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北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

新年防衛論集二〇二二,国際協力-本土防衛やシーレーン防衛とともにもう一つ考えるべき命題

2022-01-05 20:22:11 | 北大路機関特別企画
■これからの国際協力の在り方
 新年防衛論集、本日は国際協力という日本が南スーダン撤収以降一時中断している視点について考えてみましょう。

 日本の防衛、本土防衛やシーレーン防衛とともにもう一つ考えなければならない命題は、外交安全保障の視点から世界政治との連接を今後どのように展開してゆくのかという、日本が世界第二位の経済大国と経済成長により一国の経済力だけで一つの生存権を構成することが過去の命題となった現代において認識すべき視点です。今後にも国際協力は重要だ。

 国際協力、これはもちろん外務省が主体となり開発支援などを行う側面も大きいのですが、ODA対外援助は日本経済の限界からこれ以上増大させることは難しく、また円借款についても焦げ付きの可能性を考えれば、中国のように焦げ付いた借款を港湾管理権などで適合化させる施策も日本としては行うべきではありません、これを踏まえ、そこでの選択肢へ。

 海外派遣。もちろんこれを全ての解決に示すつもりはありませんが、日本のポテンシャルを世界に示すには、訓練などを通じての防衛協力、国際平和維持活動後方支援任務への派遣、海上自衛隊による護衛艦親善訪問を通じたプレゼンスオペレーション、人道支援物資の自衛隊輸送機による供与、こうした施策は民間には無理で自衛隊にしか実現できません。

 輸送機の機数維持と輸送艦の増勢、必要な施策はこの二つです。輸送機については、我が国もCOVID-19に際してアストラゼネカ社製ワクチンなどを世界へ供与していますが、全日空の787で空輸するよりも中国がY-20輸送機にて実施したようなポテンシャル、対外的なインパクトを発揮するにはC-2輸送機やKC-767空中給油輸送機を派遣するほうが適う。

 C-2輸送機はC-1輸送機に対して輸送力が増大していることから1:1で置き換えられていません、これは一個航空隊の定数を輸送力で上回りつつも即応機や同時展開能力という点でC-1の圏内と比較するならば下回ることとなります。一方で民間機と比較するならば紛れもなくショウザフラッグそのものの塗装となっており、機体性能からも運用上の問題もない。

 PKO国連平和維持活動については、一方で矛盾するようですが一線を引く必要があると思う、少なくとも現段階では存在しています。日本が最初に参加したPKOはUNTACカンボジア国連平和維持活動、UNTACでは国家再建という従来の停戦監視にくわえた停戦維持ではなく、停戦監視とともに国家再建という、人道支援任務の色彩を強くもつ施策でした。

 カンボジアの経験から日本ではPKOといえば人道支援、という印象を持たれる方も多いようですが実は違います。最初のPKO任務である1948年スエズ危機での派遣は、英仏のスエズ運河軍事介入に際してソ連が核攻撃を示唆し、国連軍を所管する安全保障理事会の機能付随と核戦争危機を目の前に、停戦監視として国連総会が暫定派遣したのが始まりです。

 人道支援とは、コンゴ内戦にてカタンガ傭兵団と国連軍戦闘機部隊の空中戦という第二世代PKOを考えれば人道支援に戦闘機の違和感を感じられるでしょうし、UNOSOM2国連ソマリア任務ではPKO機械化部隊が戦車を先頭に米軍を救出に出動しました。長いPKOの歴史では第三世代型の人道支援型PKOは寧ろ例外的であった事に気づかされるでしょう。

 平和執行、2006年南レバノンPKOでは国連の白いルクレルク戦車がイスラエル機械化部隊を戦車砲で威圧し、安定を回復した、いや回復を強制しましたが、現在のPKOは安全保障理事会の強制力ある決議とともに派遣される、平和維持というよりは平和執行の要素を強く含むもので必ずしも紛争に中立ではない、国連安全保障理事会の意志が優先するもの。

 南スーダンPKOでは戦闘地域に囲まれつつあった自衛隊PKO部隊が撤退に追い込まれる緊迫した状況がありましたが、カンボジアPKOの国連総会が困った国の再建を助ける要素よりも安保理主体のものに転換しています。ならばと89式装甲戦闘車を量産し白く塗ってUNと記す選択肢もありますが、現行法では国連に関与するにはPKOは難しいともいえる。

 しかし、国連との関係は、なにしろ次の安保理改革に際しては日独を含める選択肢は必然という、分担金の視点もありますので、PKOから完全撤退するという選択肢もやはりやや行き過ぎの印象は否めません。その妥協策でPKO部隊の輸送支援、アフガニスタンへ派遣されるタイ工兵隊を自衛隊輸送艦が輸送支援したのは2002年です、この方式も選択肢です。

 国際協力と国際貢献にも事業評価というものが厳密に求められる、実際のところ上記視点の背景にはこうした、無際限な経済支援を行えない現実があるからこその選択肢、このために輸送機と輸送艦は必要という、こうした認識に依拠しているのですね。打算的といわれるかもしれませんが、国際公序の理念は尊重した上での施策には間違いないのですね。

 安全保障を考えるならば、安全保障を防衛という狭い視点に収斂させますと、いや本土防衛が優先だ、と視野狭窄に陥るものですが、例えば国際の平和と安全に資するとして国連との関係と国連における役割を強化することは、日本有事に際して素早い対応を構成する基盤を構築することにほか成りませんし、もう一つ有事の際に敵に回る国をも減らせます。

 輸送機と輸送艦は戦闘機ほど猛々しい装備ではありませんが、有事の際には必須の装備であり、輸送機はアメリカのようにミサイル母機に転用できますし、輸送艦はオーガニック方式での機雷戦母艦、場合によっては戦力投射艦としてF-35B戦闘機の母艦としても転用できます、そして日本の造船業を考えれば比較的安価に揃えられる装備でもあるでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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