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第七師団創設51周年 記念行事 2006年5月28日

2007-05-17 18:52:28 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

■東千歳駐屯地祭

 2006年5月28日、北海道千歳市に所在する東千歳駐屯地に司令部を置く陸上自衛隊第七師団は、第七師団創立51周年記念及び東千歳駐屯地創設52周年記念行事を行った。

Img_2946  東千歳駐屯地には、第七師団司令部、第一高射特科団本部、北部方面教育連隊、第十一普通科連隊、第七特科連隊、第七高射特科連隊一部中隊、第七偵察隊、第七施設大隊、第七通信大隊、第七化学防護隊、第七後方支援連隊、第一高射特科群、第101高射直接支援大隊などが駐屯している(防衛ハンドブックより)。

Img_2744_1  当日は、午後より雨天という予報が出されていたものの、0800時頃から降雨となり、式典開始時点では強風を伴い、豪雨の中の式典となったが、式典には1600名の隊員が機甲師団の名を示す400両の車輌とともに一糸乱れぬ部隊整列、観閲行進を行い、その精強ぶりを示した。

Img_2784  一緒に展開した方の後日談では、師団記念式典としては最も天候が悪かったとの事で、その方のお話では式典の最後の方には雹が降ったとか。知り合いのプロカメラマンの人さえも、途中で退却を余儀なくされたとの事である。

Img_2794  第七師団広報の発表では、この悪天候で来場者は例年より少ない7200名であったという。今回は、画像補正とトリミングから、掲載可能なレベルを有する写真を集め、嵐をも跳ね返す機甲師団の威容をお伝えしたいと思う。

Img_2782_1  部隊巡閲を行う第七師団長庄田豊陸将。第七師団は日本唯一の機甲師団であり、戦車連隊三個を中心とする286輌に加え、完全機械化の普通科連隊一個、更に支援部隊にも多くの装甲車輌が配備されており、機動打撃を担当する陸上自衛隊最強の師団である。

Img_2797  観閲行進へ向け移動を開始する部隊。師団司令部付隊の部隊で、後方に写る73式装甲車は通信用車輌である。通常の師団では装甲車は普通科部隊にさえ充足されないが、第七師団の戦車による機動打撃に追随する為には通信車輌も装甲化する必要があるのだ。

Img_2854  第七特科連隊の99式自走榴弾砲が行く。長い砲身は52口径155㍉榴弾砲で、極めて長い射程を有し、車体にはデータリンク用装備や自動装填装置など世界最先端の機器が詰め込まれている。背景にはぎっしりと90式戦車が集結している。白い天馬は第72戦車連隊の部隊マーク。

Img_2925 第73戦車連隊の90式戦車。第73戦車連隊は一部中隊が即応予備自衛官により編成されているとのこと。戦車連隊は五個戦車中隊92輌の戦車を運用する(参考文献:軍事研究通巻386号)。 50㌧の90式戦車が並んでゆくと、地面はその巨体とともに僅かに揺れ、その重量を見学者に伝える。

Img_2885_2  第11普通科連隊の89式装甲戦闘車。35㍉機関砲、対戦車ミサイル、26㌧の車体が有する高い防御力と、性能では世界有数のものであるが、価格も世界有数であり、残念ながら第11普通科連隊の必要定数150輌も充足できぬまま調達終了となった。

Img_2904  96式自走120ミリ迫撃砲。重迫撃砲中隊は6個小隊より成り、18門の96式を運用する。機械化部隊に追随する機動力を有し、車体後部に搭載された重迫撃砲を用いて普通科部隊を支援する。車体後部から後方に向け砲身が伸びているのがわかる。

Img_2899_1  第11普通科連隊の73式装甲車。一個小銃班を輸送する装甲車で、機銃は車内からの操作が可能である。第11普通科連隊は1500名と、通常の普通科連隊より人員が多く、中隊も6個普通科中隊と6個小隊基幹の重迫撃砲中隊から成り、全部隊が装甲化されている。

Img_2871  観閲行進待機位置へ集結した車輌群。左側に待機位置に到達した車輌、そして右手に待機位置へ向かう特科火砲群が写っている。点々と見えるライトが勇ましく、豪雨が機甲部隊を際立たせている。観閲行進が行われる2000㍍もの旧軍の滑走路を用いた会場へ向け、号令を待つ。

Img_2939  右手には連隊旗を掲げた90式戦車がみえる、蛇足ながら旧軍では戦車連隊はあっても戦車連隊旗はなかったとの事である。左手の比較的車高の高い車輌は自走迫撃砲で、こうした待機の車輌群は、より後方へ延々と繋がっているのだろう。

Img_2958  観閲行進開始!前へッ!。泥飛沫を押しのけつつ、90式戦車が進む。通常の観閲行進では戦車は精々横二列、または単縦列で行進するが、第七師団はとにかく戦車が多い為、一気に横五列が行進する。砲塔に描かれた中隊番号からわかるように、中隊ごとに戦車が行進に臨んでいる。

Img_2870_1  第一電子隊の車輌。会場のアナウンスによれば、陸上自衛隊唯一の電子戦部隊とのことで、米軍なNATO軍の同様の部隊が担う任務から推測すると、電子妨害の対処や通信妨害、また電子妨害の策源地標定などを行う部隊と思われる。

