■霞目飛行場での観閲行進
2006年10月1日、陸上自衛隊霞目飛行場において東北方面隊創設46周年記念行事が行われた。5月20日に霞目駐屯地創立50周年記念行事が予定されている中、霞目飛行場の様子と共に方面隊直轄部隊などの装備を紹介したい。
八戸駐屯地より展開した第四地対艦ミサイル連隊の88式地対艦誘導弾。技術研究本部が1979年から8年がかりで開発した装備で、慣性誘導・アクティヴレーダーホーミングとデジタルマップ追随方式を複合化した射程百数十km(180kmと説明する資料が多い)の誘導弾。“月刊軍事研究386号”には一個連隊に16基の六連装発射機が配備されているとのこと。
仙台駐屯地より参加した東北方面隊直轄の第二特科群第110特科大隊の203mm自走榴弾砲。最大射程は噴進弾で30km、通常弾でも24kmに達し、90.72kgの砲弾は長径75㍍、短径30㍍の地域を制圧し、4000㍍の距離で、122㌢の強化コンクリートを貫徹するという。
MLRS(多連装ロケットシステム)。仙台駐屯地の第二特科群第130特科大隊の車輌である。1992年より配備が開始されたもので、重量306kgの227㍉ロケット弾12発を搭載し、フットボールコート6面分の面積に展開した上陸用舟艇や空挺部隊を同時制圧する。一個大隊には18輌のMLRSが配備されており、着上陸部隊を瞬時に制圧する装備である。
発射機にはクレーンが装備されており、10分程度で再装填可能、子弾散布方式であるが、戦車のエンジングリルなどに直撃すれば撃破できないものの、行動不能に陥れる事が可能であり、88式地対艦誘導弾と並び専守防衛のわが国には最適の装備である。射程は30kmであるが改良型に60kmのものがあり、導入を検討中のATACMSは300kmの射程を有する。
霞目駐屯地の東北方面輸送隊第302輸送隊の車輌に搭載されたMLRS。中部方面隊は方面直轄の野戦特科部隊を有さない為、これと88式を見れたことで、仙台遠征の目的に関して少なくない部分は達成されたといっても過言ではない。
八戸駐屯地の第五高射特科群第319高射中隊の改良ホーク。後方における策源地防空を担当する装備で、射程は30km程度といわれている。しかし、アメリカの資料などでは60kmあるとするものも、また、米海兵隊のマニュアルでは限定的な弾道弾迎撃能力(恐らくフロッグ7のような射程の短いものを示すのかな、と勝手に推測)も有するとある。
岩手駐屯地より参加した第九高射特科大隊の35㍉連装機関砲L-90。第九師団の戦術防空に携る装備であるが、93式近距離地対空誘導弾に代替が進み、現在では第九師団、第十一師団に残るのみとなっている。撮影できて良かった装備の一つ。
仙台駐屯地の東北方面通信群隷下の衛星可搬局装置(映像伝送システム)。伊丹でもよく見かける装備で、阪神大震災などの大規模災害を契機として導入された装備の一つである。特に情報通信は軍事以外の任務においても重要であることが、あの震災により認識されたもので、他方で海外派遣などにおいても重要な装備である。
第301中枢通信隊(とバンパーに記されている)の車輌。固定型地球局などの衛星装置に加え、地上無線機1号、電子自動交換装置、中継電子交換装置、方面電子交換装置などが方面通信群に装備されており、能力的には師団通信大隊のものよりも充実している。
大和駐屯地の第六偵察隊より参加した85式地上レーダー装置JTPS-P11。71式地上レーダー装置JTPS-P6の後継として開発されたもので、戦域情報を電子偵察により把握することが可能である。レーダー部分は伸縮装置により昇降機能を有する。87式偵察警戒車や偵察オートバイとともに参加した。
船岡駐屯地に司令部を置く第二施設団隷下の第301水際障害中隊の94式水際地雷敷設装置。路上最高速度50km/h、水中最高速度は11km/h。上陸予想地点周辺に対舟艇地雷を敷設する。自動車でもあり船舶でもある珍しい装備である。
92式浮橋。橋長104㍍の橋梁を迅速に架橋する装備で、この装備は橋節、動力ボート、運搬車、道路マット、道路マット敷設装置からなる。河川に投入したところで扇状に開く構造を有している。米軍ではより迅速に架橋する為に大型輸送ヘリコプターにより一気に河川に投入、短時間で渡河準備を整えるという。こうした訓練を行っているかは浅学にして知らないが、陸上自衛隊でも大規模災害時には実現して欲しい運用方法である。
メーザー殺獣光線車と俗称されるが、れっきとした施設科装備である。第303坑道中隊の坑道掘削装置。掘削機本体、支保工作装置、ずり搬出装置、給電装置、地質調査機材より構成されるもので、1991年より装備化された。航空攻撃から防護する掩体や掩砲所を構築するのに用いるもので、毎時30立方㍍を掘削する能力を有する。この他、戦車や装甲車などの各種装備が参加したが、特に中部方面隊では珍しい装備を中心に特集した次第である。
HARUNA
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)