に詳しい情報は不明です。この種の噴火は情報が無い中で大規模に見えるものの、予測できる被害は直径300kmにまで広がった火山灰の雲がそのまま降灰を引き起こし火山灰による被害を及ぼす点でしょう、導電性のある火山灰は電線網をスパークさせ大規模な停電を引き起こす。

 火山灰はアルカリ性で、また水を含むと固まります。これを火山性アスファルトといいますが、農業に大打撃を与えますし海上に降った火山灰はサンゴ礁などの生育を阻害、また航空機にもエンジンに入れば熱で溶解し排気部で冷やされ凝固する為に封鎖し航空機を墜落させるほか、目に見えないエアロゾルでも同様の事が発生する為、暫くは飛べません。

 ピナトゥボ火山噴火と同程度であれば、大変な火山被害であったという水準なのですが、ASO-4阿蘇山カルデラ噴火や鬼界カルデラのアカホヤ噴火、桜島の姶良カルデラ噴火のようなVEI-7規模の噴火で在った場合。もちろん65km先の首都ヌクアロファへ被害が限定的である事を考えれば、VEI-7は考え過ぎなのですが、火山噴火の被害は長期化し得る。

 VEI-7の噴火となりますと、成層圏まで舞い上がった火山性エアロゾルが太陽熱を反射し地球規模の寒冷化を引き起こします。いや、実はVEI-6でもアイスランドのラキ火山1783年噴火は日本の飢饉など北半球に寒冷化を引き起こしていますが。大袈裟と思われるでしょうが、宇宙空間から記録された噴火は、VEI-4の福徳岡ノ場よりも大きいように見えます。

 ただ、情報が少なすぎる、という点が不確定要素です。現在判明している情報は、津波が発生した際に国王が高台に避難しておりトンガ政府は無事である、また現地からは火山灰が空を覆い夜のようになる映像は出ていますが、噴火に関する映像は気象衛星や地球観測衛星が記録したものだけ。火山性地震もアメリカUSGS発表でマグニチュード5.8という。

 被害の全容というよりも現地政府の情報が噴火から30時間を経ても途絶したまま、今後順次判明してゆくのでしょう。しかし、2300km離れたニュージーランドのオークランドへも噴火の爆発音が聞こえた、これは2000km先のモスクワに届いたという1961年のソ連が行った史上最大の核実験AN-602核爆弾の50メガトン爆発よりも遠距離に届いた訳で、尋常ではない噴火です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都幕間旅情】阪急京都本線高架上の9300系特急,阪神淡路大震災慰霊27年の前日に想う

2022-01-16 18:10:34 | コラム
■鉄道が運行されている日常
 鉄道が運行している日常は当たり前の日常なのですがかつてそれが非日常となったことがある。

 桂駐屯地のあたりに所用がありましたので、帰路に洛西口駅にて阪急電車を少し眺めてみました。そういえば桂駐屯地は京都市内唯一の駐屯地であるとともに、あの阪神大震災においては第10師団はじめ自衛隊災害派遣増援部隊の一大拠点となった事を思い出します。

 阪神淡路大震災、明日朝に27年目の震災慰霊の日を迎えます。様々な思い出がこみあげるところですが、しかし思い出すのは電車が動かない事と、そして復旧への鉄道各社の驚くべき努力というところでしょうか。実際、被害を考えれば奇跡的な復旧がありましたね。

 電車が当たり前のように運行している、これはCOVID-19感染拡大下でも、かなり間引いているとはいえ、全国の鉄道が運行を当たり前のように継続していることをありがたく思うところです、そして阪神大震災の運休はこれを身に染みて思い出す事となったところで。

 阪急電鉄は神戸本線や伊丹線を中心におおきな被害が在り、例えば写真を見るだけで美しい三ノ宮駅は倒壊し伊丹駐屯地祭や千僧駐屯地祭などで毎回利用する伊丹駅は全壊、直下型地震というものを、電車で数十分のところにある都市の被害として、驚かされました。

 朝電車に乗っていて脱線した、鉄道絡みではこういう経験の方とも知り合うようになりますと、凄い揺れで驚いた、という程度の経験ではあるのですが、地震災害と云うものを経験として考え方を変えるようにもなりました。もっとも、平成時代は地震が続きましたが。

 災害というものは奇襲のように訪れる、昨日発生したトンガの大規模火山噴火では火山噴火で火山性地震はそれ程ではないにもかかわらず津波が日本まで到達したのもその一例といえるでしょう、電車が運行していて有難いものだ、そんなことを考えつつ帰路に就きました。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【津波警報】トンガ大規模火山噴火,気象庁:日本の太平洋岸に津波警報及び津波注意報0015時に発令

2022-01-16 00:41:48 | 防災・災害派遣
■トンガ大規模火山噴火津波
 気象庁は本日0015時、南太平洋トンガ王国での大規模火山噴火に伴う火山性津波により鹿児島県島嶼部に津波警報、また太平洋岸の広い地域に津波注意報を発令しました。

 日本時間1月16日1310時頃、南太平洋トンガ王国のフンガトンガフンガハアパイ火山が極めて特異な大規模噴火を引き起こしました。フンガトンガフンガハアパイ火山は2009年に海底火山が大規模噴火により隆起し誕生した新島で、標高は147mとなっていますが、噴火により直径200km以上の火山灰が周辺を覆う大規模噴火で、津波も引き起こしました。

 気象庁は本日0015時、津波警報及び津波注意報を発令しています。津波警報は鹿児島県奄美大島及びトカラ列島に発令、津波注意報は本州太平洋岸全域、四国太平洋岸全域、九州太平洋岸全域、南西諸島全域、北海道太平洋岸全域、小笠原諸島全域へ発令されており、これまで鹿児島県島嶼部では実測値で1.2mの津波が観測、また各地で潮位が上昇中です。

 気象庁は当初日本への津波被害は多少の潮位変化に留まるとしていましたが、日本本土において実際の津波検知を始めた事を受け、津波警報発令に切替えました。遠く離れたトンガでの噴火を契機とした津波災害ではありますが、通常の地震に伴う津波と異なるメカニズムである為、気象庁は津波警報が津波を観測の後に発表するという後手に回っています。

 フンガトンガフンガハアパイ火山は、トンガ王国やフィジーなどで80cmや60cmの津波を観測していますが、日本では90cm以上の津波を観測した地域は多く、また潮位が上昇中の地域もあります。一方で遠地津波では1960年チリ津波のように周期の長い津波となる傾向がありましたが、今回観測された津波は周期の小さな、大波に近い特性が観測されている。

 津波は既に安息されていますので急いで避難を開始してください。3mの津波が見込まれる、気象庁は津波を最大3mと想定しています。奄美大島小湊で昨夜2355時に1.2mの津波を観測していますので、続いて津波が襲来します。夜遅い時間帯ではありますが、沿岸部にお住まいの方は海に近づかず、努めて高台や高い建物に避難するよう急いでください。

北大路機関防災情報
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