Img_2892_1  73式装甲車。第7施設大隊の車輌と思われる。338輌が生産され、第七師団では北部方面隊の一部普通科連隊の他、戦車大隊の本部管理中隊などに配備されている。

Img_2894_1  70式地雷原爆破装置を搭載した第七施設大隊所属の73式装甲車。地雷原を誘爆させる爆導索を投射するロケットを有し、人員用通路を啓開する装置である。完全な地雷除去を行うには不充分とされるが、迅速に通路を構築する上で必要な装備である。

Img_2849_1  第七後方支援連隊の73式装甲車と90式戦車回収車。後方支援連隊にも装甲車が配備されており、戦車部隊を支援する。戦車回収車は、エンジンや砲塔交換、損傷した戦車などを行う。装甲車輌が多数配備された第七師団にあっては、装備品の整備は大変な困難を伴うと推測されるが、方面隊の支援もうけ高い稼働率を維持できるという。

Img_2897_1  手前から施設作業車、75式装甲ドーザー。第七施設大隊の装備で、危険な最前線での障害除去を行う。施設作業車は、装甲ドーザー、掩体掘削車、パワーショベルなどの各種施設装備を搭載した最新装備で、無人状態での各種作業やショベルを用いて梱包爆薬の設置なども可能であるとのこと。

Img_2901_1  91式戦車橋、その奥に92式地雷原処理車がみえる。91式戦車橋は90式戦車も通行可能な長さ20㍍、幅3.9㍍の橋梁を五分以内に設置でき、スライド式で秘匿性の高い架橋作業が可能である。92式地雷原処理車は車輌用通路を瞬時にして啓開する装置で、70式よりも大型である。

Img_2935  92式地雷原処理車の後方に、延々と第11普通科連隊の89式装甲戦闘車が続いている。戦車は、対戦車火器を有した伏射などに意外な脆弱性を有し、敵歩兵の無力化には、普通科部隊による戦闘が不可欠となっている。

Img_2948_1  74式戦車でさえ装備していない熱線暗視装置を搭載し(ただし、74式も試作改造車輌は搭載)、射程4000㍍の79式対舟艇対戦車誘導弾と、貫徹力の大きい35㍉機関砲を搭載するが、前述のように価格が99年度調達価格で6億7800万円と高価であり、第11普通科連隊一部中隊と富士教導団普通科教導連隊第五中隊にしか配備されていない。

Img_2940_1  しかし、40㌧のドイツ連邦軍の新型、重装甲車プーマは、邦貨にして一両あたり11億円するとのことである。89式は26㌧であるが、96式装輪装甲車の14.5㌧よりは高い防護力を有する。携帯対戦車火器や狙撃の危険性のある紛争地域に、将来、自衛隊が恒常的に国際平和維持活動などで派遣される時代が来れば、この種の車輌への需要は高まることは間違いない。

Img_2879_1  第七特科連隊の99式自走榴弾砲と、北部方面隊直轄の第一特科団より参加したMLRS多連装ロケットシステム、できれば全般支援火器として第七師団にも一個中隊必要な装備といえる。従来までは面制圧を行うロケット弾と点制圧を行う自走榴弾砲という構図であったが、子弾散布機能を有する新砲弾の開発により自走榴弾砲は運用の柔軟性を高めている。

Img_2937_1  75式自走155㍉榴弾砲。99式に置き換わりつつあるが、自動装填装置を有し、搭載するコリメーターなどをあわせれば対戦車戦闘を含む柔軟な運用を可能としている。第七特科連隊は40門の自走榴弾砲と四個特科大隊を有し1200名からなる、比較的小ぶりな編成となっている。

Img_2911_1  第七偵察隊の74式戦車。隊員の方に聞いたところでは戦車連隊への90式戦車の配備は完了したということで、師団唯一の74式戦車部隊である。第七偵察隊は人員200名、唯一の戦車による威力偵察が可能な部隊で、戦車10輌、装甲車17輌、偵察警戒車5輌を装備しているという。

Img_3170  千歳基地からの第二航空団所属のF-15Jは悪天候により参加取りやめとなったが、訓練展示も滞りなく行われた。しかし、訓練展示での方角からの豪雨が一番激しく、レンズが曇ってしまう為撮影が充分に出来なかった。この雨のなか、不幸にもカメラを故障させた見学者の方も多く居たようである。

Img_3181  訓練展示は、戦車を含む仮設敵陣地に対して、航空偵察、地上偵察を行い、襲来する敵航空部隊を高射特科部隊が撃退、特科火砲の支援下で戦車及び装甲車が機動打撃により反撃するというもので、第72戦車連隊が中心となって実施された。

Img_3015_1  2007年の第七師団創設52周年記念行事は、5月27日に開催予定との事である。晴天を期待する一方で、どんな悪天候にも屈しない強力機甲師団、その観閲行進の迫力は日本最大といってもよいだろう。北海道は遠いものの、一見の価値はあり、一度、足を運ばれてみては如何だろうか。なお、老婆心ながら、万一に備え雨具の準備もお薦めしたい。

HARUNA

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コメント (7)
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