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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

今津駐屯地へ『無人偵察機隊(仮称)』新編へ 情報収集能力強化ねらい

2008-10-01 21:09:39 | 防衛・安全保障

■9月7日付の毎日新聞によれば・・

 やや古い話で恐縮だが、9月7日付の毎日新聞によれば、防衛省の発表として、滋賀県の今津駐屯地に来年度末までに「無人偵察機隊(仮称)」を新編し、駐屯させる旨が報道されていた。

Img_0722  滋賀県今津駐屯地には、第3戦車大隊、第10戦車大隊を中心とした強力な機甲部隊と、駐屯地業務隊など、760名が駐屯しており、今年三月には中部方面隊直轄部隊として、中部方面移動監視隊が今津に新編、沿岸警備や情報収集などを行う各種装備を運用している。報道によれば、新編される『無人偵察機隊(仮称)』も中部方面隊直轄部隊となるようで、中部方面移動監視隊との協同が期待される。

Img_9204  無人偵察機とは、無人ヘリコプターを示しているようで、30名で4機の無人ヘリコプターと、その支援器材を運用するとのこと。この記事を読んだ限りでは、富士教導団第303観測中隊などに配備されている“遠隔操縦観測システム”、若しくはイラクのサマワ宿営地において警備用に運用した無人ヘリコプターのようなものを連想させる。

Img_4510  毎日新聞9月7日付の報道をそのまま引用すると、()◇ヘリ遠隔操作し情報収集 隊員30人、近畿や四国などで活動 高島市今津町の陸上自衛隊今津駐屯地に、無人ヘリコプターを地上から遠隔操作して情報収集する陸自初の「無人偵察機隊(仮称)」の常駐計画があることが6日、分かった。有事の際、敵国の動きを探ることなどを目的にした部隊で、隊員数は約30人。本州西部と四国の防衛を担当する中部方面総監の直轄部隊。防衛省は、同隊を来年度末までに駐屯させる準備を進めている。

Img_6190  同駐屯地には、第3戦車大隊や第10戦車大隊などが駐屯し、隊員数は約760人。今年3月には、車両に積んだレーダーなどでテロ情報などを集める移動監視隊(約50人)が新たに編成されている。 無人偵察機隊の新設は、陸自の情報収集体制の強化の一環。同省などによると、同隊は、無人ヘリ(全長約5メートル、幅約1メートル)を活用、陸自中部方面隊が管轄する近畿や東海、四国などで活動する。4機の無人ヘリや電源供給のための「発進・回収装置」、ヘリを操作するための「追随装置」を積んだ車両などを備える。毎日新聞 2008年9月7日 地方版 とある。 

Img_9754  毎日新聞の記事では、有事の際に敵国の動きなどを探る、と記載しているが、航続距離を考えれば日本海を渡れるとは考えがたく、防衛予算概算要求でも、特に記載が無いので、これは記者の誤解なのだろうか。他方、一時期、明野駐屯地では、OH-1観測ヘリコプターに対地レーダーを搭載し、運用試験を実施していたこともあり、これがある程度反映されるということもあるのかもしれない。

Img_9706_1  陸上自衛隊初の無人偵察機隊、と哨戒されているが、実は陸上自衛隊には第101無人偵察機隊という部隊が北海道の静内駐屯地に駐屯している。この部隊は、第1高射特科団に所属し、下志津駐屯地と静内駐屯地の高射特科部隊用の無人機隊を統合して90年代に発足した部隊だ。

Img_1148  この部隊は、海上自衛隊が運用する無人標的機とほぼ同型の無人標的機に偵察器材などを搭載し、無人偵察機として運用している部隊で、高射特科部隊の射撃訓練に際しては、標的機によるk実戦的な対空戦闘の環境を供している。なお、一応、現在、陸上自衛隊で唯一の無人偵察機部隊となっている。個人的には、新しい無人偵察機隊は、今後、標的機を改造した固定翼無人偵察機などの導入が行われるかについても興味がもたれるところであるが、訓練環境と安全管理上、饗庭野での訓練が難しいかもしれない。

Img_1181  無人ヘリコプターにたいして、無人航空機は、進出速度が早く、その分広範囲の目標を迅速に索敵できるほか、携帯火器などによる脆弱性が無人ヘリコプターよりも速度が速い分、低いという利点が挙げられる。この種の航空機としては、米軍が運用するAQ-2BパイオニアUAVなどが挙げられる。無人ヘリコプターは、どうしても進出速度と索敵範囲に限界があるため、特科連隊の評定に用いる場合には多くの利点を有するが、広範囲を継続的に索敵する方面隊直轄運用の場合は、やや力不足となる印象がある。

Img_8217  この種の任務は、特に災害派遣などにおいて、中部方面隊の八尾駐屯地に所在する中部方面航空隊が、多用途ヘリコプターにテレビ映像電送装置を搭載し、映像情報を収集する任務に充てている。これは偵察とういうよりも、大規模災害などが発生した場合に、状況把握に必要な情報を伝送するものである。

Img_8021_1  球状のカメラにて得たか画像情報を、機体下部に突き出ているアンテナから地上に送信するシステムだ。情報収集というのであれば、この画像情報電送装置の更なる数的増強や、場合によってはこの装備の師団や旅団飛行隊への配備、方面隊隷下の多用途ヘリコプターや観測ヘリコプターの部隊数増加という方策もあり得るのかもしれない。

Img_9153_1  また、情報収集という観点からは、AH-64D戦闘ヘリコプターが搭載するロングボウレーダーも強力な索敵手段となる。この戦闘ヘリコプターが採用された背景には、画像というアナログ情報ではなく、レーダーによりデジタル化された情報を全部隊で共有することを目的とした共同交戦能力の付与にあるわけで、調達が中止されたものの、この装備には、レーダー哨戒任務に対応できるという優れた一面もあることは特筆しておきたい。

Img_9012_1  哨戒などを通して。情報収集に当たる装備としては、海上自衛隊、航空自衛隊も多数の装備を有しており、共同運用というかたちで、情報共有を行う事が、なによりも重要なのだが、それがどの程度進んでいるかについて、確たる情報は無い。この点、新編される無人偵察機隊は、情報収集の一手段の開拓という目的以上に、今後の陸上自衛隊情報収集体系の構築に向けた試験運用部隊的な性格を有する可能性もあり、今後の展開を注目したい。

HARUNA

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