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陸上自衛隊豊川駐屯地創設58周年記念行事(豊川駐屯地祭2008) 訓練展示模擬戦編

2008-10-30 20:47:28 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

■豊川駐屯地祭2008

 式典、観閲行進の模様をお伝えした前回に続き、本日は豊川駐屯地祭、訓練展示・模擬戦の柚須を紹介したい。特科火砲、普通科部隊、施設群が参加する、豊川ならではの迫力の情景をお伝えしたい。

Img_5458_1  状況開始、第49普通科連隊の情報小隊から、斥候班が偵察オートバイにて敵情を探る。情報小隊は本部管理中隊の隷下にあり、通信小隊、輸送小隊、衛生小隊、管理整備小隊、施設作業小隊とともに、普通科連隊が独立した作戦運用に就くことを可能としている部隊である。他方、火力などは師団偵察隊とは比較にならず、専ら斥候と監視が任務となっている。

Img_5118_1  会場左手にて仮設敵が陣地構築中!、情報小隊の斥候が敵を発見した。通常、駐屯地祭の訓練展示では、仮設敵が陣地を構築し終えてから状況開始!となるのだが、今回は仮設敵の陣地構築と同時進行で訓練展示が行われた。写真は92式対戦車地雷を敷設するべく装甲車から降車した仮説敵。

Img_5131_1  仮設敵陣地構築中!、情報小隊からの知らせを受けて第4中隊の軽装甲機動車がMINIMI分隊機銃を搭載し急行する。そのころ、仮設敵は装甲車などの支援下に地雷の敷設を一通り完了し、続いて有刺鉄線による鉄条網や小銃班の陣地を構築、わが普通科部隊の前進を阻む障害を着々と構築中であった。

Img_5157_1  陣地構築とともに、第10特科連隊のFH-70榴弾砲による展開の展示が行われていた。空包発射に伴う安全管理上、訓練展示では訓練場の端に配置されるFH-70であるが、その展開動作を展示するという目的で、1門が観閲台の正面に展開、素早く砲身を前方に向け、射撃準備を完了する。

Img_5175_1  続いて、第49普通科連隊の重迫撃砲中隊も120㍉重迫撃砲の展開を展示する。毎分15~20発の射撃を可能とし、通常弾で8100㍍、最大で13000㍍の射程を有するこの迫撃砲は、中隊に12門配備されており、第一線への火力支援に使われる。このほか、普通科中隊にも迫撃砲小隊が配属されており、81㍉迫撃砲による火力支援を実施する。

Img_5224_1  仮設敵の陣地がほぼ完成したころ、対戦車中隊が支援を行うべく展開、12基が配備されている79式対舟艇対戦車誘導弾が素早く車両から降ろされ、射撃位置から33kgの弾頭を敵に向ける。続いて増援の軽装甲機動車も展開、小回りの利く車体には、小銃班が持つありとあらゆる火力が秘められている。

Img_5249_1  攻撃部隊にとり、任務遂行上最初の障害は、仮設敵が敷設した92式対戦車地雷である。これを処理するのは、第6施設群の92式地雷原処理車だ。25㌧の車体には、二発の爆導索を内蔵した地雷処理用のロケットが搭載されており、これにより広範囲の地雷原を瞬時に無力化することを任務としている。

Img_5252_1  爆導索により地雷原が爆破された、という想定。施設科部隊は火薬の量では特科部隊の火砲から投射する量よりも実は多い。92式地雷原処理車は、大量の爆薬を直線状に地雷の上に落とし、一気に爆破して地雷を誘爆させることで幅5㍍、長さ100㍍以上の戦車用通路を瞬時に啓開する。

Img_5258_1  続いて鉄条網を除去するべく、75式装甲ドーザーが大型ドーザーが展開する。75式装甲ドーザーは第一線部隊の機動支援用に1969年より開発が開始された車両で、中型ドーザーと同等の能力を有するとともに車体主要部分に装甲が施されており第一線での作業に耐えることができる。加えて最高速度45km/hというこの種のドーザーと比して高い速度性能を有しているため、機甲部隊に追随することも可能だ。

Img_5277_1  施設群の障害除去を支援するべく、FH-70榴弾砲が射撃する。訓練展示には横隊に3門のFH-70が展開し、順次射撃を行う方式を採っていた。ただ、撮影位置の関係上、当方展開位置からは、他の車両と被ってしまい、あたかも75式装甲ドーザーが射撃しているような情景となったのはご愛敬。

Img_5281_1  大型ドーザーとともに、軽装甲機動車も前進する。大型ドーザーは、装甲は施されていないものの、より大型の排土板を装着しており大規模な作業に対応していると共に、必要に応じてアタッチメントを装着、リッパ作業やウインチ作業などにも対応できるとのこと。ただし、速度は遅いため、展開には輸送車両による支援が不可欠だ。

Img_5369_1  この障害除去作業を支援するのが74式戦車。38㌧の車体には、弾道コンピュータと砲安定装置により高い命中精度を発揮させる105㍉戦車砲が搭載されており、油圧式サスペンションによる車体傾斜、そして命中砲弾を逸れさせる避弾形状の採用など、高い能力を有する戦車である。

Img_5401_1  撃てッ!!、105㍉砲が射撃を行う。閃光と一瞬遅れ迸る砲声が衝撃波となってこちらに向かう。FH-70榴弾砲とは違って白い閃光である。また、砲焔が出ているのも、本当に一瞬であり、撮影することは実は非常に難しい。EOS40Dの連写速度を活かしてシャッターを押し続けて撮影に成功した一枚。

Img_5413_1  74式戦車の戦車砲による射撃により敵装甲車を無力化、そして前進を続ける。ここに来ると戦車の迫力と力強さがひしひしと伝わってくる。空冷2サイクル10気筒ディーゼルエンジンの鼓動と、先ほどの大地を揺るがす戦車砲空包射撃の余韻の中、いよいよ戦機は熟しつつあった。

Img_5427_1  同時に軽装甲機動車からは完全武装の普通科隊員が降車、素早く伏せて小銃を向ける。そこに最後の特科火砲による火力支援の砲声が轟き、これを合図とするように部隊は突撃に移行、たまりかねた仮設敵が降伏し、状況は終了となった。

 特科火砲による射撃の様子がよく見渡せる位置から撮影した昨年と異なり、本年度は状況全般を見ることができる仮設敵陣地広報から撮影したのだが、陣地構築と状況が並行して進むなど、興味深い訓練展示であった。

HARUNA

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